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goto ハネムーン
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僕の血を受け継ぐ僕の分身…
男同士の婚姻があると聞いた時から、漠然と後継者は養子…とか、そんなことを考えていたのに、まさか実現に至るとは、『恋エロ』の世界、恐るべし…!
事の発端となった、受精の魔法陣を持つウルグレイスの王から直々に指名を受けた側夫であるセザール。彼の実家デュトワ家からはセザールの髪の毛が届けられた。それはもう、恭しくバラの刺繍が施されたシルクの布袋に納められた麗しい髪が一房…。
大事な友だちであるセザール。だけど僕は一応確認したのだ。「このままで良いの?」って。でもそれに返ってきた返事は、「君のことは大好きだけど、同じくらいアルバートも大切な友人なんだ。彼と気まずいのはね」だった。彼はもう揺らいだりしない。その背中は凛としてその視線は前を見ている。僕も大好きだよセザール…。
そしてもう一人の側夫であるシュバルツは、まさかの×××を、と言って譲らなかった。何故ならエルダーに言われたからだ。
ハーフエルフの末裔であるウルグレイス人のセザールと違い、魔力の弱いエトゥーリアの民であるシュバルツがより濃く遺伝子を残すならば髪や爪よりも体液のほうが良いだろう、と。
体液…、僕は唾液程度で良いんじゃないかと言ったが、シュバルツは頑なにそれを主張した。
シュバルツの生真面目さと頭の固さがこんなところで発揮されるなんて…まさに盲点!
彼は、「子供の基となるのであればこれが当然ではないのか」と、それはもう真顔で、合ってるっちゃ合ってるけど不要と言えば不要な主張を押し通したのだ…。ま、まあいいんだけど…。真面目な人って時々ズレてるよね…。
問題はアルバートである。彼はローランド経由で体液云々を耳にすると、「正式な夫であり狂魔力本来の血筋であるクラレンスの王太子が最も濃く遺伝子を受け渡すべきだ!」と言って唾液で満足しなかったからだ。主張の裏にある下心など僕にはお見通しである。
とは言え仮にも正夫。いつまでもこのままと言う訳にもいかないだろう。だからこそ僕はシュバルツにもヴォルフにも最後の一線だけは超えさせなかったのだから。
何だかんだ言ったところで、自分でこの婚姻を決めた以上、これが王太子であるアルバートへの誠意と礼儀であろう、と。
それに今となっては僕もアルバートに対しそれなりの好意を抱いている。
彼は『恋バト』で見た、己の中の様々な苦悩をいつの間にか克服し、僕の意を汲んで誰もが互いを尊重しあえる仁の国を作るべく、それはもう努力してくれている。頭の固い大臣たちにあーでもない、こーでもないと横槍を入れられながらも…。
その姿に僕の中にある好感度ゲージは着実に溜まり、今ではおよそ80パーと言ったところか…。でも研鑽を怠らないアルバートであれば、着実にそのゲージはいずれ100パーになることだろう。
なのにグズグズとそれを引き延ばしてきたのは、前世でまごうこと無きノーマルであった自分自身の消しきれない〝固定概念”の問題である。
つまりその…、触りっこぐらいなら男同士だしまぁ…、って言う部分も無きにしも非ずだがその先はハードルの高さが違う。それを超えるにはそれなりの心の準備とか、きっかけが必要なのだ。
そのきっかけとしてこれはいい機会かもしれない。僕は意を決してアルバートを新婚旅行へとお誘いしてみた。
「ねぇアルバート。僕がなぜその気になりきれないか…、それはこの環境にも問題があると思うわけです」
「環境…?よく分からないな。つまり?」
「つまり扉の前で護衛が待機し、続き間で従者が待機し、翌朝医者をはじめとしてこぞって事の結果を確認に来るっていうこの王城の環境ですよ」
