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at 朝市
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早朝、港では多くの小型漁船が魚を水揚げしている。そして選別を終えると中央広場で販売が始まるのだ。これは業者向けのものであり、彼らはここで買い付け、いったん氷結魔法で凍らせて遠方へと運んでいくのだが、氷結魔法で凍らせた魚は風味がかなり落ちてしまう。だからこそ現地で食べる鮮魚に価値があるのだ。
そしてそんな働き者たちの朝食として、売り物にならない魚なんかを焼いたり煮たり包んだりして屋台で販売しているのだが僕のお目当てはソレである。
「アーニー!こっちこっち!」
「うおっ!美味そう」
「店主、これは?」
「茹でたマティ貝だよ」
「二皿くれる」
「毎度有り!」
うーん、ガーリックとオリーブオイルで和えたアヒージョ風。獲れたては格別だな!
「うまいな!おいレジー、あっちのも食おうぜ」
「うっ!マグロの串焼き!!!店主!5本頂戴!」
「あいよ!マギーロの串焼き5本!」
うまうまうまま…。最高…。エトゥーリアの海はサーモンやタラやニシンなんかはあったのにマグロやカツオがなかったんだよね…、これだよこれ!
「今度ニコも連れてきてあげようかな。お寿司好きだって言ってたしきっと喜ぶ」
「スシ…?はよくわからねぇが、そういやあん時もシャリムと戻ってきたあと岸で魚採ってたな。魔法で」
「え、そうなの?」
「自分で焼いて食べるって言ってたぜ。叩きが何とか…」
「タタキ…カツオか!いつの間に…」
「ははっ、さすがに怒り狂ってるお前の前じゃ言えなかったんだろ」
うーん、せっかくの配慮も今こうしてアーニーがバラしてるから台無しだけどね…。
そのアーニーは流通の陸路についていろいろとご意見があるようだ。
「そういやベルト地帯の地下はどうなったんだよ」」
「シューターの事?あれはいつでも稼働可能だよ。大した仕掛けじゃないしね」
「ゴチャゴチャ言わず、ここからウエストエンドまで地下道でつなぎゃいいじゃねぇか」
「箱一個分程度の爆速シューターなら数時間で送れるだろうけど…、ナバテアの山からウエストエンドの西山までは救助時のシュバルツたちでさえ半月かかったんだよ?」
「半月か…」
一般の人が半月以上も地下を進むとか…ないでしょ。気がおかしくなるって。地下のトンネルなんて列車も走らせられないし。あれは生死をかけ極限状態の彼らだから出来たこと。頼もしいヴォルフやドンキーさん達もついてたし。
「そもそもウエストエンド側は例え地下でも封鎖石がある限り誰でもは入れないでしょ。やっぱり地下トンネルは急ぎの荷物限定で」
「あーそうか…、なら人の移動はレイジタウンと王都駅を列車で繋いだ方がいいな」
「そうだね…」
「エンマの向こう、ウルグレイスまではもう線路完成したんだろ?それってエトゥーリアの東部からも利用できるってことだよな」
「うん。エトゥーリアの王都からならかなり近い」
「こことトラキアの東西、それからこことエトゥーリアの南北もつなげてやれよ。そうしたらエトゥーリアの西部からも移動しやすいだろ?」
「…観光地化するなら必要不可欠か…」
