チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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おまけ ①

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王都から一報が来た。どこよりも早いホットラインで。

あのどさくさに紛れてミスリルのヨルガオは今もケネスの胸の上だ。
それを嫌がったユーリは自分のヨルガオもタピオ兄さんに渡し、そのうえで僕とユーリの新しいヨルガオにはミスリルの銀の上に一粒のブラウンダイヤモンドが埋め込まれた。
ユーリの銀と僕の栗色、そう言う事だよね。


とにかくケネスの一報とは…、シグリット姫の婚礼の儀が前倒しになったと、その報告だった…。

めでたい話だから前倒しでもいいんだけどね…とはいえ、実情を知ってる僕たちはみんな微妙な反応で…、ま、まぁいい!誰も傷ついてないんだからいいじゃないか!

なんにしろ、公爵家として急遽お祝いに出向くことになったのだ。それはあの感動のユーリの誕生日からひと月ほどたった頃の事だった。


「でもまたなんだってこんな急に…、年明け春って言ってなかったっけ?」
「僕分かっちゃった~」
「えっ!なに?何が分かったのナッツ!」

「赤ちゃんだよ赤ちゃん」
「赤ちゃん…」

「あの…、ナッツさん、赤ちゃんがどうかしたのですか?」
「アルパはお姫さまから何も聞いてないの~?気持ち悪いとか~」


通りがかりのアルパ君がシグリット姫の名前を聞いてキョトン…と問いかけた。可愛いな。
彼はシグリット姫のお手伝いとして、リッターホルムが領民の子供に施す読み書き計算のメソッドをまとめて定期的に送っている。そのため手紙のやりとりを続けている訳で…、因みにその手紙を届けるのは姫の…恋人である。
蛇足だが、ヨルガオの進呈は固く辞退された…


「そう言えば体調がすぐれないと先日受け取った手紙に追記してありました。静かに過ごしたいので冬の間は別荘で過ごすと」

「いやいやいや、体調がすぐれないのに真冬のリッターホルムっておかしいでしょ。風邪ひくって。静かには違いないけど」
「あの…、夏にいらした時お泊りになった真新しい別荘をとても気に入られたようでした。とても落ち着くと仰られて」

「アルパのお見舞いに来たときだね~、ふ~ん、なるほど。」
「あー……、なるほど。」

「あの…、なるほどって何が…」

「いいのいいの、アルパ君は知らなくて」
「そのうちいやでも分かるから~」


僕らは彼の未経験を…この瞬間確信した…。





王都に向かったのは僕とユーリ。前倒しの婚礼の儀は端折れるところは端折って間に合わせたと言うのだが…
端折った理由はそれだけではあるまい。きっと身体に負担をかけないためだ。


「ヘンリックさんこの度はおめでとう。いろんな意味で。」
「何か言いたげだね」

「私からも言わせてくれ。これで生まれるのが男児なら後継の心配はもう無くなったと言うことか。おめでとう」
「さすがお二方。勘が良いですね」

「見抜いたのはナッツだよ」
「ナッツ君か…。だがこれで父を安心させてやれるのでね。問題ない」


僕は一つだけヘンリックさんに聞いてみた。後継と言ったって生まれてくるのは伝令さんの子で…。その子が侯爵家の跡継ぎに…それで平気なのかって。
そうしたら彼は事も無げにこう言ったんだ。


「人はどう生まれたかでなくどう育ったかで決まるものだ。高位貴族家にも下劣に育つ者は往々にして居る。だがスラムの孤児からも高潔な人物は育つ。アレクシのようにね。私は生まれてくる子を侯爵家の後継者として感謝と愛情をもって大切に育てると誓うよ。秘密の恋心を捨てられなかった償いにね」


それだけの覚悟を持ってたんだな…。まさに男だ…すごいよヘンリックさん…。




そして3日後、大神殿の身廊を抜け祭壇の前ではいつもの大司教が真っ白な法衣で美男美女を待っていた。
そして厳かに行われる婚礼の儀。その後彼らはオーブンカーならぬオープン馬車で神殿から王城までをパレードしていった。

行ったが…


「あれ?どうして大公まだここに…。それに元王妃さまも…ねぇ、何でユーリも王子も帰らないの?」
「アッシュよ、ヴェッティと母はだな…」
「え?何々?あ、何か始まった」

「アッシュ、殿下、お静かに」
「あゴメン」
「すまぬ」


うっそぉぉぉぉ!マジですかぁぁぁぁぁ!

そこで行われたのは大公と元王妃様の婚姻の儀。見守るのは僕とユーリとケネスだけ。家族だけに見守られた本当にささやかな儀式で…でも十分だって思った。豪華なセレモニーなんか無くったって、いろんな想いを乗り越えた二人の絆を繋ぐにはこれで十分だって…。

それにしてもユーリと言い大公といい、メイン式典に婚姻の儀ぶっこんで来るのは何の遺伝なの?
あ、分かった。ユーリの入れ知恵だな、さては…。

後でこっそり聞いた話じゃ、大公と元王妃様は若い頃恋仲だったんだとか。
そこに横恋慕した前王とノリノリの元王妃様の家族、結局洗脳のスキルには抗えず彼女は王妃となり…、そしてもともと子供を持とうと思ってなかった大公はそのまま妻も待たずに元王妃を想い続けていたんだって。

ああ…これぞ純愛…。




「えへへ、ユーリにお母さんが出来たね」
「ああそうだ、そうだな」

「ではお前は私の弟になったのだな。」
「なっ!」

「遠慮なくお兄様と呼んでもいいのだぞ」
「結構だ!」
「呼んだらいいのに」
「やめてくれ!」

「さあ呼ぶのだ、ケネスお兄様と!ユーリウス、可愛い弟よ!」



大神殿の身廊には、ユーリの悲鳴にも近い叫びがどこまでも響き渡っていた…











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