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第三夜
容疑者
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「残念な知らせだ。御廻刑治は狼ではなかった」
「……マジかよ」
競羽さんが一瞬息を止めてため息を着く。背もたれによりかかって天を仰いでは「あー……」とほとんど吐息のような声を漏らしていた。
……どうやら彼も分かっていたらしい。自分が勝ち残るには御廻刑治が狼であることが必須条件だったってことが。
少し待っても誰も対抗してくる者はいない。海画さんが真霊媒師か。……となると、占い結果は一晩ほぼ無駄になってしまったなぁ。
海画さんの真が確定すると同時に、御廻さんが狼じゃなかった事実も確定する。罪の意識がじわじわとシャンデリア煌めく豪勢な会議ホールを満たしていくのが分かった。
……誰が見ても昨日の彼は様子がおかしかった。だから仕方なかったんだと、自分に言い聞かせながら周りをみわたす。皆、同じような表情を浮かべていた。……ああ、つくづく人間が嫌になるよ。取り分け皆と同じことに事に安心するような自分には……
「……容疑者は私から見て左から、才商さん、美坂さん、薬師丸さん、山田さん、そして私の計5人って所ですかね」
場を切り替えるように雪話さんはそう言って円卓を見回わした。俺もバッチリ容疑者の1人か。
「ちなみに、占いの理由とかはあるのかな」
才商さんが天を仰いでいた競羽さんにバツが悪そうに問う。競羽さんは姿勢を変えないまま淡々と答えた。
「……海画サンは何か喋んなそうで分かんなそうだったから。拳坂は昨日やけに静かだったから」
「……ナルホドね」
……占い理由は至極真っ当だな。俺と同じような思考をしてる。
「俺が進行役をしていいか。……別に競羽でも良いが」
海画さんが周りを見渡す。そうだな。
役職が確定している二人に進行役は任せた方がいいだろう。狼陣営の可能性が残る人が進行をするとミスリードをされてしまう恐れがある。それと、競羽さんの楽観的進行はちょっと怖いかもしれない。
「ならオレがやってもいいんじゃねぇの」
ここに来て初めて拳坂君が口を開く。
「……君は役職が確定している訳では無いだろう」
薬師丸さんが静かにそう言った。……これは暗に、「お前は白確定だが狂人の恐れがある」と言っているようなものだ。
「あっそ。別にどうでもいいけど」
拳坂君は不機嫌そうに口を閉じた。……なんだか彼、口を開かない割にソワソワしてないか?気のせいかな……。
「他に異存のあるものは」
「……いねーってよ」
競羽さんが半ばなげやりで言った。……何か可哀想になってきたな……。
「では、俺から一つ提案がある」
「……なんでしょう」
雪話さんは手のひらを合わせた中指の先に顎を乗せて視線だけ寄越している。……これが彼の考える時の癖みたいだ。
「容疑者5人にそれぞれ一番疑っている者を挙げていってもらう。その後理由や質問をしてもいい」
なるほどな。このままだと議論は停滞してしまうし、それは良いかもしれない。
「容疑者ねぇ……」
才商さんはため息とともにそう言うと、メガネの金縁を上げた。5人の容疑者達はそれぞれ考え込んだり周りを見たりしている。
……俺が疑うべきは、誰だ。
「……マジかよ」
競羽さんが一瞬息を止めてため息を着く。背もたれによりかかって天を仰いでは「あー……」とほとんど吐息のような声を漏らしていた。
……どうやら彼も分かっていたらしい。自分が勝ち残るには御廻刑治が狼であることが必須条件だったってことが。
少し待っても誰も対抗してくる者はいない。海画さんが真霊媒師か。……となると、占い結果は一晩ほぼ無駄になってしまったなぁ。
海画さんの真が確定すると同時に、御廻さんが狼じゃなかった事実も確定する。罪の意識がじわじわとシャンデリア煌めく豪勢な会議ホールを満たしていくのが分かった。
……誰が見ても昨日の彼は様子がおかしかった。だから仕方なかったんだと、自分に言い聞かせながら周りをみわたす。皆、同じような表情を浮かべていた。……ああ、つくづく人間が嫌になるよ。取り分け皆と同じことに事に安心するような自分には……
「……容疑者は私から見て左から、才商さん、美坂さん、薬師丸さん、山田さん、そして私の計5人って所ですかね」
場を切り替えるように雪話さんはそう言って円卓を見回わした。俺もバッチリ容疑者の1人か。
「ちなみに、占いの理由とかはあるのかな」
才商さんが天を仰いでいた競羽さんにバツが悪そうに問う。競羽さんは姿勢を変えないまま淡々と答えた。
「……海画サンは何か喋んなそうで分かんなそうだったから。拳坂は昨日やけに静かだったから」
「……ナルホドね」
……占い理由は至極真っ当だな。俺と同じような思考をしてる。
「俺が進行役をしていいか。……別に競羽でも良いが」
海画さんが周りを見渡す。そうだな。
役職が確定している二人に進行役は任せた方がいいだろう。狼陣営の可能性が残る人が進行をするとミスリードをされてしまう恐れがある。それと、競羽さんの楽観的進行はちょっと怖いかもしれない。
「ならオレがやってもいいんじゃねぇの」
ここに来て初めて拳坂君が口を開く。
「……君は役職が確定している訳では無いだろう」
薬師丸さんが静かにそう言った。……これは暗に、「お前は白確定だが狂人の恐れがある」と言っているようなものだ。
「あっそ。別にどうでもいいけど」
拳坂君は不機嫌そうに口を閉じた。……なんだか彼、口を開かない割にソワソワしてないか?気のせいかな……。
「他に異存のあるものは」
「……いねーってよ」
競羽さんが半ばなげやりで言った。……何か可哀想になってきたな……。
「では、俺から一つ提案がある」
「……なんでしょう」
雪話さんは手のひらを合わせた中指の先に顎を乗せて視線だけ寄越している。……これが彼の考える時の癖みたいだ。
「容疑者5人にそれぞれ一番疑っている者を挙げていってもらう。その後理由や質問をしてもいい」
なるほどな。このままだと議論は停滞してしまうし、それは良いかもしれない。
「容疑者ねぇ……」
才商さんはため息とともにそう言うと、メガネの金縁を上げた。5人の容疑者達はそれぞれ考え込んだり周りを見たりしている。
……俺が疑うべきは、誰だ。
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