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176 18歳 a day ウエストエンド
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「レジー様レジー様、コリンが来週ウエストエンドに遊びに来るってご存知ですか!」
「うん。ランカスター侯爵家の嫡男になったとは言え、ここはコリンにとって第二の故郷だからね。お父様に行って僕が呼んだんだよ」
朝の支度を手伝いながら、少し鼻歌交じりのウィルが可愛い。
ワンコロだ、チビ犬だと言われながらも、彼は本当に忠誠心の高い良い従者だ。たまには休むように、そう何度も伝えているのに彼は決して休みを取ろうとはしない。だからこそこうして色んな娯楽行事を交えながら領民と一緒に遊ばせたりしているのだけど…、どれくらい彼が満足しているかは正直微妙なとこだ。
「コリンを呼んで何するんですか?」
「西の山中でキノコ狩りをしようと思って。エルダーも手伝ってくれるって言うから」
「わぁ!楽しそう!」
エルダーの手伝いとは少々キノコを増量してくれるというご協力のことである。
ハイエルフである彼はホイホイ姿を見せたりしない。あくまで僕と二人きりの、あのお茶会スペースだけが彼の訪れるウエストエンドだ。
そうそう。若エルフの皆さんが東の山を遊び場にした事でエルフ信仰の強いウルグレイスからの訪問客はぐんと右肩上がり。ウルグレイス国民であるセザールももちろんヴィラまで出向いて敬意を示していた。
『恋バト』攻略者であるアルバートたち4人だが、セザールはウルグレイスからの留学生であり賓客である。幼馴染であるアルバート、ローランド、オスカー三人とは少しだけ親しさの密度が違う。
こうしてウエストエンドに居住を構えた今となっては、もはやアーニーやロジェの方がセザールと親しいくらいだ。
そのセザールが奏でた挨拶代わりのピアノの音色はエルフたちを思いのほか喜ばせた。なので今度はぜひとも、オスカーのバイオリンも交えてちょっとした演奏会を開催したいと考えている。
その件もあって、今僕はオスカーと糸電話でダベっている真っ最中だ。
駆け出し騎士である彼は以前のように頻繁にウエストエンドへ訪れることは当然できない。
オスカーはオスカーで「久々に強化のダンジョン行きたいよな」と望んだため、ならば奥の手、とアルバートを呼びつけてみた。護衛にオスカーを指名して今すぐこっち来い!と。返事はもちろん二つ返事でOKである。
どれどれ、アルバートの到着予定は…、あ!
「レジー、何故今回は宿泊が屋敷でなくヴィラなんだい?屋敷には私の部屋が用意されているはずだ。それに王家の別荘も完成している頃だろう?」
「それはですね…」
到着したアルバートを案内したのはヴィラのロイヤルスイート。その右舷。
それを見るなり彼が憮然としたのも無理はない。アルは僕の屋敷で僕の隣に部屋を持っているのだ。
当然思う存分イチャイチャする気だったことだろう。だがしかし。僕には僕で事情がある。その事情とは……左舷にある。
「はじめまして、クラレンス王太子殿下アルバート殿」
「あなたは…、姿絵で拝見しただけだが…ウルグレイス第二王子殿下ユージーン殿であられるか…」
そう。ウルグレイスの第二王子であり神官でもあるユージーン様。信仰心篤き彼は満を持してエルフ詣でにおいでになった。…予約が入ってるのすっかり忘れてたけど…。
そこで僕は超VIPの対応をアルバートに丸投げしようと考えたってわけ。てへ☆
思わぬ形でロイヤル会談がセッティングされてしてしまった…。
「レジー…」
「ま、まあまあ、わざとじゃないの、うっかりね。で、でもちょうど良かった。二人はエルダーに会わせておこうと思ってたから。エルフの長だよ。ハイエルフね」
「そ、それは本当だろうか!ああ!まさかここで始祖の一人であるハイエルフ様にお会いできるとは…」
おおっ!さすがエルフ信仰国ウルグレイスの神官、食いつきが凄い…。
アルバートが若干引いてるじゃないか。
「エルダーに何度も面倒な真似させられないし…一回きりですよ。いいですか?ほかの王族ぞろぞろ連れてきても二度は無理ですよ!」
「もちろんだとも!それにしてもこれは…なんたる僥倖!レジナルド殿、この恩はいつか必ず…」
「いえいえ、ユージーン様にはエルフの里をお教えいただきましたし」
「ところでもう一つ無理を言っても?」
「何でしょう…」
「こちらには女神官殿がおいでだと聞いているのですが、お会いすることは可能でしょうか?」
王族とは代々美男美女を娶り娶られ美形度を上げていく一族である。
つまり王族であるユージーン様もこれまたなかなかの美形、ニコならきっとノープロブレム!
