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20 本物のケージ
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「ハムスター獣人の子供か…こんなところでこんな拾い物をするとはな」
「かなりの上玉だな…店主は大喜びなさるはずだ」
「兄貴、たしか店主は今日、留守だろ?」
「明日まで牢に監禁しておきゃいい。その間に漬けときゃ手間が省ける」
ナニコレ?ナニコレ?僕をどこ連れてくの?
「放して出して!出せってば!」
「やかましい!静かにしやがれ!」
「大人しくしてりゃいい目みせてやるっての」
いい目‼ いいことがあるのか…。じゃぁちょっとだけ。グレアムさんはまだ出てこないだろうし少し遊んで戻ればいっか。
あれ?ここは昔ペットショップで僕の隣に居たモルモットさんのケージに似てる。細長い木がタテにいっぱい並んでるタイプだ。懐かしー。
「ねーねー、良いことって何?」
「良いことか…、よしよし、大人しくこの部屋で待ってな。すぐご馳走持って来てやるからよ」
ごちそう‼…美味しいマカナイのことだよね!リュックのクッキーが無くなってたんだよね。お腹空いてたからちょうど良かった。僕ってラッキー。きっと良いことしたから良いことが返って来たんだ。ママがソウタにいつも言ってた。「人にした良いことは自分に返って来るわよ」って。
「ほらよ。御馳走だ。それ食べて一晩寝てな」ガシン!
「やったー!ごちそうだ!…ん?」
クンクンクンクン…ごちそう…?うえぇ…ここのおじさんたちってこんなの食べるんだ…。これ変な匂いしてる…。あーあ、これ絶対食べちゃダメなやつ。僕は何でもかじるけど、でも変なものは本能で分かるんだよね。ママもよくビョウインのお薬エサに混ぜてたけど僕食べなかった。
えーと、おじさんたちがよそ見してるうちにそこの穴に押し込んじゃえ。お残ししたらあの手この手で食べさせようとするもんね。
グゥゥ…しょうがない。へそくりのクルミ食べちゃおう。これで最後だけど明日はグレアムさんと食べればいいし…。
モグモグゴックン
「お、食った食った。そのうち効いてくるな…」
「トブ薬か…。気の毒にな。明日には店主が味見ってか?」
「いいから黙れ」
何話してるんだろう?でもガッカリ…。もう帰ろうっと。あ、あれ?扉が開かない…。
「おじさん。僕もう帰るからここから出して」
「駄目だ。明日の朝までそこで大人しくしてろ」
「明日になりゃ出してやるさ。店主が来るまで待ちな。ひっひっひっ」
店主⁉ もしかしてここ…ペットショップ!!!イヤだよそんな!僕にはもうグレアムさんが居るもん!
「出して!出してよ!」
「ほっとけ!」
無視された⁉
いいよ!じゃあ自力で出るから!こんな木の扉なんか!
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリガンガンガンガンガンガンカリカリカリカリカリカリ
「うがぁぁぁぁ!うるせー!!!」
「おい!木の無い牢にしろ!」
次に入れられたのは木の無い石の部屋。小さな小窓が扉の横、左右についてて、これは段ボールの箱に似てる。ペットショップからお家に持ち運びされた時の箱。
でもあれと違って石かぁ…削れるかな?あ、イケそう。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴリゴリゴリゴリゴリ
「ぐあぁぁぁぁ!うるせー!!!」
「兄貴!こいつがうるさくて眠れやしねぇ。ちょっと大人しくさせやすかい?」
「薬が効きすぎて興奮してんのかも知れねーな。手は出すな。ベッピンな状態で店主には高く売り込みてぇ」
「じゃぁ外の土倉にでも押し込んどきますかい?あそこは窓も明かりもねぇマジもんの暗闇だ。こいつも怖がって大人しくなりますぜ」
「よし。お前、こっち来い!」
「べーだ!」ガブリ!
「うわっち!くそっ!血が出た!」
「この野郎!」
「バーカ!」ガブリガブリ!
「痛えな!何て力だ!」
僕の歯は歯は歯でも刃の方だから。今まで何人血まみれにしてきたことか。なめたら…死ぬよ?キラリン!
「そこの縄でぐるぐる巻きにしろ!徹底的にだ!歩かせる足以外全部だ!」
ダンゴムシみたい…。これがおじいちゃんと時代劇で見たスマキか…。ちょっとカンドー。
でも今度はどこ連れて行くんだろう…。ちょっと待って!もしかしてあれ…リンゴだー!
