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144.5 その頃…
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「そうですか、セザール様と…」
「形だけだよ。全てはセザールによる配慮。これからも今まで通りとのことだ。彼は自分の屋敷で暮らすしレジナルドとは友人である、と。あの言葉に嘘はない。私にはそう感じられた」
「分かりました。今まで通り…。ですが前例を作っていただけたのにはある意味お礼を申し上げないと…」
「何の話だろうパウル…?」
「いえ、ただどう事を進めるかと思案していた矢先でしたので…これで幾分…ああでも…」
「私は力になれるだろうか?」
「あ…ローランド様はいつもお優しい…、その、甘えても?」
「無論だ」
「…私は常々レジナルド様にはヴォルフさんやアーニーさんとはまた別の、社交界という伏魔殿にてお支えできるつれ合いが必要だと考えておりました。王太子殿下とも違いどこへでもご一緒できる立場の。」
「シュバルツ殿を想定してのことだね…」
「ええ」
「ですが兄様は堅物で…、いえ、それはいいのですけど…、ああ…、やはりよくありません。このままではレジナルド様への想いを胸に抱いたまま何も告げられず人生を終えるのではないかと心配しております…。」
「義兄上は潔い方であられるからね…。ふむ…ではこんなのはどうだろうか」
「ローランド様…」
「仔細はお分かりになりましたか?兄様。」
「そうか…。セザール殿と…」
「気を落とすのはおやめください。ローランド様からも伺いましたがセザール様はあくまで友人、と強調されていたようですよ?」
「だが彼の想いは…。あの目を見ればわかる。私と同じだと…」
「そんなことはローランド様も承知しております。ですが彼の言葉に曇りは無かったと、そう申しておられました。セザール様はウルグレイスの思惑からレジナルド様を守りたいだけなのだと…」
「分かっている。彼は華やかだが実に細やかな心配りをされる方だ。彼がそう言うのであればそうなのだろう。」
「では兄様もそうなさってはいかがでしょう…。」
「パウル何の話だ…」
「兄様もレジナルド様をエトゥーリアの議会からお守りくださいませ。側夫となって。そう言っているのです。」
「パウル…。私は姑息な手段でレジナルド殿を手に入れたいとは思わないのだよ。それは私のやり方ではない」
「兄様ならそう仰ると思っておりました…」
「それにエトゥーリアの議会はレジナルド殿に何の接触もしていないではないか。一体何から彼を守れと言うのだ。」
「もちろん今は。ですがローランド様はこうおっしゃいました。「先のことは分からない。今後エトゥーリアの議員貴族や王族周辺がレジナルドを狙わない保証はない」と。」
「どういう意味だろうか?」
「分かりやすく力を示したい議員貴族や王家の復権を願う誰かにとってレジナルド様はうってつけの存在だと言う事です。」
ドン!「馬鹿な!あの方をそんなくだらない争いごとに巻き込むなど…していいはずがない!」
「兄様落ち着いて、仮定の話です。」
「あ、ああ…すまない。私としたことが声を荒げるなど…」
「…例え話でそれだけ激高されるのに…ではそうなる前に手を打つのはそれほど悪いことでしょうか?ローランド様も仰いました。予測できる危険を見過ごすのは愚か者だと。」
「ローランド君がそんなことを…」
「いいですか?セザール様がそうなさったようにエトゥーリアからは兄さまが楯となってレジナルド様をお守りするのです。私はエトゥーリアを盲目的に信じてはおりません。一度起きたことは二度起きるかもしれない…。ロートリンゲンにとっての武力、それがレジナルド様に置き換わったとしたら?私の抱く危惧…お分かりいただけませんか…?」
ガタン!
「兄様!兄様は平気なのですか?私は平気ではありません!レジナルド様に侍るのがこのウエストエンドの者で無いなど、とても耐えられない!」
「パウル…」
「今回のお相手がセザール様であったことは幸運だったのです!これがもしもレジナルド様を利用しようとする相手であったりしたら!」
「止すのだパウル!…いいとも考えよう。それが私に課された最善であるのならば…」
パタパタパタ…
「ローランド様!」ポスッ
「パウル!ああ私のパウル。ところでシュバルツ殿はお帰りになられただろうか?」
「ええ。たった今クーデンホーフ領へお戻りになりました、あっ」チュッ「もう…」
「兄弟だけのほうがいいかと思い同席は遠慮したが…首尾はどうだろう。彼は納得されたかい?」
「初めは渋っておりましたけど…ふふ、ローランド様の言われるとおりに説得を試みたところ最後には力強く頷いてくださいました」
「それは良かった」チュッ
「ローランド様のおかげです。頼もしい人…」キュッ
「ああ私のパウルフェン…、どうか二人きりの時ぐらいはローリーと呼んで欲しいのだが…駄目だろうか…?」
「ろ、ロー…、駄目っ!恥ずかしい…」
「いいからもう一度言って」クイッ
「ローリィ…」
「あーゴホン!ここは法の聖地、裁判所ですよ。そういう事は私室でどうぞ」
「ユ、ユーウィン…す、すまない…」
「あの、…お疲れ様…」
「こういう時なんと言うんだったか、レジー様にお教えいただいた…、ああそうそう」
