64 / 295
39 断罪と誕生日 ②
しおりを挟む
見苦しい口げんかを止めたのは聞き覚えのある変声期ボイス。
「コンラッド兄さん、シャノンは黒髪が好きなのですよ」
「アレイスター様!」
「アレイスター…」
声の主はこの国の第二王子。その後ろには、今日は目の死んでないトレヴァー君がご一緒している。
と言うかアレイスター、何故僕が黒髪フェチだと知っている。
僕は黒髪が好きだ。腐男子時代からその傾向はあったが、ここまでひどくなったのはシャノンに転生してからだ。これはきっと、前世への郷愁がそうさせているのだろうと、自分なりに分析している。
「アレイスター様気付いてたんですか?」
「君の護衛は長身の黒髪ばかりじゃないか」
ば、ばれてる…。いや、制服フェチはまだバレてない。
「16歳おめでとうシャノン。ところで何を揉めていたんだい?」
「酔っ払いをちょっと叱ってました」
「私は酔ってない!」
「酔っ払いは皆そう言うんですよ」
「だがここまでだシャノン、注目の的だよ」
げっ!
「み、みなさーん。これは痴話げんかですぅ~。ご心配なく~。ほらコンラッド!」ゲシッ!
「痛っ!あ、ああ。何も問題はない。皆歓談を続けてくれたまえ」
第一王子を足蹴にした僕にカイルとブラッドがフリーズしていた。つい勢いでやってしまったが何も問題などない。というか、どーも最近コンラッドに関して、上手くシャノンが機能しない…。理由は分っている。これはあれだ。シャンゴでバトって以来、もう今さら…と猫がこぞって家出をしたからだ。
さて、トレヴァーくんとアレイスターから誕プレをいただくと、僕はゲストをコンラッドとブラッドに少し任せて、招待の主旨通り、まずは二人を双子のところまで案内することにした。
こうみえて前世で弟と妹のいた僕は、正真正銘のお兄ちゃんだ。
といっても、僕の病気で大変だった両親は、二人をしょっちゅうおばあちゃんちに預けていた。二人には申し訳なかったと今でも思っている。
だから僕はその分まで、この屋敷にいる間は新しい弟妹を溺愛しようと決めている。
その決意がわかるのだろうか、首のすわりつつある双子は僕を見るととても喜ぶ。
動物と赤ちゃんは、本能で甘やかしてくれる人をかぎ分けるに違いない。
「ほーらアノン様、シャノンお兄様ですよ」
「おっきしてたのアノン~。カワイイねぇ」
因みに家人はみな弟をアノンと呼ぶ。ファーストネームのダニエルで呼ぶのは外の人だけ。これは今後、親しさの指針になるだろう。
「アー、ンー」
「あら。シェイナ様はシャノン様の抱っこが良いようですわ」
「おふたりともシャノン様が大好きですわね」
シェイナは僕を見るとすぐに手を伸ばして抱っこをせがむ。僕じゃないと泣き止まない時まであるくらいだ。
そうなるとますます可愛いと思えてくるのが人情ってもので、僕はシェイナを、まさに目に入れても痛くないと、
ブス!「△$×¥&%#!!!」
…訂正。目つぶしはやっぱ痛い。
「彼がプリチャードの後継者かい」
「アレイスター兄さま。こっちにお姫さまがいます」
おっ?トレヴァー君、お目が高い。
「可愛いでしょ?シェイナだよ」
「シェイナ…」
「なに?アレイスター」
「いいや、なんでもない」
含みを感じさせるアレイスター。何だろう?はっきり言えばいいのに。
そこへやって来たのはニコールさんと、彼女に寄り添う父。アレイスターの言葉は有耶無耶になってしまった。
父はアレイスターをみて一瞬眉を動かしたが、そもそも無断で招待はしていない。ホントに来たからと言って驚かないでもらいたい。
