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136.5 18才 in 騎士の宿舎
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「みんな。今日は僕からのお祝いだから好きに食べて飲んでね?」
「レジー様…。臣下である我らに毎年毎年このような…」
「ああ、殿下とご婚約為されてもレジー様はお優しい…」
「幼き時より少しも変わらない…レジナルド様…」
騎士のみんなが感動にむせび泣く今日という日。これはこのウエストエンドが軌道に乗った13の頃より僕が始めた、年に一度の〝騎士団感謝デー”である。
なにしろ彼らは僕の狂魔力が制御されていると認識する前より「死ぬときは一緒です!」と言って忠誠を誓ってくれた騎士たちなのだ。
ゴーディー率いる元第一騎士団の面々でさえ、ウエストエンドを離れたあの日、「本音を言えば同行したい」と最後まで言ってくれていた。
その彼らが向けてくれる日々の忠義に対して僕が返せるものなどそう多くはない。
先日彼らは王都から帰った僕のバースディを領民とも屋敷の使用人とも別で宿舎にて盛大に祝ってくれた。この地に来るより前から毎年毎年、なんて律儀で優しい彼ら。
彼らが僕を祝ってくれるように、僕も彼らの誕生日を一人一人個別で祝えたら良いのだけど…如何せん、合計で50名にもなるウエストエンド騎士団の面々。それを全員分激務に追われる僕が祝うのは無理ゲーである。
そこである日ふいに思い立って、母の日…、敬老の日…、とか勤労感謝の日…、的なニュアンスで始めたのがこの騎士団感謝デーだ。
芋とトマトしかない不毛の荒野、ウエストエンドを力を合わせてここまで大きくしてきた大好きな騎士たちに僕はいつだってこの感謝の気持ちをどうにかして伝えたいと思っている。
そのため今日と明日の二日間、二部交代制で僕は精一杯彼らを労うのである。
「レジー様、お手元が危険です。その作業は俺が」
「それじゃぁ労いにならないじゃない。いいからそっちで待ってて。大丈夫。もう5年目だもん。焼けるって、お肉ぐらい」
僕の目の前には大きな鉄板がある。その前でお肉を焼くのが当主であるこの僕。ま、まあ、確かに5年前は焦がしたりもしたけどね…。バーベキューも経験を重ねればうまくなるものだ。
こうして今日の僕は彼らの為に肉を焼き彼らのグラスにエールを注ぐ。
一人一人に声を掛け、一人一人の肩をもみ…、明日からもよろしくね、と、媚びを売るのだ。僕なんかのお愛想ごときで満足していただけるかは分からないが…。
「まずはリマール。それからロジェ、いつもいつも扱き使ってごめんね?でも二人にはなんでも頼みやすくって…。これからは少し自重するから」
「いいえ!俺で良ければ喜んで!これからもバンバン扱き使ってくださいね!」
「私もですレジナルド様!何でもこなせるのが私の長所ですから!」
「嬉しいな、ありがと。」ニコリ「あれ?顔真っ赤だよ?飲み過ぎないでね」
「いえ、むしろ素面ではいられません…」
思ったよりアルコールに弱いのかな…?
「ふふ、オリバー、オレガリオ、いつも大変な仕事ばかり任せてごめんね?二人が体力あるからって無理ばかり…。少し反省しなきゃ」
「何言ってるんですか、見て下さいこの上腕二頭筋。レジー様の為に日夜鍛えてるんですよ」
「俺もです。どうぞご遠慮なく。触ってみますか?この腹筋」
「わぁ、ホントだ」サワサワ「あっ!ご、ごめん不躾に…。強張っちゃったよ?大丈夫?」
「あ、その、今はそっとしておいてください…」
ストレッチが足りてないんじゃないの…?
「ダノワ、いつか借りたシャツあれ以来着てないね?もしかして破れてた?良ければ新しいの買って返すけど…」
「あのシャツはレジー様を日差しから守った名誉のシャツです。大切に大切に飾ってあるんですよ」
「え…、あ、うーん…、でも僕を守ってくれるのはダノワのシャツじゃなくダノワ自身だから。そうでしょ?だからダノワ自身を大切にしてね」
「レジー様がそう仰るのなら!」
ダノワぁ…シャツじゃ防御力は上がらないよ?
