街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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168 18歳 in 封印の部屋

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ちいさな小窓から覗くのはうすら笑いの若い役人の顔。ムッキー!


「冗談にしても笑えませんね!何の真似です?他国からの来賓によくもこんな事…」

「なにが来賓だ。呼ばれても居ないのに勝手に来た者など知った事か。だがレジナルドとか言ったな。狂魔力の継承者よ。其方のことは気に入った。ああ実にな!その目、その顔、その身体…全てがそそる…。気に入ったぞ!」


「まさかお前が皇帝…」

「この世の者とは思えぬ美貌!なんという艶めかしさ!だがどこはかとなく漂う危険な香りがまた蠱惑的…。さすがエトゥーリアの民がザラキエルと呼ぶだけのことはある!死の天使ザラキエル…、私の情夫にピッタリではないか!」
「な、何故その呼び名を…」

「些細なことだ。良いか、お前は何が何でも私のものにする。我が今そう決めたのだ。お前に拒否権は無い。全てが整うまでこの部屋で待つがいい!」

「馬鹿言うな。だいたい僕はクラレンスの公爵位で…、僕に何かあれば国際問題ですよ!」
「大臣もそうぬかしたが…ハハハ!構わん!クラレンスなどエトゥーリアともどもひねりつぶしてくれる!」


策謀に頼らず力で押し通す…、ジェイコブー!ホントにゴメンナサイ!


「まあいい、僕はこんな扉…あ、あれ?」


おかしい、こんなはず…。でも分かる。魔法を使おうとするたび吸い取られていく魔力。このがまるで吸水性の良いスポンジのようだ…。


「狂魔力か…。まさにこの魔道具にうってつけの力であるな。」
「魔道具…?」
「そうだ。お前の居る部屋、それこそが魔道具そのものよ。」

「な、何だと‼」

「その青い壁柱に刻まれた印が見えるか?ここは閉じこめた人間の魔力を吸い上げこの部屋全体を封印の魔道具とする部屋よ。つまりお前が強い魔力を放てば放つほどその部屋は強化される。そうでなくとも時間と共に吸い上げられる。いずれにしろいつかは枯渇を起こす。」

「…っ!」
「ザラキエルの名をどこで聞いたかと言ったな。教えてやろう。出て来いウォーデモン!」

「ここであったが百年目…、わしから全てを奪った悪魔、ザラキエルよ!飛んで火に居るとはこのことだ!ここで魔力を封じられ一生飼い殺されるがいい!お前から奪った狂魔力は魔道具に流用され、全てここにおられる皇帝陛下の力となるのだ!光栄に思え!」

「もうよい、下がれウォーデモン。」


ウォーデモン…このゾンビじじい!


「この商人は良い品を持ち込んでくれたわ。だからこそ落ちぶれたこの男をこうしてわが国で拾ってやったのだ。」


なるほど…。この部屋を魔道具にする余計な柱を持ち込んだのはウォーデモンか。そしてそれは恐らくゲスマンの魔導士たちが開発した道具。王子たちを見つけたゲスマン皇帝の間、あそこにもこんな壁柱が、藍色のピラスターが立っていたのをよく覚えてる…。
それにナバテアの魔道具はもっとわかりやすい武器が多い。魔石で強化したバズーカ砲とかキャノン砲とか。

監禁用魔道具などと言うこの趣味の悪さがゲスマンの全てを体現しているじゃないか!



