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96.5 人の恋路
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「ほらシュバルツ、パーヴェル、ここがランカスターのダンジョンランドだよ」
「わぁ…」
「ここだけではランカスター公爵領の事は分からないが…、それでもレジナルド殿がこれだけ自由に動けるのであれば、お父上、そしてコリン君が上手くやっているのだろうことは想像つく…」
「コリンはジェイコブの指導の元ウィルと共にウエストエンドで農業地区の管理を行ってたからね、それが時期領主としてのいい予行練習になったよね」
「レジナルド殿…、君はいつかこんな日が来ることを想定して彼に農業地区を任せていたのではないのかい?」
「うーん、まさか落としどころがこうなるとは思っても見なかったけど…。彼が得るはずだったものを一部でいいからいつか彼の手に、そう思ってはいたかな。」
「最良の結果になりましたね。」
「本当に。」
得るはずだったものを永遠に失った彼らはコリンを見て何を思うのだろうか…。
シュバルツ、そしてパーヴェルの目は心からコリンの幸運を祝福しているように見える。だがその胸の奥など誰にも分かりはしないのだ。
「それより今日はローランドがせっかく信念を犠牲にして作った機会なんだから目いっぱい遊んで行って!」
「犠牲って…、ローランド様、それは大丈夫なのですか?」
「ああ。主君になる予定の彼を少しばかり裏切ることになってしまうが…セザール曰く多少の障害があったほうがいいらしいから問題ないだろう。それよりパーヴェル、私から離れないように。君は戦闘には不向きなのだから」
「ふふ、頼もしい。あてにしてますね、ローランド様」
「弟を頼んだよ、ローランド君。」
おや?意外だな。シュバルツはもっとブラコンだと思っていたのに…。
それよりもローランドだよ、ローランド。
彼はパーヴェルを伴った来園が決まると僕に『インディ・サンダーマウンテン』と『センター・オブ・ジ・カリビアン』のスマートな攻略方法を根掘り葉掘り訊ねて行った。
あのプライドの高いローランドが…ぷぷ…いいとこ見せたいんだね。お・と・し・ご・ろ。
しょうがない。シュバルツを僕に引き付けて二人からはなるべく距離をとって進むとしよう…。そうそう距離と言えば…
「ニコ、いくら大きめのトロッコだからってそんなに離れてたら守ってあげられないよ?こっちに来たら?」
「お構いなく。あたしは『聖なる盾』で自分くらい守れるから。それよりこうして背後から見守ることが大切なのよ空気の様に存在を消して…。」
「遊ばないの…?」
「遊んでないように見えて誰より楽しむ予定だから気にしないで!」
「あ、そう…」
よく分からないけどもしかしたら一番楽しそうにしてるからほっとこう。女神官にあるまじき邪気を発してるし…。
「じゃぁ行くよ?しゅっぱーつ」
「シュバルツ、あんまり前に出ないでこっちに来て。」
「だが…」
「前方はローランドに任せれば大丈夫。ほら、僕の隣に来て?」
「光栄だ。では仰せのままに…」
とは言えだめだ…。前方が気になって戦闘が疎かになる。何気にシュバルツが奮闘してくれてるのが実に心強い。
それにしても…さも何てことありません、みたいな顔してるけどその攻撃パターン僕が教えたやつだからね。そうそう、岩壁を利用して直角に攻撃を…ローランドその調子!あっ!飛んできたスパイダーに驚いてパーヴェルがローランドにしがみついた!
馬鹿ローランド!照れてる場合じゃないっての!すぐそこにもスコーピオンが…
「えいっ!『ホーリーアロー』」ぱひゅん!
「ニコ…背後で見守るんじゃなかったの…?」
「何人たりともBLなイベントの邪魔はさせないわ!ちょっとどいて礼二君!ローランドの援護はあたしがする!二人は二人で楽しんでて!」
「じ、じゃぁお言葉に甘えて…シュバルツ、後方行こうか…」
「あ、ああ…」
それにしても…さすがだニコ。ローランドが気付かない、もしくは討ち漏らした敵をそれとはバレないよう実に巧妙に倒していく。今の彼女はまるでゴルゴ25…
「…ん?シュバルツどうしたの?」
「パーヴェルがローランド君にしがみついて邪魔をしているのでね。少しばかり注意を…」
「馬鹿言わないで!」
「バカ言っちゃいけないよ!」
ハモった…。
コソッ「人の恋路に口だすなんて…馬に蹴られたいの?」
コソッ「野暮もいいとこ。信じられない!そんなんだから一歩も二歩も出遅れるのよ!朴念仁!」
「ぼ…」
あ、シュバルツが凹んだ…。それにしてもシュバルツは劇鈍だったのか…。
あーーー!!!パーヴェルが恐怖のあまり正面からローランドに抱きついた!!!ロ、ローランドが慌てふためき両手の行き場を無くしている!
