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solemnly 婚礼の儀
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ついに厳かなるその式が大神官、神官、副神官、そして本日の特別ゲスト、女神官ニコまでを含めた聖職者たちの入場によって幕を開ける。
神殿で行われた婚約の儀と違い、この婚姻の式典は王国一の大きさを誇る大聖堂で行われる。そこは広い身廊と翼廊に囲まれた大きな丸い建物で、丁度中央に内陣が位置し、またその中央に主祭壇が鎮座していて、その祭壇前では既にアルバートがスタンバっている。
僕は介添人であるハミルトンの叔父様に手を引かれ讃美歌の中、その場所へと歩を進める。
まあまあ冷静な頭は色んな顔を視界に入れる。
エトゥーリア共和国からは首相、マッケンゼン伯爵。その横にシュバルツ、パウルと並び、ローランドを挟んでオスカーと並んだウィル…の号泣した顔も見える。いや、早いって。おっと、右大臣のご子息、ブラッドリー氏もいるじゃないか。それからセザールと…、ウルグレイスの来賓はまたも第三王子ヴェルナー様か。親族の席にはコリンとお父様。いやー、感慨深い。
ここからは苦行が続く。
祈祷と宣誓 誓いの指輪ならぬ魔力の交換、これ婚約式でもやったやつね。さすがのアルも今回暴走は無しだ。
長い、長ーーーい大神官からの説教が終わるとこれまた長い聖書朗読。ここまできたらあと一歩。
讃美歌、そしてファンファーレの中、正面出入口まで来ると、大聖堂の周りには大勢の人が集まっている。その手には各々、この国における結婚祝いの花、ブルースターを握りしめて。
ここでニコが立派な台紙に乗せられた結婚証明書を持ってやって来る。
「おめでとう礼二くん」小さくささやかれた言葉。おめでたいのかなんなのか。でもまぁ、観衆の前で証明書に署名をすると、おおっ!例のやつだな!その紙から飛び出した魔法は大空で花火となって拡散し、国中に王太子の結婚を伝えていく。
鳴り響く鐘の音。これで最後だ!僕とアルバートの熱烈なキスで式典は終了となる…。ここまでゆうに5時間。な、長い…。
だがまだだ。僕の労働はまだ終わらない。
グルーっと遠回りしながら王城までオープン馬車でパレードをしたら、何百人ものゲストを招いたデイ披露宴。そして夜は夜で、親族等々、近しい人だけを招いた晩餐会。
なんて可哀想な僕…。死んじゃう…、死んじゃうよ…。
「頑張ってレジー。あと少しだ。」
「アルバート…、よくまぁ笑顔で…」
前も思ったけど…つくづくこういうとこ尊敬する…。
真正面に用意された王太子、王太子妃の、細工の見事な大きな椅子。そこに腰掛け撃沈中の僕…。それに引き換えアルバートはここまで来ても真っすぐに背を伸ばし微笑みを絶やさない。因みに僕は浅く腰掛け半目状態である。
「ふふ、王族として当然のことだ。でも君は憂いた姿すら美しいよ」
「憂いたって言うか…疲労困憊の姿ね」
「ところでレジー、…ダンスのレッスンは?」
「そんな時間あったと思いますか?」
「いや…。仕方ない。そのまま脱力していてくれるかい?」
例によって例のごとく、光に包まれた素晴らしいダンスを披露。僕の労力は0、アルの労力は2倍、少し足にきてるかな。
おや、ダンスの終了を待ってパタパタとかけてくるのは…
「レジー様、とってもステキでした!」
「ありがとうウィル。そういえばウィルは踊らないの?たしかジェイコブから特訓受けて無かった?」
「あれは…、レジーさまが逃げ出したから…身代わりですよ?せっかく楽団も呼んだからって」