「魔力を使わず何とか出来るか?無理だな。その部屋にはこの扉以外窓はない。一見石造りに見えるその壁も下地にはアダマンタイトが使用されている。ましてやこの扉…、同じくアダマンタイトで作られたこの扉は硬さだけでなく鍵すら特殊な錠前で出来ておる。易々とは破れぬよ。ましてや非力なお前ではな」


ぐっ…、くやしいがその通りだ…。


「エルフを捕まえ利用するつもりで用意させた部屋だが…狂魔力の継承者がこれほどの婀娜花とはな…一石二鳥だ。フフフ……お前を組み敷けばさぞ良い声で鳴くのだろうな…。魔力が枯渇するまでそこに居るがいい!ハーハッハッハッ!行くぞウォーデモン!」
「ははっ!ああ一つ言っておく。その部屋は施錠と共に全ての魔力を吸い上げる。例え魔道具であろうとな。そのマジックバックもとうに魔力は空っぽだ。クハハハハハ!」





つ、…詰んだ…。

ああーーー!僕のバカ

色んな後悔が押し寄せる。どうして一人できちゃったのか、どうしてサーチもせずノコノコこの部屋に入っちゃったのか。
思えば僕は力を過信しすぎるあまり行動に警戒心が足りなかったりする。それをクラウスにも、それどころかジェイコブにだっていつも叱られていたというのに…。ああ…大人の意見はちゃんと聞いとくんだった…。

それよりなにより最大の後悔は…

どうしてキュン魔力全開放とか言っちゃったんだろう…僕のあんぽんたん!!!
ローランドの冗談を真に受けたばっかりに…いやいや、ローランドに責任転嫁しちゃだめだ。全ては身から出た錆。自分自身で招いた危機だ…。


う…、うわぁぁぁん!ヤダヤダヤダ!あんな男が初めてなんて!どれほど際どいことしても最期の一線だけは死守してたのに!
こんな事ならとっとと許せばよかった。

ヴォルフにでもアーニーにでも…、いや。真摯に想いを告げてくれたシュバルツ、そして…まっさらな好感度ゲージを地道に埋めていったお手本のような乙女ゲーのキャラ、アルバートでもいい…。とにかく奴だけは絶対嫌だ!

あああ…なんとか…何とかしないと…。魔力が枯渇する前にここから出ないと!



でもどうする?魔力は使えない。封印は強化され奴らの利益になるばかり。


「アイテム『テレポーター』…って、うっそだろ…マジックバックが空っぽ…」


な、なにこれ?ここを出たら元に戻るんでしょうね!? じゃなきゃ億単位の損害賠償もんだよ!!!

ますますどうする…。

こうなってくると僕に今可能なのはこの黒水晶でシャリムを呼びだすぐらい…。でもそのシャリムも呼びだしたところで僕の二の舞だ…。
それは『ワープゲート』を持たせたヴォルフも同じ。入ったら最後、『ワープゲート』は使用不可、そしていくら腕力の強い獣人でもアダマンタイトの壁までは破れない…。

何とか外から…、外からあの鍵を開けるしか方法はない。でもどうやって?


カシャン…

「あ…」

いま僕のポケットにはチェキがある。ビフさんの作ってくれた試作品、プロトタイプの小さなチェキが…。

「これは…!何で?魔力が残ってる…。そ、それよりこうしちゃいられない。吸い取られる前にあの印を!」

パシャリ!

「そうだ!特殊な錠前も…」

パシャリ!



これは一体…、もしかしてドワーフの魔力だから吸収が遅かった…のか…?

きっとそうだ。エルフが言うところの〝混ざり者”である僕たちと違って、天より降り立ったハイエルフ、そして彼らから生まれたエルフ、そしてハイエルフの気を受けて自然に生まれ出たドワーフといった亜人は言わば純血種。
その魔力の質も人間と違うに決まってる。

純血種…ドワーフ…、エルフ!


この部屋には窓がない。唯一の覗き窓も用が済んだらアダマンタイトの蓋で閉じられた。
頑丈なるアダマンタイトは物音すら漏らさない。つまりそれは…

今ならシャリムを呼んでもバレないって事だ。


「シャリム、お出で!」


「イソヒヨドリ…ここは何?変な感じ…」
「しっ!いいシャリム。ここに居る間絶対魔力は漏らさないで。魔力が吸われるから手短に言う。黙って聞いて」


僕は簡潔に指示だけ与えると大急ぎでシャリムを黒水晶へと戻した。良かった。戻る魔力が何とか残せて…。


頼んだよシャリム!僕の最後の命綱…!




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