路線図がどんどん拡がっていく…。とりあえず急いでアルバートに要請しなくては。
文明のススメ過ぎを推奨しない僕ではあるが、現実問題、三か国が同盟を結ぶ現状で効率よく物事を進めるには物理的な距離感を近づけるのは必須である。糸電話やクルッポーより普及しやすいもので。つまり馬車列車で移動時間を短縮し…
そして今、ビフさんの力で中継用の電波塔が建とうとしている。魔ガラケーの普及…、ついにここまで。
因みにウエストエンドとクーデンホーフはすでに通信可能である。そしてクラレンス王都では電波塔の建設が急ピッチで進められている。
「アーニー、現地の人夫は揃えてあるからエトゥーリアとウルグレイス…、完成までの目途は半年ね。よろしく」
「なに‼ お前…、…この魔王め…」
「はぁん!?」
そんな風に気安く話をしながら、お土産にタコのカクテルとアサリのワイン蒸し、そしてカツオのカマ焼きを買い込み、ようやく官舎に戻ったのはすでに9時をまわった頃。外に出たがるフィンに散々振りまわされたヴォルフから文句を言われたのは言うまでもない…。
「午後は灯台を見学に行くよ!」
これも新たな観光名所の一つ。港に設置した灯台。これからは遠洋漁業や長距離の商船も運航が始まるのだ。灯台は必須である。
「レジー様、灯台ってあそこに見える高い塔のことですか?」
「そう。あれはね、中にチカチカ光る魔石が仕込んであって遠くの船が迷わないよう目印になるんだよ」
「中に入っていいんですか?」
「魔石の下は展望フロアになってるからね。大丈夫だよ。ウィルは高いところ平気?足元強化水晶張りだけど…」
「平気です。ダンジョンランドのトロッコも急降下平気でしたし」
意外な事実。コリンの方が怖がりなのかな。性格はウィルの方が泣き虫なのに。
「俺は遠慮する。ここで寝ているからフィンを頼む」
「あれヴォルフ、なんで…?って、もしや!」
「ヴォルフ、お前高い所が苦手なのか?」
「あ…、イソヒヨドリとナバテア島の空に浮かんだ時も嫌がってた…」
「チッ」
舌打ちしたよこの人。…ってことは図星か…。
「何で?獣人族は高地の山中とかに居たじゃない?」
「…山の高さと高い塔は違う…」
「標高が高いのは良いんだ…、つまり視界の問題ってことか。フィン!フィンは平気かな?」
「嫌がるようならすぐ戻せ。いいか、必ずだぞ!」
思いのほか過保護だな…。まあヴォルフはオオカミであってライオンじゃないし…崖からは突き落とさないか。
でも結局フィンはキャッキャ言って大喜びしてたけどね。
そしてそんな働き者たちの朝食として、売り物にならない魚なんかを焼いたり煮たり包んだりして屋台で販売しているのだが僕のお目当てはソレである。
「アーニー!こっちこっち!」
「うおっ!美味そう」
「店主、これは?」
「茹でたマティ貝だよ」
「二皿くれる」
「毎度有り!」
うーん、ガーリックとオリーブオイルで和えたアヒージョ風。獲れたては格別だな!
「うまいな!おいレジー、あっちのも食おうぜ」
「うっ!マグロの串焼き!!!店主!5本頂戴!」
「あいよ!マギーロの串焼き5本!」
うまうまうまま…。最高…。エトゥーリアの海はサーモンやタラやニシンなんかはあったのにマグロやカツオがなかったんだよね…、これだよこれ!
