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64 断罪前に地固め
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お慰めというならすでにそれは、ジェロームの存在によってマックス慰められている。
おまけに手にしたキャンドルは、僕の熱量ですぐにでもスライム状になりそうだ。
「良い贈り物だと思いますわ。エンブリー男爵は見栄や虚飾にとらわれないお方ですのね」
「そんなことはありません。私にも見栄はあります。特に大切な人の前では…少しでも良い所を見せたいと思ってしまうものですよミーガン嬢。男などそんなものです。リアム様、アリソン様そうは思いませんか?」
「ええ全く」
「おっしゃる通り」
和やかにすすむ談笑に僕だけが入っていけない。何故なら…コンラッドの前で爆撃砲のようになるこの口が、さっきからちっとも上手く機能しないからだ。
「ところで男爵、滞在は如何ほど?お泊りはどちらのお屋敷に?」
アリソン君いいぞ!その質問は今まさに僕が聞きたかったことだ。
ここで説明しておこう。この世界の貴族において、旅行中の滞在先とは主に社交界の友人知人宅を指す。宿屋に泊まるのは一般庶民だけだ。何故なら、クオリティにうるさく供の多いお貴族さまご一行を満足させられる、ゴージャスなシティホテルなどまだまだ先の話だからだ。
「滞在は2週間ほどを考えております。実は…田舎者で学院にすら通っていない私は社交界に知り合いが無く…幸い一人で参りましたので宿をとるつもりです」
「そうでしたか、では良ければ当家に滞在されてはいかがでしょう。私の父は船便を含めた河川事業の管理を担っております。東の様子などもお話しいただければ父も助かるでしょう」
「 ‼ 」
スティーーール!
「いいえっ!!!ジェ、エンブリー男爵にはここにお泊りいただきます!」
「なんとお優しいことを…。ですがこうしてお話しできただけでも私は十分満足しております。ありがたいお申し出ですが私ごときを泊めては外聞がよろしくないでしょう」
んあー!!!謙虚が過ぎるぅ!!!だがそこがいい!
「だ、ダメですダメです。エンブリー男爵は命の恩人だし、そんな、ねぇニコールさん?」
「旦那様もブラッドも不在ですし…、第一王子殿下の婚約者であるシャノン様しか居ない屋敷にお泊めするのは憚られます。ここはクーパー伯のご子息にお任せしてはいかがでしょう?」
ああー!!!王妃様なら「そうねぇ」って言ってくれるのにぃー!!!憎い!婚約者の名称が、憎くてたまらないー!
んがー!《田舎の男爵エンド》必須!
ゲームの強制力がある以上、僕の幸せは断罪の向こう側にしかないことを今再確認した!
「じ、じゃあせめて夕食は一緒に…」
「そうですわね。ではシェフにそう申し伝えましょう。クーパー伯のご子息も、どうぞご一緒に」
「ではそうさせていただきます」
しばらく歓談したのち、ミーガン嬢とリアム君は二人仲良く帰っていった。仲良きことは良いことだ。
さて、残るはアリソン君だが、飄々としたタイプのアリソン君はジェロームと話が弾むようだ。ちょっとジェラシー…
本当はジェロームとあんなことやこんなことの話をいっぱいしたいんだけど…、人前じゃさすがに人目も耳も気になる。
そこで僕は二日後の約束を取り付けることにした。
そう、謙虚な彼は、話の流れでクーパー家への滞在が決まってからもどこか落ち着かないでいたのだ。なので、「それなら子爵位であるアシュリーに紹介しようか?」というと、あからさまにホッと息を吐いたのだ。
分かるよジェローム。すごく分かる。そんなところも僕たちってピッタリ。価値観の共有って大事だよね。
とまあそんな名目であえての治療院まで一緒に下町をブラブラすることにしたのだ。
二日後なのは、アリソン父がジェロームと話をしたがるだろうから、と言われたから。
アシュリーは僕が認めた善良なメガネだ。きっとジェロームの王都における良い友人となるだろう。
それからここ大事。