僕は力強く明日の神官ランチを請け負った。
さてさて、今回の趣旨であるオスカーはウエストエンドへの到着と同時に、その任が王太子の護衛から王太子婚約者の監視へと変更された。
「失礼な!なにその監視って!」
「はは、これ以上側夫も領土も勘弁だとさ」
「領土はいいじゃないか、領土は!」
「一度に全部じゃ手が回らないとさ。あれは当分温存だな」
そんな馬鹿話をしながら僕とオスカーは屋敷へ帰館。え?王族をほっといて良いのかって?
…夫夫になる以上アルのサポートは僕の役目、そして僕のサポートはアルの役目である。
何しろ僕にはこれから神官ランチやエルダーとの面会をセッティングするという重要任務がある。…何するって事も別に無いけど…。
「オスカー様、お久しぶりです」
「おう!ダンジョンランド以来だな。元気か?」
「オスカー様、ローランド様から聞きましたよ。東の辺境にダンジョンの崩壊を防ぎに行かれたって…」
勝手知ったるまるで家人のようなオスカーにウィルもすっかり慣れている。軽く会話を交わしながら、その荷物を受け取っていく。
それにしてもダンジョン崩壊…これは初耳。まあ、いちいち任務について話したりする訳無いし、むしろウィルが知っていたことに驚きなんだけど、いつの間に…。
「その、大丈夫でしたか?」
「東の辺境にあるのは良くてAクラスのダンジョンだろ。出たって言っても大した魔獣じゃない。楽勝だ」
「もう…無茶しないでくださいね?」
「分かってるって。ウィル、お前はいちいち心配し過ぎなんだよ」
「し、心配なんかしてません!僕はレジー様の従者なんですからっ!」
………おや?
「うん。ランカスター侯爵家の嫡男になったとは言え、ここはコリンにとって第二の故郷だからね。お父様に行って僕が呼んだんだよ」
朝の支度を手伝いながら、少し鼻歌交じりのウィルが可愛い。
ワンコロだ、チビ犬だと言われながらも、彼は本当に忠誠心の高い良い従者だ。たまには休むように、そう何度も伝えているのに彼は決して休みを取ろうとはしない。だからこそこうして色んな娯楽行事を交えながら領民と一緒に遊ばせたりしているのだけど…、どれくらい彼が満足しているかは正直微妙なとこだ。
「コリンを呼んで何するんですか?」
「西の山中でキノコ狩りをしようと思って。エルダーも手伝ってくれるって言うから」
「わぁ!楽しそう!」
エルダーの手伝いとは少々キノコを増量してくれるというご協力のことである。
ハイエルフである彼はホイホイ姿を見せたりしない。あくまで僕と二人きりの、あのお茶会スペースだけが彼の訪れるウエストエンドだ。
そうそう。若エルフの皆さんが東の山を遊び場にした事でエルフ信仰の強いウルグレイスからの訪問客はぐんと右肩上がり。ウルグレイス国民であるセザールももちろんヴィラまで出向いて敬意を示していた。
『恋バト』攻略者であるアルバートたち4人だが、セザールはウルグレイスからの留学生であり賓客である。幼馴染であるアルバート、ローランド、オスカー三人とは少しだけ親しさの密度が違う。
こうしてウエストエンドに居住を構えた今となっては、もはやアーニーやロジェの方がセザールと親しいくらいだ。
そのセザールが奏でた挨拶代わりのピアノの音色はエルフたちを思いのほか喜ばせた。なので今度はぜひとも、オスカーのバイオリンも交えてちょっとした演奏会を開催したいと考えている。
その件もあって、今僕はオスカーと糸電話でダベっている真っ最中だ。
駆け出し騎士である彼は以前のように頻繁にウエストエンドへ訪れることは当然できない。
オスカーはオスカーで「久々に強化のダンジョン行きたいよな」と望んだため、ならば奥の手、とアルバートを呼びつけてみた。護衛にオスカーを指名して今すぐこっち来い!と。返事はもちろん二つ返事でOKである。
どれどれ、アルバートの到着予定は…、あ!
