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60 断罪の小休止
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「おかえりなさいミーガン様、リアム様。もう!二人が居ない間色々と大変だったんですよ!]
「シャノン様が公けに『神託』となられた件ですね」
「え…リアム様もう知ってるんですか?」
「父も大層喜んでおりましたよ」
カサンドラ様ファンのあの伯爵ならそうだろう。
領地よりもどったミーガン嬢とリアム君は、約束通り早速遊びに来ていた。
さすがの僕も、毎日毎日双子の相手をして「いい子でちゅね~」「良くできまちた~」とか言ってたら言語感覚がバグりそうだ。
すっかり『神託』扱いになった僕だが、それでもなんとなくその状況に慣れ始めていた。順応性の高さは僕最大の長所である。だって考えたところでどうせなるようにしかならないんだし。周りが何か言っているだけで、基本僕の生活に変化はない。僕はやりたいようにやる。
面倒なのは、王宮に行くたび官吏たちにゴチャゴチャ言われることだ。
アーロン派は僕とアーロンの仲を知っているだけに慌てふためいている。これはアレイスターが教えてくれたように、主に議員貴族が中心となっている。もちろんあのフレッチャー侯爵がその筆頭だ。
見栄で出来ているのが貴族たちだ。今さらアーロンが神子じゃないとか…、こんな体裁の悪いことはないのだろう。
「ここではっきり断然せよ!」と、出仕のたびに押しかけてくる。
そしてアーロンじゃない派は、これはこれで厄介だったりする。何故ならあの手この手で自分の推しを布教に来るからだ。
だが僕はイケメンならまだしも、ただの神子候補など布教されたところで迷惑以外のなにものでもない。
そんなわけで、僕は夏休みも後半戦に入ったというのに引きこもっていた。いや、いつもっちゃいつもだが、これでも川とか湖とか、少しは夏らしいことしたいな~、って思っていたのだ。
その意を汲んで川に誘ってくれたのはアリソン君だ。
彼のお父さんはなんと川の管理を受け持っている。これはまたとないチャンス。僕は船便の環境改善を訴えるつもりである。主に衛生面で。匂いとか。
「シャノン様はセントローム川に行ったことはお有りですか?」
「ううん初めて。だからすごく楽しみ」
「あそこは平民街を隔てる運河と違ってとても大きいのですよ。王都と辺境を東西で繋げる大きな流通の要と言えます」
「知ってます。いつも船便使うから」
「船便を?東にお知り合いが?」
「ええまあ…」
将来の旦那様候補がいるとは口が裂けても言えないけどね。
ともかく、川沿いは遊歩道があり植樹され外観も整えられているのだとか。出店も並び、王都第二の商業地区だというからとても楽しみだ。
僕のフラットな胸は二日後の日帰り旅行に向け、期待で大きく膨らんでいた。
そして当日…
「わぁ!思ったよりも広い!」
「ふふ、船が行き来する川ですもの」
「でも客船はないんだよね…?」
「それほど大きな船がまだございませんわ」
荷物を載せた中型船が二隻行きかうのが精いっぱいの川。海と違って沖や大波がない分安心だけど…豪華客船を浮かべるには少し足りない川。
「でもほら、小さな船に人がのってますよ」
「舟遊び用の手漕ぎ船ですね」
「乗ってみたい…」
「シャノン様それは…」
すかさず入るカイルの声。高貴な僕には危険な遊びは許されない…。と思うじゃん?
忘れてはいけない。しばらく大人しくしていたが…僕はシャノン!高飛車な男である!
「誰がなんと言おうが船に乗ります!カイル!あそこの船を貸し切ってくるように」
「…かしこまりました」
これだよこれ。
「シャノン様が公けに『神託』となられた件ですね」
「え…リアム様もう知ってるんですか?」
「父も大層喜んでおりましたよ」
カサンドラ様ファンのあの伯爵ならそうだろう。
領地よりもどったミーガン嬢とリアム君は、約束通り早速遊びに来ていた。
さすがの僕も、毎日毎日双子の相手をして「いい子でちゅね~」「良くできまちた~」とか言ってたら言語感覚がバグりそうだ。
すっかり『神託』扱いになった僕だが、それでもなんとなくその状況に慣れ始めていた。順応性の高さは僕最大の長所である。だって考えたところでどうせなるようにしかならないんだし。周りが何か言っているだけで、基本僕の生活に変化はない。僕はやりたいようにやる。
面倒なのは、王宮に行くたび官吏たちにゴチャゴチャ言われることだ。
アーロン派は僕とアーロンの仲を知っているだけに慌てふためいている。これはアレイスターが教えてくれたように、主に議員貴族が中心となっている。もちろんあのフレッチャー侯爵がその筆頭だ。
見栄で出来ているのが貴族たちだ。今さらアーロンが神子じゃないとか…、こんな体裁の悪いことはないのだろう。
「ここではっきり断然せよ!」と、出仕のたびに押しかけてくる。
そしてアーロンじゃない派は、これはこれで厄介だったりする。何故ならあの手この手で自分の推しを布教に来るからだ。
だが僕はイケメンならまだしも、ただの神子候補など布教されたところで迷惑以外のなにものでもない。
そんなわけで、僕は夏休みも後半戦に入ったというのに引きこもっていた。いや、いつもっちゃいつもだが、これでも川とか湖とか、少しは夏らしいことしたいな~、って思っていたのだ。
その意を汲んで川に誘ってくれたのはアリソン君だ。
彼のお父さんはなんと川の管理を受け持っている。これはまたとないチャンス。僕は船便の環境改善を訴えるつもりである。主に衛生面で。匂いとか。
「シャノン様はセントローム川に行ったことはお有りですか?」
「ううん初めて。だからすごく楽しみ」
「あそこは平民街を隔てる運河と違ってとても大きいのですよ。王都と辺境を東西で繋げる大きな流通の要と言えます」
「知ってます。いつも船便使うから」
「船便を?東にお知り合いが?」
「ええまあ…」
将来の旦那様候補がいるとは口が裂けても言えないけどね。
ともかく、川沿いは遊歩道があり植樹され外観も整えられているのだとか。出店も並び、王都第二の商業地区だというからとても楽しみだ。
僕のフラットな胸は二日後の日帰り旅行に向け、期待で大きく膨らんでいた。
そして当日…
「わぁ!思ったよりも広い!」
「ふふ、船が行き来する川ですもの」
「でも客船はないんだよね…?」
「それほど大きな船がまだございませんわ」
荷物を載せた中型船が二隻行きかうのが精いっぱいの川。海と違って沖や大波がない分安心だけど…豪華客船を浮かべるには少し足りない川。
「でもほら、小さな船に人がのってますよ」
「舟遊び用の手漕ぎ船ですね」
「乗ってみたい…」
「シャノン様それは…」
すかさず入るカイルの声。高貴な僕には危険な遊びは許されない…。と思うじゃん?
忘れてはいけない。しばらく大人しくしていたが…僕はシャノン!高飛車な男である!
「誰がなんと言おうが船に乗ります!カイル!あそこの船を貸し切ってくるように」
「…かしこまりました」
これだよこれ。
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