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130 18歳 countdown あと6日
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「坊ちゃま、エンマでお泊りになるならなるで一言仰っていただかないと困りますな」
ギクッ!
…何食わぬ顔で朝食の席に着いたというのに…。
あのお酒や食事は「夜はエンマの別荘でヴォルフと食べるから適当に寝てて」と言って用意してもらっていたものだ。
だからこそ朝までに戻っていればお泊りはバレないだろうと思っていたのに…ジェイコブの目は一体どこについているのだろう…?
「ゴメンゴメン。二人で飲んでたらうっかり寝落ちしちゃって…、以後気をつけます…」
「坊ちゃまは王太子妃になられる身、自由を謳歌できるのも今だけ、目溢しは致しますが…」
「ありがとうジェイコブ。でも王太子妃になったくらいで大人しくする気は毛頭ないよ。僕は今後、エトゥーリアの先にあるドワーフの国やウルグレイスを抜けた遥か向こうにあるエルフの国とも交流を持ちたいと考えてるんだから」
「なんとそのような…。彼らは独自の集合体を築き隠れ暮らす偏狭な種族、一筋縄ではいきませぬぞ?」
「だから遣り甲斐があるんじゃない。まあいずれね」
いつもと変わらない朝の風景…。
でも昨夜僕は大人の階段を半歩登ってしまったワケだが…こ、行為の最中に時々触れる尻尾や耳がまたなんとも気持ちよくって…、こう…コショコショって…、…バカか僕は!
「一旦おいとこう。深く考えたらマズイ気がする…」
僕は脳のリソースを大半街作りに割り当てている。それ以外の事など考えている余裕はないのである。
…ないったらない!
そんなわけで7日、…いや6日後に迎える今年の誕生日は主催の王家に丸投げしている。…何故主催が王家かって?何故ならその日は僕とアルバートの婚約式でもあるからだ。そのため盛大な舞踏会が用意されているとかいないとか…。
もちろん帰ってからここはここで大宴会をするわけだが…、クーデンホーフ領の仲間も呼んでおいたし、僕的にはそっちのほうが本番なのだ。
おかげで当日まで僕は結構暇人である。
屋敷でブラブラする僕を捕まえたのは口を尖らせて階下へと降りてきたシャリムだ。
「イソヒヨドリ…、昨日オオカミとどこ行ってたの…」
「ちょっとエンマまで…、…雪遊びに…」
「エンマ…?」
「…ゲスマンの事だよ。宮殿のあった辺り」
「ふぅん…、じゃあ今日は僕と遊んで…」
「いいよ。何したいの?」
外界に意識を向け始めたシャリムは少しづつだけど日中外に出かけることが多くなった。そのためエキゾチック美人の彼は密かに領内での人気が上昇中だ。まあ本人はどこ吹く風なんだけど…。
その彼が行きたがるのは大抵ニコの神殿である。
神殿の中央にはセザールのアドバイスで付け加えられた沐浴場がある。ニコがあそこで禊をするとは到底思えないが、シャリムはどうもあの水槽の縁に腰掛け足をつけてぴちゃぴちゃするのが好きらしく…、どことなくシンクで羽をパチャパチャさせてたクーみたいで…実に可愛い。
そこで神殿に行きたい、というシャリムを連れてニコを訪ねてきたわけだが…
「すみませんレジー様、ニコ先生いまカンヅメ中で…」
「缶詰…、よく分からないけど忙しいって事ね。分かった。またにするね。」
ところで先生って何だろう…?
