153 / 308
101 断罪されるべき者 ②
しおりを挟む
苦悩に表情を歪めながら、それでも凛と顔をあげジェロームは言う。
「このエンブリーは祖父が開拓し父が大切に守ってきた小さいが温かい領地だ。領民を大切にせぬあなたにお渡しするつもりは毛頭ない!」
「これは高貴なる方々に近づけるまたとない好機。だがそこに書かれた金額を一括で支払ってもらえるのであれば…、まあ些か残念ではあるが、それはそれでかまわんよ」
無理だと分かってて…意地クソ悪い…
「いずれにしてもここで側答出来る問題ではない。今日のところは帰って頂こう。返答は近日中を約束しよう。バーナード伯爵家の名において」
「いいでしょう。では今日のところは失礼する。色よい返事をお待ちしておりますぞ」
見送りがてら塩撒いてやろうかと思ったが…エンブリーでは塩も貴重だ。僕はぐっとこらえ、ヘクターと共に隣のドローイングルームへと踵を返した。
バン!
力任せに閉める扉。僕の顔は今、憤怒の魔人になっているだろう。
「シャノン、怒りは分かるが抑えるんだ」
部屋ではアレイスターが、詳しい状況を聞き出そうと険しい顔で待っていた。見送りを終えたコナー、ジェロームも集まり対策が話し合われる。
証文の利息はさすがの王族、シャノンの宝石があってもおいそれと何とか出来ない額だ。が、それもこれもその証文が本物だったらと言う話でね?そこが肝心だ。
「あんなの偽物に決まってる!」
「だがあれは確かに我が家の印章。それは間違いない…」
「だけど!」
「シャノン様、私も同感です。あれは巧妙に作られた偽造書類」
「だからと言って証拠が無くては…」
「だが砂金に感づかれていなかったのは幸いだった…」
「仰る通り。それにしても嗅覚の鋭い男ですね」
「抜け目のない!」
だからこんな貧しい僻地であんなにジャラジャラ宝石身につけられるんでしょうが!強欲親父め!
そうこう話しているうちにも、冬の日暮れは夜の帳を下ろしていく。気が付いたら外はもう真っ暗だ。シェイナも不安そうに外を眺めている。
ツンツン
「ブー、アブー」
「シェイナどうしたの?お腹すいた?」
「ああ、もうそんな時間ですか…。皆さま一旦ディナーにしませんか?今日は昼もろくに召し上がってはおりませんし」
シェイナのぐずりをきっかけにしてコナーがそう僕らを促す。
結論をみないままゾロゾロとダイニングへと移動していく最中、またまたシェイナがぐずり出した。
「どうしたの?眠くなっちゃった?ご飯は?」
プルプルプル
「じゃあ先に寝室へ行こうか?」
「ムー!ノーン!ムー!」
グイグイ服を引っ張るシェイナの腕は離れの部屋に向けられている。あそこには僕が昨日仮眠をとった先代のベッドもある。
「あそこに行けってこと?」
コクリ
「シェイナを寝かせてきます。先に行っててください」
僕は廊下をズンズン進んで突き当りの増設部分、離れの扉に手をかけた。
「じゃあシェイナ、少しだけここに居てね」
「ノーン、ブブアブウッププ」
シャノン、早く戻ってね…かな?
「急いで戻る。じゃあ後でね」
不安そうなシェイナの表情…ジェロームの心配をしてるんだろう。大丈夫シェイナ!きっと何とか!
…何とかなるかなぁ…
「このエンブリーは祖父が開拓し父が大切に守ってきた小さいが温かい領地だ。領民を大切にせぬあなたにお渡しするつもりは毛頭ない!」
「これは高貴なる方々に近づけるまたとない好機。だがそこに書かれた金額を一括で支払ってもらえるのであれば…、まあ些か残念ではあるが、それはそれでかまわんよ」
無理だと分かってて…意地クソ悪い…
「いずれにしてもここで側答出来る問題ではない。今日のところは帰って頂こう。返答は近日中を約束しよう。バーナード伯爵家の名において」
「いいでしょう。では今日のところは失礼する。色よい返事をお待ちしておりますぞ」
見送りがてら塩撒いてやろうかと思ったが…エンブリーでは塩も貴重だ。僕はぐっとこらえ、ヘクターと共に隣のドローイングルームへと踵を返した。
バン!
力任せに閉める扉。僕の顔は今、憤怒の魔人になっているだろう。
「シャノン、怒りは分かるが抑えるんだ」
部屋ではアレイスターが、詳しい状況を聞き出そうと険しい顔で待っていた。見送りを終えたコナー、ジェロームも集まり対策が話し合われる。
証文の利息はさすがの王族、シャノンの宝石があってもおいそれと何とか出来ない額だ。が、それもこれもその証文が本物だったらと言う話でね?そこが肝心だ。
「あんなの偽物に決まってる!」
「だがあれは確かに我が家の印章。それは間違いない…」
「だけど!」
「シャノン様、私も同感です。あれは巧妙に作られた偽造書類」
「だからと言って証拠が無くては…」
「だが砂金に感づかれていなかったのは幸いだった…」
「仰る通り。それにしても嗅覚の鋭い男ですね」
「抜け目のない!」
だからこんな貧しい僻地であんなにジャラジャラ宝石身につけられるんでしょうが!強欲親父め!
そうこう話しているうちにも、冬の日暮れは夜の帳を下ろしていく。気が付いたら外はもう真っ暗だ。シェイナも不安そうに外を眺めている。
ツンツン
「ブー、アブー」
「シェイナどうしたの?お腹すいた?」
「ああ、もうそんな時間ですか…。皆さま一旦ディナーにしませんか?今日は昼もろくに召し上がってはおりませんし」
シェイナのぐずりをきっかけにしてコナーがそう僕らを促す。
結論をみないままゾロゾロとダイニングへと移動していく最中、またまたシェイナがぐずり出した。
「どうしたの?眠くなっちゃった?ご飯は?」
プルプルプル
「じゃあ先に寝室へ行こうか?」
「ムー!ノーン!ムー!」
グイグイ服を引っ張るシェイナの腕は離れの部屋に向けられている。あそこには僕が昨日仮眠をとった先代のベッドもある。
「あそこに行けってこと?」
コクリ
「シェイナを寝かせてきます。先に行っててください」
僕は廊下をズンズン進んで突き当りの増設部分、離れの扉に手をかけた。
「じゃあシェイナ、少しだけここに居てね」
「ノーン、ブブアブウッププ」
シャノン、早く戻ってね…かな?
「急いで戻る。じゃあ後でね」
不安そうなシェイナの表情…ジェロームの心配をしてるんだろう。大丈夫シェイナ!きっと何とか!
…何とかなるかなぁ…
1,864
お気に入りに追加
5,790
あなたにおすすめの小説
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで
深凪雪花
BL
候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。
即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。
しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……?
※★は性描写ありです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる