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ロイド
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あの茶会が一つの転機になり、力を合わせシャノン様をお守りする事になった私たちは、あれ以来様々な情報を共有していた。そして…自分でも信じられない事だが、アレイスター殿下とも独自の接触を図っている。
コンラッドを裏切りたいわけではない。だが…、彼を救うためにも、これは必要な事だと信じている。
「アーロンを『禊』へと追いやったのは、上手くやったじゃないか」
「カマ神にあれ程傾倒しているんだ。東南への寄付だったか…。あれも密教の村へ渡りをつけるためだろう。ならば南の地、と言えば行きたがると思ったのだ」
「おかげでしばしの間だがコンラッドを引き離す事が出来た。僕は直に領地へ行く。アーロンが戻った後のことは…任せたよ」
「ああわかった」
プリチャード侯爵、そしてシャノン様から伯爵位をもって信頼を受け取ったブラッドにもう迷いはない。
だからこそ、私が陰で動かなくては。オレンジの薔薇にかけて!
「ロイド。兄さんからこれを預かってきた」
「な、なんだって!は、早くこちらに」
「やれやれ。ほら手紙だ。学院が休みの間は『お花の人』と連絡が取れないから渡してくれと」
「う、嘘だろう…、いや嘘じゃない」スンスン…「シャノン様の香り…」
「ロイド…、言いたくはないが、君はアーロンを慕っている頃それほどおかしかったかい?」
「おかしいか?」
「少しね」
「仕方ないだろう。私は究極の愛を見つけたのだから」
シャノン様は愚鈍な私たちにどれほどひどい仕打ちを受けても、決して私やブラッドを見捨てなかった。その想いに応えるためにも…私はシャノン様にどこまでも付いて行くと決めたのだ。
「想いの成就が無くてもかい?」
「必要ない。彼がそこに居て笑ってさえ居てくれるなら…、隣に立つのがコンラッドでもアレイスター殿下でも構わない」
「ロイド…」
シャノン様の幸せが私の幸せ。そう思わせてくれる彼を愛せたことが誇らしい。陰から見つめられればそれだけで良いと思っていたのに…、こうして彼は、折につけ私に気持ちを返して下さる。
オレンジの薔薇…その意味するところは信頼、あの日頂いた手製のハンカチは私の家宝だ。私は彼の信頼を裏切らない。
それにここだけの話だが…、シャノン様の刺したオレンジの薔薇は、ところどころうっすらと血が滲んで…まるで私の髪色のような、ブラウンが混じっているのだ。これはもしかして初めから私のために…、あー!馬鹿な事を言うな!シャノン様は『お花の人』が私だとは知らないというのに!
「…百面相していないでさっさと読んだらどうだ」
「すまない。感激のあまり取り乱した。何々…?」
ーーお花の人へ。どうしても相談したいことがあります。手紙では面倒なので会って話したいです。でもブラッドに会っちゃダメって言われました。僕は顔に出るからダメだって。ブラッドは僕を見縊っていると思います。ブラッドの方が顔に出ます。昨日もなんだかしょげていましたが、多分お母さんに叱られたんだと思います。ーー
「ふっ、くく…」
「いいから先を読め!」
ーーですがブラッドとの約束を破り、信頼関係にヒビを入れたくはありません。ーー
「兄さん…」
ーーそこでこうしましょう。お花の人は貴族街のカフェを知っていますね?いつも差し入れて下さるジンジャークッキーを売っているカフェです。そこの一番奥の席に、壁に向かって座って下さい。僕はお花の人の背後に背と背を合わせて座ります。合言葉は僕が「攻め」と言ったら「受け」と答えて下さい。ーー
「攻めの反対は守りじゃないのか?」
「さあ?」
「まあいい」
ーー僕は顔を見たりしません。約束します。日にちはブラッドが出発する日です。僕は貴族街の正門まで見送りに出るのでその帰りに。お話しできるのを楽しみにしています。シャノンーー
「そうきたか…。やれやれ、仕方のない人だ。そう思わないかロイ、ド…」
ふ、ふふ、二人きりでカフェ!
