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57 15歳 in 修道院

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エミコ…、えみこ…?いやちょっと待て、どう考えてもこの名前日本人だろ?じ、じゃぁやっぱり転生者…転移者か?どっちにしてもプレイヤー発見!


「お前…、エミコでもニコでも良いけどヒロインが何やってんだよこんなとこで!学院行ってんじゃないのか⁉」
「その顔でお前とか言わないでよ…、それより何で知ってんのよ学院の事…、え?まさか…」

「そのまさかだよ」
「い…、ぃやっぱりぃ!なんかそんな気したのよね!さっき馬車から助けてもらった時に!こう…妙な既視感を感じるというか…」


え?何?馬車から助けた時に何に気付いたって?僕が転生者だって分かったっての?何でっ?そりゃ既視感なら僕も感じたけど…


「あなたあの人よね?しま〇らの前であたしを助けてくれた男の子…、そうでしょ!」
「なっ⁉」


しま〇らって…それってつまり…


「お前、いやあなたってあの時の女性 !?」


ステルスで姿を消した僕は、そのまま路地を抜け修道院内にある彼女の部屋へと招き入れられた。
前世から通算で初めて入る家族以外の女性の部屋…。修道院の一部屋とは言え少し恥ずかしい…。

彼女が言うにはさっき馬車から彼女を庇った時の、僕の叫び、投げ飛ばされた力、背後に馬車が迫るそのシチュエーション全てにあの日の事故が被って見えたのだとか…。


「独り言みたいで落ち着かないから姿見せていいわよ」
「じゃぁうっすら…」
「幽霊みたいだから止めてよ!はい、お茶どうぞ。」


彼女の物言いはわりとハッキリしている。よくあるザ・ヒロイン!のような可憐でキュートなタイプではなさそうだ。それにこの感じからしてどうやら年上みたい。何とはなしに圧を感じる…。

たしかあの時の彼女は…カジュアルな服装だったけど雰囲気が学生とかには見えなかった。買ったばかりのショップ袋を腕に掛けてニヤニヤしながら片手でスマホを弄ってた彼女…。ながらスマホ…良くない…。あ、でも誤解ないよう言っとくよ?トラックは歩道に突っ込んできたから彼女は何にも悪くない。

ただ事態に気付くのがワンテンポ遅れたのは間違いない。


「そっか…、あなたもダメだったんだ…。お互い災難だったね…」
「え?違う違う!君のおかげであたしは助かったの!だから心から感謝してる!」
「でも…」


彼女は異世界転移ではなく、僕と同じように赤ん坊に転生したと言った。同じ歳って事はつまり…


「轢かれた後だけどね…、あたしと君、二人とも救急車で運ばれたの。でも君のおかげであたしは一命をとりとめて…でも事故現場で…その…真っ赤な血の海でピクリともしない君が助からないのは意識のあったあたしにはなんとなくわかったの…。ごめんね、あたしのせいで…」

「あなたのせいじゃないよ。悪いのはトラックでしょ?ああしたのは自分なんだしお互い被害者じゃん…、そんなこと気にしないでよ…。それより、じゃぁどうして…」

「それがね…」


彼女が言うには折れてヤバい所に突き刺さった大腿骨のせいで一年近くの入院を余儀なくされた彼女。最後のボルトを抜くという、これが終われば退院だ!っていう手術中にまさかの医療ミスが起きて出血多量で亡くなったのだとか…。
う、嘘だろ?せっかく僕が身を賭して助けたのに…何たる不運、何かに憑かれてるんじゃないのか…


「大腿動脈切っちゃったんだって。それから諸々不運が重なって…。ふざけんな!って感じよね。死因は失血死。あ~あ、ついてない。せっかく新作のゲームダウンロードしたとこだったのに。あ、違った。君が助けてくれた命だったのに。けどあたしの心残りが神様に通じてこの世界に来れたんだからある意味ラッキー…」

「ぶ、ぶれないな…。いいよ、嫌いじゃない。そういう逞しいの…そんな事より!どうしてあなたと一緒に僕まで転生しちゃったんだろう?」

「あ…、多分それあたしのせい」
「え?どういう意味?」

「処置中にね、「あ、これ助からないヤツ…」って思って。それで…、遠ざかる意識の中でせっかく助けてもらったのにあの男の子に悪いことしちゃったな~とか考えてて、お墓参りに行ってちゃんとお礼言いたかったな…とか…どうせ死ぬならあの子と天国で会えたらいいのに…とか思いながら死んじゃったから。」

「天国…」
「もちろんあたしの天国はここよ!」

「じゃぁ思った通りになって良かったじゃん…。って、違う!じゃぁ僕がここに来たのはお前のせいかー!このっ!」
「ご、ごめんってば…」
「いや待てよ…」


よくよく考えたら僕がリアル街作りによって充実した毎日が送れるのも彼女のおかげかも知れない。あのまま普通に前世で輪廻転生してたら、またごく普通の魔法の使えない人生しか送れなかった訳だし…。つまり…恩人?



僕は彼女に僕の素性を少しだけ説明した。ゲーム好きな妹が居た事。妹に代わって『恋バト』のクエストやミニゲーを引き受けてたからある程度、そして一部物凄く『恋バト』には詳しい事。あの日は妹の代わりにコラボTシャツを買いに出向いてた事。


「へー。で、誰買ったの?」
「全種。妹は箱推しで。あなたは?」
「ローランドよ!」
「ローランド…?趣味悪い…」
「失礼ね!彼はゲーム中屈指の人気キャラよ!クールな彼がヒロインにだけ見せる不器用な姿…、彼の流す涙にどれほどの乙女が沼った事か!それより君ここで何してたのよ?」


人気キャラ…、嘘だろ?女心は理解しがたい…。

ま、それは置いといて、僕が街作りシミュレーションゲームが大好きで実況チャンネル持ってた事からここにきてウエストエンドに街を作ってついにヴィラが開園して今アルバートが来てること、で、ヒロインと出会って無い事に気が付いたこと、そこまでをかいつまんで駆け足で説明していった…。ディナーまでに帰らないとジェイコブに叱られちゃう…


「だから僕は楽しく暮らしてる。それよりヒロインに生まれ変わったならどうして学院に行ってないんだよ!」
「さっきから何言ってんの?言っとくけどあたしはヒロインじゃないもの。まぁあたしも最近気が付いたんだけどね。でもそれならわざわざ学院に行く理由が無いじゃない?目立つのはごめんよ。あたしにはあたしのすべきことがあるんだから」

「はぁ?ヒロインじゃないってどういう事?」
「だってこれは君が思ってるゲームじゃないもの…。なんか勘違いしてるみたいだけど…」

「ど、どういう事?」

「このゲームはね、あたしが入院中に配信になった『恋バト』から派生したソシャゲ。『恋と魔法と時々エロス』っていうBLゲーの世界よ!」
「なんてっ?」


「それで君が転生したのはそのゲームのヒロインでありプレイヤー。濃い紫の髪が静かな狂気を滲ませる、『ランカスター公爵、狂魔力を秘めし者』よ!」







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