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第二夜
脱落者の末路
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『おめでとうございます!天人(あまびと)の子を孕んだ貴方はあやしびとながら特例で天上世界の一員になりました!』
機械音がそう告げると、触手がその内の一匹を持ち上げる。するとその生き物はまるで脱皮をする蛇のように体から粘液を滴らせながらズルリと脱げていった。すると床や天井に蠢く巨大な触手に吸い込まれ、その一部になってしまった。
「な、」
思わず声を出す。どういう事だ……?もう何も分からない。天人ってなんだ、あやしびとって?なんだ、一体全体、この悪夢はなんなんだよ。
『御廻刑治様の御子が天上世界の神々に加わるのですよ。光栄ですね。これからもっと頑張りましょうね。これから様々な天人が御廻刑治様と子を成したがっていますよ。良かったですねぇ。これからも頑張ってくださいね』
機械音が何を言っているのかは、分からない。ただ、彼の行く末に絶望しか待っていないというのは……分かってしまった。
『初めての神産みでお疲れのようですね。続きはまた明日にしましょう。では今夜はゆっくりと神産み場でお休み下さいね』
機械音は次の瞬間、小さくこう告げた。
『そこで砂浜球太様もお待ちですから』
その瞬間、周りの音が遠くなっていった。
「今……なんて」
俺は呟く。
『砂浜球太様もそこでお待ちですから、と。そう申し上げました。』
淡々とした機械音。ただの事実説明。
俺は吐いた。もう出るものなんて残っていなかった。胃液の酸っぱさが口を満たす。
『心配なさらないでください。球太様も天上界の神々に見初められたのです。ご友人としてさぞ誇らしいことでしょう』
……俺は泣いていた。ただ、何も言えず、俺の選択を呪った。あの時、俺があんなこと、言ってせいで……あんな、俺の気まぐれで、あいつは、あいつは……!!
俺が拳を握りしめた瞬間、毒々しい触手に覆われたホールが元の洋館に戻っていった。触手は床に空いた大きな穴に吸い込まれ、粘液も跡形もなく消えてゆく。そして……
『御廻刑治様、それではいい夢を』
放心状態の御廻刑治は触手と共に地面の穴に吸い込まれて消えた。
「な……んだよ……なんなんだよこれ……!!」
拳坂君が一人、怒声を上げる。それ以外は皆、呆然と、ただ何事も無かったかのように消えてゆく穴を見ながら打ちひしがれていた。
『喜ばしいことですね。彼は名誉な任務を仰せつかったのですから』
どこからともなく歯ぎしりの音が聞こえる。隣で薬師丸さんが青くなっているのが見えた。
重い沈黙。シャンデリアが煌めくホールはただ静かな空気が流れていた。
『この後は再び砂時計が落ち切るまで、何をされていても結構です。各々の自室は指紋認証で開くようになっています。又、お食事は各自室のパソコンから選択できるようになっていますのでご自由にご利用ください』
業務的な連絡が流される。食事……食事か。もう、そんなこと誰一人考えちゃいないだろうってのにな。
『では、良い夜を』
そこで機械音は途切れた。
機械音がそう告げると、触手がその内の一匹を持ち上げる。するとその生き物はまるで脱皮をする蛇のように体から粘液を滴らせながらズルリと脱げていった。すると床や天井に蠢く巨大な触手に吸い込まれ、その一部になってしまった。
「な、」
思わず声を出す。どういう事だ……?もう何も分からない。天人ってなんだ、あやしびとって?なんだ、一体全体、この悪夢はなんなんだよ。
『御廻刑治様の御子が天上世界の神々に加わるのですよ。光栄ですね。これからもっと頑張りましょうね。これから様々な天人が御廻刑治様と子を成したがっていますよ。良かったですねぇ。これからも頑張ってくださいね』
機械音が何を言っているのかは、分からない。ただ、彼の行く末に絶望しか待っていないというのは……分かってしまった。
『初めての神産みでお疲れのようですね。続きはまた明日にしましょう。では今夜はゆっくりと神産み場でお休み下さいね』
機械音は次の瞬間、小さくこう告げた。
『そこで砂浜球太様もお待ちですから』
その瞬間、周りの音が遠くなっていった。
「今……なんて」
俺は呟く。
『砂浜球太様もそこでお待ちですから、と。そう申し上げました。』
淡々とした機械音。ただの事実説明。
俺は吐いた。もう出るものなんて残っていなかった。胃液の酸っぱさが口を満たす。
『心配なさらないでください。球太様も天上界の神々に見初められたのです。ご友人としてさぞ誇らしいことでしょう』
……俺は泣いていた。ただ、何も言えず、俺の選択を呪った。あの時、俺があんなこと、言ってせいで……あんな、俺の気まぐれで、あいつは、あいつは……!!
俺が拳を握りしめた瞬間、毒々しい触手に覆われたホールが元の洋館に戻っていった。触手は床に空いた大きな穴に吸い込まれ、粘液も跡形もなく消えてゆく。そして……
『御廻刑治様、それではいい夢を』
放心状態の御廻刑治は触手と共に地面の穴に吸い込まれて消えた。
「な……んだよ……なんなんだよこれ……!!」
拳坂君が一人、怒声を上げる。それ以外は皆、呆然と、ただ何事も無かったかのように消えてゆく穴を見ながら打ちひしがれていた。
『喜ばしいことですね。彼は名誉な任務を仰せつかったのですから』
どこからともなく歯ぎしりの音が聞こえる。隣で薬師丸さんが青くなっているのが見えた。
重い沈黙。シャンデリアが煌めくホールはただ静かな空気が流れていた。
『この後は再び砂時計が落ち切るまで、何をされていても結構です。各々の自室は指紋認証で開くようになっています。又、お食事は各自室のパソコンから選択できるようになっていますのでご自由にご利用ください』
業務的な連絡が流される。食事……食事か。もう、そんなこと誰一人考えちゃいないだろうってのにな。
『では、良い夜を』
そこで機械音は途切れた。
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