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173 18歳 after 大移動

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「と言うわけでナバテアにはお引越しいただきました。」

「う、うむ…何と申せばよいのか…」


上座に鎮座する王様。そしてその両サイドに右大臣左大臣、それ以外にもお歴々が席を埋め尽くす円卓の会議室。
思えば初めて宮廷会議に参加したのがこの部屋だよね…。ゲスマンでの色々を報告したっけ。

そんな思い出深い場所で行うのがナバテアの引っ越し報告とは…、あ、あれ?デジャブ?



あんなことやこんなことは当然伏せているわけだが、一国をそっくり移動させたと言う事実に王もうるさい大臣たちも静まり返っている…。
いやいや、壊滅させられるんだからそりゃ移動だって出来るでしょ。あ、あれ?


「レジナルド、こういうものは壊滅させる方が簡単なのだ。力をぶつけるだけで済むのだからな。」


そうため息をついたのはアルバートの補佐として側に仕えるローランド。今褒められた…?いいや呆れられた?どっち!?


「それも失われた幻の島を浮かび上がらせ利用するなど…」
「なぜわざわざそのように面倒な真似を…」

「色々ありまして…あの皇帝は一度苦難を味わうべきかと…草一つ無いまっさらな土地で出直せばいい…。そりゃあ少しは大変だとは思いますよ?塩味の多い土地の改良とか魔獣の湧き出る森林の封印とか…、でも僕だってやったんだから出来るでしょ!」


国民も畑も運んでやって…初期ウエストエンドより条件良いんだしあとは自力で頑張れば?僕は知りません。スーン…


「な、何があったんだいレジー…」

「詳しくは聞かぬ、聞かぬぞ!聞くのも恐ろしい!しかし…制御下におかれた狂魔力がこれほどとは…」
「祖先はここまで見越していたのか…」


いいえ右大臣、左大臣違いますよ?フルコンプフルスキル有りきですよ?


「以前お話しした通り、長年の戦争で傷ついたエトゥーリアには境界線沿いを少し差し上げるつもりです。いいですよね?」
「うむ…、その件は改めて話し合おう」
「これ決定事項ですけど…」
「分かっておる。だがその領域については熟考が必要だ。」

「わかりました。それから樹海やベルト地帯にほど近い辺りは今回の成功報酬ってことで僕がいただきますね。がっぽり税お納めしますからそれで良しとしてください」
「良かろう」


あれ?意外とあっさり…。どうしたんだろ?報告聞いてビビった?


「父上、そろそろレジナルドを返していただいても?婚儀の打ち合わせもありますので」
「…アルバートよ」

「なんでしょう父上」
「レジナルドを王家にとの決定はまさに英断であったと思わぬか」


その問いの答えは満面のロイヤルスマイル。結果論だよね?別にいいけど…。






「ねえレジー、君の力は知っているが…あまり危険なことはしないで欲しい…」
「何のこと?」

「何となくね…。言っておきたいだけだ。君は狂魔力も無敵ではないと分かっていないようだから」


諸々のお仕事を片付け時は深夜。
少しばかり思うところのあった僕は付き合いたての恋人同士…程度のたわいもない触れ合いを楽しんでいた。いやあー、飴は大事ってこの間よく分かったからね。

後は寝るだけ。するとアルバートにしては珍しく真面目な顔で呟いたのだ…。
あ、これ何か勘づいたやつだ。


「アルバート…。もうすぐ僕はアルのものになるよね?王太子であるアルの所有物を適当には扱わない。僕は自分自身を誰より大事にしてるつもり。」

「それならいい…」


大事…の種類にはいろいろあるけどね。モフモフにまみれるとか。

だけど…僕にももう分かってる。何事にも死角はあると…
つまり一つ学習した僕は更に無敵だ。でも…

心配してくれたんだよね…?。なんだかんだ言ってアルバートは乙女ゲーの攻略対象者に相応しい、強く優しい王子様だ。


彼は僕の想像以上にいろんな改革を推し進めている。僕と共に「仁の国を作る」その言葉を決して曲げずに…。

王都には既にスラムなど無いし、十分でなくとも不遇な人々への支援体制も整いつつある。それはこれから少しづつ周辺の領へと波及していく事だろう。

それもこれもアルバートが予想以上に頑張ったおかげ。成長したね…ホロリ…


「君の足元にも及ばないが…、私なりに今出来ることをしたつもりだ。だからレジー、婚儀の後は…」チュ…
「アルバート…」


…うん。心の準備はもうできた。
アルがヴォルフたちを黙認しているようにヴォルフたちもアルバートを受け入れている。
最高の相棒たちに囲まれて僕の未来は盤石だ。

ちょっとどうしてこうなった…って思わないでもないけど、これが『恋エロ』の主人公として僕の選んだ最善の道。






………って、納得できるかっ!!!危ないところだった…。






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