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75 断罪と正念場 ①
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遊びに来たはずの王城でどエライことになってしまった。コンラッドがアーロンを諦める…などと言いだしたのだ。
下手に「契約婚で」などと言って見せかけの婚約者で居続けたせいで、いまさらアーロンとコンラッドが別れたら、僕はこのまま一生涯王宮で馬車馬のように働かされる奴隷契約、『正妃』まっしぐらになってしまう…。
「勘弁してよ…」
早急にアーロンと話しをしなくては…
僕は落ち着きなく自室の中を動き回っていた。
「えーと、例の予定は…」
例の予定とは、アーロンと安全に話し合う予定の事である。
一体僕がどこで話をしようとしているか…、それは…ズバリ!学院の敷地内にある礼拝堂に備えられた懺悔室のことだ。
懺悔室…、といってもそこは、小窓の付いた仕切りに隔たれ、あちらとこちらに椅子が二脚あるだけの、畳にして一畳くらいしかない面会ブースだ。
この学院では、月に数回助祭様がやってきては学生たちの悩みに耳を傾ける。前世で言うところのスクールカウンセラーみたいなものだ。
アーロンはまだ侍祭だが、神子候補であることからそのメンバーに任命されている。そりゃそのほうがコスパもタイパもいいからね。けど、なによりアーロンがそれを強く望んだと隊長からの報告があがっている。
多分アーロンはここで信者を増やしていたんだろう…。それか信者の素質を見極めていたか。
隊長から、まだアーロンとよく似た女性に関しての報告は上がっていない。だけどあそこなら、完全に二人きりでゆっくり話せるわりに押し倒される心配はない。
尚且つ、コンラッドに対しては実質不敬チックだが、神様に対してそれが何神であれ敬虔なアーロンは、聖なる礼拝堂の中でエッチなことはしないだろう。そこは信じられる。
あとは何をどう話すか、だがアーロンが斜め上な以上、こればかりは出たとこ勝負だ。
取り合えず僕は整理してあったノベルゲー後半のフローチャートを再確認した。
ブラッドが父親にシャノンの悪行を吹き込む、というエピソードも父親とシャノンについて話し合うという趣旨で再現されている。
その父親のぺちゃんこ回避エピを挟んで前後に頻発する、コンラッドとロイド、ブラッド各自との、コンラッドと対峙して煽ったり励ましたり、シャノンをどうするか話し合ったり、…というエピソード類もコンラッドの話しぶりからして着々と消化は進んでいるようだ。
それによく考えたら、シャノンに罵倒されるというエピも、僕は無意識のうちに消化していた。
となると、残る大きなイベントは文化祭、成人パーティー、アーロンの神子認定、そしてプロムの断罪。そしてこの辺りからチーム、チャッカmanによる、断罪に付いて話し合いを重ねるエピソードが登場し始める。
ついでに断罪前には、プロムに向けて、コンラッドと王様王妃様とが話し合うエピソードがある。ほら、シャノンに見せられたキャプチャーでコンラッドが王妃様を責め立ててたやつね。ゲーム上ではさらっとだったが。
因みにノベルゲーで王様が登場したのはこのシーンが初めてみたいなものだ。存在は感じるが登場しない。それが現実のここでも見事に再現されている。まあ…この夏の不在は僕の計略だけど…
つまり形はどうあれ、基本はゲームの強制力によってノベルゲーのシナリオをざっくり踏襲しているのがこの世界だ。
その中でコンラッドがアーロンと別れる…これは実質シナリオの放棄を意味する。前世で言ったら「致命的な欠陥が見つかったので…」と、回収騒ぎになるところだ。
ノベルゲーの主人公相手であるコンラッドがシナリオを降りたらこの世界はどうなるか…想像もつかない。それ以前に僕の断罪はどうなる!?
「それが最大の問題でしょうが!」
だからこそゲームのエンドロールまでは、何が何でもエピソードだけは完遂しなければならない。例えどれほどこじつけでも!どうせここまでだってほとんどこじつけなんだし。この際なんでもいい!
ひとつ、文化祭において、僕はアーロンの衣装を汚さなければならない。うん、まあこれくらいは楽勝。
ひとつ、成人パーティーにおいて、僕はアーロンのルビーを取り換えなくてはならない…って、あー!!!ルビーもう無い!売っちゃったよ!……いや待て。ここで大事なのは今までのパターンから言って、ルビーを取り換えるという部分であって、何と取り替えようが多分関係ない。オッケー、ここも問題ない。
そして神子認定。ここは楽勝だ。僕が『神託』になっている以上、この件に関してはどうとでもなる。僕の独断でアーロンを名前だけの神子にして、僻地の神殿か教会で思う存分神に祈りを捧げてもらうのも一つの手だ。
そもそも誰が神子で、どんな国難からどう世界を救うかなんて、王様も含めどうせ誰も知らないのだ。実際、本物の神子は既に国難から世界を救って、今は傍観者を決めこんでいるんだし。
ならどっかで邪気でも発生したことにして、祈りで祓ったことにしておくとか……ハイ、採用!
ラスト、ここが最難関、断罪である。『神託』である僕がどうやって断罪されるか…かなり無理ゲーな気もするが、『神託』だからこそ、「実は『神託』とかウソでしたー。てへ☆」とか言ったらワンチャン断罪されないだろうか…?され…る気がする!
「あれ…?これ…イケる…?」
あとチャッカmanたちのあれやこれやは、ほかっておいても消化されていることが分かって来たし…。
「出来ちゃったよ…。断罪までのウィニングロード…」
そうして安堵の中、文化祭への展示論文に頭を悩ませながら幾日か過ごし、ついに迎えたアーロンが懺悔室へお務めする日。
ここが断罪への勝負、最初の一歩だ!
