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第三夜
社長のターン
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昨晩書いたメモ用紙をテーブルの下で広げて見る。1番疑っていた拳坂君は白。となると……
同調した人の中では才商さん、しなかった人の中では美坂さん、この二人のどちらか。
薬師丸さんも同調気味な姿勢は疑ったが、同意見の才商さんと比べると意見をしっかり表明しているように思えた。雪話さんは昨日一番立ち位置を表明した。この2人は除外。
今日の俺の推理の軸は、「自分の意見を表明したかどうか」。勿論これは狼を見つけるための議論だが、同時に今は自分を“白っぽく”見せなきゃいけない。そういう意味でも、推理には一貫性があった方がいい。
となると、この二人の比較もその点ですべきだろうな。
「順番は……そうだな。俺から見て反時計回りでいいか」
海画さんから反時計回り。ということは、才商さん→雪話さん→俺→薬師丸さん→美坂さん、の順だ。……どっちにするかの最終決定は才商さんの話を聞いてからだな。
「ええ。結構ですよ。今は貴方しか進行できる状態ではありませんから」
雪話さんは向かいの競羽さんを横目で見やる。彼は相変わらず背もたれを酷使して揺れるシャンデリアを見上げていた。
「揺れてるシャンデリアって首吊りみたいだよなァ…どう思うよ薬師丸ゥ」と隣の薬師丸さんに呟やいている。薬師丸さんは心底居心地が悪そうに「あ、ああ……」とだけ言って目を逸らした。背けられた顔はハズレくじを引かされたような表情をしている。いや、ようなじゃなくて現在進行形で引いてるか。
「じゃ、ボクからってコトね」
才商さんは軽く咳払いして話し始めた。
「ボクが一番アヤシイと思ってるのは……美坂クン、キミだ」
メガネの奥の鋭い視線が美坂さんに向けられる。
「え、」
美坂さんは突然名指しされて次の言葉が紡げないでいる。
「次にアヤシイのが山田はじめクン、その次が薬師丸クンで、一番疑ってないのは雪話クンかな」
ああ、そう。俺もばっちり疑われてるって訳ね。
「理由はあるのかい?」
美坂さんがちょっと戸惑いながら言った。……なるほど。やはり彼は善意には慣れてるけど、悪意には慣れていないみたいだ。
「勿論だよ。」
才商さんは全く動じず堂々としている。……彼は美坂さんとは逆で、悪意に慣れているみたいだなぁとか邪推してしまう。彼は社長って話だったけど、どんな会社の社長なんだ?
「キミは山田クンを庇ったよね。や、それ自体は別に良いんだ。それで言ったら雪話クンの方が庇っていたしね。ただ雪話クンはキチンとした根拠があった。だがキミの庇った理由はゼンブ感情論だったじゃない?」
才商さんの言葉に美坂さんは過敏に反応して立ち上がりそうになる。やはり疑われること自体が嫌いなんだなぁ、この人は。
「で、でも山田君にかけられたその疑いは解かれたじゃないか。間違っていたのは貴方の方なのではないのかい」
「や、まあね。“その疑い”についてはボクも悪かったと思ってるよ。だけど、御廻クンは白だった訳だし、山田クンが黒の可能性は全然あるワケでしょ?」
才商さんの濃いブラウンの瞳がこちらを捉える。なるほど、まあ筋は通ってるわな。
「つまり、あなたは俺と、俺を庇った美坂さんが二人で狼だと言いたいと。そういう事ですか?」
俺は才商さんの視線を正面から受け止めて言った。
「……まあ、そういうコトになるのかな。ジブンを抜いて容疑者は4人。その中に狼は二人いるってワケでしょ?一人ずつ見ていくよりも、ありそうな二人を考えてった方がラクかなって思ったワケよ。どう?名案でしょ?」
彼は単体で狼を探すのではなく、狼同士の庇い合いなどのラインで二人を探していくという考察の軸のようだ。なるほど。筋は通っている様だが……
「なるほど。では次は私ですね」
雪話さん、この5人の中で昨日の発言量、内容は共にトップだった。彼の言葉はいつも議論の流れを変えてきた。さあ、誰を疑う……?