「レジー…」
しまった…。練習バックレたのがばれてしまった…。
「はは。レジーは相変わらずだな。ウィル、踊れるなら一曲踊ろう。せっかくなんだ、ほら」
「で、でもオスカー様、さっきキレイなご令嬢のダンス断ってたじゃないですか…」
「少しは踊らないと母上にどやされる。さあ行くぞ!」
「も、もうっ!一曲だけですよ」
うーん、微笑ましいな…。そしてもう一人。
「兄様、とても良いお式でした」
「コリン!お父様は?」
「あちらで左大臣と話し込んでお見えです」
友人だっけ、そう言えば。あっ!左大臣がお父様に愚痴ってる…。ローランドのことか…。
「コリンは踊った?」
「はい。その…、ありがたいことにたくさんお誘いを受けて何曲か…。少し疲れました」
「ごめんね。でも今日の招待客は王妃様が念入りに厳選してくださったから…良い方ばかりだったでしょ?」
「ふふ。そうですね。素敵な方々ばかりでした」
「コリン君、控えの間にフェリクスが居るよ。君も休んでくるといい」
「はい、ありがとうございます」
ダンジョンランドを持つランカスター公爵領は王様の許可を貰いとっくに元の侯爵領をお父様に分領済みである。そのランカスター侯爵領の正式な嫡男で、公爵であり王太子妃であり、狂魔力の継承者である僕を兄に持ち、ましてやフェリクス様の側近を務め王家の後ろ盾を持つコリンは、出自のハンデをがっつり撥ね退け青田買いの筆頭候補である。
そこで王妃様は悪い虫が付かないよう、優良な虫を、ゴホン、優良なめぼしい子女を今回集めて下さったのだ。コリンのために。
ヘロッヘロになりながら披露宴、晩餐会をこなし、夜の更ける頃ようやく僕にも真の解放が訪れた。ああ…長い一日だった…。と、思ったのに…。
「レジー、待ちに待った初夜だ。今夜という今夜こそは…逃がさないよ」
ウソだろ?よくそんな体力残ってるな…。さてどうするか。あ、あれ?
「ぷっ!お休みアルバート。お疲れ様」
あっという間に泥睡…。そりゃそうだ。
因みにベッドはキングサイズが一つである…。
神殿で行われた婚約の儀と違い、この婚姻の式典は王国一の大きさを誇る大聖堂で行われる。そこは広い身廊と翼廊に囲まれた大きな丸い建物で、丁度中央に内陣が位置し、またその中央に主祭壇が鎮座していて、その祭壇前では既にアルバートがスタンバっている。
僕は介添人であるハミルトンの叔父様に手を引かれ讃美歌の中、その場所へと歩を進める。
まあまあ冷静な頭は色んな顔を視界に入れる。
エトゥーリア共和国からは首相、マッケンゼン伯爵。その横にシュバルツ、パウルと並び、ローランドを挟んでオスカーと並んだウィル…の号泣した顔も見える。いや、早いって。おっと、右大臣のご子息、ブラッドリー氏もいるじゃないか。それからセザールと…、ウルグレイスの来賓はまたも第三王子ヴェルナー様か。親族の席にはコリンとお父様。いやー、感慨深い。
ここからは苦行が続く。
祈祷と宣誓 誓いの指輪ならぬ魔力の交換、これ婚約式でもやったやつね。さすがのアルも今回暴走は無しだ。
長い、長ーーーい大神官からの説教が終わるとこれまた長い聖書朗読。ここまできたらあと一歩。
讃美歌、そしてファンファーレの中、正面出入口まで来ると、大聖堂の周りには大勢の人が集まっている。その手には各々、この国における結婚祝いの花、ブルースターを握りしめて。
ここでニコが立派な台紙に乗せられた結婚証明書を持ってやって来る。
「おめでとう礼二くん」小さくささやかれた言葉。おめでたいのかなんなのか。でもまぁ、観衆の前で証明書に署名をすると、おおっ!例のやつだな!その紙から飛び出した魔法は大空で花火となって拡散し、国中に王太子の結婚を伝えていく。
