街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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34 13歳 to sneak エトゥーリア

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やって来たのはエトゥーリア。ナバテア帝国から更に向こう側の、クラレンス王国からは馬車を乗り継いでも3~4か月はかかる遠方だ。

だが小国とは言え海に山に、そして資源豊かなこの国はそれなりの力を持つ国でもある。

古代オリエント風なナバテア帝国、ゲスマン皇国、そしてその間に挟まれたトラキア国と違ってこのエトゥーリア共和国はクラレンス寄りだ。
貴族社会であり、かつ生活に魔法が溶け込んだスタイルのこの国とはあまり違和感を感じない。

…なんでも生活に魔法が根付いた国は、ルーツを辿れば大体同じ民族に行きつくんだとか。そこから何千年もかけて大陸中に散らばって行ってそこここで国を立ち上げたってわけだ。この世界の世界史で習ったことだけどね。


で、まぁ、そんなところで何をしているかっていうと…、もちろんコッソリ人さらいに来たってわけだ。



やるべきことは先ず三つ。一つが聞き取り調査で指定のあった人物の近況を調べる事。
二つ目がそのうえでさりげなく、夫のいる場所に、彼のいる場所に、息子のいる場所に、行きたいと思うかどうかを確認する事。
彼らはその場所を天国あのよだと思うだろう…。それでもそこへ行きたいと願うほど辛いのならば…
三つ目、望みの場所に連れて行ってあげようと思う。

とはいえ戦争相手のナバテアを通り抜けるわけにはいかないし…、そうだな…、すぐ横の中立国、トラキア国を抜けていく一択だ。

それとは別口がクーデンホーフ侯爵家、そしてウルマン男爵家とシュルツ男爵家の状況確認。

元小隊長二人は二男三男だからお家に問題はないだろう。そのうえで奥さん子供がどう暮らしているか…、幸せならばそれでいい…、というのがフィッツ氏ハイネン氏の共通した意向である。

だがクーデンホーフ侯爵家は当主であるシュバルツを失った。…今頃どうなっているのやら…。


ジェイコブには地下道の残りを塞ぎに行くので当分昼間は不在にする、と伝えてある。…なんだかバレてる気がしないでもないけど…、つ、追及して来ないから…





さて、隊長たちを除いた亡命者は63人。だからと言って全員が大切な人を残しているとは限らない。
天涯孤独な人だっていたし、夫婦仲が崩壊していた人だっていた。彼女に振られたばかりの人は自棄になって志願したとか言ってたし、高齢の両親しか残ってない人は今更連れては来れないと諦めていた。
連れてこれない人達にはせめてもの気持ちでささやかなお金を置いてこようと思っている。これは亡命者の彼らから、給金の前借、という形で頼まれたものだ。


頼まれたのは奥さん子供、親や恋人などの45人。その全てが故郷を捨てるとは思えないけど…どうかな?
僕は住まいもバラバラな指定の人物をどこかの小姓に扮して暇をみては訪ね歩いた。『テレポーター』でだけど。

…まぁいくつかの集落に固まってるから実はそれほど大変じゃない。だって豊かな農村から志願兵になんかなるわけない。志願兵のほとんどは貧しい村の出身だ。
そして半月ほどかけ指定の人物に口頭で彼らの遺言を伝えていった。都市部の平民ならいざ知らず、この国でも農民の識字率はとても低いのだ。


戦地近くで知り合ったトラキア国の金持ちである僕の主人はあなたの大事な人から遺言を言付かっている。
「今もまだ自分を愛してくれているのならば、自分を見捨てた母国エトゥーリアを捨て、自分の亡骸が眠る山へと峰が続くトラキアの地でやり直して欲しい」
彼の最期の願いです。そのご助力は私の主人がいたしましょう。ってな筋書きだ。

