断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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34 断罪とお忍び ②

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どこかの軒先にある椅子に腰かけ一旦休憩をとることにする。なんか疲れた。するとアレイスターがポツリと言った。

「タンポポ…、素朴で丈夫な花だ。確か『愛の神託』と呼ばれる花だったね」
「そうなんですか?」

知らなかった。花言葉なんて前世で気にしたことも無かったし。

「実はその種僕があげたんです。いっぱいあったので」

「君が…?そうか…、ここは君が彼らに授けた『愛の神託』なのだね」

な、何て…?は、恥っず…。よくもまあしれっとこんなことを。…これだから王族ってやつは。

「あ、愛の神託は知りませんけど、タンポポは役に立つ花です」
「そうだ。タンポポは薬になる。胃や熱さまし、強壮に役立つ。それでいてどこにでも咲く、庶民の味方だ」
「え?……ええホントに」

…コーヒーになるって言おうと思ったのに…

「タンポポの根は北部で、子孫繁栄の民間薬って言われているみたいですね」

へー、そうなのか。カイル、物知りだな。

「煎じて飲むと乳の出を良くするとか、子宝に恵まれるとか」

「よく知ってるね…」

「実はシャノン様が北部に寄付をされたとき、手配を請け負った北の商人から聞いたのです」
「ああ。タンポポは北部でも育つ強い花だからね。そうか…そうだったのか…」

アレイスターはこの間からやたら北部を気にするけど、雪とか…好きなのかな?

「シャノン…、君はそこまで考えタンポポの種をモリセット子爵に渡したのかい?」

えっ⁉ 何のことだかさっぱり分からない…。
けど、頂き物のリサイクルって言っちゃいけないのは、なんとなく本能でわかる…

「あ、あの、えっと、も、もう良いじゃないですか!それよりほら。そろそろパレードが通りかかる頃ですよ」

王様のパレードはこの下町から大通りを通過して、中流地区改め準貴族街へと向かっていく。
今僕たちがいる場所から少し離れた通りの沿道からは、一際大きな歓声が沸き上がっているようだ。

さて、おかげでここいらの店は現在ガラガラといった有様だ。

「今のうちに行きましょう。アレ…ク、何が見たいですか?」
「なんでもだよ。庶民の暮らしぶりなら何でも見たい。シャロン、隅々まで見てまわろう」

あっ!こら!勝手に腕を引っ張るんじゃない!長いワンピースの裾は足元にまとわりついて、どうにも歩きにくいんだから!

「ま、待って!あっ!」
「ほら段差だ。私に任せて」

ひ、ひょえぇぇぇ!ひょいってすんな!

「シャノン、いや、シャロンは軽いんだね」
「嬉しくないです…」

…これでもこの数か月で体感3キロは増えたんだけどな…。シャノンは健康体なのに痩せすぎだったから…

そんなこともあって、食べ物中心の僕と違い、アレイスターが見たがるのはナイフだったり革細工だったり、男らしいものが多い。

「これは良い品だ。そう思わないかシャロン」
「ひゃ!刃先向けないで…」
「ああすまない。ふふ、君は怖がりなんだね」

ばっ…!刃物を人に向けちゃイケマセンって教わってないんですかねっ!

「今度は何見て…、ああ。お財布ですか?」

確かにポケットに小銭ジャラジャラはカッコよくない。

「シャロン、これとこれ、どちらが良いと思う?」
「アレク、男ならこういう時はこうするんですよ。おじさん!この皮財布ここからここまで全部ください!」
「だが皮財布ばかりこんなにどうするんだい?先程もキャンディーを買い占めていただろう?」

「……、カ、カイルー!これ、屋敷で使用人の皆に配って」

「ああ。神礼祭のギフトかい?君の心配りは細やかだね」

えーえー!もともとそのつもりでしたとも!
神礼祭では子供たち(お屋敷では使用人)にプチギフトを配る習慣がある。サンタさん…とかハロウィーン…的な?
当然お屋敷ではあさイチで全員に配ってある。
…一つじゃ足りないって思ってたんだよね。ええ、ホントに。ほんとだってば!

「そんなことより、見てあれ!あそこのスープが凄く美味しくて!僕奢ります!おばさーん、白いのと茶色いの両方ください。もちろん鍋ごと」

「食べきれるのかいお嬢さん。あら、もしかしてあなた様は、シャ」
「わー!言っちゃダメ!」

ど、どど、どうしてわかった?!? こんなに完璧な変装なのに!

おばさんはそれ以上何も言わずに席を用意してくれるが、スゴい眼力だ。侮れない…
それより、またやってしまった…。ついうっかりアレイスターに格好つけようとして…、僕のバカバカ、見栄っ張り…

「どちらが君のおすすめだい?」
「どっちも美味しいけど特に白い方!ニンジンもタマネギもとろとろで美味しいの」
「野菜片…。君は平気なのかい?」
「な、何が?」

なんかすごくイイ顔で頭撫でられたんだけど…?おや…?

「んん?おじさん、その脂身捨てちゃうの?」
「まあな。みんな食べないだろ」

スープ店の隣では、串焼き屋のおじさんが脂身部分を捨てようとしている。
だけど僕は知っている。串焼きを焼いた灰、そして捨てる油があれば石鹸が出来るということを。
何故ならお母さんが一時作っていたからだ。すぐに飽きてたけど。
怪訝そうなアレイスターに、僕はドヤ顔でその知識を披露した。えへん!

するとそこに子供が現れたのだが、どこかで見たような…
…ああ!おっ、おまっ!あの時の盗人(未遂)!

「あの、シャノンさ」
「何も言わないで!僕はただの町娘だから!」

おおーっと!アレイスターに僕の非道を訴えるつもりか?ガキンチョ!あれはお前が悪いんじゃないか!そうはさせん!
この子供をサッサとこの場から遠ざけなくては…ピコーン!閃いた!

「あー、ボク。ちょっとこのへんの屋台中まわって灰と捨てる油貰ってきてくれない?できるだけいっぱい」
「俺に言ってんのかよ!お、俺が誰だか分ってんのか!」

分ってるに決まってるでしょうが!お前は僕に大鍋を運ばされたとアレイスターにチクる要注意人物だ!

「いいからお願い!大鍋のスープ二つともあげるから。騎、平民A!手伝ってあげて」

少し強引にお願いすると、ようやく子供は桶を抱えて走って行った。スープも片付くし。ある意味、一石二鳥だ。んん?

「アレクどうしました?何笑ってるんですか?」
「いや、いいものを見せてもらったと思ってね」

なにッ!
…いろいろ言いたいことはあるけど、人を笑うとか…、悪趣味だよ…




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