街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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37 13歳 in 静かな部屋

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そこが既にクラレンス王国内の僕のウエストエンドで僕の自室だって分かると彼は驚愕と共に事の重大さを瞬時に理解した。流石だ。


「て、…転移のアイテムは存じ上げておりますが、これほどの大規模な転移を可能にするアイテムなど終ぞ聞いたことは…。まさに奇跡…」
「これが知られたら一大事だってわかるよね?この秘密は墓場まで持ってって欲しい」

「え、ええ…」

「じゃぁ次の奇跡ね。少し待ってて」チリンチリン「ジェイコブ!」

「お呼びになりましたか坊ちゃま。おやこれは?」
「お客様だよ。こっちの少年は少しお疲れでね。すぐに部屋を整えてくれる?」

「いつの間に…などとは聞きませぬよ。何しろ坊ちゃまのすることですから。では湯浴みの支度も致しましょう」
「ふふ、さすがジェイコブ。よろしくね」


さあ、真の奇跡まであと少し…







ジェイコブの用意した部屋、それはシュバルツにあてがわれた部屋の隣に位置する部屋…。
…流石だジェイコブ。これぞまさに以心伝心。…ジェイコブってばエスパーかな?


「ジェイコブ!」
「はっ!」
「彼を呼ん」
「シュバルツですな」


だからどうして分かるのさ?





人払いの済んだ部屋。そこに居るのは僕とシュバルツ、そして元執事のカーン氏とパウルだ。そうそう、もちろん常に空気と同化するジェイコブも。


「ま、まさかこれは…」
「そのまさかだよ」
「パウル!パウルなのか!? 本当に?」
「本当だよ」


眠り続ける弟の髪を愛おしそうに梳き続ける兄シュバルツ。その口からは「こんなに痩せ細って…私のせいで…」などと自責の言葉ばかりが紡がれる。

僕は『キュア』をかけた事、念のためポーションも飲ませておいたことなどを伝え、身体よりも弱ってるのは気力なのだと説明した。



「気力…。そうか…、心労を掛けたのだな…」

「シュトバルツ様…、おお…!まさかシュトバルツ様なのですか!」


隣室で着替えていたカーンは部屋へ戻るなりシュバルツの存在に気がつき、その顔は驚愕と歓喜と恐怖と、そして安堵へと僕の目の前で目まぐるしく変化していった。


「お前はカーン!カーンではないか!やはりお前は忠義を尽くしてくれていたのだな!…そうだ。信じていたとも、お前なら必ずやパウルを守ってくれると…」

「守ったなどと…、それが出来ておればこうはならなかった…!情けない限りでございます…」

「何を言う!全ての責は私にあるのだ。未熟な私の判断がこの様な事態を招いた…。レジナルド殿が居なければ、私は詫びる事すら出来なかった。カーン、愚かな私をどうか許してくれ…」

「…それはどう…、いえ、よく、よく生きておいでになられた。私はそれだけで…うっ、うぅ…」



実に良い場面だ。だけどいつまでも感動の対面を続けている訳にはいかない。パウルが目覚めるまでにある程度の状況をすり合わせておかなくては。
パウルは嘘や誤魔化しの苦手そうなタイプと見た。何も分からないなら分からないままの方が都合がいい。

嘘と真実を交えながら見え見えの説明をする僕の背後で…時々感じるジェイコブの視線。僕はさっきから生きた心地がしない…
まぁいい。追及さえされなければそれでいい事にしよう。


「そうか…。お取りつぶしに…。ああ…、父や祖父、家門を守り継いできた先祖たちにどうやって詫びれば良いのか…私に再興の道は閉ざされた。なのにこんなおめおめと…、私は恥知らずだ!」
「シュトバルツ様…」




「ねぇシュバルツ」


招いた事態が事態だけに気持ちは分かるんだけどね。彼は少しペシミストみたいだ。だけどそんなものはこのウエストエンドにそぐわない。ウエストエンドは希望の地だよ?さっさと生まれ変わってもらわなくては…。


