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182 19歳 discover 『恋エロ』
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ついにやって来た婚礼の式典当日。
王城に出向くギリギリ直前まで何かをしていたらしい招待神官でもあるニコは、王城へ向かう列車にどうしても間に合わず、何でもするからと拝み倒され、そこでこうして忙しい僕が夜も明けきらぬ早朝から直接『ワープゲート』で迎えに来たというわけだ。
ベターライフ神殿を出発する前にしばしの休息。ここを出て王城に入ったら2~3日僕に安息は無い。
お茶をしてると、ニコがふと、何かに気付いたようにおかしなことを言いだした。
「なんだかんだで、あなた『恋エロ』の亡国エンド着々とコンプしつつあるわね…」
「ブフッ!はあ?何言って…」
「だってそうじゃない。シャリムルートのゲスマン、ヴォルフルートのナバテア、シュバルツルートのエトゥーリアも実質壊したようなもんだし…、あとは…アーニールートのクラレンスだけど、アルバートと結婚したら実質あなた陰の支配者でしょ?そうしたらもう…」
失礼な。でも…否定はしない…。
「言っとくけどクラレンスは壊さないよ!やっとここまで改革したのに…」
「改革!それよ!なんだ、すでに壊してたのね…古い慣習を。」
そう言われてみればそうかも知れない。
「礼二くんって実況してたんでしょ?一部熱心な視聴者が競うように投げ銭とかしてくれたって言ってたわよね。」
「うん。ありがたいよね」
「『恋エロ』の主人公云々以前に、元々そういう資質があったのかも。妙に人を惹きつけるっていう…そういう下地が」
「はぁ?僕はいたって普通の大学生だったよ?何言って…」
「関係無いのよ。魅力と容姿は…」
そういうものなのだろうか…?でも確かに大人数のアイドルなんかは全員が美男美女ってわけでもないもんな。それでも大勢のファンが彼や彼女に魅了されて、多くのグッズを買い込んでいる…。
「そこへ行くとあなたはこの『恋エロ』の世界で資質とビジュアル、その両方を備えちゃったのね。そりゃゲーム超えるはずだわ…」
「それ褒められてる?」
「だってこんなにはべらせ…あら?やだ!礼二くんこれ、ハーレムエンドじゃないの⁉」
「なにそれ?『恋エロ』にはバッドエンドかメリバエンドしか無いってニコが言ったんじゃない」
「『恋エロ』には無くても『恋バト』にはあるの。ハーレムエンド。あなたってば自力で『恋エロ』にハーレムエンド書き加えちゃったの?すごいわね…。その手腕に感心するわ」
嬉しくない。
「けどメリバエンドの回収が出来ないならコンプとはいかないな、残念…」
「何言ってるの。あなたが狂魔力を制御してる以上そのエンドは存在しないのよ?その代わりがハーレムエンドじゃないの?書き換えたのよ!上書きしたのよ!自力で!」
「なっ!」
生粋の腐女子であるニコは僕とは方向性の違う、でも、これもある種の廃ゲーマーと言える。
そのニコが何やらブツブツと考察をはじめた…。ニコ、そういうとこだよ、みんなが怖がるの…
「そうか!どうしてあなたのハーレムにアルバートが…って思ってたけど、多分あれね。アルバートは4人を攻略したら現れる『恋エロ』の隠しキャラだったのよ。あのメーカーが特典出さない訳無いわ!」
「は、はぁ?」
確かにあの四人が登場したのはシュバルツたちを助け出して諸々落ち着いたタイミングだったけど…
「隠しキャラならシュバルツが…」
「あれは隠しルートのキャラでしょ?そうじゃなくてコンプ特典のキャラってことよ。『恋バト』のあなたみたいな」
なんと!…でも不思議としっくりくる…。
「もしかしたら『恋バト』の4人からの選択方式だったのかも…」
「え?え?よく分からない…」
「それなら納得いくわ、どうしてセザールがあなたに絡んだか。」
「えっ?えっ?」
4人との経緯全てを知ってるニコが言うには(あくまで考察だよ?)早々にオスカーとは友情が確立となりルートアウトして、ローランドに至ってはツンからデレる辺りで僕が自力でフラグを折って…
「セザールはいいとこまでいってたけど礼二くんがアルバートを選択したから友だちエンドに落ち着いちゃったのよ」
「選択って…相手王子だよ?断れないじゃん?」
「そう?」
「え…」
……本当にそうだろうか…。
確かにニコには何度も「それでいいの?」と聞かれた気がする…。そうとも、今更だがなんなら一番幼い王女様を娶って体裁だけを整えることは出来たはずだ。ゲスマン事変の前ならここまでまだ狂魔力の重宝性もアテにされていなかったんだし…、例の光の魔法がなんちゃら…とかもゲスマンより前なら…
「あ、あれ?」
「でしょ?あたしの言った通りね。これがほんとのフルコンプよ。おめでとう礼二くん」
だから全然嬉しくない…。
イヤ嬉しい!それなら僕は自分でも気がつかないうちにすべてのエンドを回収してたっていうのか…?
コンプの鬼である僕的に…これはなかなか気分が良い!
