街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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40 at that time ウィルとアーニー

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「ウィル!すごい!すごいよ…。良くここまで頑張ってくれたね…。素晴らしい景色だよ…」

「レジー様にそう言って頂けて…光栄です…」


それにしても本当に見事な景観だ。
眼前に広がるのは小麦大麦ライ麦の広大な麦畑。そしてそのまた向こうではオリーブや葡萄、オレンジなどの果樹園と様々な野菜畑がこれまた芸術的に配置されている。
その合間合間に家があるのもまた良い感じなんだよね。


「ルーさんたちのおかげで山麓の酪農も随分拡大したんですよ。」

「そうなの?ここの乳製品は最高だものね。…ウィル、いくらジェイコブの指導の下とは言えここまでするのは大変だったでしょ?本当にありがとう。君が居なくちゃウエストエンドの基盤は整わなかった。心から感謝するよ」

「れ、レジーざま…うぅ…グス…僕は…僕は…」

「ちょ、そんなに泣かないでよ…。ああ困ったな…、どうすれば泣き止んでくれる?」
「いっじょにルーざんのとこ…今日羊の毛刈り…い、一緒に…」

「羊の毛刈り?一緒に見に行きたいの?甘えん坊だねウィルは。じゃぁ僕の馬に乗って行く?」
「乗ります!」


ウィルってばいつの間にこんな力強くなったんだろう?僕にしがみ付く腕の力と言ったらこう、ギュゥゥゥっとして苦しいくらいだ。
馬上は怖いのかな?なにもこんなに全身でしがみ付かなくてもいいと思うんだけどね…






「とっても面白かったね羊の毛刈り。思った以上にダイナミックだった…」
「軽々とひっくり返していましたね。さすがルーさん。力強い」


初めて見る羊の毛刈り。あれはもうすでにアトラクションだ。すっかり刈られて山羊みたいになった羊さん。
あの量で羊毛のコート何着分だろう?

そんなどうでもいい事考えながら馬に揺れる僕らの前に現れたのは、持ち前の運動神経で今ではすっかり馬を乗りこなしているアーニーだった。


「レジー!と、…ワンコロか…」

「ベーだ!今日の僕は野良猫なんか相手にしませんよ。何しろ僕にはレジー様がついてるんですから」
「なんだと!おいレジー!なんでワンコロなんか後ろに乗っけてんだよ。歩かせろよ!」

「いやいや、そうしたら時間かかるじゃない。アーニー何しに来たの?」
「家を増やすって言うから打ち合わせだ」

「そう。じゃぁ明日はいつもの現場に居る?」
「いるけど何だよ」

「明日行くから待っててね」
「お、俺は待ってねぇけどな。いいか、あいつらが喜ぶから早めに来いよ。」
「はいはい」
「昼飯は俺が奢る!食ってくんなよ!」

「レジー様に何食べさせる気ですか?止めてくださいね。」
「うるせぇ!こいつはこう見えて食堂のポトフが好きなんだよ!」

「おでんみたいで美味しいよね。さ、ケンカはそこまでだよ。ウィル行こう。アーニー、また明日ね」



やれやれ。仲がいいのか悪いのか。顔を合わすとこれなんだから。

ウィルは「あんな奴のとこ行く事無いですよ!」と息巻いているがそう言う訳にも行くまい。これは進捗確認だからね。

ウィルが素晴らしく農園を整えてくれたみたいにアーニーもまた僕のビッグプロジェクトを支える一人なのだ。
僕の夢を理解し共有して僕と歩む心強い相棒、それがアーニー。僕の黒猫だ。

相変わらず口は悪いけど、ホントは凄く〝構って”だって僕は知ってるからね。いつまでたっても素直じゃないんだから…。





そして翌日、工事の音が鳴り響くそこは山の斜面。僕のシャングリラは山の中腹に完成予定だ。

手前に高級商業地、そのまた上にリゾートホテル。これがほんとの山の手、なんてね。やっぱりウエストエンド自慢の広大な自然と農園を一望してもらわないと。そのための立地がこの場所だ。


「滝の土台も出来てきたね。」
「だろ?ここに水を引くとか…すげえこと考えんだな、お前」
「まあね。お手本ありきだけど」


街造りシミュレーションゲームをしていた僕は、それはもうたくさんの観光地や世界遺産、ありとあらゆる画像や写真を参考のためにと見漁って来た。この頭にはその素晴らしい名所の数々がアルバムになって納まっている。
そしてそれらを実現するのが可能だったのはこのフルカンストフルスキル、狂魔力があればこそ。…じゃなくて、ジェイコブやクラウスをはじめとした、頼りになる仲間が居ればこそだ。

そんな頼りになる仲間はアーニー以外に、ほら、そこにも一人。

山の斜面を削っての滝造りは時に怪我人も出る。そんなときのためにイーサン先生の助手が一人とラドリー先生が常駐してみんなの健康を見守っているのだ。



「アーニー。それにしても計画より早いんじゃない?大丈夫?無理させてない?」
「させてねぇよ。教えてやろうか?実は時々シュバルツのやつが固い岩石を魔法で壊しに来てんだよ。知ってたか?」

「知らなかった…。えっ?そうなの?いつから?」
「結構前からだな。まぁ時々、礼だとさ。それで気が済むんならと思って好きにさせてんだよ」


そうだったんだ…。あの真面目なエトゥーリアの元侯爵は本当に義理堅い。
実直が服を着たような彼は当然相手が誰だろうと敬意をもって接するわけで、この割とめんどくさいアーニーが何も言わずに受け入れるとはさすがの人格者だ。


「それから非番の騎士もたまに手伝いに来るな。何だかんだで世話になってる。お前からも礼を言っといてくれよ」
「言っとくけど…、何その口ぶり。まるで夫みたい」

「ばっ!馬鹿言うな!何言ってんだお前!」バシッ!

「痛った…。もう!ただの冗談じゃない…。なに焦ってんの?」


こう見えて意外と純情なのが可愛い所だ。怒るから言わないけどね。





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