「シャリム、他の場所行こうか。…そうだ!今日こそヴィラに行ってみる?確か今日は右側のコテージが空いてたから代わりに滝つぼで水遊びしたら?」
「行ってみる…」
以前は行きたくないと即答したヴィラ。こうして何にでも興味を持つようになったことがとても嬉しい。
山肌を流れ落ちる清廉な滝…。キレイな景色を見るのが好きなシャリムはきっと気に入るに違いない。
彼の気が変わらないうちにと、僕はシャリムの手を取り大急ぎでそこへ向かった。
「ほら、ここがウエストエンドの誇るヴィラ・ド・ラビエルの滝プールだよ。どうするシャリム、泳いでみる?ここは365日温水だよ」
「泳がない。でも綺麗…」
「でしょ?」
「虹が出てる…」
「ホントだ…。あれ?青い鳥?」
「イソヒヨドリ…?あそこにイソヒヨドリが居る…!」
「ねえシャリム、イソヒヨドリは雄が青くて雌は薄褐色なんだって。」
「青と茶…」
「僕とシャリムみたいだよね?まあ僕は青というより紫だけど。」
「イソヒヨドリと僕…」
「オペラグラスでゆっくり見ておいで。僕はここで休んでるから」
イソヒヨドリ、またの名を幸せの青い鳥という水辺のある岩場に生息する鳥…。
初めて会った時からずっと呼ばれ続けたその名、〝イソヒヨドリ”。
僕はシャリムの青い鳥になれただろうか…。そうだったらいいと思う。もしそうなら少しは…少しは自分が…誇らし…い…
ハッ!…うっかり寝落ちしてしまった…。この滝の落ちる音が何とも眠りを誘って…、ビクッ!…シ、シャリム…?
「何してるのシャリム…」
「イソヒヨドリが寝てたから…、一緒に寝てる…」
「良いけどね。…この腕は?」
「ぎゅってして寝てる」
「抱き枕?いちいち可愛いなぁ」
「良い匂い…あ、そうだ…印…」
「ちょ、ちょっとシャリム…」
シャリムの動きがなんか怪しい…。…ヴォルフとの記憶も感触も生々しく残る今の僕にこの状態はヤバいって…
「襟首に顔突っ込まないで。な、何してんの?」
「イソヒヨドリに印…」
「え、ちょっとシャリム、印って何のこと…?」
首筋はダメだってば…!
「そこは…、ひゃっ!」
啄んじゃダメぇー!!!
「ど、どこで覚えたの?悪い子、めっ!」
「母さんの持ってきた本に春書が混ざってた…」
な、何だと!お母さん…そんな馬鹿なっ!はっ!もしかして性教育のつもりで…
「けどもう終わり!終了!お終い!」
「赤い模様が付いた…可愛い…」
「そりゃどうも…」
「またつけたい…」
「⁉」
僕は思った。
シャリムの保健体育こそ経験豊富なヴォルフがすればいいのに…、と。
ギクッ!
…何食わぬ顔で朝食の席に着いたというのに…。
あのお酒や食事は「夜はエンマの別荘でヴォルフと食べるから適当に寝てて」と言って用意してもらっていたものだ。
だからこそ朝までに戻っていればお泊りはバレないだろうと思っていたのに…ジェイコブの目は一体どこについているのだろう…?
「ゴメンゴメン。二人で飲んでたらうっかり寝落ちしちゃって…、以後気をつけます…」
「坊ちゃまは王太子妃になられる身、自由を謳歌できるのも今だけ、目溢しは致しますが…」
「ありがとうジェイコブ。でも王太子妃になったくらいで大人しくする気は毛頭ないよ。僕は今後、エトゥーリアの先にあるドワーフの国やウルグレイスを抜けた遥か向こうにあるエルフの国とも交流を持ちたいと考えてるんだから」
「なんとそのような…。彼らは独自の集合体を築き隠れ暮らす偏狭な種族、一筋縄ではいきませぬぞ?」
「だから遣り甲斐があるんじゃない。まあいずれね」
いつもと変わらない朝の風景…。
でも昨夜僕は大人の階段を半歩登ってしまったワケだが…こ、行為の最中に時々触れる尻尾や耳がまたなんとも気持ちよくって…、こう…コショコショって…、…バカか僕は!
「一旦おいとこう。深く考えたらマズイ気がする…」
僕は脳のリソースを大半街作りに割り当てている。それ以外の事など考えている余裕はないのである。
…ないったらない!