「な、何…」
「りあじゅう爆散しろっ!!!」
「形だけだよ。全てはセザールによる配慮。これからも今まで通りとのことだ。彼は自分の屋敷で暮らすしレジナルドとは友人である、と。あの言葉に嘘はない。私にはそう感じられた」
「分かりました。今まで通り…。ですが前例を作っていただけたのにはある意味お礼を申し上げないと…」
「何の話だろうパウル…?」
「いえ、ただどう事を進めるかと思案していた矢先でしたので…これで幾分…ああでも…」
「私は力になれるだろうか?」
「あ…ローランド様はいつもお優しい…、その、甘えても?」
「無論だ」
「…私は常々レジナルド様にはヴォルフさんやアーニーさんとはまた別の、社交界という伏魔殿にてお支えできるつれ合いが必要だと考えておりました。王太子殿下とも違いどこへでもご一緒できる立場の。」
「シュバルツ殿を想定してのことだね…」
「ええ」
「ですが兄様は堅物で…、いえ、それはいいのですけど…、ああ…、やはりよくありません。このままではレジナルド様への想いを胸に抱いたまま何も告げられず人生を終えるのではないかと心配しております…。」
「義兄上は潔い方であられるからね…。ふむ…ではこんなのはどうだろうか」
「ローランド様…」
「仔細はお分かりになりましたか?兄様。」
「そうか…。セザール殿と…」
「気を落とすのはおやめください。ローランド様からも伺いましたがセザール様はあくまで友人、と強調されていたようですよ?」
「だが彼の想いは…。あの目を見ればわかる。私と同じだと…」
「そんなことはローランド様も承知しております。ですが彼の言葉に曇りは無かったと、そう申しておられました。セザール様はウルグレイスの思惑からレジナルド様を守りたいだけなのだと…」
「分かっている。彼は華やかだが実に細やかな心配りをされる方だ。彼がそう言うのであればそうなのだろう。」
「では兄様もそうなさってはいかがでしょう…。」
「パウル何の話だ…」
「兄様もレジナルド様をエトゥーリアの議会からお守りくださいませ。側夫となって。そう言っているのです。」
「パウル…。私は姑息な手段でレジナルド殿を手に入れたいとは思わないのだよ。それは私のやり方ではない」
「兄様ならそう仰ると思っておりました…」
「それにエトゥーリアの議会はレジナルド殿に何の接触もしていないではないか。一体何から彼を守れと言うのだ。」
「もちろん今は。ですがローランド様はこうおっしゃいました。「先のことは分からない。今後エトゥーリアの議員貴族や王族周辺がレジナルドを狙わない保証はない」と。」
「どういう意味だろうか?」
「分かりやすく力を示したい議員貴族や王家の復権を願う誰かにとってレジナルド様はうってつけの存在だと言う事です。」
ドン!「馬鹿な!あの方をそんなくだらない争いごとに巻き込むなど…していいはずがない!」
「兄様落ち着いて、仮定の話です。」
「あ、ああ…すまない。私としたことが声を荒げるなど…」
「…例え話でそれだけ激高されるのに…ではそうなる前に手を打つのはそれほど悪いことでしょうか?ローランド様も仰いました。予測できる危険を見過ごすのは愚か者だと。」
「ローランド君がそんなことを…」
「いいですか?セザール様がそうなさったようにエトゥーリアからは兄さまが楯となってレジナルド様をお守りするのです。私はエトゥーリアを盲目的に信じてはおりません。一度起きたことは二度起きるかもしれない…。ロートリンゲンにとっての武力、それがレジナルド様に置き換わったとしたら?私の抱く危惧…お分かりいただけませんか…?」
ガタン!
「兄様!兄様は平気なのですか?私は平気ではありません!レジナルド様に侍るのがこのウエストエンドの者で無いなど、とても耐えられない!」
「パウル…」
「今回のお相手がセザール様であったことは幸運だったのです!これがもしもレジナルド様を利用しようとする相手であったりしたら!」
「止すのだパウル!…いいとも考えよう。それが私に課された最善であるのならば…」
パタパタパタ…
「ローランド様!」ポスッ
「パウル!ああ私のパウル。ところでシュバルツ殿はお帰りになられただろうか?」
「ええ。たった今クーデンホーフ領へお戻りになりました、あっ」チュッ「もう…」
「兄弟だけのほうがいいかと思い同席は遠慮したが…首尾はどうだろう。彼は納得されたかい?」
「初めは渋っておりましたけど…ふふ、ローランド様の言われるとおりに説得を試みたところ最後には力強く頷いてくださいました」
「それは良かった」チュッ
「ローランド様のおかげです。頼もしい人…」キュッ
「ああ私のパウルフェン…、どうか二人きりの時ぐらいはローリーと呼んで欲しいのだが…駄目だろうか…?」
「ろ、ロー…、駄目っ!恥ずかしい…」
「いいからもう一度言って」クイッ
「ローリィ…」
「あーゴホン!ここは法の聖地、裁判所ですよ。そういう事は私室でどうぞ」
「ユ、ユーウィン…す、すまない…」
「あの、…お疲れ様…」
「こういう時なんと言うんだったか、レジー様にお教えいただいた…、ああそうそう」
「な、何…」
「りあじゅう爆散しろっ!!!」
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