「先祖への詫び?そんなの必要ないよ。先祖を敬う事は大切だし伝統を引き継ぐことも勿論大事だ。先達の導きありて文明は開かれて来たんだから。だけどその先人の目はいつだって未来を見つめてきたはずだよ。いい?今を生きる事は人生においてもっとも大事なことだ。未来を停滞させてまで過去を守るのが正しいことなのか…、僕はそう思わない。」

「レジナルド殿…」


そうとも!レトロゲーにはレトロゲーの素晴らしさがある。それを懐古主義、と切って捨てる事などしてはならない。
だがしかし!

ドット絵に始まり3Dポリゴンへと道を開き、ついにはCG、リアルCGへと進化を遂げた昨今のグラフィック…。


「過去への敬意は進化の中にこそ示すものだ!起きてしまったことを悔やむくらいならこれからシュバルツが進化すればいい。いや、しなければならない!反省ってそういうものでしょ?」
「なんと…」

「…敬意は進化で示すもの…。あなたの言う通りだ。その言葉で漸く目が覚めた。レジナルド殿の言葉は胸に滲みる…。こうして話しているとあなたが成人前の13歳だという事を忘れそうだ…」

「あっ、あー…、ソウダネ…ボク狂魔力の継承者ダカラー。ほら!パウルが目を覚ますよ!」

「ありがとうレジナルド殿。私は今度こそ前を見て進まねば。あなたが与えてくれたこの機会を無駄にはしないとここに誓おう」

「そうしてね。パウルの為にも。…ねぇシュバルツ。貴重な機会、お互い悔いなく生きようか」


僕も貴方も二度目の人生なんだからね…。続く言葉は口の中へと消えていった…。





「う…」
「パウル!気が付いたのか?ああ私のパウルフェン…しっかりするのだ。さぁ私の手を取って」

「兄さま…、天使様に続いて兄さまの顔が…。ふふ、良かった。天国に来れたみたいだ」
「馬鹿を言うな。私は生きている。もちろんお前もだ。」
「え…、まさか本当に…?兄さま?生きた兄さまですか? 生きていたのですか!?」

「そうだパウルフェン。私は生きてここに居る。だがここが天使の住まう天国だという事に間違いはない」
「…に、兄さま…」


あ、だめだ…


「兄さまー‼」
「パウル‼」


ダー…!もらい泣き…






感動の再開に余所者は不要だよね?
カーンを残してジェイコブと部屋を出る僕。その僕の前に立ちはだかるのは…


「ウィル…、顔が怖いよ?」

ヴォルフさんが居ませんね。二人でお出かけですか?どうせ僕は無能で不要…」

「ちょ!そうじゃない!そうじゃないって!ウィルは大事な家族だもの。危険な事はさせられない。それだけだってば。無用で不要だなんて…そんな事言っちゃダメ!」
「でも…」

「ウィルとコリンはれっきとしたハミルトン家の一員だもん。僕にとって大切な人だ。分かってくれるね?」
「大切な人…、ほ、本当ですか?僕は不要じゃないですか?」

「本当だよ。君がとても大切だよウィル。今度そんなこと言ったら…デコピンだからね。」
「えっ!…レジー様、ぜひ…、ぜひお願いします!」


なんか変なスイッチが入った!



ふー、やれやれ。なんとかウィルを振り切って階段横までくると、そこには更にもう一人…


「イソヒヨドリ…、僕は…?」
「シャリム…何が?」
「僕は大切じゃないの…?」
「バカだね、大切に決まってる。」

「ならオオカミは…?」
「ヴォルフは大人でしょ?君もウィルも子供じゃないか。危ない事はさせられないよ」

「僕はもう成人した…。子供じゃない…。なにも危なくない…」
「ヴォルフは君のトリプルスコアだ。経験値が違うでしょ?何も危なくないなんて言って…、もう!そういうところが子供だって言うの!」

「…やっぱり僕は子供…、だからもっと側に居て…」


あー…誰か助けて…




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