そんなわけで7日、…いや6日後に迎える今年の誕生日は主催の王家に丸投げしている。…何故主催が王家かって?何故ならその日は僕とアルバートの婚約式でもあるからだ。そのため盛大な舞踏会が用意されているとかいないとか…。
もちろん帰ってからここはここで大宴会をするわけだが…、クーデンホーフ領の仲間も呼んでおいたし、僕的にはそっちのほうが本番なのだ。
おかげで当日まで僕は結構暇人である。
屋敷でブラブラする僕を捕まえたのは口を尖らせて階下へと降りてきたシャリムだ。
「イソヒヨドリ…、昨日オオカミとどこ行ってたの…」
「ちょっとエンマまで…、…雪遊びに…」
「エンマ…?」
「…ゲスマンの事だよ。宮殿のあった辺り」
「ふぅん…、じゃあ今日は僕と遊んで…」
「いいよ。何したいの?」
外界に意識を向け始めたシャリムは少しづつだけど日中外に出かけることが多くなった。そのためエキゾチック美人の彼は密かに領内での人気が上昇中だ。まあ本人はどこ吹く風なんだけど…。
その彼が行きたがるのは大抵ニコの神殿である。
神殿の中央にはセザールのアドバイスで付け加えられた沐浴場がある。ニコがあそこで禊をするとは到底思えないが、シャリムはどうもあの水槽の縁に腰掛け足をつけてぴちゃぴちゃするのが好きらしく…、どことなくシンクで羽をパチャパチャさせてたクーみたいで…実に可愛い。
そこで神殿に行きたい、というシャリムを連れてニコを訪ねてきたわけだが…
「すみませんレジー様、ニコ先生いまカンヅメ中で…」
「缶詰…、よく分からないけど忙しいって事ね。分かった。またにするね。」
ところで先生って何だろう…?
「シャリム、他の場所行こうか。…そうだ!今日こそヴィラに行ってみる?確か今日は右側のコテージが空いてたから代わりに滝つぼで水遊びしたら?」
「行ってみる…」
以前は行きたくないと即答したヴィラ。こうして何にでも興味を持つようになったことがとても嬉しい。
山肌を流れ落ちる清廉な滝…。キレイな景色を見るのが好きなシャリムはきっと気に入るに違いない。
彼の気が変わらないうちにと、僕はシャリムの手を取り大急ぎでそこへ向かった。
「ほら、ここがウエストエンドの誇るヴィラ・ド・ラビエルの滝プールだよ。どうするシャリム、泳いでみる?ここは365日温水だよ」
「泳がない。でも綺麗…」
「でしょ?」
「虹が出てる…」
「ホントだ…。あれ?青い鳥?」
「イソヒヨドリ…?あそこにイソヒヨドリが居る…!」
「ねえシャリム、イソヒヨドリは雄が青くて雌は薄褐色なんだって。」
「青と茶…」
「僕とシャリムみたいだよね?まあ僕は青というより紫だけど。」
「イソヒヨドリと僕…」
「オペラグラスでゆっくり見ておいで。僕はここで休んでるから」
イソヒヨドリ、またの名を幸せの青い鳥という水辺のある岩場に生息する鳥…。
初めて会った時からずっと呼ばれ続けたその名、〝イソヒヨドリ”。
僕はシャリムの青い鳥になれただろうか…。そうだったらいいと思う。もしそうなら少しは…少しは自分が…誇らし…い…
ハッ!…うっかり寝落ちしてしまった…。この滝の落ちる音が何とも眠りを誘って…、ビクッ!…シ、シャリム…?
「何してるのシャリム…」
「イソヒヨドリが寝てたから…、一緒に寝てる…」
「良いけどね。…この腕は?」
「ぎゅってして寝てる」
「抱き枕?いちいち可愛いなぁ」
「良い匂い…あ、そうだ…印…」
「ちょ、ちょっとシャリム…」
シャリムの動きがなんか怪しい…。…ヴォルフとの記憶も感触も生々しく残る今の僕にこの状態はヤバいって…
「襟首に顔突っ込まないで。な、何してんの?」
「イソヒヨドリに印…」
「え、ちょっとシャリム、印って何のこと…?」
首筋はダメだってば…!
「そこは…、ひゃっ!」
啄んじゃダメぇー!!!
「ど、どこで覚えたの?悪い子、めっ!」
「母さんの持ってきた本に春書が混ざってた…」
な、何だと!お母さん…そんな馬鹿なっ!はっ!もしかして性教育のつもりで…
「けどもう終わり!終了!お終い!」
「赤い模様が付いた…可愛い…」
「そりゃどうも…」
「またつけたい…」
「⁉」
僕は思った。
シャリムの保健体育こそ経験豊富なヴォルフがすればいいのに…、と。
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