断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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101 断罪されるべき者 ②

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苦悩に表情を歪めながら、それでも凛と顔をあげジェロームは言う。

「このエンブリーは祖父が開拓し父が大切に守ってきた小さいが温かい領地だ。領民を大切にせぬあなたにお渡しするつもりは毛頭ない!」

「これは高貴なる方々に近づけるまたとない好機。だがそこに書かれた金額を一括で支払ってもらえるのであれば…、まあ些か残念ではあるが、それはそれでかまわんよ」

無理だと分かってて…意地クソ悪い…

「いずれにしてもここで側答出来る問題ではない。今日のところは帰って頂こう。返答は近日中を約束しよう。バーナード伯爵家の名において」
「いいでしょう。では今日のところは失礼する。色よい返事をお待ちしておりますぞ」

見送りがてら塩撒いてやろうかと思ったが…エンブリーでは塩も貴重だ。僕はぐっとこらえ、ヘクターと共に隣のドローイングルームへと踵を返した。

バン!
力任せに閉める扉。僕の顔は今、憤怒の魔人になっているだろう。

「シャノン、怒りは分かるが抑えるんだ」

部屋ではアレイスターが、詳しい状況を聞き出そうと険しい顔で待っていた。見送りを終えたコナー、ジェロームも集まり対策が話し合われる。
証文の利息はさすがの王族、シャノンの宝石があってもおいそれと何とか出来ない額だ。が、それもこれもその証文が本物だったらと言う話でね?そこが肝心だ。

「あんなの偽物に決まってる!」
「だがあれは確かに我が家の印章。それは間違いない…」
「だけど!」
「シャノン様、私も同感です。あれは巧妙に作られた偽造書類」
「だからと言って証拠が無くては…」
「だが砂金に感づかれていなかったのは幸いだった…」
「仰る通り。それにしても嗅覚の鋭い男ですね」
「抜け目のない!」

だからこんな貧しい僻地であんなにジャラジャラ宝石身につけられるんでしょうが!強欲親父め!

そうこう話しているうちにも、冬の日暮れは夜の帳を下ろしていく。気が付いたら外はもう真っ暗だ。シェイナも不安そうに外を眺めている。

ツンツン
「ブー、アブー」
「シェイナどうしたの?お腹すいた?」

「ああ、もうそんな時間ですか…。皆さま一旦ディナーにしませんか?今日は昼もろくに召し上がってはおりませんし」

シェイナのぐずりをきっかけにしてコナーがそう僕らを促す。
結論をみないままゾロゾロとダイニングへと移動していく最中、またまたシェイナがぐずり出した。

「どうしたの?眠くなっちゃった?ご飯は?」

プルプルプル

「じゃあ先に寝室へ行こうか?」

「ムー!ノーン!ムー!」

グイグイ服を引っ張るシェイナの腕は離れの部屋に向けられている。あそこには僕が昨日仮眠をとった先代のベッドもある。

「あそこに行けってこと?」

コクリ

「シェイナを寝かせてきます。先に行っててください」

僕は廊下をズンズン進んで突き当りの増設部分、離れの扉に手をかけた。

「じゃあシェイナ、少しだけここに居てね」
「ノーン、ブブアブウッププ」

シャノン、早く戻ってね…かな?

「急いで戻る。じゃあ後でね」

不安そうなシェイナの表情…ジェロームの心配をしてるんだろう。大丈夫シェイナ!きっと何とか!

…何とかなるかなぁ…






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