街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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30 13歳 go back ウエストエンド

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子供だましの下位アイテムなんてフルカンスト様の敵ではない。こんなの固いだけで大した制約も刻まれていないじゃないか。でも採掘場から出さないだけの制約ならこれで十分って事か。所詮使い捨てってわけだ…。虫唾が走るな。

僕はアダマンタイトの首枷、それを見事に合計66人分むしり取った。


「イソヒヨドリ…、まるで鳥の毛をむしってるみたいだった…」
「…それ誉め言葉かな、もしかして?」


何だろう…。僕が首枷を外すたびエトゥーリアの彼らは無口になっていく。ああ!期待に胸を膨らませてるのかな?


「違う…。怖がってる…」


…っ!シャリムが読心した!なんてね。顔に出ちゃってたとか?
とは言え怖がらせたままじゃちょっとね。


「『エリアヒール』」

「おおっ!」
「怪我が治った!」
「戦火でおった傷さえ消えたぞ!」

「ハミルトン侯爵、感謝する」


これで挽回したかな?


「さっ、地下に潜るよ」

「ハミルトン侯爵、それはどういう意味…」
「こう言う意味!『ディグジアース‼』」


その道はグングン伸びてヴォルフたちのいる場所へとつながっていく。

そして全員をその地下道へ誘導すると僕は徹底的に坑道を塞いだ。念には念を。どうせこの世界に地中探知機なんて無いんだから。こうしておけばもしも捜索に来たって全員埋まったって思うでしょ。

そのうえ進んだ分ごと地下道さえも塞いでいく。ウエストエンド直通ルートなんて残しておけないからね。


「な、なんだって今来た道を塞いでくんだ…」
「見つかったらマズいからだよ」

「本当にもう戻れないんだな…」
「後戻りが出来るとでも思ってたの?」


はぁ~、やれやれ。オドオドビクビク酷いものだな。これが兵士?ちょっと信じられないよ…。

道すがらシュトバルツ隊長に聞いたところ、戦線に出ていた20小隊のうち第一から第十六までの小隊は下位貴族家の子弟や訓練された兵士が多く、下位四小隊だけが農民兵からなる寄せ集めの隊だったのだとか。
そんなこともあって下位四小隊だけが最も危険な前線へと送られ、そして戦況の悪化とともに見捨てられた。もしや初めから捨て駒だったのか?それは今更分からない…。

そしてここに居るのがその第十七から二十小隊の生き残りである…。もとは150人超居た兵士が今や66名…戦争とは無情だ。

シュトバルツ隊長は彼らを率いる中隊長で、小隊長も各隊に一人づつ本来なら4人居たのだとか。2人だけが生き残り、隊長を含めた3人が貴族であとは大して訓練されていない農民ばかり…。そりゃ度胸もへったくれも無い訳だ…。




「ヴォルフお待たせ!遅くなってごめんね」
「それはいいがこいつらは…」

「エトゥーリアの兵士たちだよ。あ、今幽霊。あそこに置いとく訳にもいかないから連れてくことになっちゃった」
「置いとけばよかったのに…」
「シャリム、そういう事言わないの」

「お前…、なんでもかんでも拾うんじゃない」


うっ!その言葉は前世でもよく言われたなぁ…、耳が痛い…。





合流した地点で真っ先にするのは腹ごしらえだ。何も持ってないだろうって?心配要らないよ。僕のマジックバックにはなんでも入ってるからね。

お腹が減ってはなんとやら。すきっ腹じゃぁ前向きにも慣れないだろうってもんだ。大人しく満腹中枢を満たすがいい!


「はいシュトバルツ隊長。みんなに配布して。パンとハムしかないけどいいかな?」
「無論だ。これは…、久々の白パンか…、ありがたい」
「黒パンって固いもんね。お水は…、エトゥーリアも貴族は魔法が使えたよね?」
「ああ。水は私と小隊長で何とか出来る。だが隊長はもうよしてほしい。私たちは既に死んだのだから」

「じゃぁ名前も変えよう。って言ってもあんまり変えてもピンとこないでしょ?一文字減らそうか。シュバルツ!隊長は今からシュバルツね!」


あ…、ふふって笑った顔ときたら、とんでもなく端整じゃないか。それによく見たらとっても若い。ヴォルフとそんなに変わらない?ん?誰が50歳って言った!実年齢じゃなくて見た目ね…。オリーブグレーの髪がとても爽やかだ。


「ヴォルフちょっと」
「なんだ」


僕はヴォルフにだけ耳打ちをした。彼らの前でなんでもかんでも披露はしたくないってことを。特に使い方次第で悪用できる『ワープゲート』や『テレポート』はトップシークレットだ。
ヴォルフやシャリムの前で使ったのは信頼あってこそ。騎士たちだってまだ知らないのだ。この二人は基本が無口だしそもそも群れない。誰かにベラベラ話すとは少しも思えない。

だけどエトゥーリアの彼らはまだどんな人たちだか僕には分からない。こうして連れて行くのも、どうせ悪人は封鎖石に弾かれるって思ってるから。
会ったばかりの人を無条件で信用するほど僕はお人好しじゃないんだ。…そうだよ。知り会ったばかりの人物を信用して奴隷にまで落とされたイーサン先生じゃあるまいし…。



「僕は一旦シャリムを送ってくるよ。ついでにカトブレパスも置いてくる。捌いてもらわなくちゃ。で、また戻ってくるからそれまではヴォルフ、お願いね」
「必要な事なのか、それは」

「まあね。ナバテアからウエストエンドまでのこの距離でしょ?彼らの前で『ワープゲート』が使えない以上、朝になって僕が屋敷に居なくちゃ大騒ぎじゃない。それに住まいの手配もしなきゃならないし…、すぐ戻ってくるから進めるだけ進んどいて。向こうでなんとか誤魔化してくるから。」
「面倒なことだ。上手くやれよ」


「シュバルツ。後のことはこの人狼ヴォルフに任せたから彼のいう事に従ってね。食料は渡しておくから部下の事はうまくまとめて。大丈夫。この地下は深すぎて魔獣も魔物も出てこないし、障害物なしで真っすぐ突っ切ってるから、シュバルツが思うより日数もかからない。」

「ハミルトン侯爵は…?」
「ちょっと別ルートで。すぐ戻るから大丈夫。それからハミルトン侯爵はよして。レジーでいいよ。じゃぁ二人とも、頼んだよ!」





暗いトンネルの陰からワープで飛んだのは西の山でなく僕の部屋。夜明け前の私室はシン…と静まり返っている。あー、疲れた。


「ん?シャリム、何笑ってるの?」
「イソヒヨドリの寝台だ…良い匂い…ここで寝ていい?」

「良いよ…って言いたいけどさすがにジェイコブに叱られそうだ。ウィルも大騒ぎしそうだし。部屋まで送るよ。今夜はご苦労様。ゆっくり休んでね」

「……」

「あーもう、へそ曲げないの。じゃぁおまじないしてあげる」
「おまじない…?あ…」


おでこにちゅーとか…、クッソ恥ずかしいな…。でもまぁ…母を求めるシャリムの慰めになるんならそれでいいや…。
ほら、すっごく嬉しそうにして…なんか…大きな子供みたいだね。






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