断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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11 断罪後の確認作業

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「ところで子爵は平民街には詳しいですか?」
「え?え、ええまあ。この治療院は平民街の最奥ですしね」

「じゃあ少しお付き合いください。何か食べて帰ろうかと思って」

「シャノン様、馬車で貴族街に移動してからお召し上がりになられては…」

そう口をはさんできたのは騎士服の似合う黒髪イケメン、騎士アーノルドだ。騎士Aと言っておこうか。

「ここで食べます」

「何を仰いますか!」
「何って…」

血相を変えたのが後ろ結びの黒髪が良く似合うイケメン、騎士バートンだ。騎士Bと言うことにしよう。
彼らは僕を囲んでヤイヤイ言うが、自分が暮らすかもしれない街を知っておきたいのは当たり前じゃないか。さすがにそうホイホイ下町へは来れないだろうし…。
でも、断罪後の計画をするためにはざっくりでいいから見ておく必要がある。どのあたりに何の店を出せばいいのか…、計画は大事だ。行き当たりばったりはよくない。

それに食事処ファミレス雑貨屋コンビニがあるかないかは、利便性に大きくかかわる。それもチェックして…

「これは必要な事だから。子爵、案内お願いします」

「シャノン様…、分かりました。では絶対私から離れませんよう」

子爵から離れるな…、もしかして迷子の心配でもされているんだろうか…。いくら15で入院生活を余儀なくされた元出不精のオタクでも町歩きぐらい楽勝…楽…

……

思わず子爵の腕を掴んでしまった…。いやちょっとね。なにしろ5年ぶりの自由行動だし?見知らぬ土地だし…。
あーでも、腕を掴まれた子爵が高位貴族である僕の機嫌を損ねないようオロオロしている以外は実に楽しい。フラフラフラフラ寄り道をして、思う存分買い物を楽しむ。

「えーと、どれにしよう」
「季節の果物ですか。色んな種類がありますね」
「そうだなぁ…」

いや待て。僕は断罪令息シャノン。チマチマ買ってどうする!ここはひとつ…

「あるだけ全部」

大人買い…。ああ…気持ちいい…

そもそも病院の売店以外で買い物、って言うのが5年ぶりで、ずっしり重いお財布にも後押しされて…うっかりテンションあがっちゃったのも…無理ないよね?

「子爵子爵、あそこで食べましょう。なんかシチューっぽいの売ってますよ」
「シャノン様、その、…良ければ私のことはアシュリーとお呼びください」

「じゃあアシュリー、どっちにします?茶色いシチューと白いシチューがありますよ?間違えた。おばさん、両方鍋ごとください。ああ、僕の奢りなんでお気になさらず」

どうだ!この偉そうな態度と偉そうな振る舞い。

「ふふ、ではその白いほうを。店主、これは?」
「牛乳で野菜を煮込んだスープでございます」

「ほらほらカイルも、それから騎士の皆も座って」
「いえ、ですが…」
「お座り!」

なんか犬の躾みたいになってしまったが…シャノンの振舞いとしてはそれほど間違ってないだろう。
だって、調子にのって寸胴鍋二つ分もシチュー買っちゃって…、よく考えたらお屋敷に持って帰っても、下町のスープなんて貴族家では飲まないだろうし…。これどうしよう。食事のお残しは、点滴生活を余儀なくされてた僕の主義に反する。

僕が自分のやらかしに頭を悩ませてたそのときだ。騎士が離れたのを見計らって誰かが僕にぶつかって来たのは。一瞬にして周囲を染める緊張感。ぶつかった相手は子供だ。ボロを来た子供。そしてその手には僕のお財布が握られている。
だがしかし…

「甘いわ!」
「わぁ!なんだよこの紐!」

僕は財布に頑丈なゴムをつけ、腰回りに括り付けていたのだ。これはあれだ。ウォレットチェーンの応用…。現代人舐めんな!
おかげで財布はすぐに戻って来た。お帰り、僕のパンパンなお財布。

「不届き者!この方を誰だと思っている!衛兵に突き出してやる!」
「うるせー!放せ!」

このクソガキめ!僕の財布をスルとは許すまじ!
ん、待てよ?ニヤリ…

「騎士C、彼から手を離して」
「ですが、シャノン様…」
「彼には僕が直々に罰をあたえます。その罰とは…、これです!」

僕は、オールバックの黒髪が男らしいイケメン、騎士クリスからガキンチョを自由にすると、不敵に笑い、あの重い寸胴を持って帰るように言いつけた。二往復して必ず全部。それも店主に言って中身を増量するという、重量マシマシの嫌がらせ付きで。ついでに重たい果物ものっけてやる!ざまあみろ!これでノリで買った鍋の責任は子供に移った。一滴残らず飲み干すがいい!お腹がタプンタプンになるまで!

「アシュリー、じゃあ彼がちゃんと言いつけを守るよう見届けてくださいね」

「あ、ああ」

子供がズルしないよう、アシュリーを監視役にするのも忘れない。
そして周りを囲む下町の大人たちにもハッキリ言った。

「誰も手を出さないように!いいですか!」

子供にあんな重い荷物を運ばせるなんて…僕は…、僕はなんて酷い断罪令息なんだっ…!

いや、財布の件は許さないけど。




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