断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

文字の大きさ
上 下
87 / 308

ロイド

しおりを挟む
あの茶会が一つの転機になり、力を合わせシャノン様をお守りする事になった私たちは、あれ以来様々な情報を共有していた。そして…自分でも信じられない事だが、アレイスター殿下とも独自の接触を図っている。
コンラッドを裏切りたいわけではない。だが…、彼を救うためにも、これは必要な事だと信じている。

「アーロンを『禊』へと追いやったのは、上手くやったじゃないか」

「カマ神にあれ程傾倒しているんだ。東南への寄付だったか…。あれも密教の村へ渡りをつけるためだろう。ならば南の地、と言えば行きたがると思ったのだ」

「おかげでしばしの間だがコンラッドを引き離す事が出来た。僕は直に領地へ行く。アーロンが戻った後のことは…任せたよ」
「ああわかった」

プリチャード侯爵、そしてシャノン様から伯爵位をもって信頼を受け取ったブラッドにもう迷いはない。
だからこそ、私が陰で動かなくては。オレンジの薔薇にかけて!

「ロイド。兄さんからこれを預かってきた」
「な、なんだって!は、早くこちらに」
「やれやれ。ほら手紙だ。学院が休みの間は『お花の人』と連絡が取れないから渡してくれと」
「う、嘘だろう…、いや嘘じゃない」スンスン…「シャノン様の香り…」

「ロイド…、言いたくはないが、君はアーロンを慕っている頃それほどおかしかったかい?」
「おかしいか?」
「少しね」
「仕方ないだろう。私は究極の愛を見つけたのだから」

シャノン様は愚鈍な私たちにどれほどひどい仕打ちを受けても、決して私やブラッドを見捨てなかった。その想いに応えるためにも…私はシャノン様にどこまでも付いて行くと決めたのだ。

「想いの成就が無くてもかい?」
「必要ない。彼がそこに居て笑ってさえ居てくれるなら…、隣に立つのがコンラッドでもアレイスター殿下でも構わない」

「ロイド…」

シャノン様の幸せが私の幸せ。そう思わせてくれる彼を愛せたことが誇らしい。陰から見つめられればそれだけで良いと思っていたのに…、こうして彼は、折につけ私に気持ちを返して下さる。
オレンジの薔薇…その意味するところは信頼、あの日頂いた手製のハンカチは私の家宝だ。私は彼の信頼を裏切らない。

それにここだけの話だが…、シャノン様の刺したオレンジの薔薇は、ところどころうっすらと血が滲んで…まるで私の髪色のような、ブラウンが混じっているのだ。これはもしかして初めから私のために…、あー!馬鹿な事を言うな!シャノン様は『お花の人』が私だとは知らないというのに!

「…百面相していないでさっさと読んだらどうだ」
「すまない。感激のあまり取り乱した。何々…?」

ーーお花の人へ。どうしても相談したいことがあります。手紙では面倒なので会って話したいです。でもブラッドに会っちゃダメって言われました。僕は顔に出るからダメだって。ブラッドは僕を見縊っていると思います。ブラッドの方が顔に出ます。昨日もなんだかしょげていましたが、多分お母さんに叱られたんだと思います。ーー

「ふっ、くく…」
「いいから先を読め!」

ーーですがブラッドとの約束を破り、信頼関係にヒビを入れたくはありません。ーー

「兄さん…」

ーーそこでこうしましょう。お花の人は貴族街のカフェを知っていますね?いつも差し入れて下さるジンジャークッキーを売っているカフェです。そこの一番奥の席に、壁に向かって座って下さい。僕はお花の人の背後に背と背を合わせて座ります。合言葉は僕が「攻め」と言ったら「受け」と答えて下さい。ーー

「攻めの反対は守りじゃないのか?」
「さあ?」
「まあいい」

ーー僕は顔を見たりしません。約束します。日にちはブラッドが出発する日です。僕は貴族街の正門まで見送りに出るのでその帰りに。お話しできるのを楽しみにしています。シャノンーー

「そうきたか…。やれやれ、仕方のない人だ。そう思わないかロイ、ド…」

ふ、ふふ、二人きりでカフェ!

「ああ神子様!私はどれほどの徳を積んだというのでしょうか…感謝します…!」

「ロイド!その件だが先走るなよ。兄さんの指示だ」
「先走る?それはブラッド、君じゃないか」
「……」

プリチャード侯の身を先見により護ったというシャノン様。…あの方が神子…。何故それに気付かなかったのか。そうだ。本物の神子は自分を神の使いなどとは言わないものだ。

二人きりの逢瀬まであと数日。それまで眠れるだろうか…





しおりを挟む
感想 865

あなたにおすすめの小説

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

黄金 
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。 恋も恋愛もどうでもいい。 そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。 二万字程度の短い話です。 6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...