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18 ムテキのハム
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こう見えて僕の嗅覚は人間の何十倍だよ?犬やネコには負けるけど…でもグレアムさんの匂いをかぎ分けるなんてラクショーなんだから。だって毎日一緒に寝てて…グレアムさんには僕のマーキングもしてあるし絶対間違えない!
それに走るのは本能!いっぱい走るのはハムの本能だから!人間なんかに負けないよ。だけどハムスター時代の僕は足が短くてちょっといまいち…、でも今の僕にはこんなに長い脚があるし…きっといっぱい走れるはず。
毎日可愛がってもらって…ここでお役に立たなきゃカイショウナシってやつだよ!意味はわかんないけど!
マシューさんが編んでくれたキャップもかぶった。正義の味方みたいなマントもバッチリ!メルビンさんが疲れた時には甘い物、って置いてったクッキーがあったから一番大きいリュックにいっぱい入れた。あ、そうそう。ほほ袋が無い!って嘆いてたら代わりにマシューさんが作ってくれたシャツの中の内ポケット。ここにも殻を剥いたクルミを詰め込んで…っと。ほら、殻付きだと重いから…。
あ、大事なこと忘れてた。前みたいに心配かけるといけないからレイモンドさんにはお手紙も書いた。「さょっとグレヤムさんのところにこってきます」って。
これで準備万端!さぁ、出発!
えっほえっほ!野を超え山を越え。山も森もへっちゃらだよ。
えっほえっほ!岩場だってスイスイだよ。
小さな洞や馬小屋があれば野宿だって全然平気!
クンクン。こっち!クンクン、あっち!
僕はムテキのハム獣人。待っててグレアムさん。大事な紙は僕が持ってく!この日のためにお使いの練習してたんだから!
僕って完璧ぃ!
🐹🐹
「おーいルーイちゃん。いるかい?グレアムに言われて様子を見に来たよ。って…これは!」
―さょっとグレヤムさんのところにこってきますー
……本当にあの子は毎回毎回…、だけどそうか…グレアムが居なくてそんなに寂しかったのか…。随分仲の良いことで…。
だからって無茶もいいとこだろ。歩いて行ったのか?すぐに探しに行かないと…。
とりあえずレイモンドに報告だな。まったく世話の焼ける…。
報告を受けたレイモンドは頭を抱え、マシューの顔色は真っ青になった。こうなると思ったよ、俺は。
「ってわけだ。お前には店があるだろ?俺が探しに行く」
「グレアムの元に…、健気だな。だが笑っては見過ごせん」
「ずっと閉じこめられてたルーイは世の中のことを良く知らないから…、お使い気分なのかな?あれほど遠いって話しておいたのに…」
まあ今回は行き先が分かっている分幾らかマシだ。それでも心配そうなマシューをレイモンドが優しく慰める。
「だが先日の騒動で分かった事だがルーイは獣人にしては五感が野生に近い」
「そうだけど…」
「レイモンド、それどういう事だ?」
「マシュー」
「うん。あのねメルビン、僕たち獣人は人間に近くなった代わりに獣としての本能は薄れてるのが普通なんだ」
つまり嗅覚も聴覚も、筋力体力も…人間以上、獣未満、それが普通の獣人。でもルーイの聴覚嗅覚は獣に近い。だからあの『幻惑の森』でもあんな小さなルーイが五感を頼りに惑わされることなく一夜を過ごせたんだとか。なるほどな。
「んじゃ匂いを追ってったってわけか。そりゃ朗報だ。グレアムの通った街道沿いに行けばルーイを拾えるって事だな。やれやれ」
「お願いメルビン。一刻も早く。キャップもマントもしていったみたいだけど…心配だよ…」
「はいよ。じゃあ急いで行ってくる」
やれやれ。娼館主に捕まるより先に見つけないとな…。
🐹🐹
すぐに来れると思ったのに…、もう3日もたっちゃった。
それもこれも、途中の川でお水を飲んでお腹をこわしちゃったから。失敗失敗。
クッキーは全部食べて無くなったけどここで会えたらヒャクネンメだからいいよね別に。
でも絶対ここ。グレアムさんはここにいる。だってここの中から僕のマーキングがプンプンしてるもん。
…なのにさっきからこの変な人が僕を通せんぼして入れてくれないの。意地悪!
「入れて!」
「駄目だ!」
「入れてよ!中にグレアムさんが居るんだから!」
「グレアムとは誰のことだ!」
「僕の飼い主だよ!」
「ではお前はその者の奴隷か?」
「奴隷はグレアムさんだよ!」
僕のために何でもするんだからグレアムさんがドレイに決まってるじゃん、そんなの!
「はあ?ではお前はなんだ?」
「ペットだよ!」
「???家畜のことか?」
ムカー!!!
「ペットはペットだよ!」
「意味がわからぬ!」
しまった、この世界で動物とは獣か家畜かお仕事を手伝うもの。ただただ可愛がられる三食昼寝付き、ペットっていう素晴らしい存在が無いことうっかり忘れてた。
「グレアムさんは僕に寝床とエサとおやつと遊び場をくれて、スゴくいっぱい優しくて何でもしてくれて…、僕を可愛いがってくれる特別な人だよ!」
「なんだ、恋人のことか」
コイビト?そっか。この世界ではこういうのコイビトって言うんだ。
「そうだよ!だから早く入れてよ!」
「だが駄目だ。お前はどこからどうみても平民の、それも獣人の子供ではないか。いいか、子供と思えばこそ優しく言い聞かせているのだ。私の上役が来ないうちに、その者が出てくるのを大人しくそこで待つがいい」
「待てないのー!」
「ルーイちゃん!」
キュッ!
暴走する馬車が前世で最後に見たクルマみたいで、ビックリしてシリモチついたら馬車からメルビンさんが飛び出した。えー、こんなとこで会うなんて偶然ー!
「な、なんて足が速いんだ…。まさかもう城まで到着してるとは…」
「メルビンさんここで何してるの?お城にご用?」
「なにをのんきに…、ルーイちゃんを探しにきたんだよ!」
僕を探しに?なんで?ちゃんと手紙おいてきたのに、メルビンさんは文字が読めないのかな?
「みれば大店の商人か?お前はどこの者だ」
「はっ!私は貴族街に店を構えるラフィエット商会の嫡男メルビンと申します。この子供は私の知り合いの知り合いで…」
「ふむふむ…」
あれ?変な人がメルビンさんと話してる…。これってチャンス?チャンスだよね?
えいっ!
「あっ!こらっ!子供!!!」
「ルーイちゃん!待って!」
待たないよ!逃げろーーー!
それに走るのは本能!いっぱい走るのはハムの本能だから!人間なんかに負けないよ。だけどハムスター時代の僕は足が短くてちょっといまいち…、でも今の僕にはこんなに長い脚があるし…きっといっぱい走れるはず。
毎日可愛がってもらって…ここでお役に立たなきゃカイショウナシってやつだよ!意味はわかんないけど!
マシューさんが編んでくれたキャップもかぶった。正義の味方みたいなマントもバッチリ!メルビンさんが疲れた時には甘い物、って置いてったクッキーがあったから一番大きいリュックにいっぱい入れた。あ、そうそう。ほほ袋が無い!って嘆いてたら代わりにマシューさんが作ってくれたシャツの中の内ポケット。ここにも殻を剥いたクルミを詰め込んで…っと。ほら、殻付きだと重いから…。
あ、大事なこと忘れてた。前みたいに心配かけるといけないからレイモンドさんにはお手紙も書いた。「さょっとグレヤムさんのところにこってきます」って。
これで準備万端!さぁ、出発!
えっほえっほ!野を超え山を越え。山も森もへっちゃらだよ。
えっほえっほ!岩場だってスイスイだよ。
小さな洞や馬小屋があれば野宿だって全然平気!
クンクン。こっち!クンクン、あっち!
僕はムテキのハム獣人。待っててグレアムさん。大事な紙は僕が持ってく!この日のためにお使いの練習してたんだから!
僕って完璧ぃ!
