街を作っていた僕は気付いたらハーレムを作っていた⁉

kozzy

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13 12歳 to 王都の東

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「さあ、次は領民を増やさなくちゃ。」


水の問題は解消した。そして山道を切り開くのに倒して歩いたその木々は彼らの家を建てるための木材となっている。
当面彼らには炊き出しにより食を満たしてもらって、あの貧相なトマトと芋畑よりもまずは衣と住を整えてもらわなければ。
それにしても難民か…。これはいいアイデアかも知れない。

…ピックアップに行くか。


「という訳で僕は王都の東方面に行ってくるよ。難民流民の方々なるべくたくさん連れて帰るから楽しみにしてね。」
「坊ちゃま…我々はその間どうすれば…」

「まず女性陣は衣類の仕立てを手伝ってあげて。お屋敷の古いカーテンやシーツを使えばいいよ。いつまでもあんなボロじゃ気の毒だからね。それと騎士団の半分は彼らの家屋作りを手伝ってあげて。今から領民爆発的に増える予定だから大目にね。」
「はっ」

「それからもう半分は区画整備の手伝いをお願いするね。はいこれ設計図。ここが麦畑。ここが野菜畑。居住区がこの辺りで…ここは空けておいて。えっとそれから水路はここをこう十字に広げて…、あ、そうそう。責任者はウィルに一任するからよろしくね」
「えっ!」
「えっ!…って…」

「一緒に行くつもりでおりましたのに…」
「ごめんねウィル。でも僕はウィルを信頼して任せるんだからね。君は整理整頓が得意だし農地もきっときれいに整頓できる」
「わ、わかりました!レジー様が僕を信頼…フフ…」

「た、頼んだよ…」


ウィルがどんどんおかしくなっていく…忠誠心って…忠誠心って…コワ…


「そうそうジェイコブ。途中キャラバンを発見したらここに来るように伝えておくから必要なものはジャンジャン購入して。なんなら大人買いでも構わないよ?」

「大人買い…。それはそうと坊ちゃま、このウエストエンドに来るでしょうか?」
「来るんじゃないかな?」


ジェイコブの心配はもっともだ。ここは最果てウエストエンド。背後には魔のベルトラインが控えている。それでも…来る。きっと来る。

これは商人にとって千載一遇のチャンス。僕は膨大な財を持つハミルトンの若き当主。その金払いにも定評がある。ここで恩を売れば、叔父さんの管理するハミルトン本領にも食い込めるかもしれない。
そのうえこの地…危険手当をふっかけたって道理が通る。いずれそのうち、ここが王都よりも栄える街になって、魔物の危険も杞憂だと思えて、身の安全が保障されても舐めた真似をするなら…その時は容赦なく出禁だ。


「1か月くらいで戻るから~!」
「お気をつけてレジーさまぁ~!」








「ここが紛争地帯か…身内同士で馬鹿らしい…。ねぇクラウス。ウエストエンドの方がマシだって思ってくれる人居るかな?」
「居ると思いますな。ここはあまりにもひどい。人と人が血を流しあう様を見るなら魔物の方がまだましだと私ならそう思います」
「そうだね…」


僕と頼りがいのある美中年、騎士団長のクラウス、そして4人の若騎士は馬に騎乗し全力で東まで駆け抜けてきた。日数にして15日ほど。かなりのハイペースだ。

ここに来る途中で小耳に挟んだことがある。王都の商業エリア、その外れにあるある薄暗い一角には退廃地区と呼ばれる貧民街があるのだとか。
そこには仕事にありつけない者、身体を壊し働けない者、そして親の無い子などが廃墟に集まり希望のない毎日を送っているという…。
そんな彼らには犯罪という取り返しのつかない罠が手ぐすね引いて待っている…


「だからクラウス、僕はせめて子供たちだけでもそこから連れ出してやりたい。もちろん本人次第だけど…」
「そうですね。大人はともかく子供なら、まだ間に合うかも知れませぬな」


