街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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114 17歳 in 会議室

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「エミリーさん、ラドリー先生、結婚おめでとう!」

「おめでとうー!」

「ありがとう皆さん。こうして温かな家庭を持つことが出来たのもこのウエストエンドが私たちを迎え入れてくれたおかげです」
「恩あるウエストエンドの為、今まで以上に皆様のお役に立てるよう頑張りますわね」


秋晴れのある日、コーエン夫人の大切な一人娘エミリー嬢はザカリー医師の息子、今では一人前のお医者さんとなったラドリー先生と夫婦になった。もう2年ほどのお付き合いなのだとか。
ラドリー先生と交際を始めた当初エミリー嬢は、

「父亡き後己の不遇に泣き暮らしたこともございましたが、ゲスマンの生まれであるラドリーさんとこうして障害なくお付き合いが出来るのだからあの時爵位を王家へ返還してようございました」

そうはにかみながら言ったのだとか。

ラドリー先生はゲスマンの地で父であるザカリー医師と赤貧の日々を過ごしていたし、エミリー嬢は子爵であった父亡き後、もう少しで変態男爵(多分ジョット男爵)の第五夫人になるところだったし、二人の言葉には深い感慨がこもっている。
コーエン夫人もザカリー医師も涙ぐんで嬉しそうだ。

だがその一方…

パブリックエリアに住み学校や病院の手伝いをする元貴族のエミリー嬢は領内の男どもの間でマドンナのような存在となっていたのだ。泣いた男の数は決して少なくないだろう。どことなく意気消沈している若者がこっちに一人、あっちに一人…。

これは当主としていい加減本腰を入れ女性比率を上げる政策を考えねばなるまい…。


という訳で。


「どうしたらいいと思うクラウス?」
「ふむ…難民の流入も最近は停滞気味でございますからな。」


国内での難民受け入れはここのところ頭打ちとなっている。かと言って移住希望の自由農民となると元々そう多くないのが実情だ。もちろんこちらは『審判の門』をくぐり抜けし選民に対していつでも門戸を開いている。
だけど俄然増えた役人希望の貴族子弟やウエストエンドドリームを夢見る商売人は総じて独身男性ばかりだし…益々男女比率が崩れていく…。


「いやだから問題は女性だって。ジェイコブはどう思う?」
「女性ですか…。いくらベルト地帯を封じたとは言え娘をウエストエンドに単身送り出す親は多くないでしょう。」

「だよねぇ…」


ため息三つ…。


「でしたらエトゥーリアの戦争寡婦を受け入れてはいかがです?長きに渡り争うあの国には多そうですが…」

そう発言したのは各地を回る兄弟行商ジョンとバート、の見習い君ヘンリーである。ジョンとバートは最近各々王都とここの店舗に常駐しているため、今はこのヘンリーが変わって各地を回っているのだ。


「戦争寡婦か…それいいかもしれないね。議会から公示してもらって国中から募ればそこそこ集まるかも。あの国は今福祉にまわす予算も多くはないだろうし…、困窮してる人も多いんじゃないかな?」


こうして急遽、エトゥーリアからの寡婦受け入れを決定した僕はすぐさま王城へと『糸電話』を飛ばし、右大臣にその旨を相談する事にした。
議会を通すならシュバルツよりも宮廷を挟んだ方が良いと思ったからだ。国外で私人が暴走してエトゥーリア民を勝手に連れてくるのはよろしくない気がするし…、え?過去の所業?何のことかな?


「移動の経費や諸々当面の生活費は僕が持つと伝えて下さい。エトゥーリアにとってもいい話だと思うんですが…」
「ふむ。元クーデンホーフ領からの移民に続く民の流出とは言え幾何の寡婦くらいであれば了承は得られよう。ではその旨伝えるとして…」

「…なにかあるんですか?」

「いや、殿下がここに…あ、でっ、殿下!「レジー、エトゥーリアの帰りは立ち寄ってくれるものと思っていたのに残念だよ…カニンガムの夜会は何故出席しなかったのだい?ああ…夏の間中会えなくて淋しかったよ。レジー私は」

「じゃあ忙しいので右大臣これで。」プッ…ー…


割り込んだという事は右大臣の持つ受話器に顔を近づけた、と言う事で…、ピッタリ顔を寄せられて右大臣もさぞ迷惑だっただろう…。


そしてそれからしばらくの後、大臣からは了承の連絡が来たのだが、それには一つの条件が付いていた。


「寡婦の移動にはあちらの王族、エルンスト王子が幼い弟アウグスト王子を連れて同行されるようだ。表向きはエトゥーリア民が安全かつ安心して暮らせる環境であるかの視察、という事になってはいるが」

「要するにウエストエンド観光ですね」


多分例の王族だな。招待する手間が省けたというか…。


「その通りだ。そのためこちらからも礼を欠かぬよう王族をひとり同行させる。その王族とは…」
「ア…アル…」

「いや、オルランド様だ。」


意外…。ウエストエンドが絡む話ならアルバートは絶対来ると思ったのに…。


「アルバート殿下もどうにかして同行しようと調整しておられたが…、如何せん、この冬にはいまだかつてない規模の大きな晩餐会がある。」

「へー、そうなんですね」

「これは非常に大きな意味をもつ宴なのでな、三か国間の同盟を祝い各国から要人を招くのだよ。さすがにいつも通りとはいかぬ。その中心となるアルバート殿下には堪えてもらわねば。」


それは確かにフラフラとウエストエンドで遊んでいる場合じゃない。ああ、だからここのところ顔を出さないのか。
三か国から要人を招く宴会の幹事…、さすがにその重責を思うと他人事ながら同情を禁じ得ない…


「右大臣、殿下に僕が応援してたとお伝え下さい。殿下ならきっと素晴らしい晩餐会に出来ると信じてる、って」

「レジナルド、君は…、ああ分かった。伝えておこう」



やれやれ、とは言えエトゥーリアの王子様を迎え入れる僕も他人事じゃない。
どんどん箔が付くのは嬉しいけどVIP対応は人一倍神経をつかうのだ。

以前は3か月かかったウエストエンド、エトゥーリア間だが現在1か月強にまで短縮されている。
内乱の後、トラキアを横切るのに一抹の後ろめたさを感じた僕はトラキア東部の街道へ迂回しようと考えた。そんな僕にモレー聖騎士団長とウルグレイス司令(セザールのちい兄)は

「ここはクラレンス、ウルグレイス間をつなぐ重要な街道でもあるな。」

とにこやかに威圧した。そうして僕は二人がかりですごま、頼まれ、帰る道すがら無償で整備させられたのだ。一体彼らは狂魔力を何だと…

そしてクラレンスに入ればそこには馬車鉄道が待っている。恐らく彼らは冬を待たずに到着する事だろう。


「準備を急がないと…」






その軽い気持ちで建てた計画が新たな事態を引き起こすことになるとはその時の誰に予想が出来ただろう。
一つ言えることは、僕を含めた誰もが〝狂魔力の継承者”という言葉を過信していたという事…。

マッチ一本火事の元…消したつもりの小さな火種はいつの間にか大火事へとつながる…、それを僕はこの後身をもって知ることになる…。





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