チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

文字の大きさ
上 下
114 / 277
連載

142 彼に降りかかる新たな厄

しおりを挟む
あれから特に何事もなく日々は過ぎていく…。静かすぎて気味が悪いくらいだ。

アデリーナはここには入れない。関所は厳重に整備したし人も増員した。
公爵領に手は出させない。何が何でも死守しなくっちゃ。ここは僕とユーリとゆかいな仲間の桃源郷なんだから!





春に行われた大公の戴冠式。
当然出席はしたけど…、王城から出ることはせず式典終了を待って2泊3日で早々帰路についた。

それにしても…会うたびごとにケネスはユーリに馴れ馴れしくなっていく。ユーリはケネスにとげとげしくなっていくのに。


「お、ユーリウス来たのか。どうだ、バカップルぶりは相変わらずか?」

「何だそれは。あなたの事だ、碌な意味じゃないんだろう」
「僕が教えたの。熱愛中で周りが見えてない二人の事だよ。ホント余計なことはすぐ覚えるんだから。聖王国法典もこれくらい覚えればいいのに…」

「お前…、王太子である私にもう少し敬意を払ったらどうだ!」

「殿下、今回ノールが居ないと思って随分気が大きいようだ。今すぐ呼んでも構わないが?」


ノールさんの名前聞いて逃げてくなんて…、どういうトラウマなの、それ。
とは言え最近の王子の口癖は「知っているぞ!ノールに聞いたからな」だ。いつか彼に心から感謝する日がやってくる。そう、きっと遠くない未来に…。


「にしても、もう許してあげたら?過去は過去だし水に流してあげてさ…。僕も王様になら今でもわだかまりはあるけど、ケネスと姫はさ、ある意味被害者でもあるよ?」

「だが彼が立派な男だったら女指導者の恨みは買わなかった」
「えっ?」

「長の長子が顔以外とりたててどうと言うことも無い男だったから女指導者は怒った、そうだったろう?」
「…それはケネスじゃないよね…」


すごい言い掛かりだ…。いや、ある意味これこそが全ての発端と言えなくもない…のか?マジか…


「と、とにかく…、大公だって「最近は殿下なりに次代の王となるべく頑張っておる」って。そう言ってたよ?ほらぁ、そんなに眉間に皺寄せて…、イケメンが台無し、…になってないな。何しててもカッコイイ」

「ふふ、そう?君はいつまでも可愛いよ。」
「小さいから?」

「…。」
「いいの。もう悟った。っていうか分かったの。マァの村の賢者は代々小さかった…、つまり…」
「つまり?」

「頭脳に身長は持ってかれるってことだよね。それなら仕方ない」


「…その理論で行くと長身の者がすべて馬鹿者になるな…」
「なんか言った?」

「いいやなにも。さあ、さっさとリッターホルムに帰ろうか」









そんなわけで季節は初夏。僕の一番好きな季節だ。緑は映えも花も咲き乱れ、風は心地よく、辺りには砕石の音やトンカチの音が鳴り響く。

トンカチ…、そう。ここはカレッジの建築場所。パワー系のスキル持ちが集められてどんどん形になっていく。
物を作り上げてくのってスゴイ。僕には出来ないからこそ尊敬する。
物作りを仕事にしていた前世の両親。本人たちに一度も言った事無かったけど…、密かに尊敬してたのは今さらな話だ。


「ノールさん、どう?って、あれ?ロビン?ヘンリックさんも!来てたならお屋敷に寄れば良かったのに。」

「お久しぶりですアッシュさん。今しがた来たばかりなのです。今日はカレッジの進捗を確認にきたのですよ。アンダーバーク教授からの特別なお役目なのです。公爵閣下には兄さんと合流して挨拶に向かうつもりでおりました。」
「僕がそうしろって言ったんだよ。数日しか居られないみたいだし時間を有効に使おうと思って」

「そっか。それにしても特別なお役目ね。庶民用の学校とは言え王家の鳴り物入りだもん、そりゃ学術院の教授たちも気になるよね。それでヘンリックさんは?ま、まさか…」

「違うよ。今回はシグリット姫に頼まれて来たんだ。完成の暁にはぜひ慰問に来たいと仰っていてね。安全の確認とか…まあ色々と。ノールの顔も見たかったし丁度いいと思って引き受けたんだよ。と、ところでユーリウス様は…?」

「屋敷に居るよ。アレクシさんと小切手にサインしてる。だから当分大丈夫。」


ホッとしているヘンリックさんが不憫だ…。けどきっとユーリは僕の目を盗んで呼び出すに違いない。これ以上夫夫の性生活が流出するのは阻止せねば!


「あれ?今日は馬じゃないんだ?」
「ロビンが居るからね。」

「あの…、同乗させていただきまして…。光栄です。」
「ふぅん。じゃぁカレッジの説明してあげる。一緒に行こう」



学舎が完成していない以上校内を案内することは出来ない。なので説明はもっぱら、履修内容やカリキュラムについてとなる。
ここで育成するのは頭脳労働者が中心となる。入学への狭き門その選抜の方法、前世で僕も何度か受けたIQテストとかね、教えてあげたらさすがに唸っていた。


「まあ…優秀な人材が市居にもっと増えて、一部の心無い貴族に搾取されることが減ると良いのだけどね」
「ヘンリック様の言う通りです。貴族としての義務を見失うなど、実に嘆かわしいことです!」

「う~ん、ロビンはヘンリックさんが大好きなんだね。お兄ちゃん妬いちゃうんじゃない?」
「もう諦めたよ。昔からこの子はヘンリックが大好きで…」

「ヘンリック様は私の理想とする貴族のあるべき姿そのものなのです。私もこうなりたいと常に思っております」

「そうまで言われると身が引き締まるね。ふぅ、…これくらいお兄さんにも好かれたいものだよ」

「何か言った?ヘンリック」
「大したことじゃないさ」


難聴気味のノールさんは置いといて、僕は聞き逃したりしなかったよヘンリックさん…。田舎の子の聴力を舐めちゃいけないな。

でもそうか。ヘンリックさんはノールさんを…
でも彼は準王族を除いた貴族の中では最高位、筆頭侯爵家の嫡男で…、そうである以上あまり未来は見込めないな。気の毒だけど時代背景がそれを簡単には許さない。

そう思うと益々ユーリの結婚強行は規格外の暴挙だったんだなぁ…



「アッシュさん、ここは随分山に近いのですね。」
「あっ?あー、うちは未開拓な土地が多いしね。ここなら随時プラグインできると思って。」

「拡張に備えているんだね。もっと大きくなると見込んでいるのか」
「見込みじゃないよ。するんだよ。それに山中でキャンプとか、学生時代の醍醐味じゃん?」


山を指さしながらロビン君相手にソロキャンの心得や遭難時のサバイバル術を片っ端から披露していく。
ノールさんは久々の友人との語らいに楽しそうだし、ヘンリックさんにも青春の甘酸っぱい思い出は必要だろうし、お邪魔虫は遠慮して。
それに何といっても、…一つ一つすごい勢いで食いついて目をキラキラさせながら聞いてくれるロビンが新鮮で…可愛いなぁ。

うちの屋敷にはスレたのしか居ないから…

いや、それ以前に負けず嫌いと言うか何と言うか、ノールさんもエスターも半分くらいは食い気味にかぶせてくるから…頼りにはなっても全然可愛くない!


でもこの時の、場合によってはウザがられる自分の言動を後で神に感謝することになるんだけど…、誰もが浮かれ気分で過ごしていたそんな一日のあと、それは起こったのだ…。







しおりを挟む
感想 392

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。