同調した人の中では才商さん、しなかった人の中では美坂さん、この二人のどちらか。
薬師丸さんも同調気味な姿勢は疑ったが、同意見の才商さんと比べると意見をしっかり表明しているように思えた。雪話さんは昨日一番立ち位置を表明した。この2人は除外。
今日の俺の推理の軸は、「自分の意見を表明したかどうか」。勿論これは狼を見つけるための議論だが、同時に今は自分を“白っぽく”見せなきゃいけない。そういう意味でも、推理には一貫性があった方がいい。
となると、この二人の比較もその点ですべきだろうな。
「順番は……そうだな。俺から見て反時計回りでいいか」
海画さんから反時計回り。ということは、才商さん→雪話さん→俺→薬師丸さん→美坂さん、の順だ。……どっちにするかの最終決定は才商さんの話を聞いてからだな。
「ええ。結構ですよ。今は貴方しか進行できる状態ではありませんから」
雪話さんは向かいの競羽さんを横目で見やる。彼は相変わらず背もたれを酷使して揺れるシャンデリアを見上げていた。
「揺れてるシャンデリアって首吊りみたいだよなァ…どう思うよ薬師丸ゥ」と隣の薬師丸さんに呟やいている。薬師丸さんは心底居心地が悪そうに「あ、ああ……」とだけ言って目を逸らした。背けられた顔はハズレくじを引かされたような表情をしている。いや、ようなじゃなくて現在進行形で引いてるか。
「じゃ、ボクからってコトね」
才商さんは軽く咳払いして話し始めた。
「ボクが一番アヤシイと思ってるのは……美坂クン、キミだ」
メガネの奥の鋭い視線が美坂さんに向けられる。
「え、」
美坂さんは突然名指しされて次の言葉が紡げないでいる。
「次にアヤシイのが山田はじめクン、その次が薬師丸クンで、一番疑ってないのは雪話クンかな」
ああ、そう。俺もばっちり疑われてるって訳ね。
「理由はあるのかい?」
美坂さんがちょっと戸惑いながら言った。……なるほど。やはり彼は善意には慣れてるけど、悪意には慣れていないみたいだ。
「勿論だよ。」
才商さんは全く動じず堂々としている。……彼は美坂さんとは逆で、悪意に慣れているみたいだなぁとか邪推してしまう。彼は社長って話だったけど、どんな会社の社長なんだ?
「キミは山田クンを庇ったよね。や、それ自体は別に良いんだ。それで言ったら雪話クンの方が庇っていたしね。ただ雪話クンはキチンとした根拠があった。だがキミの庇った理由はゼンブ感情論だったじゃない?」
才商さんの言葉に美坂さんは過敏に反応して立ち上がりそうになる。やはり疑われること自体が嫌いなんだなぁ、この人は。
「で、でも山田君にかけられたその疑いは解かれたじゃないか。間違っていたのは貴方の方なのではないのかい」
「や、まあね。“その疑い”についてはボクも悪かったと思ってるよ。だけど、御廻クンは白だった訳だし、山田クンが黒の可能性は全然あるワケでしょ?」
才商さんの濃いブラウンの瞳がこちらを捉える。なるほど、まあ筋は通ってるわな。
「つまり、あなたは俺と、俺を庇った美坂さんが二人で狼だと言いたいと。そういう事ですか?」
俺は才商さんの視線を正面から受け止めて言った。
「……まあ、そういうコトになるのかな。ジブンを抜いて容疑者は4人。その中に狼は二人いるってワケでしょ?一人ずつ見ていくよりも、ありそうな二人を考えてった方がラクかなって思ったワケよ。どう?名案でしょ?」
彼は単体で狼を探すのではなく、狼同士の庇い合いなどのラインで二人を探していくという考察の軸のようだ。なるほど。筋は通っている様だが……
「なるほど。では次は私ですね」
雪話さん、この5人の中で昨日の発言量、内容は共にトップだった。彼の言葉はいつも議論の流れを変えてきた。さあ、誰を疑う……?
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