断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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26 断罪の…味方?

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変態と変態のパートナーには関わらないのが一番だが懸念が一つ…。
コンラッドは誤解している。博愛とは人類愛であって色魔のことではない。アーロンのそれは後者だ。あの怪しい空気感が全てを物語っている。
でもそれを教えてやる義理もない。浮気者の伴侶を娶り、「こんなはずじゃなかった…」と言いながら貞淑なシャノンを愛さなかった自分を後悔するがいい。

アーロンが『救い』をエサに人の心を掴むエロ星人だとして、僕にその手は無効だ。
こう見えて僕は一度死んでいる。…人生の情も無情も、この身で知る僕は何かに縋ったりしない。もちろん神様は和洋必要だと思っている。ほら、年末年始とか困ったときとか。だからと言って神様がお願いを聞いてくれないことは知っている。何度も口にした「神様仏様おねがいします!」はただのヒーリング詠唱だ。

けど!気力と体力は僕のゴールを半年から5年に引き延ばした!それは揺るがざる事実!

結論。僕はいつだって僕を信じる。僕の救いは断罪と男らしいイケメン以外ありえない。

ん?何を言っているのかって?
…もっと早くにお伝えするべきだったが(誰に?)BLノベルゲーのシャノンに転生したことで、僕はナチュラルに腐男子から夢男子へと進化している。いいんだか悪いんだか…

報告もすんだところで(何の?)待ちに待った文化祭。と言う名の研究展示発表会。
このルテティア国立貴族学院における文化祭とは学業に振り切ったとても真面目な催しである。

これは祭りと言っても、各自、各班でテーマを決めて調べ上げた何某かを講義室で展示したり、二年時からは選ばれし学生が壇上で難しそうなテーマをプレゼンしたりするため、宮廷の人事的な人や同じくお屋敷や領地で事務方を探しているどこかの当主が人材チェックに来てたりするのだ。
そのため爵位を継げない次男以下や許嫁の居ない令嬢なんかは去就に関わる大事なチャンスになっていたりする。だからこそこんなに盛大なのだ。

逆に言えばだよ?将来が決まっている令嬢令息にとっては、盛大なお祭りでしかない、ということでもある。
僕がどちらに分類されるかは言うまでもない。ということで、行ってきまーす!

「シャノン」

げっ!愛の奴隷と書いてコンラッド。といつもの面子。出足くじかれた…。何の用だろう…

「私は今から学院長と共に来賓への挨拶がある。君にも来てもらいたい」

しくったな…。割り切った関係…とかに同意したもんだから、却って儀礼的なお役目が割り振られるようになってしまった。面倒な…

「…お願いしますシャノン様、って言えたら行ってやってもいいですよ」
「兄さん!」

「冗談です」

ブラッドはもう少し心に余裕が欲しい。やっぱり今度お茶に誘っていい男の極意を教えてやろう。

「仕方ない…、少しだけですよ。リアム様、先に行ってください」
「お戻りお待ちしています」

世にも珍しい僕とコンラッドの連れ立って歩く姿に、それを目にした周囲がガヤガヤと騒めいている。それほど珍しい…って事自体が、末期だな。

ノベルゲーでは確かこんな場面でさえアーロンを連れ歩いていた気がする。
立太子していない、ということは色んな意味でまだまだ自由ということだ。多少の無作法も学院内なら許されてしまっていたんだろう。だからこそノベル内のコンラッドは卒業までにシャノンを押し退けアーロンを公式婚約者にしたかったのだ。

そして連れて来られた学長室。目の前には偉そうなおっさんが一人。事実偉いんだろう。貴族名鑑の上位な方で見た気がする。

「これはシャノン様。プリチャード侯はお元気かな?」

開放!記憶の引き出し!…あれじゃない…これでもない…あ、あったあった。

「フレッチャー侯爵…、父は相変わらず過労死寸前の社畜です」

「…シャチクとは外国語ですかな。さすがは聡明と名高いシャノン様。随分難しい物言いをなさる。ところでシャノン様、スキッド地区のことであるが…」

んー?あの貧民街がどうしたっていうんだろうか。でもあれは王妃様にも「立派な行い」って褒められたから問題ないはず…。

「それがどうかしましたか?」

「その直前にあった事故のことは聞いております。殿下もまだまだお若い。つれぬ振舞いへの腹いせであれば仕方ないが…あれきりにしていただきたい」

「んー?意味が分かりません。どこに問題が?」

「平民街には教会がある。『聖なる力』を持つ神子、アーロン様を抱く教会が。たとえ慈善とは言え、その教会を無視してはなりませんな。慈善なら教会が主導で施しましょうぞ」

はは~ん。この間子爵から情報を仕入れておいたのは正解だった。そういえばこいつが川向うを下町から切り離したがっている侯爵だったっけ。王家からの寄付と教会の施しをネタに、バーナード伯を抑えつけようってワケか…。だが…、残念だったな!その利害は一致している!

「下町に教会の庇護は必要ありません」

「なんと…」

「シャノン!君は何と非情なことを…」
「まあまあ殿下、それはどう言う意味であるか、シャノン様の考えを聞いてみねば…」

「彼らに必要なのは祈りでなく日々の糧。炊き出し程度で恩を売るくらいなら最初からない方がいいです」

「炊き出し程度とはなんだ!」

「だってそうでしょう?知ってますかコンラッド様。人は祈りだけでお腹は膨れないんですよ。月一の慈善行為にどれほどの意味が?それすら最近は十分ではないみたいですけど」

「どういうことだ…」
「アーロン様をお守りせよと仰ったのは殿下ではありませんか。そしてそれが陛下からの勅命であることも心得ておりますれば、危険な川向こうへ教会の無垢な者は行かせられませぬ」

「だ、だが…」

「かまいません。信仰とはそれぞれの心にあるもの。祈りの形は自由。それと同じく、下町の人々は自分の力で立ってこそ自由。彼らの自由を奪ってはなりません」

僕の為にも。

「つまり?お話しの趣旨が見えませぬな」

炊き出し程度で僕の断罪後生活を覗き見る監視網はいらないって言ってんの!

「教会のあるエリアはさっさと準貴族街にするべきです。なんなら運河沿いにセコイアでも埋めますか?徹底的に分けましょう」

「シャノン!君の勝手が通じるものか」

「僕から王妃様に進言します」
「なっ!」

ここは断固分断で!

「おおっ!シャノン様はよくお分かりだ!」

「その代わり、切り離した真の下町はバーナード伯爵、モリセット子爵に任せ、侯爵は口も手も出してはいけません」

「良いのですかな?手出し無用…とは、今後支援も出来ませぬぞ」

「もちろん。それに同意しますか?」

「そうまで仰るのであれば」

よっしゃ!王子も学長もいる前で言質は取った!

「ところでシャノン様…、バーナード伯がアレイスター殿下の後援者であることをご存知ですかな」

ご存知ないけど…

「だったらどうかしましたか?」

「…お分かりであればよろしい。王妃殿下は安心なさるでしょう」

「では侯爵、一つだけ。アーロンはまだ神子じゃないってご存知ですか?」
「…そうでしたな…」

何気に話しを盛るんじゃない!
ふーやれやれ、でもこれで心置きなく文化祭を楽しめる…と思ったら、おや?
退室して一息ついた僕の前には…挙動不審なロイドが居た。

「あの…」
「なんの用でしょう」

「私の勉強会にぜひ一度来ていただきたい」
「ええ…?それはちょっと…」

「お願いしますシャノン様」
「 ‼ 」

自分の言葉には…責任を持たねばならな…、いや無いって!





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