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9 12歳
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思いあぐねること半年ほど、ついに僕は満を持して12歳となった。
12歳…どれほどこの日を待った事か。
何故かって?ついに今日からこの僕は、後見人のサイン無く自分自身で全ての書類に意思決定が出来るようになるのだ。
ま、実際のところは普通ガッツリ背後に後見人がチラ見えするけど僕に限っては完全自立型だ。
「レジー様…、記念の今日はいつもより格別丁寧にお背中お流ししますね」
「悪いねウィル。もっと大きな浴槽があれば自分で入れるんだけどね…」
「いえ…、これは僕の大切な使命ですから…」
猫足の小さな浴槽で水をこぼさず自分で身体中を洗うのは至難の業だ。
パーツのやたら多い貴族服と言い…、この時代の貴族に従者が居た理由が分かるってものだ。
誕生日…と言っても、敬遠された狂魔力の継承者に親しい友達は一人も居ない。
…別にいいもん。
前世でだってリアルの友達は数えるほどしか居なかったけど…友人って数じゃないでしょ?質でしょ?
と、まぁそんな平和な時間もあのエヴァがいつまでも許してくれるわけがない。分かってたよ、ひと時の安穏だって…
「坊ちゃま!ジョット男爵の馬車が本邸の車止めに停まっております。いかがなさいますか?」
「な!エヴァ…あの女性懲りもなく…。こちらには証書があるのに何を考えてるんだ!」
この世界において証書とは魔法を介して凍結される。証書による約束は絶対、破ればそこにはペナルティが。なのに何故…?
公爵である父は王城へと参殿するため定期的に領地を留守にする。その隙をついて何かを企んでくるのがあの女だ。
そのうえ今回は来客の名がよろしくない。ジョット男爵が出入りしていただなんて…公爵家の評判に関わると何故分からないのだろう?頭悪いんだろうか…?
だがジョット男爵を何しに呼びよせたのかは分かってる。目的は…コリンの排除だ!
「エヴァ!その書類から今すぐ離れろ!じゃなきゃハミルトンの援助はここまでだ!」
「本当に耳が早いわね!ふん!貴方の一存でそんなことなど出来るものですか!公爵様とハミルトン伯は証書を交わしておいでなのよ!」
「叔父の持つ権限などほんの一部だ。僕は先日12歳になった。ハミルトン侯爵領においてのほぼすべては僕の一存で決められる!さあジョット男爵も。そのペンを置いて下さい。」
向かい合わせに腰掛け談笑していたエヴァと男爵。キツネの様な女と狸の様な男はお似合いのカップルに見えた。
僕の登場に舌打ちをするエヴァ。そして変態男爵は舐めるように僕を見る。き、キモい…
こんな平凡極まりない僕にまで…本当に見境ないな!
ワナワナと震えながらも乗り出した身を戻すエヴァ。そしてひったくって確認したその紙は…
"養子縁組証書”
「こ…、これは!何の真似だエヴァ!僕と取り交わした約束を忘れたのか!」
「………」
「何とか言ったらどうなんだ!」
「あの証書には売り飛ばさない、と書いてあるのよ。養子に出さないなどと書いてないわ。よくお読みになりませんでしたの?」
「なっ!」
ムキー‼
そんな言葉尻を捕らえて上げ足を取るんじゃない!
「だ、だからって本人の居ないところで勝手にそんな事出来るもんか」
「いいえ。本人のサインならここにあるわ。よくご覧なさいよ。その縁組証書には二人のサインが入っているのよ」
そこにあるのは見覚えのあるサイン…。偽装か?いいや、それにしては自信満々じゃないか。だけどこれは…
「…ジェイコブ、二人を呼んで」
「はっ!」
クラウスに連れてこられた二人は抱き合って怯えている。正確にはしがみつく弟を兄が失うまいと抱きしめているのだ!ああ、これぞ兄弟愛…
「ウィル、本当にサインしたの?」
「そ…、それは半年前のあの時、コリンを助けたければ書けと言われて何の書類かも分からずに…」
「コリンは?」
「ぼ、僕も同じです!兄さんを酷い目に合わせたくなければ書けって…」
あの時持ち帰った書類!
…あれは売買契約書じゃなかったのか…あー、痛恨のミス、父に渡すんじゃなかった…
しかしほんっとうにクズだなこの女。さすがゲームの嫡男を闇落ちさせただけの事はある。極悪令息の母として見上げた行動力だ。いや、褒めて無いよ?
