街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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155 18歳 at 河原

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季節は春、って言っても高地の川はまだまだ冷たい今日この頃…。なのに僕とアーニーはずぶ濡れである。

落下の衝撃を防ぐために丸く纏わせたフルカンストのシールド。おかげさまで怪我一つ無かったとは言え、まさかあんな風船みたいにバウンドするとは…。
今まで高所から落下したこと無かっただけに、今明らかになる衝撃の事実…。

おかげで流れの緩やかな川だというのにどんどん橋から離れてしまって…、これ以上離れるのを食い止めるためにはシールドを解除するしか無かったのだ。川のど真ん中だっていうのに…。


「寒い冷たい…。ごめんねアーニー。ちょっと不可抗力で」
「いいって気にすんな。それより何やってんだ、貸せよ」


濡れた衣類は扱いが難しい。かじかんだ指はボタンすらうまく外せない。僕はいつもウィルに任せるように、そのボタンの解除をアーニーに任せた。
着替えをお任せするのは貴族の嗜み…で、合ってるよね?


「あっ!余計なとこ触らないの!」


首筋やお腹に触れるアーニーの掌。案外器用なその手が僕は嫌いじゃない。…けどTPOってものがあってね!


「わざとじゃねぇよ。…けど…なあ、せっかくだからここで休んでかねぇ?」
「この状況下でヴォルフを放って?…サイテー…」
「…冗談だっての」
「いいや。声色がマジだった!僕は人に迷惑をかける自由は推奨しない」

「お前が言う?」


いやもうホントに。…かけてないよね…?




温風で服と髪を乾かす間、丁度いいのでアーニーに聞きたかったことを聞くことにする。シュバルツから衝撃の申し出を受けたあの夜、彼は事前にアーニーと話した、そう言ったのだ。



「シュバルツはアーニーに背中を押されたって言ったけど?」
「はあ?押してねぇっての。あいつはとっくに決めてたからな。あの頑固者は止められねぇだろ」

「だからってさぁ…、側夫だよ側夫。名義上とは言え二人も側夫を持つなんて…これじゃあ僕がまるで節操なしみたいじゃん」
「みたいじゃなくて実際そうだろ」
「はぁ!?」


事実無根もいいとこである。


「じゃあお前は俺とヴォルフ、それからシャリムの中から一人を選べっつったら出来んのかよ!」
「あ、それは無理」
「即答かよ」
「みんなそれぞれに僕の心の拠り所だから…」


僕の冒険を支えるのがヴォルフであり、僕の不確定を支えるのがシャリムであり、そして僕の街作りを支えるのがこのアーニーである。もしも誰かに家出されたら僕は軽く1年はペットロスになる自信がある。
だからこそ僕は彼らの行き過ぎた愛情さえ拒み切れず受け入れ…受け入…受け…、…ああ…僕の節操なし…。

「ははっ、いいけどな。お前のその我儘が無きゃオレたちは今ここにいねぇ」
「スイマセンネ…」

「…シュバルツは貴族には違いねぇが良い奴だ。俺はあいつとセザールのおかげで貴族への偏見が無くなったようなもんだ」


そりゃそうだ。悪人も善人も地位や立場で決まるわけじゃない。人間性の問題である。貴族だからってみんなが傲慢じゃないし、庶民が必ずしも無害とは限らない。だからこその『審判の門』だ。門は決してうわべに誤魔化されない。
その門からはじき出された元エトゥーリア兵は一人も居ない。いかにエトゥーリア民が愚直か分かるってものだ。


「少しは報われたっていいだろ。クソ真面目なあいつは長年苦しんでた。自分のツケに自分以外の人間を巻き込んじまったことにな。」

「何度も違うって言ったんだけどね…」

「そうだったとしても本人が納得できるかどうかは別の問題だろ?」
「うん…」

「毛色は違ってもあいつは俺たちと変わらない。仲間の一人だと思ってるぜ俺は」


ま、まあ…?同じ『恋エロ』の仲間だし?シュバルツは隠しルートのキャラで…、うん。言ってることは間違ってない。


「好きなようにさせてやれよ。それであいつが納得すんなら」

「まあね…」




それにしても…、どんどん賑やかになっていく僕の周辺。賑やか…?いや怪しさ満々の賑やかさだが…、ニコにも指摘された自分自身の変化…。ああ…僕は一体どこへ行こうとしているのか。

はっ!もしやこれもキュン魔力の内なる影響で…?…まさかね。まさかだよ。…いや!そのまさか!? だから男同士のその…行き過ぎたスキンシップにどんどん抵抗が無くなっているのだろうか?

最後の砦だけは死守しているが…自分が怖い…。



…いいや違う。認めよう。僕は負けたんだ…。溢れ出る彼らへの愛情と暴発する所有欲とも独占欲とも言える言葉にし難い感情コンプリート精神。それから…、…知ってしまっためくるめく快感に…。ああ…!

だって僕は前世から通算してのチェリーで…、無理もないと思いませんかっ!


「どうしたレジー。赤い顔して」
「別に。何でもない。気にしないで。」

「熱でも出たのか?なんなら温めやろうか。人肌で」バシッ「痛ってぇな!」
「バカ言ってないで早く行くよ!」


ヴォルフは橋の上であのドワーフとどうしてるだろうか…。







「このドワーフめが!俺を誰だと思っている!」

「うるさいわい!お前なぞだたのデカい狼ではないか。わしの敵ではない!」

「何だと!二度と舐めた口を利けなくしてやろうか」

「お前にはこの武器が見えんのか!これは空気の威力で敵を倒す強力な武器!わしが何度もこれを空に向けると思ったら大間違いだぞ!」

「ほう…?面白い…やれるものならやって見ろ!!」

「こっちの台詞よ!」




「止めてヴォルフ!」
「止めんかビフ!」



今にも開戦の火蓋が切って落とされようとしていた一触即発のヴォルフとドワーフ!
それを止めようとした僕の声に背後からハモったのは骨太な男の声。だ、誰⁉


「何故止めるビル!こいつらは不審な侵入者だぞ!」
「お前には口も耳も無いのかビフ!まずは事情を聞こうとは思わんのか!」
「聞いてどうする。わしらの村に他所者は入れん習わしだろうがビル。ならばこの橋を渡らせるわけにはいかん!」
「見てみろこいつらを。オオカミとヤク一頭。武器も荷物も持たん子供二人ではないか。」

「知らん!!!」

「それだからお前は村の仲間とも揉めるんだろうが。いい加減にせい!」


ビフとビル。そこには目の前のドワーフとそっくっり同じ顔をしたもう一人のドワーフが立っていた…。


「それでお前たちは何を言い争っておる」

「何をじゃねぇよ!いきなり俺たちを脅かしてきやがって!見ろよ!ヤクがビビってんじゃねぇか!」
「おかげでこいつら二人は川底に落下した。あいつが魔力をもってたからいいようなものの…」
「どう責任を取ってくれんだよ!」
「一歩間違えればあの世行きだ。ただでは済まさんぞ!」


「まーまーまーまー」


息ピッタリ!血の気の多い…

無口なシャリムの時と違ってこの二人のケミストリーは最悪である…。






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