クラウスは既に僕を只人だとは思っていない。難民集めを騎士たちに任せスラムへ出向くという僕に、彼は何にも言わずに同行を申し出てくれる。団長ぉぉ…。






そうして初めて立ち入る王都の大きな門には厳つい門番が居るのだが、ん?ゲームでクエストに向かう時に出てくる解説要員じゃん。お前だったのか…

その解説要員は僕が狂魔力の持ち主であるハミルトン侯爵、いやランカスターの元嫡男だと分かると一瞬固まった。けどすぐスっと立ち直ってすんなりと通してくれた。…いやぁ、さすが解説要員。




さて、物見遊山でない以上サッと行ってパッと帰らなくっちゃ。

王都とは言え目的はうらぶれた退廃地区、よく言うスラムと言うやつだ。
商業地区と商業地区の間にある、いかにも、な薄暗い道をどんどん奥へ進んでいくと、そのドン突きにそこはある…

路の両側には幾人もの幽鬼が座り込んでいて…時折ギョロリ、と、その生気のない目を向けてくる…。そして中には身体を壊しているのだろうか、苦しそうにずくまる者や手足の欠けた者なんかも見て取れる。
それに思った通りだ。瘦せこけた身体で赤ん坊を抱える女性、同じく痩せこけた身体の子供たちまで…。

彼らはどうやって生き延びているのだろう…?

そんな疑問を抱えたまま、僕は子供の一人に向かって声をかけた。


「こんにちは。僕はハミルトン侯爵領の現領主、レジナルド・ハミルトンだよ。君たちのご両親は何処に?ここにはいつからいるの?」

「親は居ない…俺はこの路地に捨てられてたんだ。両親なんか知らねぇよ…」
「あたしは…あたしは妹と…」

「妹さんが居るの?きみお名前は?」
「エル…、こっちの子がジー」


アルファベット…、じゃ、少なくとも子供が12人は居るって事?


「そう。君たちもっとまともなところで暮らしたいとは思わない?」



「おい!こんなところにお貴族様が何の用だ!」

「何者だ!?おや?子供ではないか」

薄暗い路地から伸びた影。影の先には毛を逆立てた黒猫の様な少年が両手に食料を抱えて立っていた。真っ黒な髪に褐色の肌。その瞳は…うおー!金眼!

前世で飼ってた猫のアイルーにそっくり!


「わざわざ身ぐるみはがされに来るとはな。めでたいにも程があるぜ。エル!ジー!こっち来い!」
「身ぐるみねぇ…」


よく見てみれば、前世で言うところの高校生くらいじゃないか。中身が二十歳の僕から見れば君は十分子供だよ。
その彼は子供たちを自分の後ろに押しやると僕に向かってシャーシャーと威嚇を始める。カワヨ…。


「ずいぶん可愛い面じゃねぇか。どこのご子息様だか知らねぇが人買いに売られる前にとっとと帰れ!ここがどんなとこか知らねぇのか?場違いなんだよ‼」
「人買いねぇ…」

「何だよお前、さっきから!」


どうやらみんな、〝ハミルトン”っていうとピンと来ないみたいだ。ランカスターって言えば分かるのだろうか?
悪役の決まり文句とは言え、「可愛い面」ねぇ…。さぁて、僕が狂魔力の持ち主だって分かっても同じ台詞が言えるかな?


「僕にはもうひとつの身分がある。それはね、ランカスター公爵家の元嫡子、泣く子も黙る狂魔力の継承者だよ。心配してくれてありがとう。でもそんな気遣いは要らないよ」
「なっ!なんだとっ‼」


…そんなドン引かなくても…。こう見えても傷ついちゃうんだからねっ!


「お、お前があのヤベー魔力の…。綺麗な面に騙されるとこだったぜ。もっと悪いじゃねぇか!さっさと帰れ!」



いや全然騙してないし。人聞きの悪い…。この期に及んで「綺麗な面」とか、まだ言うか!






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