「レジー、何故今回は宿泊が屋敷でなくヴィラなんだい?屋敷には私の部屋が用意されているはずだ。それに王家の別荘も完成している頃だろう?」
「それはですね…」
到着したアルバートを案内したのはヴィラのロイヤルスイート。その右舷。
それを見るなり彼が憮然としたのも無理はない。アルは僕の屋敷で僕の隣に部屋を持っているのだ。
当然思う存分イチャイチャする気だったことだろう。だがしかし。僕には僕で事情がある。その事情とは……左舷にある。
「はじめまして、クラレンス王太子殿下アルバート殿」
「あなたは…、姿絵で拝見しただけだが…ウルグレイス第二王子殿下ユージーン殿であられるか…」
そう。ウルグレイスの第二王子であり神官でもあるユージーン様。信仰心篤き彼は満を持してエルフ詣でにおいでになった。…予約が入ってるのすっかり忘れてたけど…。
そこで僕は超VIPの対応をアルバートに丸投げしようと考えたってわけ。てへ☆
思わぬ形でロイヤル会談がセッティングされてしてしまった…。
「レジー…」
「ま、まあまあ、わざとじゃないの、うっかりね。で、でもちょうど良かった。二人はエルダーに会わせておこうと思ってたから。エルフの長だよ。ハイエルフね」
「そ、それは本当だろうか!ああ!まさかここで始祖の一人であるハイエルフ様にお会いできるとは…」
おおっ!さすがエルフ信仰国ウルグレイスの神官、食いつきが凄い…。
アルバートが若干引いてるじゃないか。
「エルダーに何度も面倒な真似させられないし…一回きりですよ。いいですか?ほかの王族ぞろぞろ連れてきても二度は無理ですよ!」
「もちろんだとも!それにしてもこれは…なんたる僥倖!レジナルド殿、この恩はいつか必ず…」
「いえいえ、ユージーン様にはエルフの里をお教えいただきましたし」
「ところでもう一つ無理を言っても?」
「何でしょう…」
「こちらには女神官殿がおいでだと聞いているのですが、お会いすることは可能でしょうか?」
王族とは代々美男美女を娶り娶られ美形度を上げていく一族である。
つまり王族であるユージーン様もこれまたなかなかの美形、ニコならきっとノープロブレム!
僕は力強く明日の神官ランチを請け負った。
さてさて、今回の趣旨であるオスカーはウエストエンドへの到着と同時に、その任が王太子の護衛から王太子婚約者の監視へと変更された。
「失礼な!なにその監視って!」
「はは、これ以上側夫も領土も勘弁だとさ」
「領土はいいじゃないか、領土は!」
「一度に全部じゃ手が回らないとさ。あれは当分温存だな」
そんな馬鹿話をしながら僕とオスカーは屋敷へ帰館。え?王族をほっといて良いのかって?
…夫夫になる以上アルのサポートは僕の役目、そして僕のサポートはアルの役目である。
何しろ僕にはこれから神官ランチやエルダーとの面会をセッティングするという重要任務がある。…何するって事も別に無いけど…。
「オスカー様、お久しぶりです」
「おう!ダンジョンランド以来だな。元気か?」
「オスカー様、ローランド様から聞きましたよ。東の辺境にダンジョンの崩壊を防ぎに行かれたって…」
勝手知ったるまるで家人のようなオスカーにウィルもすっかり慣れている。軽く会話を交わしながら、その荷物を受け取っていく。
それにしてもダンジョン崩壊…これは初耳。まあ、いちいち任務について話したりする訳無いし、むしろウィルが知っていたことに驚きなんだけど、いつの間に…。
「その、大丈夫でしたか?」
「東の辺境にあるのは良くてAクラスのダンジョンだろ。出たって言っても大した魔獣じゃない。楽勝だ」
「もう…無茶しないでくださいね?」
「分かってるって。ウィル、お前はいちいち心配し過ぎなんだよ」
「し、心配なんかしてません!僕はレジー様の従者なんですからっ!」
………おや?
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