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おまけ ⑤

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「え…だが…あ、いや。そうだな…そ…、ああ。では聞いてみよう。お休み」

「アレクシさん、誰かと電話?って言っても外の相手なら兄さんだよね?まさかケネス!?」
「…さすがに殿下へ直接ヨルガオを繋げる度胸は無いよ。お察しの通り、タピオだ」

「なんか困ってたみたいだけど…兄さんがなんかムリ言った?」
「いや…」


兄さんとの話はこうだ。季節はもう春。この冬兄さんはモーモーの子供、ムームーの出産があってスキーには来れなかった。だからアレクシお前が来い!こういう事だ。
マァの村では直にワルプルギス、再生の祭りがある。アッシュたちは無理でもアレクシ、お前だけでも来いよ。だって。

多忙な家令様に1か月もの休暇は難しい…。
誤解の無いよう言っておくよ?ユーリも僕も休んで良いって言うんだよ。その間の代わりくらいは僕がするからって。でも責任感の強いアレクシさんが首を縦に振らないんだってば…。


「せっかくなんだし行って来たら?翼竜使えば一週間滞在しても10日の休みで済むでしょ?」
「…」


あ…、ネックはそこか…。


いきなり訪ねてきたユングリング侯爵の相手をユーリとアルパ君に丸投げして、僕とアレクシさんは今現在ノールさんの部屋でだべっている。代打が居るって気が楽だ…。


「アレクシなんて情けない…。僕だって乗れたのに」サクッ モグモグ…「あ、美味しい、このキンツバ…」
「あれは緊急事態だろう?ノール、君だって散々怖かったと言ってたじゃないか」

「言っとくけど僕の初翼竜は13歳だからね」バリッ ムシャムシャ…「美味しいでしょ?良い小豆使ってるから。こっちのせんべいも食べてみて」
「それはそうだが…」

「確かに僕は緊急事態だったけど…。そうだ分かった!アレクシには必死さが足りないんだよ」サクッ…ズズ…「ううん、僕はこのラクガンを…」
「必死さ…」

「僕もそう思う!マァの村で兄さんが死にかけてるって思って見てよ?怖いとか言ってられないでしょ」バキッ、ボリボリ…「年寄りくさい…」
「うるさいよ」

「タピオは山の斜面を転がり落ちてもピンピンしてたじゃないか」

「想像してって言ってるの!」
「想像しろって言ってんの!」

どうしても乗りたくないらしい…


「アレクシ…、君そこまで臆病じゃなかったでしょ?ロビンを探しに山へ入った時はジップラインだって普通に…え?…もしかして…」

「ええー!もしかしてあれでダメになっちゃったの?」
「正確にはジップラインでなくその前の…」

「セコイヤのこと?セコイヤハイペリオン? ハイペリオンで高所恐怖症になっちゃったの?」


なんと!あのロビン君捜索は、アレクシさんにちょっとしたトラウマを植え付けていた…




責任を感じた僕はアレクシさんの翼竜克服に付き合う事にした。まず行くべきは馬停め横のどんぐりの木。
僕がユーリ救出のために生やした記念のシンボルツリーだ。

そこから10メートルくらい先にももう一本同じ高さの木を生やすと、僕はその2本をいつものスイカズラで繋ぎカゴを通した。つまり即席ゴンドラリフトだ。


これで少しづつ慣れていくのはどうだろうか…毎日30センチづつ上げていけばいつかは上空だって!



そうして始まった(嫌がる)アレクシさんの克服特訓。すると…それを見ていたダリが同じものをジップラインの山にも作って欲しいと言って来た。

ジップラインとスキー場は同じ山の中にある。ゲレンデとして開いてあるところがスキー場で木々の残っている場所がジップラインだ。因みにスキーの上級者コースはジップラインコースの遥か上方である。


「途中で平らになった領を見下ろせる場所があるんですけど、父がそこに大きなブランコを作ってくれると言ってくれて…でも子供の脚では少し大変じゃないかと」


ああー!絶景ブランコってやつか!良いなそれ‼

ケインさんは貯蔵庫となった地下の管理をしながら時々領内の整備などを手伝ってくれている。おっと、あの悪人たちは今もここを拠点にして、時々何かの用をユーリから言い付かっているらしい。が!聞いたら負けだと思って僕は何も聞かないでいる…




そして更に続けられる克服特訓。すると今度は、それを見ていたロビン君までもが、同じものをミットン河にかけてはどうかと言って来た。


「大河に架かる橋の数を他領にも増やしたいと仰っていたではありませんか。これなら物資のの運搬くらいは出来ませんか?」


た、確かに!

今現在、あのミットン河にはリッターホルムに一か所、東の領に1か所の計2か所しか橋は架かっていない。今まではそれほど南北の流通を必要としていなかったからだ。
だけど今はそうじゃない。
リッターホルム、大公領、マァの村、北の三分の一を占める領地がこれだけ賑わっている以上南との流通はけた違いに増えている訳で…、せめて物流だけでもルートを確保できれば…。

とは言え、例え小さな橋でも架けるのには時間も資源も労力もかなり必要になる。造船にその全てを割いているリッターホルムにも他領にも今余裕はない。

いや~、さすがロビン君だ。青田買いをした自分を褒めてやりたい。
ちゃっかり建設予定地への視察には一緒に同行すると言質を取っていったのも…流石だ。


「だー、もうっ!皆が色々言ってくるから特訓が進まないじゃないか!」
「はは…」


そんな時、地団太を踏む僕の後ろを通り過ぎるナッツが呆れたようにこう言った。


「転移を使っちゃダメなの~?」
「いや、私の転移はそれほどの長距離は」

「馬で進みながらちょっとづつ馬ごと転移していったらいいんじゃない~?山中だけでも~」
「ナッツ、転移は見たこと無い場所へは行けないんだよ?」

「アレクシは一度陸路で行ってるじゃない~」
「なるほど!良い考えだナッツ、感謝する!」

「え…」



こうして無事アレクシさんは、護衛と称して物凄く強固に同行を願い出た!ビョルンさんを伴ってマァの村へと出発した。


…そして僕にはひたすらゴンドラリフトを設置するという労働だけが残され…





僕の労力を返せ…




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