街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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111 17歳 to ザラキエル湖

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激動の春が過ぎ季節は夏。

学院の卒業という一大イベントを終え満を持してウエストエンドへやって来たのはもちろんセザール、そして遊びに来たのがオスカーである。

学院を休んで騎士団と共にエトゥーリアの内乱に同行してしていた彼ら。オスカーは入団の為に必要な演習という事で加点されセザールは宮廷からの要請という事で色々免除になっている。

つまり今回来られなかったのはローランドのみ。
彼は正々堂々と休学届を出し半年ほど休んで内乱の後も、あれやこれやが落ち着くまでずっとパーヴェルにかかりっきりだったのだ。ほら、王都に招待したりとか。

おかげでひと夏全てを補修に充てる事になったそうだが後悔はしていない!と力強く言い放った彼は実に凛々しかった。
非常に頭のいいローランドのことだ。きっとどうにか単位を間に合わせて卒業は死守するに違いない。じゃないと婚約が遠のく…ウォッホン!

とは言え気の毒な彼に僕はニコから聞いた『恋バト』内のスウィーツなイベントで出てくるアイテム『愛の試金石』をプレゼントしたのだ。

これはその名の通り試金石、二人の愛情度を試す石である。真実愛し合う二人であればお互いの顔が石に浮かび上がり一日数分だけおしゃべり出来るというラブアイテムなのだ。ゲーム内ではラブゲージ85パーを超えた二人にだけ使用可能なアイテムであり、つまりプレイヤーにとってはキャラのボイスが再生される、という課金アイテムだ。
それがここではリアルに当人同士となる。かー!参ったね!

手に入るのはなんとSSSダンジョンである『奇跡のダンジョン』、愛の奇跡だけに。

わざわざ手に入れに行ったのかって?まさか!実はすでに持ってた。
『聖乙女の涙』と『身代わりの木偶人形』を手にれるために鬼周回してたおかげで僕はほとんどのアイテムを落としている。
けどラブイベントを飛ばしてた僕にとっては今も前世もゴミアイテ、ゴホン。それを知ったニコからは凄い勢いでクレームつけられたけど…仕方ないじゃん…

後日ローランドからは王都で今評判の、一日限定30個しか販売されないという貴重なビスタチオ入りマカロンが20個送られて来た。…あと10個は?



とまあ、そんなわけでやってきました2泊3日で。出来立てホヤホヤ、ウエストエンド近隣に最近できたマリン(?)リゾート、クーデンホーフ侯爵領に。
宿泊はセザールの協力によって設えた漆喰のスタッコ装飾が素晴らしい新築の侯爵邸。
挨拶もそこそこに荷物を置いたら海に繰り出す、今僕たちはまごう事無きリア充である。



海が初めてだというウィル兄弟とオスカー、セザール、それと…一緒に来たのは珍しくもアーニー。彼の仲間はクーデンホーフ領の家屋建築も請け負っている。現場の様子を見に来たのだ。
言うまでも無いけどヴォルフも居るよ。僕は飼い犬リンクと葉山の海岸を走り回るのが夢だったのだ。悲願達成!

まだまだ開拓中の何も無い領…。こういうのってワクワクするよね。





「レジー様ー!こっちこっちー!」
「ウィル、そんなに走ったら危ないよ、あっ!ほら転んだ…」


燦燦と太陽の照る夏の海岸風湖畔。ターフの中で日差しを避ける僕たちは無邪気な兄弟の姿をほのぼのと眺めていた。


「こんな砂浜でケガなんかしねぇよ。むしろもっと転がしとけ!」
「アーニー、意地悪言わないの!ねぇセザール。」

「ふふ、でもそう言うアーニーも少しはしゃいでるみたいだ」
「ばっ!違うっての!」

「そうか?俺は楽しいけどな。エトゥーリアでも海には寄れなかったし」
「オスカー、ここは海に見せかけた湖だよ。だから淡水。本物の海の水は塩っ辛い。」


マグロ系の海洋大型魚を放せないのが甚だ残念、でもサケとほぼ変わらないこの世界オリジナル魚、クイーンサーモン、エビの一種ロングアームシュリンプ、カニの仲間ミトンクラブは放せたから良しとしよう。あっ!ウナギも居るんだよ!誰か捌いてくれないかなぁ!


「そういえば国外の塩は海で作ってるんだろ?」
「そうとも。ウルグレイスはそれこそエトゥーリアから買い入れているんだよ。この国は辺境伯領で作ってるんだってね?」
「あそこの奥には塩湖があるんだとさ。近くには塩の洞窟もあるらしい。」
「へー、岩塩坑か、行ってみたいな。」
「行くときゃ連れてけよ。俺も気になる」
「いいよアーニー、今度行こうか?」


なんて穏やかでたわいもない日常。上半期が忙しかった分日常が染みわたるー…


「レジー兄さん、小さな貝がありました!」


すっかり兄さん呼びが板についたコリンが頬を上気させてシジミに似た貝、チジミを手に駆け寄ってくる。


「実は昨日の晩シャリムとこっそり遊びに来てね、それで埋めておいたんだよ。みんなで潮干狩りしようと思って」
「その貝はどこから採ってきたんですか?」

「……ほ、ほら!そんなことはどうでもいいからウィルとバケツ一杯にしておいで!あとでスープにしてもらおう」
「はい。」


オスカーがついていったのは意外だった。もしかして潮干狩りがしたかったのか…


この湖は南北で景観を分けている。北は湖畔のギリギリまで岸壁の迫る硬派な景色。南が今居る、白い砂浜とパームツリーの並んだいかにもな景色。
エトゥーリアの海岸はどっちかと言うと北の景色が近いのだろうが、海と言ったらやっぱり砂浜必須!


「うわっぷ!ヴォルフ!穴掘るの止めてよ!」

「こっちにも砂が飛んで来てんじゃねぇか!クソ犬!」
「しつけの悪い黒猫を埋めてやろうと思ってな」
「何だと!」バサッ「ぶっ!やめろ!」


はしゃいでいる…だと?ヴォルフ!か、かわいい…


「レジー、砂で山を作ってるのかい?」
「あ、うん。これはビーチの定番だから。砂かぶったならちょうどいいや、アーニー、そっちから掘り進めてくれる?貫通させたい」
「はっ!砂遊びなんか出来るかよ」

「じゃあ僕が。ふふ、砂まみれだ」
「イイ男は砂にまみれてもイイ男だよ。ねぇアーニー。」

「…まあな」


そろそろ貫通…と思ったらセザールの手。いつも鍵盤をたたくしなやかな指が今は砂だらけ…


「あ…」
「捕まえた。」
「意外と子供っぽいことするんだねセザール。ところでお兄さんとはたくさん話せた?エトゥーリアで。」
「沢山とは言わないけれど…あんな状況だしね。僕の成長を喜んでいたよ。目に迷いがなくなったと、そう言って頂けた。そうだ。君の『サンダー』に驚いてらしたよ。狂魔力は『サンダー』すらあそこまでの威力になるのか、と。」

「あー、あれね…」


味方もろとも失神させた魔王の雷…。


「一度君を我が家に招待したいと、そう仰っていらした。そしてね、玉砕覚悟で頑張ってみろ、ともね。」
「何を?」
「何事も、さ。」


心温まる兄弟の絆。久々に会う弟の心からの笑顔、お兄さんが安堵しただろうことは想像に難くない。


「ところでこの湖には名前は無いのかい?」
「…無くは無いけど…」

「聞いてないのかセザール。ここはこいつのエトゥーリアでの通り名から『ザラキエル湖』と呼ばれてんだとよ。」
「ザラキエル…神の司令官と言われる天使の名だね」

「ふっ、死の天使とも言うがな。」
「聞いたぜ。味方もろともぶったおしたって?ピッタリじゃねぇか」


アーニーめ、余計なことを…。


「う?うわっ!何だこりゃ!風か?よせ!止めろレジー!」



…思わず風魔法でアーニーを水中に投げ入れたのは大人げなかったと反省している…。






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