「ふん!過程がどうあれサインはサイン。これは正式に通る証書よ。さっさと返してちょうだい!いくらレジナルド様でも王家の紋の入ったその証書を勝手に破棄は出来なくてよ!」
「黙れ!」
貴族の家系は王城にある専門の部署で厳密に管理される。貴族の権威と品位を守るためだ。つまり強欲な商家なんかが商売の為にと息子を没落貴族家の養子にしたりして傍若無人に振舞ったり出来ないようにだね。
その為貴族の養子縁組はすべて王家の紋が入った書類が使われるのだが、これには特殊な魔法がかけられており、王家の印、現主家の印、養子先の印、そして当人の印、全てを揃えねばならず、また勝手に破棄、複製はできないようになっている。
そして王城には高位貴族にしか出入りの自由はなく、当然その書類も容易に手に入れる事は出来ない。
男爵令嬢であり正式な公爵夫人でもないエヴァが簡単に王城へ出入りなんか…
そうか!沈黙の2年…あれはそのための準備期間…!
どんな手を使ったか知らないけどウィルとコリンが連れ去られたあの時、エヴァは多分あの時ようやく書類を手に入れて…、それで目障りな二人を即刻養子に出そうとしたんだ…。二人のサイン入り縁組証書を馬車に乗せて、後はジョット男爵のサインをするばかりにしておいて送り出した…。
この女…僕が父に突き返した書類を父の不在の隙を狙って探し出したのか!そして男爵を呼びよせた…。
当主の居ない間に全てのカタをつけてしまおうと…なんて女だ…!
「…ジョット男爵。もしこれを無理強いするなら僕は貴方の犯している数々の不正を法務院に告発します。告発するに十分な証拠は既に入手済みなのですよ。」
「何…?」
クラウスが、それにジェイコブまでも驚いた顔で目を見張る。
だがこれは本当のことだ。僕は真夜中ワープゲートを利用して、いざという時の為にコツコツとジョット領の不正とその証拠を集め続けた。
倫理観皆無のこの男がまともな統治なんかしているわけがない。思った通り、まぁ出るわ出るわ…
「それでも白を切るなら…、腕づくで首を縦に振らせましょうか?僕が何者かご存じですよね。」
「…狂魔力の継承者か…、厄介な。そうでなければどんな手を使ってでも手に入れたものを!この張りぼてのアドニスめ!」
ちょ!何言ってんのこの変態男爵!だから言葉だけでもキモイって!
「いいだろう、その証拠やらと引き換えにいますぐ手を引いてやる!私は何もそれほど相手に困ってはいないのだ。そこの夫人がどうしても、というので引き受けた、それだけのこと。エヴァ夫人、二度も私に恥をかかせおって…、三度目は無い!このツケは払ってもらうぞ!」
「くっ!」
三度目は無い…、それはこちらの台詞だ!
そして僕の手にはサイン未遂の縁組証書…、ちょうどいい。この証書の使い道は決まった…。
12歳…どれほどこの日を待った事か。
何故かって?ついに今日からこの僕は、後見人のサイン無く自分自身で全ての書類に意思決定が出来るようになるのだ。
ま、実際のところは普通ガッツリ背後に後見人がチラ見えするけど僕に限っては完全自立型だ。
「レジー様…、記念の今日はいつもより格別丁寧にお背中お流ししますね」
「悪いねウィル。もっと大きな浴槽があれば自分で入れるんだけどね…」
「いえ…、これは僕の大切な使命ですから…」
猫足の小さな浴槽で水をこぼさず自分で身体中を洗うのは至難の業だ。
パーツのやたら多い貴族服と言い…、この時代の貴族に従者が居た理由が分かるってものだ。
誕生日…と言っても、敬遠された狂魔力の継承者に親しい友達は一人も居ない。
…別にいいもん。
前世でだってリアルの友達は数えるほどしか居なかったけど…友人って数じゃないでしょ?質でしょ?
と、まぁそんな平和な時間もあのエヴァがいつまでも許してくれるわけがない。分かってたよ、ひと時の安穏だって…
「坊ちゃま!ジョット男爵の馬車が本邸の車止めに停まっております。いかがなさいますか?」
「な!エヴァ…あの女性懲りもなく…。こちらには証書があるのに何を考えてるんだ!」
この世界において証書とは魔法を介して凍結される。証書による約束は絶対、破ればそこにはペナルティが。なのに何故…?
公爵である父は王城へと参殿するため定期的に領地を留守にする。その隙をついて何かを企んでくるのがあの女だ。
そのうえ今回は来客の名がよろしくない。ジョット男爵が出入りしていただなんて…公爵家の評判に関わると何故分からないのだろう?頭悪いんだろうか…?
だがジョット男爵を何しに呼びよせたのかは分かってる。目的は…コリンの排除だ!
「エヴァ!その書類から今すぐ離れろ!じゃなきゃハミルトンの援助はここまでだ!」
「本当に耳が早いわね!ふん!貴方の一存でそんなことなど出来るものですか!公爵様とハミルトン伯は証書を交わしておいでなのよ!」
「叔父の持つ権限などほんの一部だ。僕は先日12歳になった。ハミルトン侯爵領においてのほぼすべては僕の一存で決められる!さあジョット男爵も。そのペンを置いて下さい。」
向かい合わせに腰掛け談笑していたエヴァと男爵。キツネの様な女と狸の様な男はお似合いのカップルに見えた。
僕の登場に舌打ちをするエヴァ。そして変態男爵は舐めるように僕を見る。き、キモい…
こんな平凡極まりない僕にまで…本当に見境ないな!