コソッ「いけ!抱きしめ返すのよ!その右腕を後ろに…、悩むんじゃない!本能に任せるのよ、そう!そうよ!!!」
「そっと添えただけ…だけどね」
「今は良いのよこれで…むしろこのほうが後の楽しみがあるってもんよ。」
そうこうしている間にそろそろ場面はスケルトンの群れ。ローランドは魔法でパーヴェルを守りながらも照れ隠しだろうか?一瞬で全てを吹っ飛ばした。けど問題は次。ローランドからすべての血の気を奪った傾斜角45度の大落下だ!さぁどうする!?
「よっし!抱きしめた!抱きしめたわ、ぎゅうぅぅって!」
僕は思った。あれはむしろ恐怖で思わず抱きしめちゃったんじゃないかと…。けどうまい具合にパーヴェルを守ってる風になってて…ローランド、この策士め…。
「レジナルド殿、もしやパーヴェルとローランド君は…」
「未満ね。未満」
お兄ちゃんの顔が複雑そうである…。
「お疲れー。パーヴェルどうだった?」
「こ、怖くって…。ローランド様が守って下さらなかったらどうなっていたか…」
「どうもならないよあんな雑魚、」ドガッ「アウチッ!」
「そりゃもうローランド様は奮闘しておられましたよ。パーヴェル様を守るために…」
「い、いや、それほどでも…」
「いいえ!恐怖に震えるパーヴェル様の華奢な肩を優しく抱きよせ迫りくるてk」
「はいおしまい。二人とも楽しんでもらえたかな?」
「ああ。とても良い気分転換になった。」
「私の為にありがとうございます…ローランド様」
あれ?お礼を言う相手が僕じゃなくローランドなんだ…。ふーん…ニヤニヤ…
「わぁ…」
「ここだけではランカスター公爵領の事は分からないが…、それでもレジナルド殿がこれだけ自由に動けるのであれば、お父上、そしてコリン君が上手くやっているのだろうことは想像つく…」
「コリンはジェイコブの指導の元ウィルと共にウエストエンドで農業地区の管理を行ってたからね、それが時期領主としてのいい予行練習になったよね」
「レジナルド殿…、君はいつかこんな日が来ることを想定して彼に農業地区を任せていたのではないのかい?」
「うーん、まさか落としどころがこうなるとは思っても見なかったけど…。彼が得るはずだったものを一部でいいからいつか彼の手に、そう思ってはいたかな。」
「最良の結果になりましたね。」
「本当に。」
得るはずだったものを永遠に失った彼らはコリンを見て何を思うのだろうか…。
シュバルツ、そしてパーヴェルの目は心からコリンの幸運を祝福しているように見える。だがその胸の奥など誰にも分かりはしないのだ。
「それより今日はローランドがせっかく信念を犠牲にして作った機会なんだから目いっぱい遊んで行って!」
「犠牲って…、ローランド様、それは大丈夫なのですか?」
「ああ。主君になる予定の彼を少しばかり裏切ることになってしまうが…セザール曰く多少の障害があったほうがいいらしいから問題ないだろう。それよりパーヴェル、私から離れないように。君は戦闘には不向きなのだから」
「ふふ、頼もしい。あてにしてますね、ローランド様」
「弟を頼んだよ、ローランド君。」
おや?意外だな。シュバルツはもっとブラコンだと思っていたのに…。
それよりもローランドだよ、ローランド。
彼はパーヴェルを伴った来園が決まると僕に『インディ・サンダーマウンテン』と『センター・オブ・ジ・カリビアン』のスマートな攻略方法を根掘り葉掘り訊ねて行った。
あのプライドの高いローランドが…ぷぷ…いいとこ見せたいんだね。お・と・し・ご・ろ。
しょうがない。シュバルツを僕に引き付けて二人からはなるべく距離をとって進むとしよう…。そうそう距離と言えば…
「ニコ、いくら大きめのトロッコだからってそんなに離れてたら守ってあげられないよ?こっちに来たら?」
「お構いなく。あたしは『聖なる盾』で自分くらい守れるから。それよりこうして背後から見守ることが大切なのよ空気の様に存在を消して…。」
「遊ばないの…?」
「遊んでないように見えて誰より楽しむ予定だから気にしないで!」
「あ、そう…」
よく分からないけどもしかしたら一番楽しそうにしてるからほっとこう。女神官にあるまじき邪気を発してるし…。
「じゃぁ行くよ?しゅっぱーつ」
「シュバルツ、あんまり前に出ないでこっちに来て。」
「だが…」
「前方はローランドに任せれば大丈夫。ほら、僕の隣に来て?」
「光栄だ。では仰せのままに…」
とは言えだめだ…。前方が気になって戦闘が疎かになる。何気にシュバルツが奮闘してくれてるのが実に心強い。
それにしても…さも何てことありません、みたいな顔してるけどその攻撃パターン僕が教えたやつだからね。そうそう、岩壁を利用して直角に攻撃を…ローランドその調子!あっ!飛んできたスパイダーに驚いてパーヴェルがローランドにしがみついた!
馬鹿ローランド!照れてる場合じゃないっての!すぐそこにもスコーピオンが…
「えいっ!『ホーリーアロー』」ぱひゅん!
「ニコ…背後で見守るんじゃなかったの…?」
「何人たりともBLなイベントの邪魔はさせないわ!ちょっとどいて礼二君!ローランドの援護はあたしがする!二人は二人で楽しんでて!」
「じ、じゃぁお言葉に甘えて…シュバルツ、後方行こうか…」
「あ、ああ…」
それにしても…さすがだニコ。ローランドが気付かない、もしくは討ち漏らした敵をそれとはバレないよう実に巧妙に倒していく。今の彼女はまるでゴルゴ25…
「…ん?シュバルツどうしたの?」
「パーヴェルがローランド君にしがみついて邪魔をしているのでね。少しばかり注意を…」
「馬鹿言わないで!」
「バカ言っちゃいけないよ!」
ハモった…。
コソッ「人の恋路に口だすなんて…馬に蹴られたいの?」
コソッ「野暮もいいとこ。信じられない!そんなんだから一歩も二歩も出遅れるのよ!朴念仁!」
「ぼ…」
あ、シュバルツが凹んだ…。それにしてもシュバルツは劇鈍だったのか…。
あーーー!!!パーヴェルが恐怖のあまり正面からローランドに抱きついた!!!ロ、ローランドが慌てふためき両手の行き場を無くしている!
コソッ「いけ!抱きしめ返すのよ!その右腕を後ろに…、悩むんじゃない!本能に任せるのよ、そう!そうよ!!!」
「そっと添えただけ…だけどね」
「今は良いのよこれで…むしろこのほうが後の楽しみがあるってもんよ。」
そうこうしている間にそろそろ場面はスケルトンの群れ。ローランドは魔法でパーヴェルを守りながらも照れ隠しだろうか?一瞬で全てを吹っ飛ばした。けど問題は次。ローランドからすべての血の気を奪った傾斜角45度の大落下だ!さぁどうする!?
「よっし!抱きしめた!抱きしめたわ、ぎゅうぅぅって!」
僕は思った。あれはむしろ恐怖で思わず抱きしめちゃったんじゃないかと…。けどうまい具合にパーヴェルを守ってる風になってて…ローランド、この策士め…。
「レジナルド殿、もしやパーヴェルとローランド君は…」
「未満ね。未満」
お兄ちゃんの顔が複雑そうである…。
「お疲れー。パーヴェルどうだった?」
「こ、怖くって…。ローランド様が守って下さらなかったらどうなっていたか…」
「どうもならないよあんな雑魚、」ドガッ「アウチッ!」
「そりゃもうローランド様は奮闘しておられましたよ。パーヴェル様を守るために…」
「い、いや、それほどでも…」
「いいえ!恐怖に震えるパーヴェル様の華奢な肩を優しく抱きよせ迫りくるてk」
「はいおしまい。二人とも楽しんでもらえたかな?」
「ああ。とても良い気分転換になった。」
「私の為にありがとうございます…ローランド様」
あれ?お礼を言う相手が僕じゃなくローランドなんだ…。ふーん…ニヤニヤ…
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