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138 18才 at デュトワ家

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それにしても…

デュトワ家の長兄は、もしかしてアラン…と思った僕の予想は大外れ。フェルゼンでしたか…そうですか。そういやこの人軍部でも内勤組だった…。

そしてこちらも初めてお会いするお父さん…

スラリとしたいかにもやり手そうな美中年。一番上は父親似か…


「この美しい宝石を手土産にとは…。お心遣いありがたく、ランカスター公爵閣下」
「レジナルドで構いませんよデュトワ候」

「ですが貴方様の美しさには宝石も霞んでしまいそうですな」

「…またまた御冗談を。そうそう、それらの石はウエストエンドでしか採れないトルマリンという石で…、少しルビーやサファイアと似ていますがこれらは身につけると心身を浄化し健やかにするんですよ。」
「それはまたなんとも重宝な…」

「それからこれも。」

「この錠剤は…?」
「これは夫人に。」

「あらわたくしに…?一体何かしら…」


そしてセザールのお母さんはキリリとした高貴な美女。なるほど、セザールは母親似で真ん中は半々ね。


「これはウエストエンドでのみ販売されているアンチエイジング…、つまり若がえりのサプリです。効果は絶大ですよ。実は僕も時々使用してまして…、セザールのお母様なので今回は特別に。ああ、一日一錠だけですからね」
「まぁ!」


おっ!反応は上々。そうそう。美への探究心は万国共通だよね。

僕はイーサン先生の例のポーションを20倍に希釈し粉末にし、さらにそこからタブレットへと固形化して美容サプリとしてヴィラ限定で売り出し始めた。けっして安くはないサプリだが評判は上々。サプリ欲しさにヴィラの予約が増えたくらいである。

ウルグレイスは大国である。どれほど戦時下であったといえ、貴族家の裕福さにおいてエトゥーリアとは比較にならない。そもそもエトゥーリア貴族は一部のろくでなし以外基本が質素だ。

今回その裕福なウルグレイス貴族にまで触手を伸ばしてヴィラのプロモーションをするつもりでいるが大した手間は必要ない。
2~3人の夫人にサンプルをお渡ししておけば後は勝手に噂は広がる。あのサプリの効果は本物だ。


「それにしても貴方様の護衛…、獣人でいらっしゃるのですね」
「それがどうした」
「こらヴォルフ!失礼しました。その…ウルグレイスではどうでしょう?この国は人道を重んじる神の国、差別などは無いと聞いていますが…」

「差別はございませんがこの国に住むのであればこの国の流儀に従っていただきます。それを獣人の方々が好みませんの。礼節を重んじる我が国は自由を貴ぶ彼らの理念に合わないようでございますわね。そこのタイを解いた従者のように。しゃんとなさいませ!」
「息苦しい」

なるほど。ヴォルフがあまり乗り気でなかったのはそういうことか。
美術芸術神学に興味が無ければ、ここは余所者にとってはマナー等々も含めて…、お高くとまった住みにくい国でしかない。獣人でなくとも…。


「それに…ご存じかしら?ウルグレイスは祖先にエルフを持つ国」

「ええ。セザールから聞いています」

「獣人とエルフは犬猿の仲ですのよ。それも影響しまして…。それゆえ滅多なことでは近づかないのですわ」


えっ?エルフが獣人と仲悪いとか聞いてないんだけど…?彼らはドワーフとも仲悪いんじゃなかったっけ?で、人間種は下等生物でしょ?

じゃぁ誰となら仲良くやれるんだよっ!


「あの…僕はあまりエルフ族について詳しくなくて…、お教えくださいますか?」

「わたくしの知っていることだけで良ければ…」
「ぜひ!」

「では…コホン…。彼らはこの世界の草創期、光差すより天よりこの地に舞い降りたと言われています。彼らは金の髪と白い肌、類まれな美貌を持ち決して老いることなく千年と言った長い時を生き続けます。美しいものを好み、自然を尊び、そして、…実は彼らときたらイタズラ好きで…楽しいことが大好きなのですよ。そんな風に彼らは日々愉快に暮らしていたそうです。」

「へぇ…」


大体僕の知ってるエルフと変わらない。けど光差す天から…ってのは初耳だな。ああ、だからエルフの血を引くウルグレイス王家は神の使いを名乗るのか…。


「ですがその反面、彼らはとても気難しく、一度へそを曲げると手に負えなかったとも言われております」
「それでこの国の始祖とケンカ別れしたんですよね?」

「残念なことに」
「だが文献によれば彼らハイエルフは我々の始祖を混ざりもののエルフと呼んで見下したという話だ。これで良かったとも言えるだろう」


あ…、なーるほどね。エルフによるハーフエルフへのマウント。これもありがちだ。


エルフの姫は人間と恋に落ち一人の子供、ハーフエルフを産み落とした。それがウルグレイス開国の始祖。当時は他にも人間と結ばれたエルフが居たのだとか。本家ほどでなくともやや長命なハーフエルフの始祖は三人ほど夫を変えながら200年余りの間この国を護ったそうだ。

本家エルフたちと美に対する見解の相違があったのはこの間のこと。

そうやって生まれた子供たちはハーフ、クオーター、ワンエイス、ワンシクスティーンス以下略…と、どんどんその血を薄めほぼ人間の現在に至る。その間一度たりともエルフが姿を見せたことはないそうだ。



「ほんの僅かですけれど…、地から生まれたエルフも存在すると言われておりますわ。天のエルフが光を象徴するように地のエルフは闇を象徴します」

「へー!」


つまりダークエルフか!


「ウルグレイスの始祖と相互理解を成し得なかったことで彼らは外界との関りを遮断しました。今では魔法により閉ざされたどこかの森で静かに暮らしているという話です…。ですが時折こっそり人里に現れてはたわいもない悪戯をしていくと言われています。」

「解明できない不可解な出来事のほとんどがエルフの悪戯と言われているな」


ミステリーサークル…的な?


「繊細で物静かな彼らは荒々しい物腰や物言いを好みません。そのためドワーフや獣人と言った種族とは相容れないのですよ」

「奴らの何が繊細なものか」
「ダメだってばヴォルフ!すみません…。でも大体わかりました。ありがとうございます」




まさか初日からこんなに話を聞けるなんて…。思った以上の収穫!けど、彼らの特性が分かったことで少しは対策できそうだ。


待ってろエルフ!いくらエルフが何千年生きてたってこちとら前世持ち。キャリアなら負けないよ?






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