ワナワナと震えながらも乗り出した身を戻すエヴァ。そしてひったくって確認したその紙は…
"養子縁組証書”
「こ…、これは!何の真似だエヴァ!僕と取り交わした約束を忘れたのか!」
「………」
「何とか言ったらどうなんだ!」
「あの証書には売り飛ばさない、と書いてあるのよ。養子に出さないなどと書いてないわ。よくお読みになりませんでしたの?」
「なっ!」
ムキー‼
そんな言葉尻を捕らえて上げ足を取るんじゃない!
「だ、だからって本人の居ないところで勝手にそんな事出来るもんか」
「いいえ。本人のサインならここにあるわ。よくご覧なさいよ。その縁組証書には二人のサインが入っているのよ」
そこにあるのは見覚えのあるサイン…。偽装か?いいや、それにしては自信満々じゃないか。だけどこれは…
「…ジェイコブ、二人を呼んで」
「はっ!」
クラウスに連れてこられた二人は抱き合って怯えている。正確にはしがみつく弟を兄が失うまいと抱きしめているのだ!ああ、これぞ兄弟愛…
「ウィル、本当にサインしたの?」
「そ…、それは半年前のあの時、コリンを助けたければ書けと言われて何の書類かも分からずに…」
「コリンは?」
「ぼ、僕も同じです!兄さんを酷い目に合わせたくなければ書けって…」
あの時持ち帰った書類!
…あれは売買契約書じゃなかったのか…あー、痛恨のミス、父に渡すんじゃなかった…
しかしほんっとうにクズだなこの女。さすがゲームの嫡男を闇落ちさせただけの事はある。極悪令息の母として見上げた行動力だ。いや、褒めて無いよ?
「ふん!過程がどうあれサインはサイン。これは正式に通る証書よ。さっさと返してちょうだい!いくらレジナルド様でも王家の紋の入ったその証書を勝手に破棄は出来なくてよ!」
「黙れ!」
貴族の家系は王城にある専門の部署で厳密に管理される。貴族の権威と品位を守るためだ。つまり強欲な商家なんかが商売の為にと息子を没落貴族家の養子にしたりして傍若無人に振舞ったり出来ないようにだね。
その為貴族の養子縁組はすべて王家の紋が入った書類が使われるのだが、これには特殊な魔法がかけられており、王家の印、現主家の印、養子先の印、そして当人の印、全てを揃えねばならず、また勝手に破棄、複製はできないようになっている。
そして王城には高位貴族にしか出入りの自由はなく、当然その書類も容易に手に入れる事は出来ない。
男爵令嬢であり正式な公爵夫人でもないエヴァが簡単に王城へ出入りなんか…
そうか!沈黙の2年…あれはそのための準備期間…!
どんな手を使ったか知らないけどウィルとコリンが連れ去られたあの時、エヴァは多分あの時ようやく書類を手に入れて…、それで目障りな二人を即刻養子に出そうとしたんだ…。二人のサイン入り縁組証書を馬車に乗せて、後はジョット男爵のサインをするばかりにしておいて送り出した…。
この女…僕が父に突き返した書類を父の不在の隙を狙って探し出したのか!そして男爵を呼びよせた…。
当主の居ない間に全てのカタをつけてしまおうと…なんて女だ…!
「…ジョット男爵。もしこれを無理強いするなら僕は貴方の犯している数々の不正を法務院に告発します。告発するに十分な証拠は既に入手済みなのですよ。」
「何…?」
クラウスが、それにジェイコブまでも驚いた顔で目を見張る。
だがこれは本当のことだ。僕は真夜中ワープゲートを利用して、いざという時の為にコツコツとジョット領の不正とその証拠を集め続けた。
倫理観皆無のこの男がまともな統治なんかしているわけがない。思った通り、まぁ出るわ出るわ…
「それでも白を切るなら…、腕づくで首を縦に振らせましょうか?僕が何者かご存じですよね。」
「…狂魔力の継承者か…、厄介な。そうでなければどんな手を使ってでも手に入れたものを!この張りぼてのアドニスめ!」
ちょ!何言ってんのこの変態男爵!だから言葉だけでもキモイって!
「いいだろう、その証拠やらと引き換えにいますぐ手を引いてやる!私は何もそれほど相手に困ってはいないのだ。そこの夫人がどうしても、というので引き受けた、それだけのこと。エヴァ夫人、二度も私に恥をかかせおって…、三度目は無い!このツケは払ってもらうぞ!」
「くっ!」
三度目は無い…、それはこちらの台詞だ!
そして僕の手にはサイン未遂の縁組証書…、ちょうどいい。この証書の使い道は決まった…。
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