さすがに下町、それも元スキッド地区とあっては、いくらあそこが今はキレイになったと言っても、高位貴族の子女たちである彼らはついてこない。つ・ま・り、二人きり…。え?カイル?ノーカンで。
おまけに手にしたキャンドルは、僕の熱量ですぐにでもスライム状になりそうだ。
「良い贈り物だと思いますわ。エンブリー男爵は見栄や虚飾にとらわれないお方ですのね」
「そんなことはありません。私にも見栄はあります。特に大切な人の前では…少しでも良い所を見せたいと思ってしまうものですよミーガン嬢。男などそんなものです。リアム様、アリソン様そうは思いませんか?」
「ええ全く」
「おっしゃる通り」
和やかにすすむ談笑に僕だけが入っていけない。何故なら…コンラッドの前で爆撃砲のようになるこの口が、さっきからちっとも上手く機能しないからだ。
「ところで男爵、滞在は如何ほど?お泊りはどちらのお屋敷に?」
アリソン君いいぞ!その質問は今まさに僕が聞きたかったことだ。
ここで説明しておこう。この世界の貴族において、旅行中の滞在先とは主に社交界の友人知人宅を指す。宿屋に泊まるのは一般庶民だけだ。何故なら、クオリティにうるさく供の多いお貴族さまご一行を満足させられる、ゴージャスなシティホテルなどまだまだ先の話だからだ。
「滞在は2週間ほどを考えております。実は…田舎者で学院にすら通っていない私は社交界に知り合いが無く…幸い一人で参りましたので宿をとるつもりです」
「そうでしたか、では良ければ当家に滞在されてはいかがでしょう。私の父は船便を含めた河川事業の管理を担っております。東の様子などもお話しいただければ父も助かるでしょう」
「 ‼ 」
スティーーール!
「いいえっ!!!ジェ、エンブリー男爵にはここにお泊りいただきます!」
「なんとお優しいことを…。ですがこうしてお話しできただけでも私は十分満足しております。ありがたいお申し出ですが私ごときを泊めては外聞がよろしくないでしょう」
んあー!!!謙虚が過ぎるぅ!!!だがそこがいい!
「だ、ダメですダメです。エンブリー男爵は命の恩人だし、そんな、ねぇニコールさん?」
「旦那様もブラッドも不在ですし…、第一王子殿下の婚約者であるシャノン様しか居ない屋敷にお泊めするのは憚られます。ここはクーパー伯のご子息にお任せしてはいかがでしょう?」
ああー!!!王妃様なら「そうねぇ」って言ってくれるのにぃー!!!憎い!婚約者の名称が、憎くてたまらないー!
んがー!《田舎の男爵エンド》必須!
ゲームの強制力がある以上、僕の幸せは断罪の向こう側にしかないことを今再確認した!
「じ、じゃあせめて夕食は一緒に…」
「そうですわね。ではシェフにそう申し伝えましょう。クーパー伯のご子息も、どうぞご一緒に」
「ではそうさせていただきます」
しばらく歓談したのち、ミーガン嬢とリアム君は二人仲良く帰っていった。仲良きことは良いことだ。
さて、残るはアリソン君だが、飄々としたタイプのアリソン君はジェロームと話が弾むようだ。ちょっとジェラシー…
本当はジェロームとあんなことやこんなことの話をいっぱいしたいんだけど…、人前じゃさすがに人目も耳も気になる。
そこで僕は二日後の約束を取り付けることにした。
そう、謙虚な彼は、話の流れでクーパー家への滞在が決まってからもどこか落ち着かないでいたのだ。なので、「それなら子爵位であるアシュリーに紹介しようか?」というと、あからさまにホッと息を吐いたのだ。
分かるよジェローム。すごく分かる。そんなところも僕たちってピッタリ。価値観の共有って大事だよね。
とまあそんな名目であえての治療院まで一緒に下町をブラブラすることにしたのだ。
二日後なのは、アリソン父がジェロームと話をしたがるだろうから、と言われたから。
アシュリーは僕が認めた善良なメガネだ。きっとジェロームの王都における良い友人となるだろう。
それからここ大事。
さすがに下町、それも元スキッド地区とあっては、いくらあそこが今はキレイになったと言っても、高位貴族の子女たちである彼らはついてこない。つ・ま・り、二人きり…。え?カイル?ノーカンで。
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