断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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66 断罪までに二手三手

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馬車を降りたらそこは…夏の花咲きほこる僕の楽園、爆買い天国、その名も下町だ!
だけど今日の僕は爆買い封印。うん。大人しく…しおらしく…、お上品なところをお見せしなくては。

「治療院へ行く前に広場の屋台で白いスープをご馳走しますね。すごく美味しいんですよ」
「シャノン様は下町のスープを召し上がるのですか?」

「美味しいものは何だって」
「あれは貴族街の食材とかなり違うのではありませんか?」

「食材に違いなんてありますか?っていうことがもう幸せだな…って僕は思うので」

闘病後期は点滴が食事だった僕は、食材にランク付けするなど傲慢だと思っている。口からものを食べられるって事が、どれほど貴重でありがたいことか。

「そうですね。食べられるということは当たり前ではない。…シャノン様は素晴らしいお考えをお持ちですね」

「いやそんな…」テレテレ…

並んで歩く僕とジェローム、…と、カイルと護衛ABC。外から見たら黒の集団だ。なんか響きがカッコイイ…
未来の旦那様、それとイケメン黒髪ハーレムに囲まれ今の僕は過去最高に気分がいい。カイル?カイルはペット枠で。

「ふふ、本当に黒髪がお好きなのですね」
「その、黒髪への愛が細胞レベルで組み込まれていると言いますか…、そうだ。シェイナもエンブリー男爵の髪を気に入ったみたいですね」
「彼女はあれからご機嫌いかがでしょうか」

「絶好調です。あの、シェイナは男爵が大好きみたいです。なのでどうか滞在中、一日も多くシェイナに会いに来て下さいね」

と言っておけば、堂々と会える、ってね、えへ☆

「これはなんと光栄な」
「じゃあうちから馬車を出しますね」
「いえいえそのようなお気遣いは無用です。歩いてまいりますので」

「歩いてんですね?」
「ええ」

よっしゃー!言質はとった!

それにしても…
さっきから入る店入る店で
「シャノン様、今日は「オトナガイ」しないんですかい?」
とは失礼な…。いや、事実っちゃ事実だけど。でも今日はそれ言っちゃダメー!ジェロームに金遣いの荒い悪妻と思われたらどうする。

「あの、ち、違うんです。爆買いはその、趣味、いえストレス解消というか…必要経費的な…」

「シャノン様は質実でいらっしゃるのですね。下町での買い物が趣味などと…貴族街で手にする宝石の一つにもならないでしょうに」

へっ?…そうなの?マジで?……あー、だから今まで誰も何にも言わなかったのかぁ…。あーなんか、…庶民でごめんね。あー、セレブ舐めてたわ。
すごいウハウハして大富豪気分だったのに…。どうりでちっともお財布がぺちゃんこにならないと思った。

「じゃあ今日もやっちゃっていいですか?これはもうすでにテンプレと言うかお約束なので」
「ええどうぞ」

「おじさん、その棚の織物ここからここまで全部!おばさん、籠の梨とプラム全部ください!あ、あっちの金物も全部!あー!それからそこの木工品も!」

フー…、カ・イ・カ・ン…

「シャノン様…、果物はともかくスコップや金たらいなどどうされるのです?」
「……男爵にお土産で。織物と金物、領で配って下さい」

カイルのツッコミが耳に痛い。
つい許可に浮かれて勢い余ってしまった…。まあどうせいつかは必要だし。下準備ってことで。

「これはこれは。お気遣いいただき感謝します」

「木工品は…」
「エンブリーは山なので」

「じゃ、これは僕が持っていきます」

カイル、何その目。
やることをやってスッキリしたところで(誤解しないように!)そろそろ散策も終わりだ。アシュリーとの待ち合わせはお昼をまわってすぐ。病院生活で常に待たされイライラし続けた僕は今世での遅刻を許さない。仕方がないのでそろそろ広場に戻り昼食をとることにする。
その途中で輪回しをして遊ぶ子供たちの姿が視界に入った。

「輪回しをして遊ばれたのはこの場所ですか」
「そ、そうです!」

覚えててくれた…ああ~ん感激!

「時間があったら一緒に出来たのに…」

あ、でも大人のジェロームはそんなのしないか…

「では次の機会に。ですが平民街と言ってもさすが王都。ここは下町だというのに花が溢れ…、とてもきれいな場所ですね」

「とんでもない。男爵、以前はそうでもなかったのですよ。ここをここまで整えられたのはシャノン様の功績です」
「そうなのですか?」

カ、カイル…、嬉しいけど恥ずかしいってば。

「え、えっと、花壇は親衛隊長がいつも花をくださるので。種が取れた時はここに持って来るんです。勿体ないし。町がキレイなのは治療院の勤労奉仕隊のおかげです。だから言うなればここは今から会うアシュリー、そして隊長とで作り上げた街といえます」

ガタガタガタ
「おい誰か!人が倒れたぞ!」

ビクッ!なんだろう騒々しい。川遊びの時みたいなのはさすがにもうごめんなんだけど。

人が倒れたと聞いてカイルがふいに言う。この辺りは以前より病に倒れる赤子や子供の数が減ったのだとか。
つまりあれだ。免疫の弱い子供や赤ちゃんは以前の不衛生な環境にもたなかったってことだよね。棚から牡丹餅。僕は未来をしょって立つ若い命をも救っていたようだ。

「おや?シャノン様、少年がこちらを見ていますよ」
「あ、いつものガキンt、ゴホン!ボクちゃん。何の用かな?」

こいつ…!毎回毎回…いいか!一言でも余計な事言ったら〆る!僕の悪行をばらすんじゃない!

「これ…やるよ」
「石鹸?あ、これたんぽぽ?」
「たんぽぽはここの花だ」

ちょっと拍子抜け。
石鹸を手渡すと走り去るガキンチョ。近所のおばちゃんが言うには、このたんぽぽの形をした石鹸は孤児院の収入源になっているらしい。なんでもアレイスターが孤児院で売る専売手続きをしたんだって。へー、知らなかったわー。

「アレイスターとは第二王子殿下のことですか?」
「ええまあ」
「立派な王子殿下だ」

「ですが石鹸の作り方をお教えになられたのはシャノン様ですよ」

ドヤ顔の従者。でも悪くない。何故ならジェロームが今日イチ良い顔を見せてくれたからだ。アフン…
気分がいいので、僕は護衛Aにさっきの木工品をガキンチョに届けるよう手渡そうとし…ん?

「『愛の神託』シャノン・プリチャード様。人々がそう呼ぶのも無理はありません」

ドサドサドサ、カラカラカラ~ン…ン…

「シャノン様⁉」

……ジェローム、何故それを知って…というか…、誰だ!そんなクソ恥ずかしい異名をバラしたのは!






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