「今度ニコも連れてきてあげようかな。お寿司好きだって言ってたしきっと喜ぶ」
「スシ…?はよくわからねぇが、そういやあん時もシャリムと戻ってきたあと岸で魚採ってたな。魔法で」
「え、そうなの?」
「自分で焼いて食べるって言ってたぜ。叩きが何とか…」
「タタキ…カツオか!いつの間に…」
「ははっ、さすがに怒り狂ってるお前の前じゃ言えなかったんだろ」
うーん、せっかくの配慮も今こうしてアーニーがバラしてるから台無しだけどね…。
そのアーニーは流通の陸路についていろいろとご意見があるようだ。
「そういやベルト地帯の地下はどうなったんだよ」」
「シューターの事?あれはいつでも稼働可能だよ。大した仕掛けじゃないしね」
「ゴチャゴチャ言わず、ここからウエストエンドまで地下道でつなぎゃいいじゃねぇか」
「箱一個分程度の爆速シューターなら数時間で送れるだろうけど…、ナバテアの山からウエストエンドの西山までは救助時のシュバルツたちでさえ半月かかったんだよ?」
「半月か…」
一般の人が半月以上も地下を進むとか…ないでしょ。気がおかしくなるって。地下のトンネルなんて列車も走らせられないし。あれは生死をかけ極限状態の彼らだから出来たこと。頼もしいヴォルフやドンキーさん達もついてたし。
「そもそもウエストエンド側は例え地下でも封鎖石がある限り誰でもは入れないでしょ。やっぱり地下トンネルは急ぎの荷物限定で」
「あーそうか…、なら人の移動はレイジタウンと王都駅を列車で繋いだ方がいいな」
「そうだね…」
「エンマの向こう、ウルグレイスまではもう線路完成したんだろ?それってエトゥーリアの東部からも利用できるってことだよな」
「うん。エトゥーリアの王都からならかなり近い」
「こことトラキアの東西、それからこことエトゥーリアの南北もつなげてやれよ。そうしたらエトゥーリアの西部からも移動しやすいだろ?」
「…観光地化するなら必要不可欠か…」
路線図がどんどん拡がっていく…。とりあえず急いでアルバートに要請しなくては。
文明のススメ過ぎを推奨しない僕ではあるが、現実問題、三か国が同盟を結ぶ現状で効率よく物事を進めるには物理的な距離感を近づけるのは必須である。糸電話やクルッポーより普及しやすいもので。つまり馬車列車で移動時間を短縮し…
そして今、ビフさんの力で中継用の電波塔が建とうとしている。魔ガラケーの普及…、ついにここまで。
因みにウエストエンドとクーデンホーフはすでに通信可能である。そしてクラレンス王都では電波塔の建設が急ピッチで進められている。
「アーニー、現地の人夫は揃えてあるからエトゥーリアとウルグレイス…、完成までの目途は半年ね。よろしく」
「なに‼ お前…、…この魔王め…」
「はぁん!?」
そんな風に気安く話をしながら、お土産にタコのカクテルとアサリのワイン蒸し、そしてカツオのカマ焼きを買い込み、ようやく官舎に戻ったのはすでに9時をまわった頃。外に出たがるフィンに散々振りまわされたヴォルフから文句を言われたのは言うまでもない…。
「午後は灯台を見学に行くよ!」
これも新たな観光名所の一つ。港に設置した灯台。これからは遠洋漁業や長距離の商船も運航が始まるのだ。灯台は必須である。
「レジー様、灯台ってあそこに見える高い塔のことですか?」
「そう。あれはね、中にチカチカ光る魔石が仕込んであって遠くの船が迷わないよう目印になるんだよ」
「中に入っていいんですか?」
「魔石の下は展望フロアになってるからね。大丈夫だよ。ウィルは高いところ平気?足元強化水晶張りだけど…」
「平気です。ダンジョンランドのトロッコも急降下平気でしたし」
意外な事実。コリンの方が怖がりなのかな。性格はウィルの方が泣き虫なのに。
「俺は遠慮する。ここで寝ているからフィンを頼む」
「あれヴォルフ、なんで…?って、もしや!」
「ヴォルフ、お前高い所が苦手なのか?」
「あ…、イソヒヨドリとナバテア島の空に浮かんだ時も嫌がってた…」
「チッ」
舌打ちしたよこの人。…ってことは図星か…。
「何で?獣人族は高地の山中とかに居たじゃない?」
「…山の高さと高い塔は違う…」
「標高が高いのは良いんだ…、つまり視界の問題ってことか。フィン!フィンは平気かな?」
「嫌がるようならすぐ戻せ。いいか、必ずだぞ!」
思いのほか過保護だな…。まあヴォルフはオオカミであってライオンじゃないし…崖からは突き落とさないか。
でも結局フィンはキャッキャ言って大喜びしてたけどね。
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