街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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元ナバテアの使い道

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「それでレジー。レイジタウンとウエストエンドの間に位置するベルト地帯の件だが…考えを聞いても?」

レイジタウン……

元ナバテアには王宮の文官によりナバテア改めレイジタウンとの名前が付けられた。レイジ(怒り)とレジーがかかっているのだという話だが…命名者はあの事件の何を知っているのやら。でも命名者はここにまさか礼二もかかっていることなど知るよしもない…。


レイジタウンを手に入れた僕は、2領土間の物流を直通ルートで結ぼうと考えていた。
じゃないと何のために漁場を手に入れたか分からない。
もちろん僕の単独移動なら『ワープゲート』があるため面倒な事を考える必要は無い。でもそれだと鮮魚の運搬が僕の仕事になってしまう…。
鮮魚を運ぶ領主…、嫌では無いが嬉しくない…。

そこまで聞いたアルバートの真顔ときたら。


「直通って君…」
「ちょっとしたオマケを考えてまして」


ベルト地帯とはSSSクラスの魔物が跋扈する世界随一の危険地帯である。そしてその封印は2段階に分けられる。
一つはベルト地帯と樹海の間。もう一つが樹海と山の奥部との間。
ウエストエンドで領民が狩りや伐採資源、山菜等々のために足を踏み入れられるのがこの奥部まで。樹海がヴォルフやキングクラスの限られた獣人のみ。ベルト地帯深部は僕以外立ち入り禁止である。


僕はそのベルト地帯の周辺を囲む樹海部分、中でも封印のやや弱いレイジタウン側を、透明なトンネルを作って、闊歩する魔獣を間近で見られるサファリパークにしようかと考えていた。


「実はもう準備は始めてるんです。」
「いつもながら早いね」


もちろんこの世界に強化ガラス的なものはない。そこで代わりに結界も兼ねて透明度の高い水晶を使い、さらにシールドの魔力で全体をコーティングするつもりでいる。
あと、時間短縮のためビフさんにはムービングウォーク、つまり動く通路を開発してもらっている。…樹海のつき当りでUターンして戻る感じでどうだろうか?


「…呆れたな。それに参加する人が居ると思うかい?」
「ダンジョンランドで分かるでしょう?人はスリルとサスペンス、絶叫を求める生き物です。命の保証があれば、ですけど。そして僕のシールドは完璧です。必ず人は集まりますよ」

「うーん…」
「それからウエストエンド側ですけど、実はうちの騎士に樹海内の一部を特別訓練エリアとして解放しようと思ってます」

「レジー…、つくづく君は…」
「何ですその目。だってウエストエンドの精鋭たちはすでにSクラス以上しか居ないですからね。強化のダンジョンは飽きた、とか言い出してるし。程よい刺激ですって」


中心部はともかく樹海ぐらいなら今の騎士たちには楽勝である。もちろん4マンセル前提だけど。
やっぱりダンジョンには一定のアルゴリズムがあるから周回してると慣れちゃうんだよね。たとえ最難関コースでも、どことなく分かって来るって言うか。


「あ、あとこれはまだ決定じゃないんですけど…、レイジタウン側ですが僕と一緒にトンネルを出て少し散策する、〝現地を肌で感じるスペシャルツアー”ってのも考えてます」


名付けて…『レジー君と行く樹海散歩』。僕のシールドに護られたお客様の安全は100パー保証されている。月に限定1名…、そうだ!価格はオークション形式でもいいかもしれない!


「何を考えてるんだ!ダメだそんなの!許可しない!」

「アル…、僕はそんな小さい男を夫にした覚えはありませんよ。アル…、アルバート。僕の目を見て」ジィィィ…
「うっ!わ、分かった。だから…レ、レジー……、レジーっ!!!」

サッ「仕事中に不謹慎ですよ。で、樹海の先なんですが」
「あ、ああ…。……いいじゃないか少しぐらい…ブツブツ…」


あからさまにガッカリすんな!全く今ミーティング中だって言うのに。王妃殿下にチクってやる…。


「ベルト地帯の横断はさすがに地下を使います。万が一があってはいけないので」
「当然だ」
「幸い以前開けたトンネルが残ってまして」
「シュバルツ殿を助けた時の?埋めたんじゃなかったのかい?そう聞いたが」

「実はベルト地帯の地下だけは残してあったんです。時々SSS素材を採りに行ってたので。休憩所代わりに。良いものですよ?アースシェルター」
「……そう……」


なに今の間?何かおかしいこと言ったかな?


「で、ですね。そこはシューターを使おうと思ってます」
「シューター?」


ムービングウォークと一緒でこれもビフさんをあてにした案件である。筒状の物に冷凍した魚介をつっこみ、そうだな…、風魔法を付与した魔石を利用してロケットみたいに飛ばす…とか出来ないだろうか?時短で運ぶいいアイデアだと思うんだけど。
アーニーからは「お前その内ビフに刺されるからな!」と言われたが、ヲタク気質なビフさんは燃えていたから何も問題ない!

ともかく、こうしてウエストエンド側は騎士の訓練を兼ねて、で、シューターで突っ切って、その先レイジタウン側はツアーの添乗を兼ねて、大変タイパとコスパの良い物流の完成である。


「そうういえばレイジタウンの南半分はエトゥーリアに差し上げました。だからレイジタウンの海で雇うのもエトゥーリア人が多くなると思います。残り半分は…一般観光地にする予定ですが全てアルにお任せしますね。公共事業に使って頂いても構いませんよ」

「良いのかい?」
「僕たち夫夫じゃないですか。アルの力になれるならお安いものです」


というのは表向きで、実際は丸投げという…。僕の心血は全てウエストエンドに注いでいる。レイジタウンはあくまで魚介を手に入れる漁場であって、統治したいとは思わない。


「観光客用の宿泊施設などが必要なら整備くらいお手伝いします。決まったら教えてくださいね」

「ああ分かった。それよりレジー、今夜は泊っていけるかい?」

「ええもちろん!」
「レジー…ああ…ついに君と…」
「あっ!そう言えばビルさんからお祝いにってドワーフ秘伝の酒を一本頂いてきたんですよ?」
「ドワーフの酒!…幻の酒と言われるドワーフの…。ゴクリ…では寝酒に少し頂こうか。酔った君の姿もさぞ艶っぽいんだろうね…」
「……」ニッコリ



ドワーフの酒。それはアルコール濃度60%を誇る爆酒である。因みにアルのもつ光の浄化アルコールのげどくは…僕の介入により作動していない…。





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