「うわっ!暴れるんじゃねぇ!」
「どこに行く!この部屋に入るんじゃねぇ!」
ゴロゴロゴロ…バリン!ツルッ「きゃんっ!」
「ああっ!油壷が!」
「はははっ!零れた油に滑って転ぶとはな。馬鹿なガキだ」
なーんてね。転がりながら縄に押し込んだのは二つのリンゴ。バレないようにあとでたーべよっと。あ、お外だ。ギィィ…中も外も真っ暗。夜になっちゃった…。
「おい、そこから割った油壷の代わり取ってこい」
「おい兄貴!あぶねぇから松明持って近づくなよ…」
「悪い悪い。おいガキ。おーおー泣きそうな顔して…暗闇は怖いだろう?」
「クソガキが!」
ギィィィ、バタン!ガチャン!
怖いだろうって…? 僕は獣人ハムスター。暗闇なんかへっちゃらだよ?
縄だって一か所切れば…ガジガジガジ…ハラリ…じゃじゃーん!少し絡んでるけどこのとおり!
問題は…今僕がとてもお腹が空いているということ。もうへそくりもない…しょぼん…
「あれが油の壷…お水の壷はないかな…」
一日中何も飲んでないから喉乾いちゃった…。どっこいしょ…あっ!ガッガッガッガッターン!トットットットッ…
ヤババババ…、全部倒しちゃった…。油が地面に流れてく……けど…、ま、いっか。僕にはリンゴがあるし…って、いやぁぁぁ!超ショック…。これリンゴじゃない…。黒くて丸い…、なんだろ?グレアムさんの本で見たけど…よく分からない…ちょっと待って!ポイッ!
クンクンクン…これは!
これはレイモンドさんのソーセージ!に似た焼いたお肉の匂い…。美味しそう…。どこから…外からだ。多分ここに来るとき通った…、そういえばさっきも匂ってた!待てよ…。ここの地面は土。そして僕は穴掘り名人ハムスター。
今僕の爪は人間になっちゃったけど…僕の内ポケットにはさっきクルミの代わりに入れてきたスプーンとフォークがある!
ふっふっふ、待っててソーセージ!今行くよ!
「かなりの上玉だな…店主は大喜びなさるはずだ」
「兄貴、たしか店主は今日、留守だろ?」
「明日まで牢に監禁しておきゃいい。その間に漬けときゃ手間が省ける」
ナニコレ?ナニコレ?僕をどこ連れてくの?
「放して出して!出せってば!」
「やかましい!静かにしやがれ!」
「大人しくしてりゃいい目みせてやるっての」
いい目‼ いいことがあるのか…。じゃぁちょっとだけ。グレアムさんはまだ出てこないだろうし少し遊んで戻ればいっか。
あれ?ここは昔ペットショップで僕の隣に居たモルモットさんのケージに似てる。細長い木がタテにいっぱい並んでるタイプだ。懐かしー。
「ねーねー、良いことって何?」
「良いことか…、よしよし、大人しくこの部屋で待ってな。すぐご馳走持って来てやるからよ」
ごちそう‼…美味しいマカナイのことだよね!リュックのクッキーが無くなってたんだよね。お腹空いてたからちょうど良かった。僕ってラッキー。きっと良いことしたから良いことが返って来たんだ。ママがソウタにいつも言ってた。「人にした良いことは自分に返って来るわよ」って。
「ほらよ。御馳走だ。それ食べて一晩寝てな」ガシン!
「やったー!ごちそうだ!…ん?」
クンクンクンクン…ごちそう…?うえぇ…ここのおじさんたちってこんなの食べるんだ…。これ変な匂いしてる…。あーあ、これ絶対食べちゃダメなやつ。僕は何でもかじるけど、でも変なものは本能で分かるんだよね。ママもよくビョウインのお薬エサに混ぜてたけど僕食べなかった。
えーと、おじさんたちがよそ見してるうちにそこの穴に押し込んじゃえ。お残ししたらあの手この手で食べさせようとするもんね。
グゥゥ…しょうがない。へそくりのクルミ食べちゃおう。これで最後だけど明日はグレアムさんと食べればいいし…。
モグモグゴックン
「お、食った食った。そのうち効いてくるな…」
「トブ薬か…。気の毒にな。明日には店主が味見ってか?」
「いいから黙れ」
何話してるんだろう?でもガッカリ…。もう帰ろうっと。あ、あれ?扉が開かない…。
「おじさん。僕もう帰るからここから出して」
「駄目だ。明日の朝までそこで大人しくしてろ」
「明日になりゃ出してやるさ。店主が来るまで待ちな。ひっひっひっ」
店主⁉ もしかしてここ…ペットショップ!!!イヤだよそんな!僕にはもうグレアムさんが居るもん!
