105 / 308
66 断罪までに二手三手
しおりを挟む
馬車を降りたらそこは…夏の花咲きほこる僕の楽園、爆買い天国、その名も下町だ!
だけど今日の僕は爆買い封印。うん。大人しく…しおらしく…、お上品なところをお見せしなくては。
「治療院へ行く前に広場の屋台で白いスープをご馳走しますね。すごく美味しいんですよ」
「シャノン様は下町のスープを召し上がるのですか?」
「美味しいものは何だって」
「あれは貴族街の食材とかなり違うのではありませんか?」
「食材に違いなんてありますか?食べられるっていうことがもう幸せだな…って僕は思うので」
闘病後期は点滴が食事だった僕は、食材にランク付けするなど傲慢だと思っている。口からものを食べられるって事が、どれほど貴重でありがたいことか。
「そうですね。食べられるということは当たり前ではない。…シャノン様は素晴らしいお考えをお持ちですね」
「いやそんな…」テレテレ…
並んで歩く僕とジェローム、…と、カイルと護衛ABC。外から見たら黒の集団だ。なんか響きがカッコイイ…
未来の旦那様、それとイケメン黒髪ハーレムに囲まれ今の僕は過去最高に気分がいい。カイル?カイルはペット枠で。
「ふふ、本当に黒髪がお好きなのですね」
「その、黒髪への愛が細胞レベルで組み込まれていると言いますか…、そうだ。シェイナもエンブリー男爵の髪を気に入ったみたいですね」
「彼女はあれからご機嫌いかがでしょうか」
「絶好調です。あの、シェイナは男爵が大好きみたいです。なのでどうか滞在中、一日も多くシェイナに会いに来て下さいね」
と言っておけば、堂々と会える、ってね、えへ☆
「これはなんと光栄な」
「じゃあ明日うちから馬車を出しますね」
「いえいえそのようなお気遣いは無用です。歩いてまいりますので」
「歩いて明日来るんですね?」
「ええ」
よっしゃー!言質はとった!
それにしても…
さっきから入る店入る店で
「シャノン様、今日は「オトナガイ」しないんですかい?」
とは失礼な…。いや、事実っちゃ事実だけど。でも今日はそれ言っちゃダメー!ジェロームに金遣いの荒い悪妻と思われたらどうする。
「あの、ち、違うんです。爆買いはその、趣味、いえストレス解消というか…必要経費的な…」
「シャノン様は質実でいらっしゃるのですね。下町での買い物が趣味などと…貴族街で手にする宝石の一つにもならないでしょうに」
へっ?…そうなの?マジで?……あー、だから今まで誰も何にも言わなかったのかぁ…。あーなんか、…庶民でごめんね。あー、セレブ舐めてたわ。
すごいウハウハして大富豪気分だったのに…。どうりでちっともお財布がぺちゃんこにならないと思った。
「じゃあ今日もやっちゃっていいですか?これはもうすでにテンプレと言うかお約束なので」
「ええどうぞ」
「おじさん、その棚の織物ここからここまで全部!おばさん、籠の梨とプラム全部ください!あ、あっちの金物も全部!あー!それからそこの木工品も!」
フー…、カ・イ・カ・ン…
「シャノン様…、果物はともかくスコップや金たらいなどどうされるのです?」
「……男爵にお土産で。織物と金物、領で配って下さい」
カイルのツッコミが耳に痛い。
つい許可に浮かれて勢い余ってしまった…。まあどうせいつかは必要だし。下準備ってことで。
「これはこれは。お気遣いいただき感謝します」
「木工品は…」
「エンブリーは山なので」
「じゃ、これは僕が持っていきます」
カイル、何その目。
やることをやってスッキリしたところで(誤解しないように!)そろそろ散策も終わりだ。アシュリーとの待ち合わせはお昼をまわってすぐ。病院生活で常に待たされイライラし続けた僕は今世での遅刻を許さない。仕方がないのでそろそろ広場に戻り昼食をとることにする。
その途中で輪回しをして遊ぶ子供たちの姿が視界に入った。
「輪回しをして遊ばれたのはこの場所ですか」
「そ、そうです!」
覚えててくれた…ああ~ん感激!
「時間があったら一緒に出来たのに…」
あ、でも大人のジェロームはそんなのしないか…
「では次の機会に。ですが平民街と言ってもさすが王都。ここは下町だというのに花が溢れ…、とてもきれいな場所ですね」
「とんでもない。男爵、以前はそうでもなかったのですよ。ここをここまで整えられたのはシャノン様の功績です」
「そうなのですか?」
カ、カイル…、嬉しいけど恥ずかしいってば。
「え、えっと、花壇は親衛隊長がいつも花をくださるので。種が取れた時はここに持って来るんです。勿体ないし。町がキレイなのは治療院の勤労奉仕隊のおかげです。だから言うなればここは今から会うアシュリー、そして隊長とで作り上げた街といえます」
ガタガタガタ
「おい誰か!人が倒れたぞ!」
ビクッ!なんだろう騒々しい。川遊びの時みたいなのはさすがにもうごめんなんだけど。
人が倒れたと聞いてカイルがふいに言う。この辺りは以前より病に倒れる赤子や子供の数が減ったのだとか。
つまりあれだ。免疫の弱い子供や赤ちゃんは以前の不衛生な環境にもたなかったってことだよね。棚から牡丹餅。僕は未来をしょって立つ若い命をも救っていたようだ。
「おや?シャノン様、少年がこちらを見ていますよ」
「あ、いつものガキンt、ゴホン!ボクちゃん。何の用かな?」
こいつ…!毎回毎回…いいか!一言でも余計な事言ったら〆る!僕の悪行をばらすんじゃない!
「これ…やるよ」
「石鹸?あ、これたんぽぽ?」
「たんぽぽはここの花だ」
ちょっと拍子抜け。
石鹸を手渡すと走り去るガキンチョ。近所のおばちゃんが言うには、このたんぽぽの形をした石鹸は孤児院の収入源になっているらしい。なんでもアレイスターが孤児院で売る専売手続きをしたんだって。へー、知らなかったわー。
「アレイスターとは第二王子殿下のことですか?」
「ええまあ」
「立派な王子殿下だ」
「ですが石鹸の作り方をお教えになられたのはシャノン様ですよ」
ドヤ顔の従者。でも悪くない。何故ならジェロームが今日イチ良い顔を見せてくれたからだ。アフン…
気分がいいので、僕は護衛Aにさっきの木工品をガキンチョに届けるよう手渡そうとし…ん?
「『愛の神託』シャノン・プリチャード様。人々がそう呼ぶのも無理はありません」
ドサドサドサ、カラカラカラ~ン…ン…
「シャノン様⁉」
……ジェローム、何故それを知って…というか…、誰だ!そんなクソ恥ずかしい異名をバラしたのは!
だけど今日の僕は爆買い封印。うん。大人しく…しおらしく…、お上品なところをお見せしなくては。
「治療院へ行く前に広場の屋台で白いスープをご馳走しますね。すごく美味しいんですよ」
「シャノン様は下町のスープを召し上がるのですか?」
「美味しいものは何だって」
「あれは貴族街の食材とかなり違うのではありませんか?」
「食材に違いなんてありますか?食べられるっていうことがもう幸せだな…って僕は思うので」
闘病後期は点滴が食事だった僕は、食材にランク付けするなど傲慢だと思っている。口からものを食べられるって事が、どれほど貴重でありがたいことか。
「そうですね。食べられるということは当たり前ではない。…シャノン様は素晴らしいお考えをお持ちですね」
「いやそんな…」テレテレ…
並んで歩く僕とジェローム、…と、カイルと護衛ABC。外から見たら黒の集団だ。なんか響きがカッコイイ…
未来の旦那様、それとイケメン黒髪ハーレムに囲まれ今の僕は過去最高に気分がいい。カイル?カイルはペット枠で。
「ふふ、本当に黒髪がお好きなのですね」
「その、黒髪への愛が細胞レベルで組み込まれていると言いますか…、そうだ。シェイナもエンブリー男爵の髪を気に入ったみたいですね」
「彼女はあれからご機嫌いかがでしょうか」
「絶好調です。あの、シェイナは男爵が大好きみたいです。なのでどうか滞在中、一日も多くシェイナに会いに来て下さいね」
と言っておけば、堂々と会える、ってね、えへ☆
「これはなんと光栄な」
「じゃあ明日うちから馬車を出しますね」
「いえいえそのようなお気遣いは無用です。歩いてまいりますので」
「歩いて明日来るんですね?」
「ええ」
よっしゃー!言質はとった!
