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11 断固拒否
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「ルーイ、本当にすまなかった…。理由も聞かないで頭ごなしに叱るなど…」
ピルピル…
「お願いだルーイ、顔を見せてくれないか…」
プルプル…
「ああ…私を嫌いになってしまったのか…」
だってだってビックリして…。僕の耳はとってもいいからグレアムさんの声もコウオンシツなんだよ。あの時の声はとってもリンジョウカン溢れてて…僕…おどろいて息の根が止まっちゃった。
それで目が覚めたらマシューさんちの、この世界で最初に居た記念の部屋で…。
マシューさんがグレアムさんが会いたがってる、って言ったけどまたあんなに大声出されたら僕シピピ…!ってなっちゃう…。
そう思ったら思わず布団に潜ってた。避難避難。ここには巣箱が無いから…。
「ルーイ、ではそのままでいいから聞いて欲しい…。いきなり怒鳴った事は…本当にすまなかった…。だがそもそもどうして森に入ったんだ?遠くに行ってはいけないとあれほど言っただろう?」
言われたけど…、でも…だって…。
言ったら絶対ダメって言うもん。それにグレアムさんへのプレゼントなのにグレアムさんがいたら探しに行けないよ。
「それにも何か理由があるのだろう?もう分かった。ルーイは理由も無く勝手はしない。そうだな?」
あーあ、なんかもうめんどくさい。あっちいっちゃダメ、こっちいっちゃダメって…まるでママみたい。もういいや。
だって僕はケージを飛び出し広い世界に生まれ変わったハムスターならぬムテキのハム獣人。飼い主って…必要?
…いらないかも…。
…お礼のつもりだったけどセンベツにしちゃおう。
🐹🐹
「お礼を…」
「何?ルーイ、今何と?」
「グレアムさんはいつも色々してくれるから…、だからお礼がしたくて…」
「お、お礼など…いや待て。だから森に入ったと?ルーイ、それと森とがどう関係…」
「ポシェットの中…」
「ポシェット…、あ、ああ。この小さな鞄のことか。この中…、これは…?」
「グレアムさんにあげる。いつもありがとう。でもさようなら」
鞄の中から出てきたのは小さな林檎と小さなベリー。
彼はこれらを採りに森へ入ったというのか…。私に礼を、そんな事の為に…。
胸に染みわたる彼からの好意。この感情をどう言葉にすればいいのか…。
「…っ!ルーイ!ああルーイ…。分かった。全部私が悪かった。だからもう屋敷に帰ろう」
「もういいの。だからさようなら。僕やっぱりあの小屋に戻る」
「駄目だ!そ、そんなことはレイだとて許可しない!」
「じゃあさっきのうろに住む。あそこ静かだし。木の実もいっぱいで僕ちっとも困らない。さようなら」
「何という事を…、もっと駄目だ!!!」
「ぴゃっ!」
私の大声に飛び込んできたマシューとレイモンド。後ろにはメルビンまでもが心配そうに覗き込んでいる。
「グレアム様!怒鳴っては駄目だとあれ程…、ルーイ大丈夫?」
「…全然大丈夫じゃない…」
「おいグレアム、お前…」
「分かっている。だがルーイはあの洞に戻ると言っているんだ。私を置いて洞に戻ると…。そんなことが許されると思うのか!」
「ルーイ、だ、だめだよそんな…」
「ルーイ、一人森では暮らせない。馬鹿を言うな」
「僕大丈夫」
「ルーイちゃん…。流石にそれは…」
「大丈夫」
「ねぇルーイ」
「大丈夫」
顔を見合わせるレイモンドとマシュー。肩を竦めるメルビン。だがいつまでたってもルーイの顔は布団の中から出てこない。
「もういい。強硬手段だが仕方がない」
「どうするって…?お、おい!よせってグレアム!」
「キュッ!」
私は力任せにルーイを引っ張り出すと小脇に抱え外へ出た。後ろで三人が何か叫んでいるが知った事か!
今ここで手を離したら彼の気持ちは戻らない、私にはそう思えて仕方なかった。
不安だったのだ。この小さな獣人を失う、それだけの事が途轍もなく…。
🐹🐹
僕を抱えたままグレアムさんは屋敷まで一目散!馬も使わず走り続けた。いいよねグレアムさんは足が長くて。あっという間にいつものお屋敷。
って言うか、なんで勝手に連れてきちゃったの?僕の話し聞いてた?
「もう!離して~!」
「良いだろう、離してやる!」
「ぴゃ!」
ボスッって放り出されたのはベッドの上。しばらくぶりの僕の巣箱…。巣箱の中にはたくさんのクッションが集めてある。
ここってばオガクズが無いんだよね…。だから代わりに集めたの。ワタみたいで気持ちイイ~!
それからクッションの下にはたくさんの木の実。ダメって言われたけど…しーらない!
あ…自分の匂い、ホッとする。マシューさんちのマクラは固いんだよね。ここのはワタみたいにフワフワなの。それじゃ…お布団お布団…。
「どうしたルーイ、眠るのか?疲れているのだな…。話は起きてから改めてしよう。今は休むといい…」
おやすみなさいグレアムさん。一回寝るけど起きたらさっさと出て行こう…。でも今はお布団が一番大事…グー…
目が覚めたら横の机には食べきれない程いっぱいのマカナイが!
こ、これって食べて良いって事だよね?…じ、じゃあ食べ終わってから出てこうかな?せっかくだもんね?いただきまーす!
ムシャムシャムシャ…グー…
いっけなーい!食べ終わったらうっかり寝ちゃった。へそくりのクルミ取ってこ…、
あ、リンゴだ。美味しそう…。た、食べてもいいよね?だって僕が採って来たんだもん。いただきまーす!
シャクシャクシャク…グー…
はっ!いつの間にか夜に…、時間が消えた…。
あ…、ヘチマだ!わーい!かじっても良いのかな…、ええい、かじっちゃえ!た、楽しーい!
バリボリバリ…グー…
ピピピ…チュンチュン…
「おはようルーイ。もう起きたのか…」
「あ、おはようグレアムさん。今日もいい天気だね」
「その、ルーイ…、昨日のことだが私は…」
「お腹空いた?すぐに卵ゆでちゃうから待っててね!」
「ル、あ?ああ…」
ん?そう言えば起きたら何かしようと思ってたんだけど…なんだっけ?…ま、いっか。
ピルピル…
「お願いだルーイ、顔を見せてくれないか…」
プルプル…
「ああ…私を嫌いになってしまったのか…」
だってだってビックリして…。僕の耳はとってもいいからグレアムさんの声もコウオンシツなんだよ。あの時の声はとってもリンジョウカン溢れてて…僕…おどろいて息の根が止まっちゃった。
それで目が覚めたらマシューさんちの、この世界で最初に居た記念の部屋で…。
マシューさんがグレアムさんが会いたがってる、って言ったけどまたあんなに大声出されたら僕シピピ…!ってなっちゃう…。
そう思ったら思わず布団に潜ってた。避難避難。ここには巣箱が無いから…。
「ルーイ、ではそのままでいいから聞いて欲しい…。いきなり怒鳴った事は…本当にすまなかった…。だがそもそもどうして森に入ったんだ?遠くに行ってはいけないとあれほど言っただろう?」
言われたけど…、でも…だって…。
言ったら絶対ダメって言うもん。それにグレアムさんへのプレゼントなのにグレアムさんがいたら探しに行けないよ。
「それにも何か理由があるのだろう?もう分かった。ルーイは理由も無く勝手はしない。そうだな?」
あーあ、なんかもうめんどくさい。あっちいっちゃダメ、こっちいっちゃダメって…まるでママみたい。もういいや。
だって僕はケージを飛び出し広い世界に生まれ変わったハムスターならぬムテキのハム獣人。飼い主って…必要?
…いらないかも…。
…お礼のつもりだったけどセンベツにしちゃおう。
🐹🐹
「お礼を…」
「何?ルーイ、今何と?」
「グレアムさんはいつも色々してくれるから…、だからお礼がしたくて…」
「お、お礼など…いや待て。だから森に入ったと?ルーイ、それと森とがどう関係…」
「ポシェットの中…」
「ポシェット…、あ、ああ。この小さな鞄のことか。この中…、これは…?」
「グレアムさんにあげる。いつもありがとう。でもさようなら」
鞄の中から出てきたのは小さな林檎と小さなベリー。
彼はこれらを採りに森へ入ったというのか…。私に礼を、そんな事の為に…。
胸に染みわたる彼からの好意。この感情をどう言葉にすればいいのか…。
「…っ!ルーイ!ああルーイ…。分かった。全部私が悪かった。だからもう屋敷に帰ろう」
「もういいの。だからさようなら。僕やっぱりあの小屋に戻る」
「駄目だ!そ、そんなことはレイだとて許可しない!」
「じゃあさっきのうろに住む。あそこ静かだし。木の実もいっぱいで僕ちっとも困らない。さようなら」
「何という事を…、もっと駄目だ!!!」
「ぴゃっ!」
私の大声に飛び込んできたマシューとレイモンド。後ろにはメルビンまでもが心配そうに覗き込んでいる。
「グレアム様!怒鳴っては駄目だとあれ程…、ルーイ大丈夫?」
「…全然大丈夫じゃない…」
「おいグレアム、お前…」
「分かっている。だがルーイはあの洞に戻ると言っているんだ。私を置いて洞に戻ると…。そんなことが許されると思うのか!」
「ルーイ、だ、だめだよそんな…」
「ルーイ、一人森では暮らせない。馬鹿を言うな」
「僕大丈夫」
「ルーイちゃん…。流石にそれは…」
「大丈夫」
「ねぇルーイ」
「大丈夫」
顔を見合わせるレイモンドとマシュー。肩を竦めるメルビン。だがいつまでたってもルーイの顔は布団の中から出てこない。
「もういい。強硬手段だが仕方がない」
「どうするって…?お、おい!よせってグレアム!」
「キュッ!」
私は力任せにルーイを引っ張り出すと小脇に抱え外へ出た。後ろで三人が何か叫んでいるが知った事か!
今ここで手を離したら彼の気持ちは戻らない、私にはそう思えて仕方なかった。
不安だったのだ。この小さな獣人を失う、それだけの事が途轍もなく…。
🐹🐹
僕を抱えたままグレアムさんは屋敷まで一目散!馬も使わず走り続けた。いいよねグレアムさんは足が長くて。あっという間にいつものお屋敷。
って言うか、なんで勝手に連れてきちゃったの?僕の話し聞いてた?
「もう!離して~!」
「良いだろう、離してやる!」
「ぴゃ!」
ボスッって放り出されたのはベッドの上。しばらくぶりの僕の巣箱…。巣箱の中にはたくさんのクッションが集めてある。
ここってばオガクズが無いんだよね…。だから代わりに集めたの。ワタみたいで気持ちイイ~!
それからクッションの下にはたくさんの木の実。ダメって言われたけど…しーらない!
あ…自分の匂い、ホッとする。マシューさんちのマクラは固いんだよね。ここのはワタみたいにフワフワなの。それじゃ…お布団お布団…。
「どうしたルーイ、眠るのか?疲れているのだな…。話は起きてから改めてしよう。今は休むといい…」
おやすみなさいグレアムさん。一回寝るけど起きたらさっさと出て行こう…。でも今はお布団が一番大事…グー…
目が覚めたら横の机には食べきれない程いっぱいのマカナイが!
こ、これって食べて良いって事だよね?…じ、じゃあ食べ終わってから出てこうかな?せっかくだもんね?いただきまーす!
ムシャムシャムシャ…グー…
いっけなーい!食べ終わったらうっかり寝ちゃった。へそくりのクルミ取ってこ…、
あ、リンゴだ。美味しそう…。た、食べてもいいよね?だって僕が採って来たんだもん。いただきまーす!
シャクシャクシャク…グー…
はっ!いつの間にか夜に…、時間が消えた…。
あ…、ヘチマだ!わーい!かじっても良いのかな…、ええい、かじっちゃえ!た、楽しーい!
バリボリバリ…グー…
ピピピ…チュンチュン…
「おはようルーイ。もう起きたのか…」
「あ、おはようグレアムさん。今日もいい天気だね」
「その、ルーイ…、昨日のことだが私は…」
「お腹空いた?すぐに卵ゆでちゃうから待っててね!」
「ル、あ?ああ…」
ん?そう言えば起きたら何かしようと思ってたんだけど…なんだっけ?…ま、いっか。
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