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16 12歳 go back ウエストエンド

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ギャングの一味はクラウスによって王都の衛兵に突き出された。真っ黒こげなのはご愛敬だ。一応生かしておいたけどこの先までは分からない。あいつらには王都の住人も手を焼いていたようだし、厳しい尋問、拷問にはもう耐えられないかもね。

それに反してヒールも回復薬もぶっかけていたアーニーは瀕死だったのが嘘みたいにその後精力的に動き回った。元気そうで何よりだ。

『身代わりの木偶人形』…あれは僕でさえ1つしかまだ落とせていない貴重なアイテム。けどまた頑張ればいい。所詮確率論だ。死ぬほど周回すればいつかは必ず手に入れられる。物を惜しんで人を惜しまないなんて…バカげてる!


「おい!貴族さんよ」
「これ、坊ちゃまをそのように呼んではならん。レジナルド様と」
「レジーでいいよ。アーニー、僕のことはレジーって呼んでね」

「…そうかよ…。じゃぁレジー、ガキどもは全員連れてきた。それでなんだが…」
「どうかした?」


いいにくそうなアーニーの後ろには幾人かの大人の顔が。そこに居たのはあのゾンビみたいな人達でなく、病気や欠損で動けなかった人達。赤ん坊を抱えたあの女の人やお腹の大きい人も居る。


「こいつらは訳ありであそこにいた奴らだ。けど性根迄まだ腐ってねぇ…。なぁ、俺にかけてくれた回復薬…、まだあんだろ?身体さえ元気ならこいつらはあそこを抜け出せるんだ。頼む。俺の借金に上乗せしてくれていいから融通してくれないか。それから妊婦は…連れて行ってもいいだろ?お前が言ったんだ。"子供は全員連れて行く”ってな」

「アーニー…、僕は君が本当に大好きだよ。女性は勿論連れて行く。それからケガや病気も心配しなくていい。彼らも一緒に連れてくし、僕の領民なら面倒を見るのは当然だ。病気は僕が回復させる。それに片足でも片腕でも出来る仕事はいくらでもある。」

「お前…、筋金入りのお人好しだな…。」
「君ほどじゃない」


貸し馬車を3台用意し、そのリヤカーみたいな荷台に子供14人、大人9人の合わせて23人全員を乗せると僕たちは一路、4騎士たちとの集合場所へ。
それは王都と東のチェッリ伯爵領との分岐に当たる場所。
そこには同じように貸し馬車2台に大人子供合わせて5家族、19人ほど乗せた馬車が待機している。
貸し馬車の御者はウエストエンドの手前までなら、という約束で往復1か月ほど拘束するその仕事を快く引き受けてくれた。物を言うのはお金の力。黄金色の前で人は無力になるのだ…。


「ここを離れて山に入ったら休憩しよう。そこでお腹いっぱい食べさせてあげるから少しだけ待っててね」
「山ん中突っ切ってくんで?あそこは獣や獣人や出る危険な山ですぜ…」

「うちの4騎士はとっても強いから大丈夫だよ。それに騎士団長クラウスはもっと強い。」

「ああそうだ。だがうちの坊ちゃまはもっとお強い。心配無用だ。街道沿いに進むとかなりの時間がかかるのでね。山には行きに拓いた路が出来ている。あれを使えばかなり近道になるのだ。」


御者には行きに拓いた路…の意味がよく分かっていない見たいだ。そりゃそうだろう。まぁ見たら分かるって。




半日ほど進んで無事山に入ると僕らは行きに見つけた河原を休憩場所に決めた。騎士や御者も含めて約50名、大所帯にもほどがある。
御者たちに馬の世話を任せ、クラウスとオリバーはお肉を、あ、イヤイヤ、野生の猪なんかを探しに行くことに。そこで僕は先ず全員にハイ・ヒールをかけることにした。


「これだけのヒール…大丈夫ですか?ポーションを使われてはいかがでしょう」
「問題ないよ。僕の狂魔力は普通じゃないからね。アストルフォ、君は優しいね。いつも心配ありがとう。」


主からの感謝の言葉はいつだって騎士を鼓舞するものだ。アストルフォはただでさえキラキラした顔を更に破顔させて僕の言葉に喜んでいる。

それにしても狂魔力というのは本当に便利だ。いや、中身でなくその名前が。
最近では"狂魔力保持者”という異名にずいぶん助けられていたりする。説明の難しい事はだいたいそれで解決するからだ。持ってて良かった狂魔力。狂魔力には感謝しかない。

ケガや病気の治った彼らの上にはそのアストルフォが水を降らせてくれる。一気にシャワーだ!川に入ってもいいんだけど…川には時々小型の魔魚が混じってたりするからね。


「さぁご飯にしよう。御者やオレガリオたちを呼んであげて」


団長の捌いたお肉や女性たちの摘んできた野草、ここは手っ取り早くバーベキューだ。
火をつけるのはオレガリオ、子供たちはアーニーの指示でたくさんの焚き木を拾ってくる。
その子供たちの濡れた身体はリナルドの風でとっくに乾いているし、ん…良い気持ちだ…


「リナルド…、もしかして風送ってくれた?」
「少し暑いかと思いまして…」
「とっても気持ちいい。この風はリナルドのようだね。優しくて清々しい風だ」


いつもクールな彼も主からのお世辞には照れるみたいだ。その耳先はすこしだけ赤く染まった。


「アーニー、ちょっといい」
「なんだよ飼い主」

「ぷっ、その言い方。真面目な話、この先からは獣が出る。先行するのはクラウスと僕。左右にアストルフォとオレガリオ、後方にオリバーとリナルドを配置するけど子供たちのことは任せたからね。」

「あ、ああ分かった。けどお前…領主の癖に先行すんのか…」
「僕が一番強いからね」


ここはやはり領主の余裕をみせねばなるまい。なんてことないよ~の意味を込めてニコっと笑うと、なんでだよ!僕のアイルーはスッと目を逸らした…







軽々と獣たちをいなしながらついに見えてきたのは残った騎士に頼んでおいた立派な領門!ウェストエンドの入り口だ。
そして半月同行して随分親しくなった御者たちともここでお別れ。気前のいい僕に御者たちはそれはもう嬉しそうで、それでいて淋しそうで、金貨を渡す僕の手をぎゅっっと握りしめたりするもんだから、時折オリバーにはがされていた…。


先駆けたリナルドからの報を聞いてそこには既にハミルトン家の馬車が5台待機している。そしてその一台には…


「ウィル!迎えに来てくれたの!」
「勿論ですレジー様。ああ…お元気そうで何より…。ひと月も…ひと月と4日と7時間もお会いできなかったんですよ?僕が…僕がどれほど心配したか…」

「ウィルは心配性だなぁ。そうだウィル、紹介しておくね。彼はアーニー。この子供たちのリーダーだよ。これから僕の街作りで大事な役を担ってもらう人だから仲良くしてね」

「…よろしくお願いします…」
「…よろしく頼む…」



…、二人とも人見知りかな?
でもウキウキする!さぁ!どこから手を付けよう!


…領民62名…







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