「出して!出してよ!」
「ほっとけ!」
無視された⁉
いいよ!じゃあ自力で出るから!こんな木の扉なんか!
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリガンガンガンガンガンガンカリカリカリカリカリカリ
「うがぁぁぁぁ!うるせー!!!」
「おい!木の無い牢にしろ!」
次に入れられたのは木の無い石の部屋。小さな小窓が扉の横、左右についてて、これは段ボールの箱に似てる。ペットショップからお家に持ち運びされた時の箱。
でもあれと違って石かぁ…削れるかな?あ、イケそう。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴリゴリゴリゴリゴリ
「ぐあぁぁぁぁ!うるせー!!!」
「兄貴!こいつがうるさくて眠れやしねぇ。ちょっと大人しくさせやすかい?」
「薬が効きすぎて興奮してんのかも知れねーな。手は出すな。ベッピンな状態で店主には高く売り込みてぇ」
「じゃぁ外の土倉にでも押し込んどきますかい?あそこは窓も明かりもねぇマジもんの暗闇だ。こいつも怖がって大人しくなりますぜ」
「よし。お前、こっち来い!」
「べーだ!」ガブリ!
「うわっち!くそっ!血が出た!」
「この野郎!」
「バーカ!」ガブリガブリ!
「痛えな!何て力だ!」
僕の歯は歯は歯でも刃の方だから。今まで何人血まみれにしてきたことか。なめたら…死ぬよ?キラリン!
「そこの縄でぐるぐる巻きにしろ!徹底的にだ!歩かせる足以外全部だ!」
ダンゴムシみたい…。これがおじいちゃんと時代劇で見たスマキか…。ちょっとカンドー。
でも今度はどこ連れて行くんだろう…。ちょっと待って!もしかしてあれ…リンゴだー!
「うわっ!暴れるんじゃねぇ!」
「どこに行く!この部屋に入るんじゃねぇ!」
ゴロゴロゴロ…バリン!ツルッ「きゃんっ!」
「ああっ!油壷が!」
「はははっ!零れた油に滑って転ぶとはな。馬鹿なガキだ」
なーんてね。転がりながら縄に押し込んだのは二つのリンゴ。バレないようにあとでたーべよっと。あ、お外だ。ギィィ…中も外も真っ暗。夜になっちゃった…。
「おい、そこから割った油壷の代わり取ってこい」
「おい兄貴!あぶねぇから松明持って近づくなよ…」
「悪い悪い。おいガキ。おーおー泣きそうな顔して…暗闇は怖いだろう?」
「クソガキが!」
ギィィィ、バタン!ガチャン!
怖いだろうって…? 僕は獣人ハムスター。暗闇なんかへっちゃらだよ?
縄だって一か所切れば…ガジガジガジ…ハラリ…じゃじゃーん!少し絡んでるけどこのとおり!
問題は…今僕がとてもお腹が空いているということ。もうへそくりもない…しょぼん…
「あれが油の壷…お水の壷はないかな…」
一日中何も飲んでないから喉乾いちゃった…。どっこいしょ…あっ!ガッガッガッガッターン!トットットットッ…
ヤババババ…、全部倒しちゃった…。油が地面に流れてく……けど…、ま、いっか。僕にはリンゴがあるし…って、いやぁぁぁ!超ショック…。これリンゴじゃない…。黒くて丸い…、なんだろ?グレアムさんの本で見たけど…よく分からない…ちょっと待って!ポイッ!
クンクンクン…これは!
これはレイモンドさんのソーセージ!に似た焼いたお肉の匂い…。美味しそう…。どこから…外からだ。多分ここに来るとき通った…、そういえばさっきも匂ってた!待てよ…。ここの地面は土。そして僕は穴掘り名人ハムスター。
今僕の爪は人間になっちゃったけど…僕の内ポケットにはさっきクルミの代わりに入れてきたスプーンとフォークがある!
ふっふっふ、待っててソーセージ!今行くよ!
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