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112 17歳 from 南部

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「はーい、みんなこっちだよー」

「わー!水だ水だ!」
「いやっほーい!」

「あれ?セーブルさん?」
「バカ言わないでちょうだい!こんなに可愛いカワウソのどこがクロテンに見えるってのよ!」
「ご、ごめんなさい…」
「失礼しちゃうわ!」


キレられた…。
けどカワウソ獣人の彼女はなんならラッコさんともフェレットさんともそっくりだからねっ!違いが分かるのは冬毛のオコジョさんぐらいだからー!

はーはー…、一旦落ち着こう…。


建築ラッシュの北部、クーデンホーフ領には僕の作った大きな湖がある。
エトゥーリアからの移住者を中心とした北部の領民。彼らが故郷を懐かしめるよう中央にドーンと設置したのがこの湖だ。

それを聞いたもと水辺に棲んでた獣人たちがこぞって北部への移動を願い出たためシュバルツの許可のもと、何名かをこうしてこちらに連れてきたのだ。

力持ちのシロクマ獣人さん、子だくさんのカルガモ一家を筆頭に、アヒル獣人のアフラック君は寝具や衣類を作るのが得意だし、アーニーの下で働いている釘打ちの得意なラッコさんやビーバー獣人のキリガミネくんとミツビシくんはこちらでも立派な家を建てるだろう。
おっとりしたカピバラ一家は湖の側でお風呂屋さんを開業する予定だし、きっとクーデンホーフ領内でもみんな快く受け入れられると信じている。

追従する他の獣人さんたちの為にも、パイオニアとしてぜひ頑張って頂きたい。




「レジナルド殿」
「あれ?シュバルツも見に来たの?どう?立派な家々でしょ。今回は彼らを受け入れてくれてありがとう。」
「いや、むしろお礼を言うのは私の方だ。貴重な『糸電話』を譲っていただいて…、良かったのだろうか?」

「シュバルツに土属性が生えてて良かったよ。ヴィラの開拓手伝った成果かな?」
「そうなら甲斐があったというものだ…」

「ここはエトゥーリア領事地だし連絡手段は必要でしょ?それにエトゥーリア議会も『糸電話』を持ったという事はクラレンス貴族院との二国間もつながったってことだよ。」

「ああ。そう言えば以前宮廷にも進呈していたね。」

「進呈…?脅し取られたって言うんだよあれは。セザールのお兄さんにも同じ事されたけど…まあ仕方ないよね。三か国は友好同盟国な訳だから。」
「同盟国に名を連ねるにエトゥーリアは一歩及ばずだが…」

「こうご期待ってことで。」

「母国の繁栄を私も期待して待つとしよう」



領民達も入植を果たし少しづつとは言え開拓を始めているクーデンホーフ領の今日この頃。動きの速いウエストエンドの商人たちはさっさと北部に出店し、北と南の間にはすでに物流が生まれている。

それにしても領内の統治を始めたシュバルツはぐっと当主味が増したみたいだ。


「それにしてもいいよね、クーデンホーフ領は文官に苦労しなくて」
「貴方はランカスターやハミルトンから親類縁者を迎えたりはしないのだろうか?」
「ランカスターは縁者が少ないんだよ。みんな短命だったから…」
「そうか…」

「ハミルトンはまぁ…、けどめぼしい遠縁はすでに使用人として屋敷に居るからね。ジェイコブもそうだし副執事に従僕長、メイド長もそう。実は庭師長もハミルトンの親戚筋だよ。」
「そういえば彼らは魔法を使いこなしておられたな」

「若手はハミルトン本領こそ支えてもらわないといけないからね、これ以上は自力で頑張るつもり」
「それはそれは。お手並み拝見だ」


お?見縊っちゃあいけないよ?こう見えても既に色んな貴族家の子弟から就職希望が届いてるんだからね。負けないよ?


「ん?じっと僕を見てどうしたの?」
「いや…、ようやく隣に並ぶために一歩を踏み出せると思ってね。」
「…隣になら今も立ってるじゃない?何のこと?」

「今はまだ何もかもあなたの善意に縋ってばかりだ…。資材も人も…。だがこれからこの領を自分自身の手で栄えさせることが出来れば…、あなたを満足させるクーデンホーフ領を再現できれば…、その時初めてあなたの隣に立つ権利を得られるのだと思っている。」
「シュバルツ…」


真面目で潔癖なシュバルツ…。
侯爵家当主としていっぱしにならなければ公爵である僕と対等な社交が出来ないと思い詰めるなんて…何と言うか謙虚なのにも程がある。
でもそれがシュバルツのモチベーションを爆上げするならここは背中を押すべきところ。


「その日が来るのを楽しみに待ってる。…ね?」


その時シュバルツがどんな顔をしたのか…、湖面からの反射でよく見えなかったけど笑顔だったんじゃないかと思っている。







「ふーやれやれ、やっと引っ越しが終わった。」
「ふふ、すみませんレジナルド様。あちらはどうでしたか?」
「あれ?先月遊びに行ったんじゃなかったっけ?」
「ええ。ですが少し見ないとすぐに変わってしまうので…」
「うちのガテン系は恐ろしく仕事早いからね」


元は同じウエストエンドである北部へは馬車移動1日半ほど。馬で駆ければ半日強だ。
そのため離れて暮らすと言っても会うのは容易だ。領内が落ち着けばブラコンのシュバルツはしょっちゅう様子を見に帰って来るんじゃないだろうか…。


「それで?一人の屋敷には慣れた?」
「ええ。一人と言ってもプーリンやメイドたちも居ますし、裁判所にはユーウィンも住み込んでくれています。それにローランド様が毎夜お声を聞かせて下さいまして」

「毎夜…」


それってラブラブって事じゃん?知ってんのかなパーヴェルは。あのアイテムがラブゲージ85パー以上じゃないと起動しないって事を…。


「ローランドの家族…、特に左大臣はどうだった?」


あの偏狭な左大臣ではパーヴェルもさぞ苦労を…


「とても良くしてくださいました。お優しくて博識で、ローランド様によく似ておいでですね」
「え…?」


さ、左大臣…、ずいぶん僕の時と違うじゃないの!まだ7つの幼子だった僕に向かって「先祖の仇!」って吐き捨てたくせに!いくら狂魔力憎しとは言え大人げない…。
とは言え、謁見室の会談以来すこぶる態度が軟化したのは少し意外だった。これぞキュン魔力の勝利!


「最近はヴィラに滞在のお客様方と朝の散歩時にお話しすることもあるのですよ。社交界に通じる皆さまは事情を知りとてもお気遣いくださいまして」
「へー、知り合いの知り合いは皆知り合い、って言うのが社交界だし、やっぱりカニンガム家の夜会に出て良かったね。ところでローランドがある伯爵家から申し出のあったお見合い断ったって知ってる?」
「ふふ…」


このうっすら染まったピンク色の頬は何を意味するのか…。

ごちそうさま。




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