「侯爵、シェイナ嬢はとても美しいです。大きくなったらぜひ私の花嫁にお願いします」
「これはこれはトレヴァー殿下、ハハハ」スン「あげませんぞ」
トレヴァーくんの、大人顔負けの社交辞令にグズり出したのはお父様でなくシェイナ。タイミングのいい…
「ヤメテくださいトレヴァー様。シェイナが僕と引き離されるって、泣いちゃいました」
「そんなあ…」
「はっはっは」
和やかに過ごす時間。ナニーは双子の様子を見て、少しならホールへ連れ出してもいいと許可をくれた。
来賓の皆様にもお披露目をする時間である。なにしろアノンは侯爵家の跡取り、みんな興味深々なのだから。
そして両親、第二第三王子とともにホールへと戻った僕は、シェイナを抱いたまま、アノンを抱っこしたナニーと共にゲストたちの間を練り歩いた。
高貴な自分の立場が分かるのか、ゲストたちに笑顔を振りまくキレイな双子。
方やイケオジなパパ似で、そして方や…
「シェイナ様は奥方のニコール様と言うより…兄のシャノン様によく似ておいでですね」
「ほら、このスッと通った鼻筋」
口々に交わされるゲストたちの感想。
実はニコールさんとカサンドラ様の肖像画は、よく見比べると目元が少ーし似ている。もしかしてお父様がニコールさんを見初めた理由の一つは、それがあるんじゃないだろうか。
うーん、たしかにプラチナヘアーのシェイナはニコールさんよりも僕に似ている。けど…、女の子で僕似って、それもうほとんどカサンドラ様じゃん。
お父様はその事実に気付いていないのか、そう言われてご満悦だし。ニコールさんまで「ええ本当に」などと微笑ましそうにしているし。まぁ…夫婦が良いならそれでいいけど。
「シャノン、私にも見せてくれないか」
「コンラッド様。良いですよ。あ、減るといけないんで少しだけですからね」
「全く君は…」
さすがのコンラッドも双子の赤ちゃんは気になるみたいだ。興味深そうに顔を覗き込もうとしている。だが残念でした。二卵性なのでそれほど似ていない。
「アー!!!」
ぎょぎょ!
よく見えるようにとコンラッドに顔を向けた途端、シェイナは火が付いたように泣き出し、さすがにコンラッドも困惑している。
「参ったな。まだ触れてもいないのだが、嫌われてしまったかな…」
「何を仰いますか殿下、おそらく乳が欲しいのでございましょう」
「赤子とは泣くことでしかものが言えませんのでね。ままあることでございます」
取りなす両親。けどシェイナはさっき満腹になるまでお乳をもらっていたじゃないか!
って、ああっ!
連動して泣き出すアノン!修羅場…これが噂の…
双子の共鳴!って、言ってる場合か!
「コンラッド兄さん、シャノンは黒髪が好きなのですよ」
「アレイスター様!」
「アレイスター…」
声の主はこの国の第二王子。その後ろには、今日は目の死んでないトレヴァー君がご一緒している。
と言うかアレイスター、何故僕が黒髪フェチだと知っている。
僕は黒髪が好きだ。腐男子時代からその傾向はあったが、ここまでひどくなったのはシャノンに転生してからだ。これはきっと、前世への郷愁がそうさせているのだろうと、自分なりに分析している。
「アレイスター様気付いてたんですか?」
「君の護衛は長身の黒髪ばかりじゃないか」
ば、ばれてる…。いや、制服フェチはまだバレてない。
「16歳おめでとうシャノン。ところで何を揉めていたんだい?」
「酔っ払いをちょっと叱ってました」
「私は酔ってない!」
「酔っ払いは皆そう言うんですよ」
「だがここまでだシャノン、注目の的だよ」
げっ!
「み、みなさーん。これは痴話げんかですぅ~。ご心配なく~。ほらコンラッド!」ゲシッ!