何故そんな話をしたか…。彼らの生存、そして僕の関与を欠片でも滲ませてはマズいからだ。一人だけなら…なんて本当のことを話したあげく、相手がうっかり口を滑らして万事休す、なんて展開はドラマの中でいくらだって観たんだから。


さて、45人のうち33人がそれを望んだ。ほとんどは奥さん子供だ。両親、ぐらいの年齢になると、色々と達観してたりするし、今更故郷を離れることは望まない。彼らには約束通り頼まれたお金…と、少し上乗せして大目に渡しておいた。大切に使うようにって、言い聞かせて。

ここで意外なことに、夫婦仲が崩壊していたはずの奥さんが、どこからか僕のことを小耳に挟むといきなり乱入して髪を振り乱しながら「私も連れて行って!」と泣き叫んだのだ…。

いやぁ…胸の内なんて分からないものだよね。だってとっくに新しい恋人がいる人だって少なくはなかったんだから。
だけど薄情だなんて言わないよ。少しくらい逞しい方が彼らだって安心するだろうし、そんなことは想定内だ。


そうして農村部の彼らを馬車に乗せてトラキアで借り上げた屋敷まで送り出すと今度は貴族街の番だ。


覗き見たフィッツ氏、ハイネン氏の奥さんは実に対照的な暮らしをしてた。


ハイネン氏の奥さんはなんと彼の弟と再婚していたのだ!…こ、これはアカンやつ…

本人に伝えていいものかどうか…微妙だ…。でも夫婦仲も良さげな感じで…水を差していい雰囲気じゃない。いつからそうだったのか…、せめて不貞は無かったと信じたい…。


けどフィッツ氏の奥さんは毎夜毎夜涙を流し、今は亡き夫を忍ぶのだ…。

エトゥーリアの都で小さな部屋を借りて、本家からの援助と恩給を頼りになんとか暮らす母子2人。そんな彼女たちの暮らす部屋に同じ内容の書かれた一通の手紙を差し入れると、3日後、彼女は目を真っ赤にして指定の場所に現れた。もちろんその手には7つになる娘を連れて。

さあ!残りは一人!





と、思ったら…。

「こ、これは…」


クーデンホーフ侯爵家は何故かお取り潰しになっていたのだ…

クーデンホーフ家がお取り潰し?いやいやいや、ないから!それもたった半年で!
っていうか、クーデンホーフ家には弟も居るしシュバルツ氏はお国の為に名誉の戦死をした(って事になってる)のに、あり得なくない?
いくらあれが仕組まれた罠だったとしても早すぎるから!一体どういう事だよ!いやマジで!

混乱した僕は一回ウエストエンドへ戻るとヴォルフに相談することにした。何故だろう?最初に顔が浮かんだのがヴォルフだったんだよね…


「って、訳なんだけどどう思う?」
「父親が事故…。厳格で清廉だと言ったな?始まりはそこだ」

「そうだね…。頭の固い父親さえ居なければ青二才の跡継ぎなんかいいように操れると思ったんだろうね。」

「そうでなければシュバルツのような若造にいきなり法を任せたりしないだろう」

「…ところがその若造はもっと面倒だった、と。そこで目の上のたんこぶみたいな正義の法務官を排除するついでに土地や財産も接収しようとしたのか…。タチの悪い…」
「で、どうするんだ」

「とりあえずどうなってんのか調べて…、それから弟さんの所在を探さないと。」
「どうやって調べる」
「あー、屋敷はステルス魔法あるから大丈夫。けど人探しは…」チラリ

「ふっ、何だその顔。まさか手伝えって言うんじゃないだろうな」
「えー?そんな事言ってないしー」チラリ

「言っとくが高くつくぞ」
「ゴクリ…何が欲しいの」

「そうだな。俺がもういいというまでマッサージでもしてもらおうか。背中から首、腰回りも念入りにだ。」
「あー…」
「いいか。額から眉間は指先を使って丁寧にやれ。耳の付け根も忘れるなよ」


「喜んでお引き受けいたしますね。」



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