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5 VS義弟
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うっかりうたた寝していたら時刻は深夜、食事を食べ損ねてしまった身体はお腹の限界を訴えている。
亡くなる直前、すでに点滴でしか栄養を取れていなかった僕は、現在食事への欲求が大変なことになっている。明日の朝まで…なんて待てそうにない。
そっと扉を開け…抜き足差し足…忍びあ
「兄さん」
ドキィ!
「こんな時間にどこへ」
ブラッドか…。こいつ…シャノンが嫌いならいちいち声かけないで放っておけばいいのに。スルースキル低いな…。
「お腹が空いて…」
「いい加減なことを…」
ホントだっつーの。それより台所はどこだろう…。ハムとか果物とか、そのまま食べられそうなものは無いかな。
「誰かお呼びになれば良いでしょう。何故ここに?」
あっ…、そ、そういう仕組みね。一個覚えた。
「いつもならたとえハンカチ一枚でも僕を呼びつけ取りに行かせるではありませんか」
そんなことしてたのかシャノン…。ひどいな。
「き、今日はこれ以上誰にも迷惑かけたくなかったので」
「…ではご一緒します…」
「え…、お構い無く」
「どういう風の吹き回しですか?何を企んでいるんです?」
拗らせている…。ブラッドに関してはさすがに分からないでもない。だからと言って、取り繕ったところでどうせシャノンとブラッドの仲が改善することは無いだろうし、断罪のためには嫌われてなんぼなんだから…、うん。この際ノベルの感想でも言っとくか。
「いちいち僕のことなんか気にしなけりゃいいのに」
「え…?」
「何を言われようが気にしなければいいんだよ。シャ、僕に逆らったからって何も困らないだろうに」
「何を言って…」
家内の権限は所詮父親にあるんだし?その父親は溺愛するシャノンでさえ、人格矯正のために家を追い出すくらい厳格なわけだし?シャノンの我儘をスルーしたってブラッドを理不尽に罰したりは、…多分しない。ような気がする。
つまり…よく考えたらシャノンが何言ったところで、家庭内の雰囲気が悪くなるだけで大して困らないじゃないか。ならシャノンが何を言おうが、こうるさい小姑…とでも思って流せばいいのに。
いちいち構うからこじれるんだって…。
「嫌味言われたからって何なの?」
あーあ、怖い顔して。けどブラッドは自分だけが辛い気でいるがシャノンの立場になってみれば言いたいことの一つや二つや三つや四つはあるのだ。
「僕が嫌い?」
「好かれているとでもお思いですか…?」
「でもそんなのお互い様だから」
「な…!」
「そもそもあの王宮で殿下がシャ、僕をハブってブラッドだけ連れていくのを、一体どんな気持ちで見てたと思う?そんなにブラッドが好きならブラッドと婚約すればいいのに、って思ってたよね」
「兄さん!」
思ったのはついさっきだけど。
「仕方ないじゃないですか。兄さんには王太子妃教育があったのですから」
「そう、仕方ない。コンラッド様が僕にニコリともしないで「ごきげんよう」って言った直後、ブラッドの手を取りこれみよがしに満面の笑みで「さあ行こうブラッド」っていうのも仕方ない。勉強が終わったら合流しようと思っても、僕が動物苦手なの知ってて、いつも嫌がらせみたいに偶然狩場に居たのも仕方ない」
長い入院生活でいろいろ達観してた僕でさえドン引きさせた三人の蛮行。どう考えてもないから。
「放置される気持ちをブラッドが分からないのも仕方ないし、「兄さんも一緒に」その言葉が出ないブラッドの気のきかなさも仕方ない。なら僕がイライラして八つ当たりしたくなるのも仕方ないって思わない?」
「コンラッドが兄さんを敬遠するのは、兄さんがつんけんしていたからではないですか。そう仰るならもっと可愛げのある態度をおとりになれば良かったのに…」
ギクッ!バレたか…
「…れ、連日のお妃教育に疲れ果ててたんだから仕方ないでしょーが!あー、いいよね第一王子のオキニたちは!いつも王子と遊ぶだけで!」
これを逆ギレと言う…。ええい!逆ギレして何が悪い!
「だ、だいたいさあ、母を亡くしたシャ、僕の目の前で母さん母さんって甘えまくって…その無神経も僕は仕方ないって思わなきゃいけないかなぁ?」
「そ、それは…」
シャノンが気にしてた描写はなかったけど…だからと言って普通に考えてアレは無いよね。
「だけど兄さんは僕をまがい物の侯爵令息と呼んだ!許せるとお思いか!」
「し、仕方ないよね。母親も、婚約者も、シャ、僕の欲しいものは全部ブラッドのものだったんだから」
「こ、婚約者は兄さんのもので…」
「はぁぁ?それ本気?」
「……」
だよねー。その婚約者を独り占めしていたやつが何を言う!
「それでもあなたが許せない!たとえ八つ当たりでも僕を使用人のように扱っていいはずがない!」
あかん…、シャノン、どうやってもかばいようがないわ…
「で、でで、でもブラッドは商家でも出戻った子爵家でも、もっとひどい折檻されてたよね?」
「…っ!誰からそれを…」
あ、これノベルのテキスト情報ね。
「だ、誰でもいいでしょーが!とにかく!その折檻より僕の八つ当たりの方が許せないっておかしいでしょ!」
「…!…」
どうだ!この、「僕は何一つ悪くありません。全部周りが悪いんです」のなすりつけ攻撃は。ああ…!なんて自分本位な断罪令息!
言葉に詰まった彼がフリーズしている今がチャンスとばかりにそーっと後退する。
お腹を空かした僕がブラッドを放置したまま食料を探して階下へ降りるのも…もちろん仕方ないよね?