「ああ神子様!私はどれほどの徳を積んだというのでしょうか…感謝します…!」
「ロイド!その件だが先走るなよ。兄さんの指示だ」
「先走る?それはブラッド、君じゃないか」
「……」
プリチャード侯の身を先見により護ったというシャノン様。…あの方が神子…。何故それに気付かなかったのか。そうだ。本物の神子は自分を神の使いなどとは言わないものだ。
二人きりの逢瀬まであと数日。それまで眠れるだろうか…
コンラッドを裏切りたいわけではない。だが…、彼を救うためにも、これは必要な事だと信じている。
「アーロンを『禊』へと追いやったのは、上手くやったじゃないか」
「カマ神にあれ程傾倒しているんだ。東南への寄付だったか…。あれも密教の村へ渡りをつけるためだろう。ならば南の地、と言えば行きたがると思ったのだ」
「おかげでしばしの間だがコンラッドを引き離す事が出来た。僕は直に領地へ行く。アーロンが戻った後のことは…任せたよ」
「ああわかった」
プリチャード侯爵、そしてシャノン様から伯爵位をもって信頼を受け取ったブラッドにもう迷いはない。
だからこそ、私が陰で動かなくては。オレンジの薔薇にかけて!
「ロイド。兄さんからこれを預かってきた」
「な、なんだって!は、早くこちらに」
「やれやれ。ほら手紙だ。学院が休みの間は『お花の人』と連絡が取れないから渡してくれと」
「う、嘘だろう…、いや嘘じゃない」スンスン…「シャノン様の香り…」
「ロイド…、言いたくはないが、君はアーロンを慕っている頃それほどおかしかったかい?」
「おかしいか?」
「少しね」
「仕方ないだろう。私は究極の愛を見つけたのだから」
シャノン様は愚鈍な私たちにどれほどひどい仕打ちを受けても、決して私やブラッドを見捨てなかった。その想いに応えるためにも…私はシャノン様にどこまでも付いて行くと決めたのだ。
「想いの成就が無くてもかい?」
「必要ない。彼がそこに居て笑ってさえ居てくれるなら…、隣に立つのがコンラッドでもアレイスター殿下でも構わない」
「ロイド…」
シャノン様の幸せが私の幸せ。そう思わせてくれる彼を愛せたことが誇らしい。陰から見つめられればそれだけで良いと思っていたのに…、こうして彼は、折につけ私に気持ちを返して下さる。
オレンジの薔薇…その意味するところは信頼、あの日頂いた手製のハンカチは私の家宝だ。私は彼の信頼を裏切らない。
それにここだけの話だが…、シャノン様の刺したオレンジの薔薇は、ところどころうっすらと血が滲んで…まるで私の髪色のような、ブラウンが混じっているのだ。これはもしかして初めから私のために…、あー!馬鹿な事を言うな!シャノン様は『お花の人』が私だとは知らないというのに!
「…百面相していないでさっさと読んだらどうだ」
「すまない。感激のあまり取り乱した。何々…?」
ーーお花の人へ。どうしても相談したいことがあります。手紙では面倒なので会って話したいです。でもブラッドに会っちゃダメって言われました。僕は顔に出るからダメだって。ブラッドは僕を見縊っていると思います。ブラッドの方が顔に出ます。昨日もなんだかしょげていましたが、多分お母さんに叱られたんだと思います。ーー
「ふっ、くく…」
「いいから先を読め!」
ーーですがブラッドとの約束を破り、信頼関係にヒビを入れたくはありません。ーー
「兄さん…」
ーーそこでこうしましょう。お花の人は貴族街のカフェを知っていますね?いつも差し入れて下さるジンジャークッキーを売っているカフェです。そこの一番奥の席に、壁に向かって座って下さい。僕はお花の人の背後に背と背を合わせて座ります。合言葉は僕が「攻め」と言ったら「受け」と答えて下さい。ーー
「攻めの反対は守りじゃないのか?」
「さあ?」
「まあいい」
ーー僕は顔を見たりしません。約束します。日にちはブラッドが出発する日です。僕は貴族街の正門まで見送りに出るのでその帰りに。お話しできるのを楽しみにしています。シャノンーー
「そうきたか…。やれやれ、仕方のない人だ。そう思わないかロイ、ド…」
ふ、ふふ、二人きりでカフェ!
「ああ神子様!私はどれほどの徳を積んだというのでしょうか…感謝します…!」
「ロイド!その件だが先走るなよ。兄さんの指示だ」
「先走る?それはブラッド、君じゃないか」
「……」
プリチャード侯の身を先見により護ったというシャノン様。…あの方が神子…。何故それに気付かなかったのか。そうだ。本物の神子は自分を神の使いなどとは言わないものだ。
二人きりの逢瀬まであと数日。それまで眠れるだろうか…
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