「ああ…だが王太子である以上こういうものとしか…」
「だがも何も、僕たちは男同士で子供だって奇跡のような授かり方をするのに…最後までしたかしないかの確認って必要ですか?それにこの部屋に居るのがこの僕である以上護衛は無意味ですよ」
「それはそうだが…」
「あっ!もしかして僕がアルに何かするかも…っていう、そっちの警戒ですか!? 失礼な!」
「まさか!もちろん違うとも!」
「ですよね。それから従者も隣の部屋にいるのは論外です。せいぜい同じ建物の2階層下、とか…ですかね」
「それでは何かと不便ではないかい?」
「自分のことぐらい自分でします。なので旅行に行きましょう。二人っきりで。新婚旅行です」
「新婚旅行…。君からそんなお誘いを受けるなんて…嬉しいよ!」
こうして僕とアルバートは両陛下の許可のもと、子作り…正確には子種を得るためのハネムーンへと旅立ったのだ。
行き先はなんとエトゥーリア。
シュバルツの厚意によって、彼の分家が海岸沿いの屋敷をまるっと貸してくれたのだ。自分たちは王都へ行くからと、そう言って。
この海岸は元ナバテアとの国境に面している。蛇足だが、こうして領土の割り当てがいつ戦火に巻き込まれるとも知れない危険な地域だったのも、クーデンホーフの一族が何かと冷遇されていたからに他ならない。まあ今では平和なものだが…。
さて、同行するのは、どうしても断れなかったアルバートの従者2名とウィル、ならば!と護衛代わりに指名したオスカーのみ。因みに彼らは離れに寝泊まりする予定だ。
行き帰りは『ワープゲート』で。さすがに月単位のハネムーンは却下されたから。
すでに無人となっている屋敷。最低限の使用人は残っているが、実質無人みたいなものである。
「じゃあアル、行きましょうか。『ワープゲート』へどうぞ」
「え?今到着したところじゃないか。どこへ行くんだい?」
「…樹海の視察に。僕とアル、二人っきりで。ほら、例の『レジー君と行く樹海散歩』の下見に。なにしろ1週間しかお休みもぎ取れなかったんですからサクッと」
慌てたのは従者とオスカー。さすがに無理か?でもこのためにわざわざ新婚旅行を装って、人払いしたうえ王城もウエストエンドも離れたのに!
「お、お待ちくださいレジナルド様!」
「殿下の身に危険があっては困ります!」
「そうだぞレジー!行くなら俺も連れてけ!」
オスカーだけは意味が違うよね?
「アル…、二人っきりで行きたいの。ダメ?」ウルウル…
「さあ行こう」
アルバートのこういうところ…いや~、大好きだって!
男同士の婚姻があると聞いた時から、漠然と後継者は養子…とか、そんなことを考えていたのに、まさか実現に至るとは、『恋エロ』の世界、恐るべし…!
事の発端となった、受精の魔法陣を持つウルグレイスの王から直々に指名を受けた側夫であるセザール。彼の実家デュトワ家からはセザールの髪の毛が届けられた。それはもう、恭しくバラの刺繍が施されたシルクの布袋に納められた麗しい髪が一房…。
大事な友だちであるセザール。だけど僕は一応確認したのだ。「このままで良いの?」って。でもそれに返ってきた返事は、「君のことは大好きだけど、同じくらいアルバートも大切な友人なんだ。彼と気まずいのはね」だった。彼はもう揺らいだりしない。その背中は凛としてその視線は前を見ている。僕も大好きだよセザール…。
そしてもう一人の側夫であるシュバルツは、まさかの×××を、と言って譲らなかった。何故ならエルダーに言われたからだ。
ハーフエルフの末裔であるウルグレイス人のセザールと違い、魔力の弱いエトゥーリアの民であるシュバルツがより濃く遺伝子を残すならば髪や爪よりも体液のほうが良いだろう、と。
体液…、僕は唾液程度で良いんじゃないかと言ったが、シュバルツは頑なにそれを主張した。
シュバルツの生真面目さと頭の固さがこんなところで発揮されるなんて…まさに盲点!