鳴り響く鐘の音。これで最後だ!僕とアルバートの熱烈なキスで式典は終了となる…。ここまでゆうに5時間。な、長い…。
だがまだだ。僕の労働はまだ終わらない。
グルーっと遠回りしながら王城までオープン馬車でパレードをしたら、何百人ものゲストを招いたデイ披露宴。そして夜は夜で、親族等々、近しい人だけを招いた晩餐会。
なんて可哀想な僕…。死んじゃう…、死んじゃうよ…。
「頑張ってレジー。あと少しだ。」
「アルバート…、よくまぁ笑顔で…」
前も思ったけど…つくづくこういうとこ尊敬する…。
真正面に用意された王太子、王太子妃の、細工の見事な大きな椅子。そこに腰掛け撃沈中の僕…。それに引き換えアルバートはここまで来ても真っすぐに背を伸ばし微笑みを絶やさない。因みに僕は浅く腰掛け半目状態である。
「ふふ、王族として当然のことだ。でも君は憂いた姿すら美しいよ」
「憂いたって言うか…疲労困憊の姿ね」
「ところでレジー、…ダンスのレッスンは?」
「そんな時間あったと思いますか?」
「いや…。仕方ない。そのまま脱力していてくれるかい?」
例によって例のごとく、光に包まれた素晴らしいダンスを披露。僕の労力は0、アルの労力は2倍、少し足にきてるかな。
おや、ダンスの終了を待ってパタパタとかけてくるのは…
「レジー様、とってもステキでした!」
「ありがとうウィル。そういえばウィルは踊らないの?たしかジェイコブから特訓受けて無かった?」
「あれは…、レジーさまが逃げ出したから…身代わりですよ?せっかく楽団も呼んだからって」
「レジー…」
しまった…。練習バックレたのがばれてしまった…。
「はは。レジーは相変わらずだな。ウィル、踊れるなら一曲踊ろう。せっかくなんだ、ほら」
「で、でもオスカー様、さっきキレイなご令嬢のダンス断ってたじゃないですか…」
「少しは踊らないと母上にどやされる。さあ行くぞ!」
「も、もうっ!一曲だけですよ」
うーん、微笑ましいな…。そしてもう一人。
「兄様、とても良いお式でした」
「コリン!お父様は?」
「あちらで左大臣と話し込んでお見えです」
友人だっけ、そう言えば。あっ!左大臣がお父様に愚痴ってる…。ローランドのことか…。
「コリンは踊った?」
「はい。その…、ありがたいことにたくさんお誘いを受けて何曲か…。少し疲れました」
「ごめんね。でも今日の招待客は王妃様が念入りに厳選してくださったから…良い方ばかりだったでしょ?」
「ふふ。そうですね。素敵な方々ばかりでした」
「コリン君、控えの間にフェリクスが居るよ。君も休んでくるといい」
「はい、ありがとうございます」
ダンジョンランドを持つランカスター公爵領は王様の許可を貰いとっくに元の侯爵領をお父様に分領済みである。そのランカスター侯爵領の正式な嫡男で、公爵であり王太子妃であり、狂魔力の継承者である僕を兄に持ち、ましてやフェリクス様の側近を務め王家の後ろ盾を持つコリンは、出自のハンデをがっつり撥ね退け青田買いの筆頭候補である。
そこで王妃様は悪い虫が付かないよう、優良な虫を、ゴホン、優良なめぼしい子女を今回集めて下さったのだ。コリンのために。
ヘロッヘロになりながら披露宴、晩餐会をこなし、夜の更ける頃ようやく僕にも真の解放が訪れた。ああ…長い一日だった…。と、思ったのに…。
「レジー、待ちに待った初夜だ。今夜という今夜こそは…逃がさないよ」
ウソだろ?よくそんな体力残ってるな…。さてどうするか。あ、あれ?
「ぷっ!お休みアルバート。お疲れ様」
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