下手に「契約婚で」などと言って見せかけの婚約者で居続けたせいで、いまさらアーロンとコンラッドが別れたら、僕はこのまま一生涯王宮で馬車馬のように働かされる奴隷契約、『正妃』まっしぐらになってしまう…。
「勘弁してよ…」
早急にアーロンと話しをしなくては…
僕は落ち着きなく自室の中を動き回っていた。
「えーと、例の予定は…」
例の予定とは、アーロンと安全に話し合う予定の事である。
一体僕がどこで話をしようとしているか…、それは…ズバリ!学院の敷地内にある礼拝堂に備えられた懺悔室のことだ。
懺悔室…、といってもそこは、小窓の付いた仕切りに隔たれ、あちらとこちらに椅子が二脚あるだけの、畳にして一畳くらいしかない面会ブースだ。
この学院では、月に数回助祭様がやってきては学生たちの悩みに耳を傾ける。前世で言うところのスクールカウンセラーみたいなものだ。
アーロンはまだ侍祭だが、神子候補であることからそのメンバーに任命されている。そりゃそのほうがコスパもタイパもいいからね。けど、なによりアーロンがそれを強く望んだと隊長からの報告があがっている。
多分アーロンはここで信者を増やしていたんだろう…。それか信者の素質を見極めていたか。
隊長から、まだアーロンとよく似た女性に関しての報告は上がっていない。だけどあそこなら、完全に二人きりでゆっくり話せるわりに押し倒される心配はない。
尚且つ、コンラッドに対しては実質不敬チックだが、神様に対してそれが何神であれ敬虔なアーロンは、聖なる礼拝堂の中でエッチなことはしないだろう。そこは信じられる。
あとは何をどう話すか、だがアーロンが斜め上な以上、こればかりは出たとこ勝負だ。
取り合えず僕は整理してあったノベルゲー後半のフローチャートを再確認した。
ブラッドが父親にシャノンの悪行を吹き込む、というエピソードも父親とシャノンについて話し合うという趣旨で再現されている。
その父親のぺちゃんこ回避エピを挟んで前後に頻発する、コンラッドとロイド、ブラッド各自との、コンラッドと対峙して煽ったり励ましたり、シャノンをどうするか話し合ったり、…というエピソード類もコンラッドの話しぶりからして着々と消化は進んでいるようだ。
それによく考えたら、シャノンに罵倒されるというエピも、僕は無意識のうちに消化していた。
となると、残る大きなイベントは文化祭、成人パーティー、アーロンの神子認定、そしてプロムの断罪。そしてこの辺りからチーム、チャッカmanによる、断罪に付いて話し合いを重ねるエピソードが登場し始める。
ついでに断罪前には、プロムに向けて、コンラッドと王様王妃様とが話し合うエピソードがある。ほら、シャノンに見せられたキャプチャーでコンラッドが王妃様を責め立ててたやつね。ゲーム上ではさらっとだったが。
因みにノベルゲーで王様が登場したのはこのシーンが初めてみたいなものだ。存在は感じるが登場しない。それが現実のここでも見事に再現されている。まあ…この夏の不在は僕の計略だけど…
つまり形はどうあれ、基本はゲームの強制力によってノベルゲーのシナリオをざっくり踏襲しているのがこの世界だ。
その中でコンラッドがアーロンと別れる…これは実質シナリオの放棄を意味する。前世で言ったら「致命的な欠陥が見つかったので…」と、回収騒ぎになるところだ。
ノベルゲーの主人公相手であるコンラッドがシナリオを降りたらこの世界はどうなるか…想像もつかない。それ以前に僕の断罪はどうなる!?
「それが最大の問題でしょうが!」
だからこそゲームのエンドロールまでは、何が何でもエピソードだけは完遂しなければならない。例えどれほどこじつけでも!どうせここまでだってほとんどこじつけなんだし。この際なんでもいい!
ひとつ、文化祭において、僕はアーロンの衣装を汚さなければならない。うん、まあこれくらいは楽勝。
ひとつ、成人パーティーにおいて、僕はアーロンのルビーを取り換えなくてはならない…って、あー!!!ルビーもう無い!売っちゃったよ!……いや待て。ここで大事なのは今までのパターンから言って、ルビーを取り換えるという部分であって、何と取り替えようが多分関係ない。オッケー、ここも問題ない。
そして神子認定。ここは楽勝だ。僕が『神託』になっている以上、この件に関してはどうとでもなる。僕の独断でアーロンを名前だけの神子にして、僻地の神殿か教会で思う存分神に祈りを捧げてもらうのも一つの手だ。
そもそも誰が神子で、どんな国難からどう世界を救うかなんて、王様も含めどうせ誰も知らないのだ。実際、本物の神子は既に国難から世界を救って、今は傍観者を決めこんでいるんだし。
ならどっかで邪気でも発生したことにして、祈りで祓ったことにしておくとか……ハイ、採用!
ラスト、ここが最難関、断罪である。『神託』である僕がどうやって断罪されるか…かなり無理ゲーな気もするが、『神託』だからこそ、「実は『神託』とかウソでしたー。てへ☆」とか言ったらワンチャン断罪されないだろうか…?され…る気がする!
「あれ…?これ…イケる…?」
あとチャッカmanたちのあれやこれやは、ほかっておいても消化されていることが分かって来たし…。
「出来ちゃったよ…。断罪までのウィニングロード…」
そうして安堵の中、文化祭への展示論文に頭を悩ませながら幾日か過ごし、ついに迎えたアーロンが懺悔室へお務めする日。
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