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86 16歳 in 王様の部屋
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「お、おお、お待ちください陛下!王家と私の預かりとは…それは一体どういうことですか…?」
「言葉通りだ。あの地はお前が管理せよ。その上で父に任せると言うのであれば好きにすればよい。だが今後責任は…レジナルド、お前が持つのだ。」
「えぇ…」
いやいやいや、無いわ~。それ…僕だけが大変になるやつじゃん?え?そもそも僕関係なくない?
「アルバートがこう申すのだ。我ら王家にはランカスター公爵家を首に縄をつけたまま放置し続けた罪がある。その結果がこの事態へと繋がったのであればそれは王家も責を負うべきだ。見て見ぬふりをし続けた我々がランカスターから全てを取り上げるのは酷だとな。確かに一理ある。だが聞いたであろう?お前の父にランカスターの統治は易くない。であれば…」
アルバートがそこまで言ってくれていたなんて…。ちょっと感動。でもそこに続く言葉が感動を台無しにするんだよっ!
「父から領地を取り上げたく無くば息子のお前が管理するのだ。狂魔力を制御し〝不毛の荒野”をあれだけ発展させたお前であれれば容易かろう。めぼしい産業も資源も持たぬ凡庸なランカスター領をお前の狂魔力で豊かにせよ。どうだレジナルド」
「…もし断れば?」
「ランカスター公爵領はこの場を持って王家に接収となる」
脅し…?これは脅しなんだろうか…。父の未来と引き換えにランカスターを金のなる木にして王家の税収を増やせと?そう言う事だろうか…。
「あの…、ひとつ質問なんですけど…、父が侯爵に降爵であるなら公爵の爵位は…?」
「ハミルトン候がランカスター公爵領を統治するのはおかしかろう?当然お前が継ぐのだ。であれば体面的にも問題無かろう。父が子に爵位を受け渡し、そのうえで忙しいお前に代わって領地の面倒を見る。」
「それはまぁ…」
でもなーんかまだある気がするんだよね…。裏が…。
「とは言え…、年若く未だ偏見の残るお前をいぶかしむ者も居よう。そこでこの王家が後見につく。王家とお前の預かりとはそういう意味だ。」
「後見、それどうやって…、陰から見守るって意味じゃないですよね?」
「常々懸念しておったのだ。公爵家であるランカスター家と王家の繋がりが薄まってきておる事を。お前の父が王家でなくハミルトンから女侯爵を娶ったことでな」
おっと、よく言うよ。僕が何も知らないと思ったら大間違いだ。
お年頃になった父と年頃の合う全ての王族女性が狂魔力の掃き溜めランカスターへの輿入れを拒んだって事…、叔父様に聞いてるんだからね!
「以前よりハミルトン伯と話し合いは重ねておったのだ。事に備え、ランカスターはやはり王家に紐付けておかねばならぬと。」
あれ…この流れ…
「いずれお前には誰ぞ娶らせるつもりでいた。例え形ばかりでもな。」
叔父様が言ってたやつか…、でもその話は…
「だがレジナルドよ。ウエストエンドへの蟄居に当たりお前が頑なにそれを拒んでおると聞いてな、其方が婚姻に希望を持てぬのもまた仕方なかろうと諦めておったが…」
おったが何だよっ!
「誰も成し得なかった魔力制御…、始祖が目指した積年の願い…。それが叶ったのであれば阻むものなどもう何もない!お前には今すぐ王家と縁づいてもらう!」
「ちょ、ちょっとお待ちください!阻むものならありますよ!僕の気持ちです!そこに僕の意志はありますか!?」
「分かっておる。だからこその折衷案だ。」
「折衷案…」
「年頃の近い第一王子から第三王子、そして嫁ぎ先の決まっておる第一、第二王女を除いた四人の王女、その中から一人を自由に選ばしてやろう。さあ誰が良い!」
はぁぁぁぁぁ!!!陛下!王様!折衷案の意味ご存じですかー!
折衷案、それは『二つ以上の案のよいところをとり合わせて、一つにまとめた案。相反する案の中ほどをとって、折り合いをつけた案。引用go〇辞書』ですけど、もう一つの案ってどこですかね?
恐ろしや王家…。恐ろしや国王…。今の時点でよく知ってんのアルバートしか居ないんだけど…?これがランカスターに一切の情もかけなかったなんちゃって平和主義のクラレンス7世…。
し、しかし…。流石の僕も王様に滅多なことは言えない。不敬を働けばパーカーの隣で僕もニートだ。
かと言って力技も使えない。狂魔力の制御なくして僕の自由はあり得ない…。
そのうえこのシナリオはゲームに無かったもの…。先の展開も読めやしない…。
ああ…打つ手なし…
…いや待てよ…?僕にはもう一つアドバンテージが残されている…。
そう。僕にはゲームの強制力と言う、神の力にも似た異能があるじゃないか!
くっ…、この手を使うのは甚だ不本意ながら残された手段はこれしかない。
やれるか?やれるのか?いいや、やるしかない!
信じるんだ!僕の内に秘めたる『BLゲーのヒロイン』としてのポテンシャルを!!!
「でもぉ…、僕は今まで子供らしい事何もしてなくて…」
「レジナルド…?」
「ランカスターでは別邸しか知らず、領内すらほとんど出歩くことも出来無くて…」プルプル…
「レジナルドくん…」
「ウエストエンドを手に入れやっと初めての友人が出来て嬉しくて…」ウルウル…
「レジ…」
「これでようやく広い世界で生きられる、そう思って…ぐすん」
「…」
「なのに領の経営だけならまだしも、青春も何も知らない僕にたった7人の王族から今すぐ一人選んで結婚しろだなんてそんな…」ワナワナ…「ひどいっ!ひどすぎるっ!」ズザァー!
「お、おお…、レジナルドー!」
「お父様…タスケテ…」
「陛下!どうか猶予を!レジナルドにどうか今しばらくの猶予をお与え下さい!そのためなら私の罰を重くしていただいても…、そうとも!領地など要らぬ!ようやく得た親子の絆…、私とレジナルドには時間が必要なのです、どうか!どうかー!」
「ジェームス…、レジナルド…、陛下!私からも進言しますぞ!今すぐとはこれ如何に!血も涙もない!」
「なっ!チャールズ!お前はいたく乗り気であったろうが!」
「そうでしたかな?だがしかしこれをご覧ください、レジナルドの哀れな姿を。可哀想に…こんなに涙を流して…」ホロリ…
「そうですとも陛下。これではランカスターからウエストエンド、ウエストエンドから王家へと蟄居先が変わるだけではありませんか。彼は社交界はおろか学院すら通わず下々の者を慰みに16年過ごして参ったのですぞ!今しばらく心いくまで自由を味わうべきとは思いませぬか!このようないといけな子供に酷すぎますぞ!」
「オルグレン候…、これはお前の案では無かったか?」
フイッ「さぁ?そのような事言ったような言わなんだような…、覚えておりませぬ」
「お前たち…」
しばしの沈黙…。
「レジナルドよ。お前の18になる誕生日、猶予はそこまでだ。それまでは自由を満喫するが良い。はぁ…、私は疲れた。皆退がって良いぞ…」
その日…、僕のステイタスボードにはキュン魔力が追加された…。
「言葉通りだ。あの地はお前が管理せよ。その上で父に任せると言うのであれば好きにすればよい。だが今後責任は…レジナルド、お前が持つのだ。」
「えぇ…」
いやいやいや、無いわ~。それ…僕だけが大変になるやつじゃん?え?そもそも僕関係なくない?
「アルバートがこう申すのだ。我ら王家にはランカスター公爵家を首に縄をつけたまま放置し続けた罪がある。その結果がこの事態へと繋がったのであればそれは王家も責を負うべきだ。見て見ぬふりをし続けた我々がランカスターから全てを取り上げるのは酷だとな。確かに一理ある。だが聞いたであろう?お前の父にランカスターの統治は易くない。であれば…」
アルバートがそこまで言ってくれていたなんて…。ちょっと感動。でもそこに続く言葉が感動を台無しにするんだよっ!
「父から領地を取り上げたく無くば息子のお前が管理するのだ。狂魔力を制御し〝不毛の荒野”をあれだけ発展させたお前であれれば容易かろう。めぼしい産業も資源も持たぬ凡庸なランカスター領をお前の狂魔力で豊かにせよ。どうだレジナルド」
「…もし断れば?」
「ランカスター公爵領はこの場を持って王家に接収となる」
脅し…?これは脅しなんだろうか…。父の未来と引き換えにランカスターを金のなる木にして王家の税収を増やせと?そう言う事だろうか…。
「あの…、ひとつ質問なんですけど…、父が侯爵に降爵であるなら公爵の爵位は…?」
「ハミルトン候がランカスター公爵領を統治するのはおかしかろう?当然お前が継ぐのだ。であれば体面的にも問題無かろう。父が子に爵位を受け渡し、そのうえで忙しいお前に代わって領地の面倒を見る。」
「それはまぁ…」
でもなーんかまだある気がするんだよね…。裏が…。
「とは言え…、年若く未だ偏見の残るお前をいぶかしむ者も居よう。そこでこの王家が後見につく。王家とお前の預かりとはそういう意味だ。」
「後見、それどうやって…、陰から見守るって意味じゃないですよね?」
「常々懸念しておったのだ。公爵家であるランカスター家と王家の繋がりが薄まってきておる事を。お前の父が王家でなくハミルトンから女侯爵を娶ったことでな」
おっと、よく言うよ。僕が何も知らないと思ったら大間違いだ。
お年頃になった父と年頃の合う全ての王族女性が狂魔力の掃き溜めランカスターへの輿入れを拒んだって事…、叔父様に聞いてるんだからね!
「以前よりハミルトン伯と話し合いは重ねておったのだ。事に備え、ランカスターはやはり王家に紐付けておかねばならぬと。」
あれ…この流れ…
「いずれお前には誰ぞ娶らせるつもりでいた。例え形ばかりでもな。」
叔父様が言ってたやつか…、でもその話は…
「だがレジナルドよ。ウエストエンドへの蟄居に当たりお前が頑なにそれを拒んでおると聞いてな、其方が婚姻に希望を持てぬのもまた仕方なかろうと諦めておったが…」
おったが何だよっ!
「誰も成し得なかった魔力制御…、始祖が目指した積年の願い…。それが叶ったのであれば阻むものなどもう何もない!お前には今すぐ王家と縁づいてもらう!」
「ちょ、ちょっとお待ちください!阻むものならありますよ!僕の気持ちです!そこに僕の意志はありますか!?」
「分かっておる。だからこその折衷案だ。」
「折衷案…」
「年頃の近い第一王子から第三王子、そして嫁ぎ先の決まっておる第一、第二王女を除いた四人の王女、その中から一人を自由に選ばしてやろう。さあ誰が良い!」
はぁぁぁぁぁ!!!陛下!王様!折衷案の意味ご存じですかー!
折衷案、それは『二つ以上の案のよいところをとり合わせて、一つにまとめた案。相反する案の中ほどをとって、折り合いをつけた案。引用go〇辞書』ですけど、もう一つの案ってどこですかね?
恐ろしや王家…。恐ろしや国王…。今の時点でよく知ってんのアルバートしか居ないんだけど…?これがランカスターに一切の情もかけなかったなんちゃって平和主義のクラレンス7世…。
し、しかし…。流石の僕も王様に滅多なことは言えない。不敬を働けばパーカーの隣で僕もニートだ。
かと言って力技も使えない。狂魔力の制御なくして僕の自由はあり得ない…。
そのうえこのシナリオはゲームに無かったもの…。先の展開も読めやしない…。
ああ…打つ手なし…
…いや待てよ…?僕にはもう一つアドバンテージが残されている…。
そう。僕にはゲームの強制力と言う、神の力にも似た異能があるじゃないか!
くっ…、この手を使うのは甚だ不本意ながら残された手段はこれしかない。
やれるか?やれるのか?いいや、やるしかない!
信じるんだ!僕の内に秘めたる『BLゲーのヒロイン』としてのポテンシャルを!!!
「でもぉ…、僕は今まで子供らしい事何もしてなくて…」
「レジナルド…?」
「ランカスターでは別邸しか知らず、領内すらほとんど出歩くことも出来無くて…」プルプル…
「レジナルドくん…」
「ウエストエンドを手に入れやっと初めての友人が出来て嬉しくて…」ウルウル…
「レジ…」
「これでようやく広い世界で生きられる、そう思って…ぐすん」
「…」
「なのに領の経営だけならまだしも、青春も何も知らない僕にたった7人の王族から今すぐ一人選んで結婚しろだなんてそんな…」ワナワナ…「ひどいっ!ひどすぎるっ!」ズザァー!
「お、おお…、レジナルドー!」
「お父様…タスケテ…」
「陛下!どうか猶予を!レジナルドにどうか今しばらくの猶予をお与え下さい!そのためなら私の罰を重くしていただいても…、そうとも!領地など要らぬ!ようやく得た親子の絆…、私とレジナルドには時間が必要なのです、どうか!どうかー!」
「ジェームス…、レジナルド…、陛下!私からも進言しますぞ!今すぐとはこれ如何に!血も涙もない!」
「なっ!チャールズ!お前はいたく乗り気であったろうが!」
「そうでしたかな?だがしかしこれをご覧ください、レジナルドの哀れな姿を。可哀想に…こんなに涙を流して…」ホロリ…
「そうですとも陛下。これではランカスターからウエストエンド、ウエストエンドから王家へと蟄居先が変わるだけではありませんか。彼は社交界はおろか学院すら通わず下々の者を慰みに16年過ごして参ったのですぞ!今しばらく心いくまで自由を味わうべきとは思いませぬか!このようないといけな子供に酷すぎますぞ!」
「オルグレン候…、これはお前の案では無かったか?」
フイッ「さぁ?そのような事言ったような言わなんだような…、覚えておりませぬ」
「お前たち…」
しばしの沈黙…。
「レジナルドよ。お前の18になる誕生日、猶予はそこまでだ。それまでは自由を満喫するが良い。はぁ…、私は疲れた。皆退がって良いぞ…」
その日…、僕のステイタスボードにはキュン魔力が追加された…。
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