「アストルフォ、水源探知、君が居て本当に助かってる。それよりも見目の良い君を連れて歩けるのは…役得だね」
「そのように仰っていただけるとは…。感無量ですレジナルド様…」
「あ、ちょっとみんな、アストルフォをどこに…」
「大丈夫です。黙ってやられはしませんから」
…よく見る光景だけど…アストルフォは慕われてるなぁ…
「クールなリナルドと感情豊かなマラジーは正反対だけど息の合った良いコンビだね。王都の駅で見た二人の連係プレー、とても無駄のない素晴らしい動きで…惚れ惚れしちゃった」
「あの戦いの最中にそんなところまでご覧になっていたとは…」
「さすがですレジー様!俺は貴方に一生ついていきます!それでもっと惚れ惚れさせてみせますから!」
「な!なんだとマラジー!レジー様!俺はどうでしたか?」
「それを言ったら俺はいかがだったでしょう」
「マーシャル…、ホルス…、みんな僕の自慢だよ!」ガバッ
ああホルスッ!鼻血が!のぼせた?のぼせたの?だ、大丈夫だろうか…って、どこからかうめき声が聞こえる。これは…泣いてるのは誰?
「う…、うぅ…、俺も…、俺も行きたかった!レジー様を護衛してあの汽車で王都へ!そして一緒に戦いたかった!!!」
「ちょ、ちょっとユーウィン、泣き上戸なの?困った人だね。でもパーヴェルを守ってくれていること…、本当に感謝してる。ほら、マントが落ちそうだよ。結び直してあげる」キュ
「れ、レジー様…」フラッ
「ユーウィン!誰か!ユーウィンが酔っぱらって倒れちゃった!連れて行って寝かしてあげて!」
「おい!こいつはその辺に転がしとけ!」
「いや、外に放り投げろ!」
「み、みんな?」
こうして初日に濃いめのオリジナルメンバー、二日目、バイアールたち増員メンバーとともにもう少し落ち着いた心温まる時間を過ごし…
「ひと月ぐらいで戻るから。僕の居ないウエストエンドはみんなに任せたよ。僕がこうして安心して出かけられるのも君たちが居るからだ。カッコよくて強くて優しくて…僕の自慢であるウエストエンド騎士団を来訪するお客様たちにも目一杯アピっておいて。じゃあ行ってくる」
「ヴォルフ!レジー様を頼んだぞ!」
「言われるまでもない」
待ちに待ったウルグレイスへ出発だ!
「レジー様…。臣下である我らに毎年毎年このような…」
「ああ、殿下とご婚約為されてもレジー様はお優しい…」
「幼き時より少しも変わらない…レジナルド様…」
騎士のみんなが感動にむせび泣く今日という日。これはこのウエストエンドが軌道に乗った13の頃より僕が始めた、年に一度の〝騎士団感謝デー”である。
なにしろ彼らは僕の狂魔力が制御されていると認識する前より「死ぬときは一緒です!」と言って忠誠を誓ってくれた騎士たちなのだ。
ゴーディー率いる元第一騎士団の面々でさえ、ウエストエンドを離れたあの日、「本音を言えば同行したい」と最後まで言ってくれていた。
その彼らが向けてくれる日々の忠義に対して僕が返せるものなどそう多くはない。
先日彼らは王都から帰った僕のバースディを領民とも屋敷の使用人とも別で宿舎にて盛大に祝ってくれた。この地に来るより前から毎年毎年、なんて律儀で優しい彼ら。
彼らが僕を祝ってくれるように、僕も彼らの誕生日を一人一人個別で祝えたら良いのだけど…如何せん、合計で50名にもなるウエストエンド騎士団の面々。それを全員分激務に追われる僕が祝うのは無理ゲーである。
そこである日ふいに思い立って、母の日…、敬老の日…、とか勤労感謝の日…、的なニュアンスで始めたのがこの騎士団感謝デーだ。
芋とトマトしかない不毛の荒野、ウエストエンドを力を合わせてここまで大きくしてきた大好きな騎士たちに僕はいつだってこの感謝の気持ちをどうにかして伝えたいと思っている。
そのため今日と明日の二日間、二部交代制で僕は精一杯彼らを労うのである。
「レジー様、お手元が危険です。その作業は俺が」
「それじゃぁ労いにならないじゃない。いいからそっちで待ってて。大丈夫。もう5年目だもん。焼けるって、お肉ぐらい」
僕の目の前には大きな鉄板がある。その前でお肉を焼くのが当主であるこの僕。ま、まあ、確かに5年前は焦がしたりもしたけどね…。バーベキューも経験を重ねればうまくなるものだ。
こうして今日の僕は彼らの為に肉を焼き彼らのグラスにエールを注ぐ。
一人一人に声を掛け、一人一人の肩をもみ…、明日からもよろしくね、と、媚びを売るのだ。僕なんかのお愛想ごときで満足していただけるかは分からないが…。
「まずはリマール。それからロジェ、いつもいつも扱き使ってごめんね?でも二人にはなんでも頼みやすくって…。これからは少し自重するから」
「いいえ!俺で良ければ喜んで!これからもバンバン扱き使ってくださいね!」
「私もですレジナルド様!何でもこなせるのが私の長所ですから!」
「嬉しいな、ありがと。」ニコリ「あれ?顔真っ赤だよ?飲み過ぎないでね」
「いえ、むしろ素面ではいられません…」
思ったよりアルコールに弱いのかな…?