「痛っ!あ、ああ。何も問題はない。皆歓談を続けてくれたまえ」
第一王子を足蹴にした僕にカイルとブラッドがフリーズしていた。つい勢いでやってしまったが何も問題などない。というか、どーも最近コンラッドに関して、上手くシャノンが機能しない…。理由は分っている。これはあれだ。シャンゴでバトって以来、もう今さら…と猫がこぞって家出をしたからだ。
さて、トレヴァーくんとアレイスターから誕プレをいただくと、僕はゲストをコンラッドとブラッドに少し任せて、招待の主旨通り、まずは二人を双子のところまで案内することにした。
こうみえて前世で弟と妹のいた僕は、正真正銘のお兄ちゃんだ。
といっても、僕の病気で大変だった両親は、二人をしょっちゅうおばあちゃんちに預けていた。二人には申し訳なかったと今でも思っている。
だから僕はその分まで、この屋敷にいる間は新しい弟妹を溺愛しようと決めている。
その決意がわかるのだろうか、首のすわりつつある双子は僕を見るととても喜ぶ。
動物と赤ちゃんは、本能で甘やかしてくれる人をかぎ分けるに違いない。
「ほーらアノン様、シャノンお兄様ですよ」
「おっきしてたのアノン~。カワイイねぇ」
因みに家人はみな弟をアノンと呼ぶ。ファーストネームのダニエルで呼ぶのは外の人だけ。これは今後、親しさの指針になるだろう。
「アー、ンー」
「あら。シェイナ様はシャノン様の抱っこが良いようですわ」
「おふたりともシャノン様が大好きですわね」
シェイナは僕を見るとすぐに手を伸ばして抱っこをせがむ。僕じゃないと泣き止まない時まであるくらいだ。
そうなるとますます可愛いと思えてくるのが人情ってもので、僕はシェイナを、まさに目に入れても痛くないと、
ブス!「△$×¥&%#!!!」
…訂正。目つぶしはやっぱ痛い。
「彼がプリチャードの後継者かい」
「アレイスター兄さま。こっちにお姫さまがいます」
おっ?トレヴァー君、お目が高い。
「可愛いでしょ?シェイナだよ」
「シェイナ…」
「なに?アレイスター」
「いいや、なんでもない」
含みを感じさせるアレイスター。何だろう?はっきり言えばいいのに。
そこへやって来たのはニコールさんと、彼女に寄り添う父。アレイスターの言葉は有耶無耶になってしまった。
父はアレイスターをみて一瞬眉を動かしたが、そもそも無断で招待はしていない。ホントに来たからと言って驚かないでもらいたい。
「侯爵、シェイナ嬢はとても美しいです。大きくなったらぜひ私の花嫁にお願いします」
「これはこれはトレヴァー殿下、ハハハ」スン「あげませんぞ」
トレヴァーくんの、大人顔負けの社交辞令にグズり出したのはお父様でなくシェイナ。タイミングのいい…
「ヤメテくださいトレヴァー様。シェイナが僕と引き離されるって、泣いちゃいました」
「そんなあ…」
「はっはっは」
和やかに過ごす時間。ナニーは双子の様子を見て、少しならホールへ連れ出してもいいと許可をくれた。
来賓の皆様にもお披露目をする時間である。なにしろアノンは侯爵家の跡取り、みんな興味深々なのだから。
そして両親、第二第三王子とともにホールへと戻った僕は、シェイナを抱いたまま、アノンを抱っこしたナニーと共にゲストたちの間を練り歩いた。
高貴な自分の立場が分かるのか、ゲストたちに笑顔を振りまくキレイな双子。
方やイケオジなパパ似で、そして方や…
「シェイナ様は奥方のニコール様と言うより…兄のシャノン様によく似ておいでですね」
「ほら、このスッと通った鼻筋」
口々に交わされるゲストたちの感想。
実はニコールさんとカサンドラ様の肖像画は、よく見比べると目元が少ーし似ている。もしかしてお父様がニコールさんを見初めた理由の一つは、それがあるんじゃないだろうか。
うーん、たしかにプラチナヘアーのシェイナはニコールさんよりも僕に似ている。けど…、女の子で僕似って、それもうほとんどカサンドラ様じゃん。
お父様はその事実に気付いていないのか、そう言われてご満悦だし。ニコールさんまで「ええ本当に」などと微笑ましそうにしているし。まぁ…夫婦が良いならそれでいいけど。
「シャノン、私にも見せてくれないか」
「コンラッド様。良いですよ。あ、減るといけないんで少しだけですからね」
「全く君は…」
さすがのコンラッドも双子の赤ちゃんは気になるみたいだ。興味深そうに顔を覗き込もうとしている。だが残念でした。二卵性なのでそれほど似ていない。
「アー!!!」
ぎょぎょ!
よく見えるようにとコンラッドに顔を向けた途端、シェイナは火が付いたように泣き出し、さすがにコンラッドも困惑している。
「参ったな。まだ触れてもいないのだが、嫌われてしまったかな…」
「何を仰いますか殿下、おそらく乳が欲しいのでございましょう」
「赤子とは泣くことでしかものが言えませんのでね。ままあることでございます」
取りなす両親。けどシェイナはさっき満腹になるまでお乳をもらっていたじゃないか!
って、ああっ!
連動して泣き出すアノン!修羅場…これが噂の…
双子の共鳴!って、言ってる場合か!
3,870
お気に入りに追加
5,734
あなたにおすすめの小説
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる