街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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39 at that time シュバルツとパーヴェル

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叔父様、つまりハミルトン伯爵でありハミルトン侯爵領の当主代理がウエストエンドへ視察に訪れたという事実が社交界に行き渡ると、それから幾日もしないうちに視察に伺いたいという趣旨の連絡が立て続いた。
現金だとは思うが…、でもそれは悪いことではないだろう。ビジネスチャンスに目敏い事、それは良い当主の資質でもあるからね。

これは、というご当主への返信はジェイコブにお願いすることにして、僕の手には叔父様の遠縁でもあるというとある子爵夫人からの、とても丁寧かつ切羽詰まった一通の手紙がある。

そこには、当主であった夫人の夫、コーエン子爵が病により急逝したこと。小さな領はとたんに立ちいかなくなり、訳も分からないままあっという間に人手に渡ってしまったこと。このままではまだ16になったばかりの一人娘を評判の悪いある男爵家に嫁に出さなくてはならないがそれは避けたいこと。などがしたためられていた。

何とか助けていただけないか。で結ばれたその手紙を無視することは出来ない気がした。何故なら…


「臭う…。なんかすごく臭う…。ドリアン並みに臭う!」


訳も分からないまま人手に渡った小さな領。いいや問題はその続きだ。16になったばかりの一人娘…。評判の悪い男爵…。
ハミルトン領は王都の北側、叔父様の遠縁もほとんどが北側に居る。そしてその北側には…例の好色、ジョット男爵が居る…。

まさかね…?でも普通にほっとけない。叔父様の遠縁なら尚の事だ。

僕は夫人と令嬢、良ければ使用人も含め、何も心配は要らないのですぐにこちらへお越しください、と返事を出した。
後継者がいない以上爵位は王家の預かりとなる。残念ながら彼女には領を取り戻してあげたところで維持することは出来ないだろう。

夫人が爵位を継がないのかって?

この国で女性が爵位を持つのは稀である。ほとんどは王家との繋がりとか国への功績あればこその特例だ。僕の母、この国でも三指に入る裕福なハミルトン女侯爵、みたいにね。

普通の子爵家では難しいだろう…。

だけどこのウエストエンドなら…、子爵家のご夫人、喉から手が出るほど欲しい!

教育を受けた有識者の少なさがウエストエンド最大の弱点。役人はもとより、学校での教育、あそこは今一流のメイドや使用人を育成する養成所みたいになってるのに講師が全然足りてない!winwinってまさにこういう事!


「いやぁ~、こんな時にこんな巡り合わせ…。日頃の行いかな?」


拡張のすすむ公的エリア、フィッツ邸の隣に急遽作成したコーエン邸。コーエン夫人の登場に一番喜んだのは話し相手が出来たフィッツ夫人だったとさ。





「レジナルド殿、あれほど立派な屋敷を用意いただき感謝するよ。パーヴェルもとても喜んでいた。」
「職場の近くが良いかと思って。兄弟水入らずのほうがいいでしょ?執事も居ることだし。」

「正直…、あなたのそばから離れるのを残念に思う。だが…あまり贅沢を言ってはいけないな」

「僕も残念だよシュバルツ。あなたはコリンのいいお手本だったからね。それよりメイドさんの応募は来た?」
「ああ何とか3人決まったようだ。掃除夫、調理人、そして洗濯夫。カールが張り切っていてね」


役場の横に用意した裁判所。って言っても、ここに持ち込まれる諍いなんて小競り合いばかりだろうけど。それでもいちいち屋敷に揉め事を持ち込まれるのも面倒だしね。シュバルツには法規作成の傍ら領民の調停を頑張ってもらおうと思っている。

病院、役場、学校、そして裁判所と、公的エリアは職場の裏にそれぞれ屋敷を備えている。24時間体制のブラック労働で申し訳なさの極みだけど、いつ何があってもいい様にね。

そんな訳で、シュバルツたちにはクーデンホーフ侯爵家改め、クーデン家としてそこそこ立派な屋敷を進呈したのだ。

だって役場の裏にもともと建ててあったハイネン氏の家も学校裏に注文住宅を建てたフィッツ氏の家もなかなか素敵な家なんだよね。ましてやコーエン邸なんてうっかり僕が張り切っちゃったし。

なのに元侯爵であったクーデン家がそれよりショボいって言うのもなんだかな…と思ってね。喜んでもらえたようでなによりだ…。



「これでカール氏も本来の仕事が出来るね。パーヴェルも仕事の手伝いするって言ってたし、すっかり元気になって一安心だ。」

「ありがたいことだが良いのだろうか、いつまでも君の好意に甘えてばかりで…」
「気にしないで。その分扱き使うから!」

「はは、そうしてくれ。貴方の為に働けることは望外の喜びだ。」
「そんなこと言ったら図に乗っちゃうよ?」
「構わない。貴方の為なら何でもしよう。」
「…恩に着せたいわけじゃないんだけど…」

「恩だけではない。これは私の気持ちだ…」


パウル改めパーヴェルとカーン改めカール氏がウエストエンドへとやってきて早や数か月。
シュバルツってば、よく笑うようになったし目力が戻って来たな…って思う今日この頃。
今も凄く真摯な目でじぃぃぃっと僕を見つめてきて…、パーヴェルを連れて帰って来てあげたのがそんなに嬉しかったのかな…。
もしかしてシュバルツってばブラコン? ま、それを言ったら前世の僕もそこそこシスコンだったけど。







「レジナルド様」
「あれパーヴェル?今そこにシュバルツが居たんだけど…会わなかった?」

「え?ふふ、すれ違ってしまいましたね。それよりもその…」
「新しいクーデン邸のこと?気に入った?」

「ええとっても。白い壁とオレンジの屋根が青空に映えて…。立派なお庭もあるのですよ?ご覧になりましたか?」
「まぁね。って言うか、外壁創ったの僕だから。ところで仕事は覚えた?」

「ええなんとか。兄さまの書き散らした法規の下書きを清書したりまとめたり。調停があれば事前に話を聞いて案内して書記を務めればいいのですね?」
「出来そう?」

「もちろん出来ます。ところであの…」
「なぁに?」

「新しい屋敷に時々でいいので遊びに来ていただけますか?なんのおもてなしも出来ませんけど…心から歓迎いたしますので…」

「もちろん行くよ。整ったら招待してね」

「ああ良かった。兄さまが喜びます」


兄さまが喜ぶ…、パーヴェル君は喜ばないのだろうか?…なんてね、馬鹿な上げ足をとったりしないのだよ、僕は。

ガリガリだった身体にふっくらとお肉がついて、もともと線が細めとは言え、桜色の頬をした今のパーヴェルならピロリ菌だって逃げ出しそうだ。


「あの…、レジナルド様、これを」
「これは…?」


皮で編まれたバングル…。ミサンガと言った方が近いだろうか…?


「下町で皮の端材を買って来て作ったのです。こんな事しか出来ませんが私たちを助けて頂いたお礼に…」
「そうなの?パーヴェルは器用なんだね。ありがたく頂くよ」

「兄さまと揃いなのですよ。いかがですか?」
「揃い…、パーヴェルの分は?」
「いえ僕は…。兄さまとレジナルド様のお揃いでないと意味が無いですから」


ん?大切な人に渡す親愛の気持ちって事かな?
思いがけずペアバングルになってしまった…。でもミサンガなんて全部同じようなもんだし仕方ないよね?
おや?何か掘ってある…、どれどれ?SとR…?なにこれ?SR…シニア…、…えっ?


「ちょっとパーヴェル、これ…、って、行っちゃった…」


シニア…、一体僕の何を見てそう思ったのか…

………

…き、今日の晩はウィルにオイルで磨いてもらおうかな…








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