亡くなる直前、すでに点滴でしか栄養を取れていなかった僕は、現在食事への欲求が大変なことになっている。明日の朝まで…なんて待てそうにない。
そっと扉を開け…抜き足差し足…忍びあ
「兄さん」
ドキィ!
「こんな時間にどこへ」
ブラッドか…。こいつ…シャノンが嫌いならいちいち声かけないで放っておけばいいのに。スルースキル低いな…。
「お腹が空いて…」
「いい加減なことを…」
ホントだっつーの。それより台所はどこだろう…。ハムとか果物とか、そのまま食べられそうなものは無いかな。
「誰かお呼びになれば良いでしょう。何故ここに?」
あっ…、そ、そういう仕組みね。一個覚えた。
「いつもならたとえハンカチ一枚でも僕を呼びつけ取りに行かせるではありませんか」
そんなことしてたのかシャノン…。ひどいな。
「き、今日はこれ以上誰にも迷惑かけたくなかったので」
「…ではご一緒します…」
「え…、お構い無く」
「どういう風の吹き回しですか?何を企んでいるんです?」
拗らせている…。ブラッドに関してはさすがに分からないでもない。だからと言って、取り繕ったところでどうせシャノンとブラッドの仲が改善することは無いだろうし、断罪のためには嫌われてなんぼなんだから…、うん。この際ノベルの感想でも言っとくか。
「いちいち僕のことなんか気にしなけりゃいいのに」
「え…?」
「何を言われようが気にしなければいいんだよ。シャ、僕に逆らったからって何も困らないだろうに」
「何を言って…」
家内の権限は所詮父親にあるんだし?その父親は溺愛するシャノンでさえ、人格矯正のために家を追い出すくらい厳格なわけだし?シャノンの我儘をスルーしたってブラッドを理不尽に罰したりは、…多分しない。ような気がする。
つまり…よく考えたらシャノンが何言ったところで、家庭内の雰囲気が悪くなるだけで大して困らないじゃないか。ならシャノンが何を言おうが、こうるさい小姑…とでも思って流せばいいのに。
いちいち構うからこじれるんだって…。
「嫌味言われたからって何なの?」
あーあ、怖い顔して。けどブラッドは自分だけが辛い気でいるがシャノンの立場になってみれば言いたいことの一つや二つや三つや四つはあるのだ。
「僕が嫌い?」
「好かれているとでもお思いですか…?」
「でもそんなのお互い様だから」
「な…!」
「そもそもあの王宮で殿下がシャ、僕をハブってブラッドだけ連れていくのを、一体どんな気持ちで見てたと思う?そんなにブラッドが好きならブラッドと婚約すればいいのに、って思ってたよね」
「兄さん!」
思ったのはついさっきだけど。
「仕方ないじゃないですか。兄さんには王太子妃教育があったのですから」
「そう、仕方ない。コンラッド様が僕にニコリともしないで「ごきげんよう」って言った直後、ブラッドの手を取りこれみよがしに満面の笑みで「さあ行こうブラッド」っていうのも仕方ない。勉強が終わったら合流しようと思っても、僕が動物苦手なの知ってて、いつも嫌がらせみたいに偶然狩場に居たのも仕方ない」
長い入院生活でいろいろ達観してた僕でさえドン引きさせた三人の蛮行。どう考えてもないから。
「放置される気持ちをブラッドが分からないのも仕方ないし、「兄さんも一緒に」その言葉が出ないブラッドの気のきかなさも仕方ない。なら僕がイライラして八つ当たりしたくなるのも仕方ないって思わない?」
「コンラッドが兄さんを敬遠するのは、兄さんがつんけんしていたからではないですか。そう仰るならもっと可愛げのある態度をおとりになれば良かったのに…」
ギクッ!バレたか…
「…れ、連日のお妃教育に疲れ果ててたんだから仕方ないでしょーが!あー、いいよね第一王子のオキニたちは!いつも王子と遊ぶだけで!」
これを逆ギレと言う…。ええい!逆ギレして何が悪い!
「だ、だいたいさあ、母を亡くしたシャ、僕の目の前で母さん母さんって甘えまくって…その無神経も僕は仕方ないって思わなきゃいけないかなぁ?」
「そ、それは…」
シャノンが気にしてた描写はなかったけど…だからと言って普通に考えてアレは無いよね。
「だけど兄さんは僕をまがい物の侯爵令息と呼んだ!許せるとお思いか!」
「し、仕方ないよね。母親も、婚約者も、シャ、僕の欲しいものは全部ブラッドのものだったんだから」
「こ、婚約者は兄さんのもので…」
「はぁぁ?それ本気?」
「……」
だよねー。その婚約者を独り占めしていたやつが何を言う!
「それでもあなたが許せない!たとえ八つ当たりでも僕を使用人のように扱っていいはずがない!」
あかん…、シャノン、どうやってもかばいようがないわ…
「で、でで、でもブラッドは商家でも出戻った子爵家でも、もっとひどい折檻されてたよね?」
「…っ!誰からそれを…」
あ、これノベルのテキスト情報ね。
「だ、誰でもいいでしょーが!とにかく!その折檻より僕の八つ当たりの方が許せないっておかしいでしょ!」
「…!…」
どうだ!この、「僕は何一つ悪くありません。全部周りが悪いんです」のなすりつけ攻撃は。ああ…!なんて自分本位な断罪令息!
言葉に詰まった彼がフリーズしている今がチャンスとばかりにそーっと後退する。
お腹を空かした僕がブラッドを放置したまま食料を探して階下へ降りるのも…もちろん仕方ないよね?
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