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第三夜
どういうことだよ
しおりを挟む「は、」
才商さんの息を飲む音は動揺に揺れている。
……どういう、ことだ。彼の発言の意味するところは「彼は占い師で、才商さんを占った結果黒だった」ということだ。まてまて、どうして今頃それを言い出すんだ......?彼が偽物の占い師だったとしても、最初に名乗り出た方がずっと信頼を得られたはずだ。
「あ、そこの和服野郎は一日目の夜占って白だったぜ」
拳坂君はそう言って雪話さんに「良かったな」と言って半笑いを浮かべている。雪話さんは考え込むように顎に手を当てながら「どうも」と彼を睨み返した。
分からない。何故今のタイミングなのか。何故才商さんに彼が黒出し出来るのか......。明日にもおそらく霊媒師である海画さんは残っている。なら、才商さんが白か黒かは明日、明らかになるし、適当にそう言ったなら嘘はバレる。
拳坂君が偽だった場合、真は競羽さん。そしてその競羽さんが拳坂君に白出ししてるから、拳坂君は偽物だったとしても狼ではありえない。
つまり、狂人。命の軽い狂人が今捨て身で出てきたのか......?それにしても何故今なんだ。
「どうしても最初に言わなかった?これから後に名乗り出ても信用しないと言ったはずだ」
緊張した空気の中、海画さんはそう言った。
「いや、才商を泳がせて誰が庇うのか見てたんだよ。結果言っちまったら見えにくいだろ。」
拳坂君は怖気付く様子もない。本当に信用を得るつもりがあるのか?と思ってしまうほど、理由も態度も軽いように感じてしまう。
「そこのイカサマ詐欺師さんにはそんな考えもねーみたいだけどよ」
拳坂君は競羽さんを指さして口角を上げた。拳坂君と競羽さん……この二人のどちらを信じるか、今夜の処刑投票はその勝負になる。
「……はっ。言っとくが、客観的に見てもあんた、怪しさしかねェよ。投票する直前に自分が占い師でしただ?んなの信じられる訳ねェだろ。ま、俺ぁ今日でリタイアだろうから、アンタの鼻明かされるのを見れねぇのが残念でならねェな、狂人さんよ」
競羽さんは意外にも冷静に状況を正しく理解しているようだ。彼は静かに赤髪の敵を睨みつけた。
「さあ、どうだろうな?ま、俺を信じるしろ信じないにしろ、才商は処刑しといた方が良いとおもうぜ。客観的に見てもなぁ」
……本当に客観的に見たなら、彼の言っていることは半分正解で、半分不正解だ。
まず才商さんを処刑した時の利点。これはなにより、占い師の真偽がつくという点だ。競羽さんを連夜守ることは出来ないから、恐らく狩人は霊媒師である海画さんを守るだろう。拳坂君を守る可能性もあるが、それでも狼は狩人が海画さんか拳坂君、どちらが守られているのかわからない状況でその二人を噛みにくる可能性は低い。それよりも現時点で真の可能性が高く見られている丸腰の競羽さんを狙った方がずっと良いからだ。
現時点ではカミングアウトのタイミング的に信用出来ないが......それでも本当に彼が真の占い師で、才商優が狼という線は捨てきれない。狂人は狼が誰かは知らないから、もし彼が狂人だったとしても、狂人が誤って本物の狼に黒を出してしまうことを言う「狂人の誤爆」をしてしまった、つまり才商優が狼だという可能性も有り得る。
次に悪い点。これはさっきも言ったが、才商さんが黒じゃなかった場合、明日には決着が着いてしまう可能性があるってこと。これは致命的だ。
彼が狂人の場合、今日市民を吊ってしまえば明日には狼陣営が勝ち得ること知っている。それを見越して才商さんに黒を打った可能性は高い。拳坂君は今日ずっと落ち着かない様子だったし、誰が狼かを見極めてから慎重に名乗り出たのかもしれない。
ただ拳坂君がこの作戦を決行するには、才商さんが狼ではないという確信が無いと出来ない。もし誤って「狂人の誤爆」をしてしまえば明日、折角の勝利のチャンスを棒に振ることになってしまう。……だが今のところ、才商さんを狼じゃないと確信できるような言動は拾えない。
それどころか、昨夜した考察では俺は才商さんを単体では結構狼っぽい位置だと思っていた。
それに発言自体がそんなに多くはない人だったし、拳坂君が偽だったとしても、彼を市民だと確信できる要素を拾って黒出し出来たとは思えない。
ここだけ考えてみると、タイミング的には限りなく怪しいが、拳坂君が真ってのもまあまあ有りうる...ってことになるのか?それとも個人的なやり取りがあって確信に至ったとか?このゲームルール上、議論以外の所で白黒つくような真似は出来なそうだけど……。
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