お式が終わったら帰館に合わせて大々的に祝宴を、パーティーの名目は婚礼祝いではなく完全制覇である…、僕は上機嫌で本日の神殿まわり夜間警備担当、オレガリオにその旨を伝え、その準備を申し付けた。
王城に出向くギリギリ直前まで何かをしていたらしい招待神官でもあるニコは、王城へ向かう列車にどうしても間に合わず、何でもするからと拝み倒され、そこでこうして忙しい僕が夜も明けきらぬ早朝から直接『ワープゲート』で迎えに来たというわけだ。
ベターライフ神殿を出発する前にしばしの休息。ここを出て王城に入ったら2~3日僕に安息は無い。
お茶をしてると、ニコがふと、何かに気付いたようにおかしなことを言いだした。
「なんだかんだで、あなた『恋エロ』の亡国エンド着々とコンプしつつあるわね…」
「ブフッ!はあ?何言って…」
「だってそうじゃない。シャリムルートのゲスマン、ヴォルフルートのナバテア、シュバルツルートのエトゥーリアも実質壊したようなもんだし…、あとは…アーニールートのクラレンスだけど、アルバートと結婚したら実質あなた陰の支配者でしょ?そうしたらもう…」
失礼な。でも…否定はしない…。
「言っとくけどクラレンスは壊さないよ!やっとここまで改革したのに…」
「改革!それよ!なんだ、すでに壊してたのね…古い慣習を。」
そう言われてみればそうかも知れない。
「礼二くんって実況してたんでしょ?一部熱心な視聴者が競うように投げ銭とかしてくれたって言ってたわよね。」
「うん。ありがたいよね」
「『恋エロ』の主人公云々以前に、元々そういう資質があったのかも。妙に人を惹きつけるっていう…そういう下地が」
「はぁ?僕はいたって普通の大学生だったよ?何言って…」
「関係無いのよ。魅力と容姿は…」
そういうものなのだろうか…?でも確かに大人数のアイドルなんかは全員が美男美女ってわけでもないもんな。それでも大勢のファンが彼や彼女に魅了されて、多くのグッズを買い込んでいる…。
「そこへ行くとあなたはこの『恋エロ』の世界で資質とビジュアル、その両方を備えちゃったのね。そりゃゲーム超えるはずだわ…」
「それ褒められてる?」
「だってこんなにはべらせ…あら?やだ!礼二くんこれ、ハーレムエンドじゃないの⁉」
「なにそれ?『恋エロ』にはバッドエンドかメリバエンドしか無いってニコが言ったんじゃない」
「『恋エロ』には無くても『恋バト』にはあるの。ハーレムエンド。あなたってば自力で『恋エロ』にハーレムエンド書き加えちゃったの?すごいわね…。その手腕に感心するわ」
嬉しくない。
「けどメリバエンドの回収が出来ないならコンプとはいかないな、残念…」
「何言ってるの。あなたが狂魔力を制御してる以上そのエンドは存在しないのよ?その代わりがハーレムエンドじゃないの?書き換えたのよ!上書きしたのよ!自力で!」
「なっ!」
生粋の腐女子であるニコは僕とは方向性の違う、でも、これもある種の廃ゲーマーと言える。
そのニコが何やらブツブツと考察をはじめた…。ニコ、そういうとこだよ、みんなが怖がるの…
「そうか!どうしてあなたのハーレムにアルバートが…って思ってたけど、多分あれね。アルバートは4人を攻略したら現れる『恋エロ』の隠しキャラだったのよ。あのメーカーが特典出さない訳無いわ!」
「は、はぁ?」
確かにあの四人が登場したのはシュバルツたちを助け出して諸々落ち着いたタイミングだったけど…
「隠しキャラならシュバルツが…」
「あれは隠しルートのキャラでしょ?そうじゃなくてコンプ特典のキャラってことよ。『恋バト』のあなたみたいな」
なんと!…でも不思議としっくりくる…。
「もしかしたら『恋バト』の4人からの選択方式だったのかも…」
「え?え?よく分からない…」
「それなら納得いくわ、どうしてセザールがあなたに絡んだか。」
「えっ?えっ?」
4人との経緯全てを知ってるニコが言うには(あくまで考察だよ?)早々にオスカーとは友情が確立となりルートアウトして、ローランドに至ってはツンからデレる辺りで僕が自力でフラグを折って…
「セザールはいいとこまでいってたけど礼二くんがアルバートを選択したから友だちエンドに落ち着いちゃったのよ」
「選択って…相手王子だよ?断れないじゃん?」
「そう?」
「え…」
……本当にそうだろうか…。
確かにニコには何度も「それでいいの?」と聞かれた気がする…。そうとも、今更だがなんなら一番幼い王女様を娶って体裁だけを整えることは出来たはずだ。ゲスマン事変の前ならここまでまだ狂魔力の重宝性もアテにされていなかったんだし…、例の光の魔法がなんちゃら…とかもゲスマンより前なら…
「あ、あれ?」
「でしょ?あたしの言った通りね。これがほんとのフルコンプよ。おめでとう礼二くん」
だから全然嬉しくない…。
イヤ嬉しい!それなら僕は自分でも気がつかないうちにすべてのエンドを回収してたっていうのか…?
コンプの鬼である僕的に…これはなかなか気分が良い!
お式が終わったら帰館に合わせて大々的に祝宴を、パーティーの名目は婚礼祝いではなく完全制覇である…、僕は上機嫌で本日の神殿まわり夜間警備担当、オレガリオにその旨を伝え、その準備を申し付けた。
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