彼は、「子供の基となるのであればこれが当然ではないのか」と、それはもう真顔で、合ってるっちゃ合ってるけど不要と言えば不要な主張を押し通したのだ…。ま、まあいいんだけど…。真面目な人って時々ズレてるよね…。
問題はアルバートである。彼はローランド経由で体液云々を耳にすると、「正式な夫であり狂魔力本来の血筋であるクラレンスの王太子が最も濃く遺伝子を受け渡すべきだ!」と言って唾液で満足しなかったからだ。主張の裏にある下心など僕にはお見通しである。
とは言え仮にも正夫。いつまでもこのままと言う訳にもいかないだろう。だからこそ僕はシュバルツにもヴォルフにも最後の一線だけは超えさせなかったのだから。
何だかんだ言ったところで、自分でこの婚姻を決めた以上、これが王太子であるアルバートへの誠意と礼儀であろう、と。
それに今となっては僕もアルバートに対しそれなりの好意を抱いている。
彼は『恋バト』で見た、己の中の様々な苦悩をいつの間にか克服し、僕の意を汲んで誰もが互いを尊重しあえる仁の国を作るべく、それはもう努力してくれている。頭の固い大臣たちにあーでもない、こーでもないと横槍を入れられながらも…。
その姿に僕の中にある好感度ゲージは着実に溜まり、今ではおよそ80パーと言ったところか…。でも研鑽を怠らないアルバートであれば、着実にそのゲージはいずれ100パーになることだろう。
なのにグズグズとそれを引き延ばしてきたのは、前世でまごうこと無きノーマルであった自分自身の消しきれない〝固定概念”の問題である。
つまりその…、触りっこぐらいなら男同士だしまぁ…、って言う部分も無きにしも非ずだがその先はハードルの高さが違う。それを超えるにはそれなりの心の準備とか、きっかけが必要なのだ。
そのきっかけとしてこれはいい機会かもしれない。僕は意を決してアルバートを新婚旅行へとお誘いしてみた。
「ねぇアルバート。僕がなぜその気になりきれないか…、それはこの環境にも問題があると思うわけです」
「環境…?よく分からないな。つまり?」
「つまり扉の前で護衛が待機し、続き間で従者が待機し、翌朝医者をはじめとしてこぞって事の結果を確認に来るっていうこの王城の環境ですよ」
「ああ…だが王太子である以上こういうものとしか…」
「だがも何も、僕たちは男同士で子供だって奇跡のような授かり方をするのに…最後までしたかしないかの確認って必要ですか?それにこの部屋に居るのがこの僕である以上護衛は無意味ですよ」
「それはそうだが…」
「あっ!もしかして僕がアルに何かするかも…っていう、そっちの警戒ですか!? 失礼な!」
「まさか!もちろん違うとも!」
「ですよね。それから従者も隣の部屋にいるのは論外です。せいぜい同じ建物の2階層下、とか…ですかね」
「それでは何かと不便ではないかい?」
「自分のことぐらい自分でします。なので旅行に行きましょう。二人っきりで。新婚旅行です」
「新婚旅行…。君からそんなお誘いを受けるなんて…嬉しいよ!」
こうして僕とアルバートは両陛下の許可のもと、子作り…正確には子種を得るためのハネムーンへと旅立ったのだ。
行き先はなんとエトゥーリア。
シュバルツの厚意によって、彼の分家が海岸沿いの屋敷をまるっと貸してくれたのだ。自分たちは王都へ行くからと、そう言って。
この海岸は元ナバテアとの国境に面している。蛇足だが、こうして領土の割り当てがいつ戦火に巻き込まれるとも知れない危険な地域だったのも、クーデンホーフの一族が何かと冷遇されていたからに他ならない。まあ今では平和なものだが…。
さて、同行するのは、どうしても断れなかったアルバートの従者2名とウィル、ならば!と護衛代わりに指名したオスカーのみ。因みに彼らは離れに寝泊まりする予定だ。
行き帰りは『ワープゲート』で。さすがに月単位のハネムーンは却下されたから。
すでに無人となっている屋敷。最低限の使用人は残っているが、実質無人みたいなものである。
「じゃあアル、行きましょうか。『ワープゲート』へどうぞ」
「え?今到着したところじゃないか。どこへ行くんだい?」
「…樹海の視察に。僕とアル、二人っきりで。ほら、例の『レジー君と行く樹海散歩』の下見に。なにしろ1週間しかお休みもぎ取れなかったんですからサクッと」
慌てたのは従者とオスカー。さすがに無理か?でもこのためにわざわざ新婚旅行を装って、人払いしたうえ王城もウエストエンドも離れたのに!
「お、お待ちくださいレジナルド様!」
「殿下の身に危険があっては困ります!」
「そうだぞレジー!行くなら俺も連れてけ!」
オスカーだけは意味が違うよね?
「アル…、二人っきりで行きたいの。ダメ?」ウルウル…
「さあ行こう」
アルバートのこういうところ…いや~、大好きだって!
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