「ふふ、オリバー、オレガリオ、いつも大変な仕事ばかり任せてごめんね?二人が体力あるからって無理ばかり…。少し反省しなきゃ」
「何言ってるんですか、見て下さいこの上腕二頭筋。レジー様の為に日夜鍛えてるんですよ」
「俺もです。どうぞご遠慮なく。触ってみますか?この腹筋」
「わぁ、ホントだ」サワサワ「あっ!ご、ごめん不躾に…。強張っちゃったよ?大丈夫?」
「あ、その、今はそっとしておいてください…」
ストレッチが足りてないんじゃないの…?
「ダノワ、いつか借りたシャツあれ以来着てないね?もしかして破れてた?良ければ新しいの買って返すけど…」
「あのシャツはレジー様を日差しから守った名誉のシャツです。大切に大切に飾ってあるんですよ」
「え…、あ、うーん…、でも僕を守ってくれるのはダノワのシャツじゃなくダノワ自身だから。そうでしょ?だからダノワ自身を大切にしてね」
「レジー様がそう仰るのなら!」
ダノワぁ…シャツじゃ防御力は上がらないよ?
「アストルフォ、水源探知、君が居て本当に助かってる。それよりも見目の良い君を連れて歩けるのは…役得だね」
「そのように仰っていただけるとは…。感無量ですレジナルド様…」
「あ、ちょっとみんな、アストルフォをどこに…」
「大丈夫です。黙ってやられはしませんから」
…よく見る光景だけど…アストルフォは慕われてるなぁ…
「クールなリナルドと感情豊かなマラジーは正反対だけど息の合った良いコンビだね。王都の駅で見た二人の連係プレー、とても無駄のない素晴らしい動きで…惚れ惚れしちゃった」
「あの戦いの最中にそんなところまでご覧になっていたとは…」
「さすがですレジー様!俺は貴方に一生ついていきます!それでもっと惚れ惚れさせてみせますから!」
「な!なんだとマラジー!レジー様!俺はどうでしたか?」
「それを言ったら俺はいかがだったでしょう」
「マーシャル…、ホルス…、みんな僕の自慢だよ!」ガバッ
ああホルスッ!鼻血が!のぼせた?のぼせたの?だ、大丈夫だろうか…って、どこからかうめき声が聞こえる。これは…泣いてるのは誰?
「う…、うぅ…、俺も…、俺も行きたかった!レジー様を護衛してあの汽車で王都へ!そして一緒に戦いたかった!!!」
「ちょ、ちょっとユーウィン、泣き上戸なの?困った人だね。でもパーヴェルを守ってくれていること…、本当に感謝してる。ほら、マントが落ちそうだよ。結び直してあげる」キュ
「れ、レジー様…」フラッ
「ユーウィン!誰か!ユーウィンが酔っぱらって倒れちゃった!連れて行って寝かしてあげて!」
「おい!こいつはその辺に転がしとけ!」
「いや、外に放り投げろ!」
「み、みんな?」
こうして初日に濃いめのオリジナルメンバー、二日目、バイアールたち増員メンバーとともにもう少し落ち着いた心温まる時間を過ごし…
「ひと月ぐらいで戻るから。僕の居ないウエストエンドはみんなに任せたよ。僕がこうして安心して出かけられるのも君たちが居るからだ。カッコよくて強くて優しくて…僕の自慢であるウエストエンド騎士団を来訪するお客様たちにも目一杯アピっておいて。じゃあ行ってくる」
「ヴォルフ!レジー様を頼んだぞ!」
「言われるまでもない」
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