それにしても…
さっきから入る店入る店で
「シャノン様、今日は「オトナガイ」しないんですかい?」
とは失礼な…。いや、事実っちゃ事実だけど。でも今日はそれ言っちゃダメー!ジェロームに金遣いの荒い悪妻と思われたらどうする。
「あの、ち、違うんです。爆買いはその、趣味、いえストレス解消というか…必要経費的な…」
「シャノン様は質実でいらっしゃるのですね。下町での買い物が趣味などと…貴族街で手にする宝石の一つにもならないでしょうに」
へっ?…そうなの?マジで?……あー、だから今まで誰も何にも言わなかったのかぁ…。あーなんか、…庶民でごめんね。あー、セレブ舐めてたわ。
すごいウハウハして大富豪気分だったのに…。どうりでちっともお財布がぺちゃんこにならないと思った。
「じゃあ今日もやっちゃっていいですか?これはもうすでにテンプレと言うかお約束なので」
「ええどうぞ」
「おじさん、その棚の織物ここからここまで全部!おばさん、籠の梨とプラム全部ください!あ、あっちの金物も全部!あー!それからそこの木工品も!」
フー…、カ・イ・カ・ン…
「シャノン様…、果物はともかくスコップや金たらいなどどうされるのです?」
「……男爵にお土産で。織物と金物、領で配って下さい」
カイルのツッコミが耳に痛い。
つい許可に浮かれて勢い余ってしまった…。まあどうせいつかは必要だし。下準備ってことで。
「これはこれは。お気遣いいただき感謝します」
「木工品は…」
「エンブリーは山なので」
「じゃ、これは僕が持っていきます」
カイル、何その目。
やることをやってスッキリしたところで(誤解しないように!)そろそろ散策も終わりだ。アシュリーとの待ち合わせはお昼をまわってすぐ。病院生活で常に待たされイライラし続けた僕は今世での遅刻を許さない。仕方がないのでそろそろ広場に戻り昼食をとることにする。
その途中で輪回しをして遊ぶ子供たちの姿が視界に入った。
「輪回しをして遊ばれたのはこの場所ですか」
「そ、そうです!」
覚えててくれた…ああ~ん感激!
「時間があったら一緒に出来たのに…」
あ、でも大人のジェロームはそんなのしないか…
「では次の機会に。ですが平民街と言ってもさすが王都。ここは下町だというのに花が溢れ…、とてもきれいな場所ですね」
「とんでもない。男爵、以前はそうでもなかったのですよ。ここをここまで整えられたのはシャノン様の功績です」
「そうなのですか?」
カ、カイル…、嬉しいけど恥ずかしいってば。
「え、えっと、花壇は親衛隊長がいつも花をくださるので。種が取れた時はここに持って来るんです。勿体ないし。町がキレイなのは治療院の勤労奉仕隊のおかげです。だから言うなればここは今から会うアシュリー、そして隊長とで作り上げた街といえます」
ガタガタガタ
「おい誰か!人が倒れたぞ!」
ビクッ!なんだろう騒々しい。川遊びの時みたいなのはさすがにもうごめんなんだけど。
人が倒れたと聞いてカイルがふいに言う。この辺りは以前より病に倒れる赤子や子供の数が減ったのだとか。
つまりあれだ。免疫の弱い子供や赤ちゃんは以前の不衛生な環境にもたなかったってことだよね。棚から牡丹餅。僕は未来をしょって立つ若い命をも救っていたようだ。
「おや?シャノン様、少年がこちらを見ていますよ」
「あ、いつものガキンt、ゴホン!ボクちゃん。何の用かな?」
こいつ…!毎回毎回…いいか!一言でも余計な事言ったら〆る!僕の悪行をばらすんじゃない!
「これ…やるよ」
「石鹸?あ、これたんぽぽ?」
「たんぽぽはここの花だ」
ちょっと拍子抜け。
石鹸を手渡すと走り去るガキンチョ。近所のおばちゃんが言うには、このたんぽぽの形をした石鹸は孤児院の収入源になっているらしい。なんでもアレイスターが孤児院で売る専売手続きをしたんだって。へー、知らなかったわー。
「アレイスターとは第二王子殿下のことですか?」
「ええまあ」
「立派な王子殿下だ」
「ですが石鹸の作り方をお教えになられたのはシャノン様ですよ」
ドヤ顔の従者。でも悪くない。何故ならジェロームが今日イチ良い顔を見せてくれたからだ。アフン…
気分がいいので、僕は護衛Aにさっきの木工品をガキンチョに届けるよう手渡そうとし…ん?
「『愛の神託』シャノン・プリチャード様。人々がそう呼ぶのも無理はありません」
ドサドサドサ、カラカラカラ~ン…ン…
「シャノン様⁉」
……ジェローム、何故それを知って…というか…、誰だ!そんなクソ恥ずかしい異名をバラしたのは!
3,519
お気に入りに追加
5,794
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる