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7 兄弟ケンカ
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「何だ。使用人かと思えば獣人の愛玩物か。もの好きな…。はっ!人嫌いもここに極まれりだな。放逐されたとはいえ侯爵家の二男だった男が情けない…」
だからアイガンブツって何?よく分からないけどそれを聞いたグレアムさんはものすごい勢いで怒りだした。
「私は放逐されたのではない!自ら家を出たのだ!それからルーイはそう言った類の者ではない。訂正してもらおう!」
「黙れ!弟とは言えお前は男爵。私はオールドリッチ侯爵家の次期当主だ。立場をわきまえてもらおう」
「聞き捨てなりませんねドルトン兄さん。父様はまだ後継指名をしてはおりません。それを得るのは私でしょう。ドルトン兄さんは伯爵位を貰い満足されてはいかがです」
「何だと…?」
あわあわしてる間に兄弟ケンカが始まってしまった。でも彼らは大人だからユウタとソウタのケンカみたいに微笑ましさなんかちっともない。
「よせ!私の屋敷内で醜い争いは止めてもらおう。そう言ったくだらぬ争いが嫌で私は家を出たのだというのに」
「よく言う。この場でつまらぬ誤魔化しは無用だ」
「兄さん…、それはどう言う…」
「社交すら疎かにして魔法塔に入り浸り、それでも『弾丸』の一つでも生えるかと思えば、あれほど修練をつんだところで『解読』などという文官向け…」
「それだけではありません。暴虐無人な振舞いで学内のみならず周囲を怒らせてはどれほど家門に迷惑をかけたことか」
「挙句女嫌いだから結婚は出来ぬとぬかすこの役立たずが。お前など最初から後継争いの面子に入ってもおらぬのに何が争いだ」
「それにいくら下位貴族であろうと貴族は貴族。侯爵家を出たからと言って品位を損なう振る舞いは感心しませんね。兄さんの弟であることを恥にしないでいただきたい。獣人を相手になど…」
「ジュール!」
どうしよう…。このままだともっとヒドイ言い合いになりそう…。兄弟なんだから仲良くしようよ。ユウタとソウタだってママに言われて仲直りしたよ?う~ん、僕にも出来るかな…。
「待って待って!グレアムさんは何でも出来るんだよ。役立たずなんかじゃないよ」
「ルーイ、いいから向こうへ行ってなさい」
「ううん。だってこのひと恥って言ったよ?どうして?グレアムさんはこんなにスゴイのに」
「獣人ごときに何が分かる。これだから教養の無いものは…」
「兄さん、獣人に庇われるとは…。男爵位とは言え貴族としての矜持はもうございませんか」
ムカー!なんかすごくバカにされたのは本能で分かるんだから!プンプン!
「獣人とかダンシャクとか関係ない!グレアムさんはね、お家の人に迷惑かけないようにって、、すごくいっぱい頑張って『カイドク』を手に入れたんだよ。それで今だってお城のお仕事してて…、それって自分で探して手に入れた自分だけの宝物なんだから。スゴイし誰よりリッパでしょ?それに、それに、毎日僕にご飯を食べさせても困らないくらいお金だってあるんだから!おやつもだよ!」
「ははははは!下らん。はした金だ。獣人には分からんのも無理はないか」
「そもそも職を持つ貴族はそれだけで下に見られる。立派では無いよ。君には分からないだろうけど」
分かるもん!働いたあとに食べるご飯は美味しいってパパもママも言ってたし!
「お仕事したらリッパじゃないなんておかしいの。じゃああなたたちはお仕事してないの?」
「私もジュールも父から潤沢な手当てを得ている。働かずともグレアムより多額のな」
「僕知ってる!そういうのドラムスコって言うんだよ!」
お昼のドラマで観たもん!
「なっ、何だと!ふ、不敬な…」
「グレアム兄さんの玩具だと思って調子に乗るな!」
「だって!」
「止めるんだルーイ。兄さんたちももう帰ってもらおう。そもそも今日は何をしにいらしたのだ。私に用があったわけでもあるまい!」
「父に言われて来たのだよ。身を持ち崩していないか確かめてくるように、とな。」
「反省しているようならアストリー伯爵家の令嬢と縁談をまとめても良いとまで仰っていたのに…、愚かですね、グレアム兄さん」
僕の前に出て二人に向き合うグレアムさんの目は今までになく悲しそうで…、なんだか僕まで泣いちゃいそう…。
「そうか。兄さん…、あなたたちの誰一人私を理解しようとは思われないのだな。…血のつながった家族であればこそ、いつかはお分かりいただけるかと思ったが…」
「何をだ」
「地位も名誉も私には不用なものだ。私はどんな争いとも無縁な場所で静かに暮らせればそれで良かったというのに…。家を出た私はあなた方に何ひとつ迷惑をかけてはいないはずだ。なのに何故わざわざこうして出向いてまで私を蔑み、あの醜悪な社交界に引き戻そうとされるのだ。」
「兄弟なればこそ慮ってやったというに…分からないのか。何が城の仕事だ。高位の文官ないざ知らず…裏方ではないか!」
「…もう行きましょうドルトン兄さん。これ以上話しても無駄でしょう。」
「ああそうしてくれ。なんなら絶縁してくれても構わない」
「父にはそう伝えておこう…」
「家門の恥になりませんよう…」
その言葉を最期にイヤな二人は出て行った…。ベーだ!もう来るな!
「ゴメンねグレアムさん…。本当は仲直りして欲しかったのに…失敗しちゃった」
「いいやルーイ。お前の言葉がどれほど嬉しかったか…。二十数年共にした兄より出会って半年のお前の方が私を分ってくれるんだな。」
「あのね、僕思ったんだけど」
「何をだ?」
「僕はエライ貴族のお兄さんや弟さんよりダンシャクでもグレアムさんの方が好き。パパとママとおじいちゃん以外でグレアムさんが一番好き。だからグレアムさん、家族の人と仲直り出来なくっても淋しくないよ」
「ルーイ…、そばにいてくれるのだな…」
ギュゥゥゥって…僕はそのあとずいぶん長い間抱きしめられていた。それから二人でご飯を食べに行って、何も無かったようにいつもの時間が戻る。
だけど翌日からのグレアムさんは…
なんだかそれまでとは様子が違ったんだよね。どうしたのかな?
だからアイガンブツって何?よく分からないけどそれを聞いたグレアムさんはものすごい勢いで怒りだした。
「私は放逐されたのではない!自ら家を出たのだ!それからルーイはそう言った類の者ではない。訂正してもらおう!」
「黙れ!弟とは言えお前は男爵。私はオールドリッチ侯爵家の次期当主だ。立場をわきまえてもらおう」
「聞き捨てなりませんねドルトン兄さん。父様はまだ後継指名をしてはおりません。それを得るのは私でしょう。ドルトン兄さんは伯爵位を貰い満足されてはいかがです」
「何だと…?」
あわあわしてる間に兄弟ケンカが始まってしまった。でも彼らは大人だからユウタとソウタのケンカみたいに微笑ましさなんかちっともない。
「よせ!私の屋敷内で醜い争いは止めてもらおう。そう言ったくだらぬ争いが嫌で私は家を出たのだというのに」
「よく言う。この場でつまらぬ誤魔化しは無用だ」
「兄さん…、それはどう言う…」
「社交すら疎かにして魔法塔に入り浸り、それでも『弾丸』の一つでも生えるかと思えば、あれほど修練をつんだところで『解読』などという文官向け…」
「それだけではありません。暴虐無人な振舞いで学内のみならず周囲を怒らせてはどれほど家門に迷惑をかけたことか」
「挙句女嫌いだから結婚は出来ぬとぬかすこの役立たずが。お前など最初から後継争いの面子に入ってもおらぬのに何が争いだ」
「それにいくら下位貴族であろうと貴族は貴族。侯爵家を出たからと言って品位を損なう振る舞いは感心しませんね。兄さんの弟であることを恥にしないでいただきたい。獣人を相手になど…」
「ジュール!」
どうしよう…。このままだともっとヒドイ言い合いになりそう…。兄弟なんだから仲良くしようよ。ユウタとソウタだってママに言われて仲直りしたよ?う~ん、僕にも出来るかな…。
「待って待って!グレアムさんは何でも出来るんだよ。役立たずなんかじゃないよ」
「ルーイ、いいから向こうへ行ってなさい」
「ううん。だってこのひと恥って言ったよ?どうして?グレアムさんはこんなにスゴイのに」
「獣人ごときに何が分かる。これだから教養の無いものは…」
「兄さん、獣人に庇われるとは…。男爵位とは言え貴族としての矜持はもうございませんか」
ムカー!なんかすごくバカにされたのは本能で分かるんだから!プンプン!
「獣人とかダンシャクとか関係ない!グレアムさんはね、お家の人に迷惑かけないようにって、、すごくいっぱい頑張って『カイドク』を手に入れたんだよ。それで今だってお城のお仕事してて…、それって自分で探して手に入れた自分だけの宝物なんだから。スゴイし誰よりリッパでしょ?それに、それに、毎日僕にご飯を食べさせても困らないくらいお金だってあるんだから!おやつもだよ!」
「ははははは!下らん。はした金だ。獣人には分からんのも無理はないか」
「そもそも職を持つ貴族はそれだけで下に見られる。立派では無いよ。君には分からないだろうけど」
分かるもん!働いたあとに食べるご飯は美味しいってパパもママも言ってたし!
「お仕事したらリッパじゃないなんておかしいの。じゃああなたたちはお仕事してないの?」
「私もジュールも父から潤沢な手当てを得ている。働かずともグレアムより多額のな」
「僕知ってる!そういうのドラムスコって言うんだよ!」
お昼のドラマで観たもん!
「なっ、何だと!ふ、不敬な…」
「グレアム兄さんの玩具だと思って調子に乗るな!」
「だって!」
「止めるんだルーイ。兄さんたちももう帰ってもらおう。そもそも今日は何をしにいらしたのだ。私に用があったわけでもあるまい!」
「父に言われて来たのだよ。身を持ち崩していないか確かめてくるように、とな。」
「反省しているようならアストリー伯爵家の令嬢と縁談をまとめても良いとまで仰っていたのに…、愚かですね、グレアム兄さん」
僕の前に出て二人に向き合うグレアムさんの目は今までになく悲しそうで…、なんだか僕まで泣いちゃいそう…。
「そうか。兄さん…、あなたたちの誰一人私を理解しようとは思われないのだな。…血のつながった家族であればこそ、いつかはお分かりいただけるかと思ったが…」
「何をだ」
「地位も名誉も私には不用なものだ。私はどんな争いとも無縁な場所で静かに暮らせればそれで良かったというのに…。家を出た私はあなた方に何ひとつ迷惑をかけてはいないはずだ。なのに何故わざわざこうして出向いてまで私を蔑み、あの醜悪な社交界に引き戻そうとされるのだ。」
「兄弟なればこそ慮ってやったというに…分からないのか。何が城の仕事だ。高位の文官ないざ知らず…裏方ではないか!」
「…もう行きましょうドルトン兄さん。これ以上話しても無駄でしょう。」
「ああそうしてくれ。なんなら絶縁してくれても構わない」
「父にはそう伝えておこう…」
「家門の恥になりませんよう…」
その言葉を最期にイヤな二人は出て行った…。ベーだ!もう来るな!
「ゴメンねグレアムさん…。本当は仲直りして欲しかったのに…失敗しちゃった」
「いいやルーイ。お前の言葉がどれほど嬉しかったか…。二十数年共にした兄より出会って半年のお前の方が私を分ってくれるんだな。」
「あのね、僕思ったんだけど」
「何をだ?」
「僕はエライ貴族のお兄さんや弟さんよりダンシャクでもグレアムさんの方が好き。パパとママとおじいちゃん以外でグレアムさんが一番好き。だからグレアムさん、家族の人と仲直り出来なくっても淋しくないよ」
「ルーイ…、そばにいてくれるのだな…」
ギュゥゥゥって…僕はそのあとずいぶん長い間抱きしめられていた。それから二人でご飯を食べに行って、何も無かったようにいつもの時間が戻る。
だけど翌日からのグレアムさんは…
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