🐹🐹
「おーいルーイちゃん。いるかい?グレアムに言われて様子を見に来たよ。って…これは!」
―さょっとグレヤムさんのところにこってきますー
……本当にあの子は毎回毎回…、だけどそうか…グレアムが居なくてそんなに寂しかったのか…。随分仲の良いことで…。
だからって無茶もいいとこだろ。歩いて行ったのか?すぐに探しに行かないと…。
とりあえずレイモンドに報告だな。まったく世話の焼ける…。
報告を受けたレイモンドは頭を抱え、マシューの顔色は真っ青になった。こうなると思ったよ、俺は。
「ってわけだ。お前には店があるだろ?俺が探しに行く」
「グレアムの元に…、健気だな。だが笑っては見過ごせん」
「ずっと閉じこめられてたルーイは世の中のことを良く知らないから…、お使い気分なのかな?あれほど遠いって話しておいたのに…」
まあ今回は行き先が分かっている分幾らかマシだ。それでも心配そうなマシューをレイモンドが優しく慰める。
「だが先日の騒動で分かった事だがルーイは獣人にしては五感が野生に近い」
「そうだけど…」
「レイモンド、それどういう事だ?」
「マシュー」
「うん。あのねメルビン、僕たち獣人は人間に近くなった代わりに獣としての本能は薄れてるのが普通なんだ」
つまり嗅覚も聴覚も、筋力体力も…人間以上、獣未満、それが普通の獣人。でもルーイの聴覚嗅覚は獣に近い。だからあの『幻惑の森』でもあんな小さなルーイが五感を頼りに惑わされることなく一夜を過ごせたんだとか。なるほどな。
「んじゃ匂いを追ってったってわけか。そりゃ朗報だ。グレアムの通った街道沿いに行けばルーイを拾えるって事だな。やれやれ」
「お願いメルビン。一刻も早く。キャップもマントもしていったみたいだけど…心配だよ…」
「はいよ。じゃあ急いで行ってくる」
やれやれ。娼館主に捕まるより先に見つけないとな…。
🐹🐹
すぐに来れると思ったのに…、もう3日もたっちゃった。
それもこれも、途中の川でお水を飲んでお腹をこわしちゃったから。失敗失敗。
クッキーは全部食べて無くなったけどここで会えたらヒャクネンメだからいいよね別に。
でも絶対ここ。グレアムさんはここにいる。だってここの中から僕のマーキングがプンプンしてるもん。
…なのにさっきからこの変な人が僕を通せんぼして入れてくれないの。意地悪!
「入れて!」
「駄目だ!」
「入れてよ!中にグレアムさんが居るんだから!」
「グレアムとは誰のことだ!」
「僕の飼い主だよ!」
「ではお前はその者の奴隷か?」
「奴隷はグレアムさんだよ!」
僕のために何でもするんだからグレアムさんがドレイに決まってるじゃん、そんなの!
「はあ?ではお前はなんだ?」
「ペットだよ!」
「???家畜のことか?」
ムカー!!!
「ペットはペットだよ!」
「意味がわからぬ!」
しまった、この世界で動物とは獣か家畜かお仕事を手伝うもの。ただただ可愛がられる三食昼寝付き、ペットっていう素晴らしい存在が無いことうっかり忘れてた。
「グレアムさんは僕に寝床とエサとおやつと遊び場をくれて、スゴくいっぱい優しくて何でもしてくれて…、僕を可愛いがってくれる特別な人だよ!」
「なんだ、恋人のことか」
コイビト?そっか。この世界ではこういうのコイビトって言うんだ。
「そうだよ!だから早く入れてよ!」
「だが駄目だ。お前はどこからどうみても平民の、それも獣人の子供ではないか。いいか、子供と思えばこそ優しく言い聞かせているのだ。私の上役が来ないうちに、その者が出てくるのを大人しくそこで待つがいい」
「待てないのー!」
「ルーイちゃん!」
キュッ!
暴走する馬車が前世で最後に見たクルマみたいで、ビックリしてシリモチついたら馬車からメルビンさんが飛び出した。えー、こんなとこで会うなんて偶然ー!
「な、なんて足が速いんだ…。まさかもう城まで到着してるとは…」
「メルビンさんここで何してるの?お城にご用?」
「なにをのんきに…、ルーイちゃんを探しにきたんだよ!」
僕を探しに?なんで?ちゃんと手紙おいてきたのに、メルビンさんは文字が読めないのかな?
「みれば大店の商人か?お前はどこの者だ」
「はっ!私は貴族街に店を構えるラフィエット商会の嫡男メルビンと申します。この子供は私の知り合いの知り合いで…」
「ふむふむ…」
あれ?変な人がメルビンさんと話してる…。これってチャンス?チャンスだよね?
えいっ!
「あっ!こらっ!子供!!!」
「ルーイちゃん!待って!」
待たないよ!逃げろーーー!
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