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コンラッド
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「君は聞いたか?シャノン様が西の小国ツェリの反乱を予言したという話を」
「もちろんだとも。なんでもツェリはセナブム国と同盟を結んで、王不在の間に内側から乱を起す気でいたとか」
「王はセナブムとツェリの接触を未然に阻止したそうだな。危ないところだった…」
宮廷内に聞こえてくるのは、使いによって届けられた、西の支配地における父の活躍。だがそれはシャノンの進言による結果だ。
あの日…、王族のみを集めた晩餐の場で、シャノンが口にしたのは根拠無きツェリの反乱。その時は誰もがそう思った。
だが、母はシャノンの言葉を「確認だけでもすべきでしょう」と受け入れ、父もまたその懸念を放置はせず、「戦士の勘よ」と笑いながら西の地へと出立された。
この数年争い続けた、西の小国群をかけたセナブムとの闘い。それは王自らの一年に渡る陣頭指揮によって、見事ルテティア・アレシア連合軍が完全勝利を収めていた。
その小国群の一つにツェリという名の国がある。だがツェリは周辺の小さな国々に対し、従わせられるだけの力を持っているという。そのツェリに寝返られたらどうなっていたか…。ましてやセナブムと秘密裏に同盟など結ばれていたら…、消えたはずの戦火が再び燃え広がっただろう。それも、自軍の駐留する内側から…。
これは大きな転機だ。ツェリを押さえられセナブムは二度と動けまい。
…あの日シャノンは「未然に防ぐことが大切」と言った。
そしてアーロンは…「事が起こるまで待つべき」と言った。
シャノンは余計な事など何も言わず、だが西の火種を暴いて見せた。
アーロンは王の存在を火種と言い、そして神の言葉を聞くべきと言った。
一体何を信じればいい…。進むべき道が分からない。私という人間は、いつからこれほど判断力を失ってしまったのか…。
ロイドとの会話が思い出される…。
「コンラッド、シャノン様の言葉をもう一度思い返すがいい。君も一度はその口で言ったじゃないか。シャノンの言葉で自分の思い上がりに気付いたと」
「そうだ、そう思った。だが…、アーロンが言うのだ。次期王太子である私が自分自身を疑ってはならない。それは思い上がりでなく威勢であって、民は己を極めんとする王にこそ付いて行くのだからそのままでいいと…」
「馬鹿な…。自分自身を信じることと省みることは別の話だ。コンラッド、アーロンの言葉が導く先を考えるんだ。いいかい、君より私の方がよく見えている。今はそう思えないだろうが…」
アーロンの言葉が導く先…、そこには万人への博愛がある…、だがツェリを「ことが起こる」まで放置すればきっと遅すぎた。そこでは多くの血が流れただろう…!
信徒の怒り…、ああ!っその信徒とは国教の信徒か?それとも…アーロンの掲げる博愛の信徒か?それともその両方か…
「あなたは一体誰と国を治めるつもりだ!あなたの居ない王都を誰に護らせるおつもりか!」
アレイスターの言葉が頭に響く…もう止めてくれ!頭が割れそうだ!
「コンラッド。顔色が悪いですよ。どうかなさったのですか?」
「アーロン…、何故ここに」
突然現れたアーロンの姿に身が怯む。だがアーロンを見て身が怯む…などと、どうかしている。
「…フレッチャー侯爵様から禊の打ち合わせに呼ばれたのですよ」
アーロンの属する教会の管理者フレッチャー侯。彼が敢えてここにアーロンを呼んだのは、おそらく私に気を利かせたのだろう。
「それよりさあ、僕の手を取って。あちらにかけて少し休みましょう」
「だが打ち合わせがあるのではないのかい?」
「ふふ、コンラッドよりも大切な事などありませんよ。あなたという存在の前では職務も責務も二の次です」
「アーロン…」
「いつも共に居たブラッドが離れお淋しいのですね。お可哀そうに…」
「私は…」
「コンラッド、僕の目を見て」
「アーロン…」
「心配いりません。この手は僕が握ります。何があろうと僕だけはあなたのそばに」
「もちろんだとも。なんでもツェリはセナブム国と同盟を結んで、王不在の間に内側から乱を起す気でいたとか」
「王はセナブムとツェリの接触を未然に阻止したそうだな。危ないところだった…」
宮廷内に聞こえてくるのは、使いによって届けられた、西の支配地における父の活躍。だがそれはシャノンの進言による結果だ。
あの日…、王族のみを集めた晩餐の場で、シャノンが口にしたのは根拠無きツェリの反乱。その時は誰もがそう思った。
だが、母はシャノンの言葉を「確認だけでもすべきでしょう」と受け入れ、父もまたその懸念を放置はせず、「戦士の勘よ」と笑いながら西の地へと出立された。
この数年争い続けた、西の小国群をかけたセナブムとの闘い。それは王自らの一年に渡る陣頭指揮によって、見事ルテティア・アレシア連合軍が完全勝利を収めていた。
その小国群の一つにツェリという名の国がある。だがツェリは周辺の小さな国々に対し、従わせられるだけの力を持っているという。そのツェリに寝返られたらどうなっていたか…。ましてやセナブムと秘密裏に同盟など結ばれていたら…、消えたはずの戦火が再び燃え広がっただろう。それも、自軍の駐留する内側から…。
これは大きな転機だ。ツェリを押さえられセナブムは二度と動けまい。
…あの日シャノンは「未然に防ぐことが大切」と言った。
そしてアーロンは…「事が起こるまで待つべき」と言った。
シャノンは余計な事など何も言わず、だが西の火種を暴いて見せた。
アーロンは王の存在を火種と言い、そして神の言葉を聞くべきと言った。
一体何を信じればいい…。進むべき道が分からない。私という人間は、いつからこれほど判断力を失ってしまったのか…。
ロイドとの会話が思い出される…。
「コンラッド、シャノン様の言葉をもう一度思い返すがいい。君も一度はその口で言ったじゃないか。シャノンの言葉で自分の思い上がりに気付いたと」
「そうだ、そう思った。だが…、アーロンが言うのだ。次期王太子である私が自分自身を疑ってはならない。それは思い上がりでなく威勢であって、民は己を極めんとする王にこそ付いて行くのだからそのままでいいと…」
「馬鹿な…。自分自身を信じることと省みることは別の話だ。コンラッド、アーロンの言葉が導く先を考えるんだ。いいかい、君より私の方がよく見えている。今はそう思えないだろうが…」
アーロンの言葉が導く先…、そこには万人への博愛がある…、だがツェリを「ことが起こる」まで放置すればきっと遅すぎた。そこでは多くの血が流れただろう…!
信徒の怒り…、ああ!っその信徒とは国教の信徒か?それとも…アーロンの掲げる博愛の信徒か?それともその両方か…
「あなたは一体誰と国を治めるつもりだ!あなたの居ない王都を誰に護らせるおつもりか!」
アレイスターの言葉が頭に響く…もう止めてくれ!頭が割れそうだ!
「コンラッド。顔色が悪いですよ。どうかなさったのですか?」
「アーロン…、何故ここに」
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「アーロン…」
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「私は…」
「コンラッド、僕の目を見て」
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